2019年9月17日火曜日

イランへ臨戦態勢、しかしイランは米海軍艦艇を撃破する能力がある


Locked and Loaded: Could Iran Sink the U.S. Navy If War Breaks Out?
イランにはミサイル多数がある。それで艦船を沈められるのか Could they start sinking warships? 
September 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMilitaryTechnologyWorldMissiles

2009年、中国が移動式中距離弾道ミサイルDF-21Dを開発し900マイル先の艦船撃破を狙っていると明らかになった。この技術は当時出現したばかりだったが、米原子力空母の残存性が議論になった。というのはDF-21Dが空母運用の攻撃機材の戦闘半径より外から狙い撃ちできるためだった。このことから米海軍は対弾道ミサイル機能を駆逐艦、巡洋艦にSM-3ミサイルとして装備することを迫られた。
弾道ミサイルは弧を描く弾道で飛翔距離と速度を最大限に確保する。大気圏外に一旦移動してから考えられないほどの速力で標的に向かうこともある。DF-21はマッハ10までになる。ただし、10年前は対艦弾道ミサイルそのものが存在しておらず(ソ連が開発を試みたものの実用化できなかった)、というのも都市破壊用の弾道ミサイルはともかく移動中の小型標的を正確に狙う技術が未確立だったためだ。
とはいえ、わずか二年後にイランも対艦弾道ミサイル開発に成功したと発表してきた。イランは自国軍事技術を誇張したり虚偽の作り話をすることが多いが、2013年に流出した映像にはミサイルテストが成功した様子が写っていた。また2014年には米情報分析で同ミサイルの配備が確認されている。このミサイルにはハリジファルスKhalij Fars(「ペルシア湾」)の名称がつき、イラン国産開発短距離弾道ミサイルファテFateh-110の派生型だ。トラック搭載型のファテ-110は固形燃料を使用しているため短時間で発射可能だ。液体燃料ミサイルでは発射準備に数日かかる。
ペルシア湾の名称をつけたミサイルは電子光学赤外線シーカーで重量1,433ポンドの弾頭を移動する海軍艦船二名中させることができるというが、イランがシーカー部分を隠した写真しか公表していないため事実は確認不可能だ。イラン国内記事では2013年のテストでミサイルは移動中の艦艇目標に誤差8メートルで命中したとある。2014年のCSIS評価ではハリジ・ファルスミサイルの誤差は平均数十メートルで、革命防衛隊にすでに配備済みとある。
ただしファリジ・ファルスの射程はDF-21の四分の一程度の190マイルから220マイル程度であり、飛翔速度もさほど高くないマッハ3程度である。であれば、ファリジ・ファルスの迎撃は比較的容易だ。
中国のASBMでも同様だがファリジ・ファルスでも観測機材が別途必要で初期段階の目標方位を慣性誘導装置に送る必要がある。(GPS誘導も導入している可能性がある) 米水上艦艇の移動速度は30ノット程度なので空母はミサイルの「標的ボックス」内に入ると電子光学誘導によりミサイルの降下段階では進路変更しても限界があるだろう。空母部隊の艦艇は同ミサイルの発射状況を把握でき、退避行動で標的ボックス外に出ようとするだろう。そうなるとイランも複数のミサイルを発射し標的にしようとするはずだ。
ただし、ペルシア湾とは実は狭い海域でホルムズ海峡の35マイルが一番狭い部分で最大でも220マイルしかない。そうなると移動発射台を攻撃範囲に対応して多数配備することは困難ではない。ミサイルの最大速度が毎分38マイルのため早期警戒に使える時間も限られ、迎撃ミサイルの対応も困難になる。
広い太平洋と違い、ペルシア湾内で艦船の位置をつきとめ標的情報を得るのは容易になる。イラン海軍および革命防衛隊海軍は各種の偵察機材を運用しており、モーターボートから半潜水式舟艇、米製CH-53SH-3ヘリコプター、無人機、バヴァール-2ホバークラフト、地上配備探知レーダーを投入するはずだ。
2014年にイランは高速(マッハ4)の対放射線仕様のハリジファルスをホルムズ-1-2として陸上、海上運用型として展開しており、おそらく世界初の対レーダー弾道ミサイルである。対放射線ミサイルは艦艇が有する強力なレーダーという利点を逆に不利な条件にしてしまう。レーダー誘導からホーミングするためだ。そこで艦艇はレーダーを切り、ロックを解除するがその他の脅威に身をさらすことになる。
ホルムズミサイルは長距離のゾルファガーと同じ発射装置を共有できる。これにより対艦ミサイル部隊は短時間で多数の発射が可能となり防衛体制を飽和できる。さらに1991年の湾岸線の教訓から航空優勢状態が確立していてもトラック搭載弾道ミサイルの位置を突き止めることは恐ろしく困難であることがわかっている。
20188月にイランはファテモビン{輝かしき制服者)をファテ-110の派生型として赤外線シーカーを最終段階の誘導方式に使うと発表し、レーダー探知を逃れると主張したが、外観上それを裏付ける兆候は見られない。モビンのシーカーは明らかに対艦と対地攻撃両用だ。
201810月には革命防衛隊航空宇宙軍の司令官アミール・アリ・ハジゼダからイランが射程700キロの新型ASBMを開発したと主張した。これだとオマン湾も射程に入る。米水上艦艇にはイージス防空システムから大きな効果を受けており、ハリジファルスより高性能のミサイルにも対応可能だ。さらに米空母は常に支援用艦艇と同時に運用される。
ただし革命防衛隊の短距離ASBMはペルシア湾内の一部方面に展開しているのでその位置を探知する機会は多数生まれる。さらにASBM攻撃は水面ギリギリを飛翔する対艦巡航ミサイルとことなる飛翔経路を取ることで、多数のミサイルを同時発射する飽和攻撃で、各種ミサイルを取り混ぜて発射すれば防衛側を圧倒する可能性もある。
ペルシア湾内を通行する民間商用船舶の存在が重要であることから、イランはASBM改良に注力しながら世界にその能力を喧伝して通常兵器による抑止効果を保ちつつサウジアラビア、イスラエル、米国との緊張を高めていくのだろう。
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared earlier in the year.


