2020年7月26日日曜日

米陸軍野砲射程が70キロまで伸びる。戦闘の様相はこう変わる

陸軍の超長距離砲兵隊が敵の補給ラインを先に寸断し兵力集積地点にも砲撃を終えてから地上戦を展開すれば、敵部隊の排除は容易になるはずだ

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2011%3Anewsml_GM1E79S131I01&share=true

さらに、敵の届かない地点からスタンドオフ砲撃すれば米軍部隊は安全かつ自信を持って敵軍を駆逐できるのではないか。

との想定で陸軍は155mm砲を改良し有効射程を従来の二倍の70kmに延ばす。

この事業は射程延長砲撃戦力 Extended Range Cannon Artillery (ERCA)と呼ばれ、迅速な実現をめざし進められてきた。陸軍技術部門は威力を高め残存性を高くした新型155mm砲の開発試験に動いている。

ERCAは米陸軍次世代装備本部Army Futures Commandが試験中で、62km先への着弾を実現しながら必要な精度は維持した成果を上げている。最新のM777迫撃砲ではGPS誘導方式のエクスキャリバー砲弾を運用し、最大射程は30から40kmとなる。この射程を二倍に延ばすERCAでは戦術戦略両面の要求を実現する狙いがある。狙いは敵を「アウトレンジ」することだと陸軍関係者が語ってくれた。

従来型装備に対しERCAは30フィートの砲弾を発射し、遠距離を狙う。

「ERCAでは約30フィートで58口径砲弾を運用します。内部容積が増えているため推進剤や砲尾を変えられます。初速は砲身長に依存します」とジョン・ラファティ准将(長距離精密火力機能横断チーム長)が今年初めのTNI取材に答えていた。

ラファティ准将からは砲弾の背後に強力な推進剤があり、スライド式尾栓は長距離砲用に改良したとの説明もある。

「砲の後部は強靭な鉄鋼で封印します。火薬系列は電子点火方式で薬室は拡大しており、砲身を長くしたことで初速はずっと高くなります」

ERCAは既存155mm用砲弾も運用しながら、精密誘導技術を応用した新効果を上げる。陸軍はエクスキャリバー砲弾のメーカー、レイセオンと飛翔修正可能な砲弾の開発をめざしている。これが実現すれば発射後に修正を加え普通なら攻撃不可能な標的も狙える。この原理を「弾道変更技術」と呼び、橋の下に隠れる敵や山の背後にいる敵を攻撃する。

「勾配を隠れ蓑にする敵は砲兵隊には難題です。弾道の最終部分が逆勾配に邪魔されるからです。荒地での運用なら弾道を修正して攻撃効果を引き上げます。業界と協力しこうした狙いの実現をめざしています」(ラファティ准将)

長距離かつ強力な火砲となると特別な技術が必要となり長砲身から生まれる「爆風の過剰圧」を処理するとラファティ准将は説明してくれた。

「砲身の端にあるマズルブレーキは、煙と爆風を分散させ、爆風の過圧処理に役立ちます。砲弾が所定位置にロックされると、砲尾がロック位置に回転し、砲尾後端が密閉されます。 ERCAには、戦車砲のようなスライデド尾栓があります。上方にスライドする鋼鉄ブロックが発射管を密閉し、チャンバー圧力が生まれます。それ以外の場合は、抵抗が最少となるため、ラウンドは後方に出てきます。スライディングブロックのブリーチはより堅牢かつ大きな爆発に対応できます。チャンバー圧力が高いほど、爆発は大きくなります」■

この記事は以下を再構成したものです。火砲の構造に詳しい方に説明の不備をご指摘いただきたいです。

The U.S. Army's New Artillery Can Kill from 40 Miles Away

Meet the ERCA.

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University

2020年7月25日土曜日

海自を追い越したPLANへ日本はこう対抗する

国は海軍力整備を加速し、日本は追いつく側になった。

長年の友人であり共著者のトシ・ヨシハラが共産中国の戦略思考家・実行者が日本の海軍力をどう見ているかを紹介するレポートを発表した。見通しは暗い。人民解放軍海軍(PLAN)はここ十年で海上自衛隊(JMSDF)を多くの面で追い越した。日本は真剣に追いつく必要がある。米国も手助けすべきだ。

ヨシハラはレポートの題名を「太陽に挑む巨龍」とし、第二次大戦の太平洋方面を扱った軍事歴史家ロナルド・スペクターの「太陽に挑む鷲」を意識している。スペクターが80年前の日本の台頭に苦慮する米国を描いたのに対し今回のレポートは中国の台頭に苦慮する日本を描く。当時の日本帝国は太平洋の反対側の敵と対峙し、この敵は経済規模がはるかに大きく、日本の勢力圏周辺部のフィリピンに拠点を置いていた。今日の民主国家日本に立ちふさがるのは日本の経済規模を上回る規模に成長して10年が経過した敵だ。長距離精密攻撃手段が登場してきたこの時代に両国は狭い区域を占拠し合っている。

PLANとJMSDFを艦艇だけで比較すれば結論を誤る。1941年の日本帝国海軍の機動部隊は今日の空母打撃軍に相当し、悪天候の中で遠距離を航行し真珠湾攻撃を敢行した。燃料その他補給品のため機動部隊は攻撃が継続できなかった。中国から見れば真珠湾は横須賀あるいは佐世保だが容易に到達可能だ。PLAロケット軍は日本国内の基地や艦艇をボタン一つで攻撃できる。

日中の海軍力の比較では沿岸配備ミサイルや航空機も勘定に入れる必要がある。その結果、日本はさらに不利となる。

ヨシハラはPLANは驚くべき速度で成長してきた存在として描く。20年前の西側にはPLANを嘲笑する傾向が強く、中国が外洋海軍を構築するのに長期間が必要とみていた。そもそも実現不可能な構想とみる向きもあった。だが中国の海軍力整備が現実とわかると懐疑派は今度はPLANが対艦弾道ミサイルや最新鋭誘導ミサイル駆逐