2019年9月16日月曜日

速報 サウジアラビア石油施設攻撃はイランが実施の可能性濃厚、原油価格上昇は必至か

Everything We Know About The Drone Attacks On Two Saudi Aramco Oil Facilities Yesterday

サウジアラビアAramco石油精製施設二箇所への攻撃で判明していること

Strike Has Strategic Implications, Amplifies Asymmetric Drone War Relevance. 

襲撃は戦略的影響があり、非対称無人機戦への警戒を強めるだろう




BBCワールドニュースが報じたサウジアラビア施設への攻撃直後の様子。 (Photo: via BBC World News)

 


エメンの「アンサルアラー」(フーシ)勢力が無人機(UCAV)を使いサウジアラビア国内の石油施設へ二波におよぶ攻撃を実施したと名乗り出た。これはフーシ派が運営するアル-マシラ通信社が9月14日土曜日に発信したもの。
攻撃では食い違う内容の報道が出ている。:
ウォール・ストリート・ジャーナルは以下伝えている。
「マイク・ポンペイオ国務長官はサウジアラビアの石油関連の心臓部の攻撃にイランが関与したと非難し、世界のエナジー供給に前例のない打撃を与えたとしている。攻撃によりサウジの原油生産の半分が土曜日に停止し、石油価格で上昇の可能性があるり、イラン代理勢力の威力を示した格好だ。無人機は合計10機でサウジアラビア東部の重要施設を攻撃した。だがポンペイオ長官によれば攻撃がイエメンから発進した証拠はないという」
Tehran is behind nearly 100 attacks on Saudi Arabia while Rouhani and Zarif pretend to engage in diplomacy. Amid all the calls for de-escalation, Iran has now launched an unprecedented attack on the world’s energy supply.  There is no evidence the attacks came from Yemen.
We call on all nations to publicly and unequivocally condemn Iran’s attacks. The United States will work with our partners and allies to ensure that energy markets remain well supplied and Iran is held accountable for its aggression

BBCワールドニュース含む信頼すべき筋によれば今回の襲撃で「世界の原油生産で5%」までが影響を受けるとあり、サウジのエナジー大臣アブドゥラジズ・ビン・サルマン王子の声明文では「日産570万バレルの原油生産が止まる」とある。
2019年9月14日付の原油価格をもとにすれば、減産は最大35億ドル相当になる。数字が正確なら今回の襲撃はイエメンのフーシ勢力にとって大勝利と言える。
アブダビ空港の監視カメラに写った長距離無人機。2018年7月。イエメンのm無人機攻撃能力を見せつけた。 (Photo: via PressTV.com)

各筋の情報や襲撃の効果に関する評価が正しければ小型無人戦闘航空機)UCAV)による非対称戦が新しい時代に入ったことになる。
イエメンは以前からサウジアラビア国内施設を無人機で攻撃してきたが、効果のある攻撃となっていなかった。2019年8月17日にもシャイバ油田が攻撃を受けたが負傷者、石油生産ともに影響は生まれていない。
AEW(早期警戒機)が今回の襲撃後にイラク国境付近を警戒すればその他の無人機も探知できたはずである
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This graphic shows Saudi Air Defences around the Abqaiq oil facilities that were struck early Saturday. The drones were well within PAC-2 range, but outside Hawk range. It's possible that the low-flying or the drones' small size and composite materials helped it avoid detection.
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フーシ反乱勢力はアブダビ空港にも2018年7月に無人機攻撃を敢行したと発表し、その際は「サマド-3」武装無人機を3機投入したと主張。フーシ筋は無人機は『1,500キロ』を飛行してアブダビ空港に到達したとアルジャジーラ含む報道機関に発表。トラック一台が損傷を受けたが、負傷者は発生していないとの報道があった。
イラン製無人機がワシントンDCのアナコスティア-ボイリン共用基地で2018年5月に公開され、各国製部品で構成されていることからイランが武器拡散を禁じる国連決議2216号、2231号に違反していることが明らかになった。(DoD photo by EJ Hersom)

イエメン国内のフーシ反乱勢力は無人機数形式を運用している。昨年から技術水準が向上している。そのひとつがカセフ-1で、ほぼ同型機をイランが「アバビ-2」「アバビ-3」として運用中。カセフ-1はプロペラ推進の「プッシャー」機で作戦行動半径は100キロといわれる。主要任務は偵察だ。
イエメンは土曜日のサウジアラビア国内アブカイクおよびフライス襲撃には10機を投入したと主張しているが、型式を明らかにしていない。
事件直後にISWニュースアナリシスグループから出てきた記事では新型の「クッズ-1」ジェット推進巡航ミサイルが精油所二箇所の攻撃に使われたとしている
Well well well...
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Janesは2019年7月8日に以下伝えている。
「クッズは小型固形燃料ブースターを搭載し主翼、尾翼をつけている。このミサイルがアバ空港を襲撃しており、尾部は6月24日にマリキ大佐が回収し以下述べている。
マリキ大佐はエンジンはTJ100ターボジェットでチェコのPBSグループ製という。クッズ巡航ミサイルのエンジンはTJ100のコピーの可能性がある。PBSからはイランへの輸出実績はないし、同盟国にも同様だが捜査には協力したいとJane’sに伝えてきた。
フーシはサマド無人機で寸法が異なる2型式を展示しアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビア国内の攻撃に投入したと主張している。小型版にはサマド-1の銘板がつき、ともに電子光学方式の偵察用タレットがついている。
大型版にはサマド-3の銘板がついており、監視偵察装備は搭載していないものの主翼結合部上部にバルジがありおそらく大型爆発ペイロードを搭載するのだろう。またフェアリング前方も同様に使うようだ。」
サウジアラビア襲撃事件直後にTJ100ジェットエンジン月の「クッズ」巡航ミサイルが投入されたとの説が出てきた (Photo: via ISWNews)

巡航ミサイル、UCAVのいずれをイエメンのフーシが土曜日に投入したかは別に、サウジアラビアの精油施設襲撃から現在進行中の武力衝突から世界規模に影響が生まれそうだ。■

コメント:これはどう見てもイランの関与が濃厚です。施設への侵入経路から発射地点がイエメンでは矛盾することになれば、いよいよイランですね。また貿易の自由体制を逆手に取るこうした技術移転には一層厳しい管理体制が必要となるのは必至でWTOではもはや対応不可能ではないでしょうか。

各国でまだ現役のM60パットン戦車は近代化改修で親衛戦車に太刀打ちできるようになるのか

America's M60 Patton Tank: Can It Still Fight the World's Best (At Over 50 Years Old)? 50年前のM60パットン戦車で世界最高性能の戦車にまだ太刀打ちできるのか

Raytheon is offering an update to the Patton that makes it a killer (of tanks), but not a survivor. レイセオンがパットン改修で攻撃力を引き上げる構想を提示しているが残存性は期待できないようだ

1960年代製の戦車がどこまで性能向上できるのか。
M60パットンは1960年代1970年代の米陸軍戦車部隊の中心装備だった。その後M1エイブラムズに主役の座を譲り、いまも変わらない。ただし現在も合計5千両ものパットンが計19カ国の陸軍部隊で現役だ。今年初めにレイセオンがエンジン換装、火器管制装備、120ミリ主砲を中心とする供用期間延長パッケージ(SLEP)改修を提示した。
M60SLEPの競争相手がイスラエル軍事工業がすでに提供中のM60サブラ改修策だ。サブラはトルコでも供用中でM60Tの制式名称で、シリア北部で戦闘投入されている。一方で旧式パットンがイエメンで両陣営が使っている。
改修型パットンは速力や火力が向上するというが現在の戦場で十分な戦力を発揮できるのだろうか。
冷戦時の主力戦車vertisement
M60の出自を探るとM26パーシング重戦車にたどり着く。第二次大戦終了時にごく少数が実戦投入されたパーシングからパットンが生まれ、主砲90ミリでM46、M47、M48に発展した。M60は1960年に生まれた最終型だ。その狙いはソ連のT-54戦車への対抗で装甲の厚さと長射程M68主砲105ミリの採用だった。
自重50トンのM60は第三次世界大戦勃発に備え欧州に配備されたが、ヴィエトナム戦争には投入されなかった。ただし、橋梁設置の派生型が使われている。M48が北ヴィエトナムのPT-76やT-54を数少ない直接対決で葬っており、ドミニカではスウェーデン製戦車を相手にしている。
中東ではイスラエルがM60を第4次中東戦争で初投入し、ゴラン高原で敵に包囲された機甲旅団の救援に駆けつけた。シリアの3千両の装甲車両をなぶりものにした。一方で南部戦線ではりエジプトがスエズ運河に構築した橋頭堡攻撃に向かったM60がAT-3対戦車ミサイルによる被害をを受けた。パットンの全高が大きいことは標的にされやすく、前面に装備した油圧系統は装甲を破られると発火しやすかった。にもかかわらずイスラエル軍はパットンが気に入り2014年まで現役で使い、各種改装を行っている。
パットンは供用期間中に数々の改修を受けている。中でもM60A2「スターシップ」は155ミリ主砲でMGM-51シレイラ対戦車ミサイルも発射できたが、早々と退役したのは技術面の制約を解決できなかったためだ。最終型M60A3TTSは火器管制機能が改修され熱画像で夜間戦闘に効果を上げた。海兵隊のパットンでは爆発物反応型装甲も導入している。
ただし1980年代に入るとソ連がT-72戦車を大量輸出し、装甲や火力でパットンと互角あるいは上回る性能を示した。米国ではM1エイブラムズ戦車の導入が始まり、火力(120ミリ主砲)や複合材を多用した装甲で防御性能が飛躍的に伸びた。
米軍でM60を最後まで供用したのは海兵隊で1991年湾岸戦争ではクウェイトでおよそ100両のイラク戦車を撃破しながら、パットンの全損は1両のみだった。だがこれは敵側の訓練や戦術が劣っていたためで、まもなくしてパットンは米軍から姿を消した。
とはいえM60は今でも主力戦車の座についたままの国がある。エジプト(1,700両)、トルコ(932両)、台湾(450両)、サウジアラビア(450両)、モロッコ(427両)、タイ(178両)、バーレーン(180両)の各国である。
SLEP・サブレ両改修案の中身は
レイセオンのSLEP改修は火力と機動力の改良が主眼だ。
まず、旧式M68主砲は120mmのM256主砲に交換し、エイブラムスと同じ砲となる。これで1980年代製のT-72への対応に苦労したパットンが最新鋭戦車も撃破可能となる。さらに新型デジタル照準装備をM1A1Dから流用する。新型コンピュータにより砲手は走行中にも照準を当てることが可能となるのは大きな利点だ。そして砲塔の回転用の油圧系統は電気駆動式になり回転速度が上がりながら命中弾を受けての「炎上」の可能性が低くなった。
次にレイセオンはディーゼルエンジンを750馬力から950馬力に更新したので最高速度が40マイル時になり、新鋭戦車と肩を並べる。
レイセオンの試作戦車には結合型装甲もついておりロケット推進弾を跳ね返す効果があり、追加装甲板や補助出力で車体後部の冷却ファンを駆動する。ただし以上はSLEP改修の標準内容ではないようだ。
これに対してイスラエルのサブラII改修でも120ミリ主砲と新型照準コンピュータの組み合わせは同じでエンジンは1千馬力になり最高速度は時速34マイルになっている。SLEPと違うのはサブラも装甲をグレードアップしているが砲塔の形状を変えていることだ。また爆発物反応装甲を採用し、装甲板も追加搭載する。
仕様上良く似ているマガッチ7C戦車に装甲板を搭載し、ヒズボラのAT-3・サガー・ミサイルが18発命中しても残存できたとの報道があり、一発も貫通しなかったという。ただしサガーは1960年代製の装備であり新型ミサイルは爆発力貫通力も増強している。
改修はどこまで効果があるのか
エンジン強化でパットンはその他の装甲車両に遅れを取らずに前進できる。それでもM60の重量馬力比は見劣りがする。
120ミリ砲と新型火器管制装備でM60は今日稼働中の戦車なら大部分を中長距離から撃破できる。高性能のM829E3およびE4劣化ウラン弾があれば高性能反応型装甲にも対応できるのでが、この砲弾が利用できる運用国は少ない。そうなるとM60のSLEP改修はそこそこの戦車ハンターとなりそうだ。
ただし今日の戦車は敵戦車を相手にすることは少ない。相手は戦闘員集団が多く、長距離対戦車誘導ミサイルとしてコメットや短距離向けロケット推進手榴弾を装備している。こうした装備はM1はメルカバといった第一線戦車相手にも有効性を証明している。
パットンはM1あるいはメルカヴァより相当に脆弱である。さらに旧型T-72にも劣る。パットンの前面装甲は鋳鉄の旧式で圧延硬化装甲(RHA)では253ミリに相当する。新鋭戦車では複合材装甲を採用しており同じ重量で硬化は劇的に向上している。最新鋭M1A2の装甲は戦車砲弾には800ミリ相当とされる。
対照的に90年代製の120ミリ、サボー弾はRHA700ミリでも貫通するし、AT-17コメート対戦車ミサイルの貫通能力は1300ミリだ。
パットンは全高が大きく標的にされやすすく、主砲砲弾はまとめて配置されているため敵弾が貫通すると爆発しやすい。エイブラムズでは砲弾は離して配置している。
M60SLEPは装甲には手を付けない。サブラでは装甲も改修しており、トルコの実戦事例で改良型パットンが対戦車ミサイルにも耐えると判明している。
今年4月21日にトルコのM60Tがイラク・バシクエでISISのコメート対戦車ミサイルの攻撃を受け、損傷は受けたものの乗員は無事だった。とはいえ車両は作戦実行に耐えられなくなった。
8月にはこれと別にトルコのM60A3とM60Tがユーフラテス・シールド作戦でISISを戦闘せずにヤラブルス市街地から放逐してからクルド人部隊と戦闘に入った。クルド側はM60数両を長距離ミサイルで破壊し、トルコ陸軍に初めて死傷者が発生した。
トルコのM60Tサブラ戦車隊はISIS占拠の市街地に火砲を集中したためコメートミサイルの標的になった。乗員で助かったのは1名だけだった。さらにシリアでは少なくとも11両のパットンを喪失した。
だがもっと悪い結果がイエメンで発生し、フーシ反乱勢力とサウジアラビア陸軍の双方がパットンを投入し、合計22両以上が破壊されている。
性能改修したサブラでさえ損失を出しているのであり、SLEP改修では砲塔の油圧機構の除去以外に残存性で改良がない。また装甲の強度もサボ貫通弾に対しては不十分であり車両の防御が困難だ。
レイセオンは改修でパットンを戦車キラーにするが、残存性は追求してない。だが近代戦では兵員の生存が一層強く求められており、ロシアのT-14戦車が砲塔を無人化したほか高性能の防御機能を備えたのはこの傾向に従ったものだ。
パットンは火力により信頼を勝ち取ってきたが、死傷者は最小限にしつつ相手方にプロパガンダ勝利を収めさせないことが重要となっている今日では、装甲防御の古さが足を引っ張りかねない。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.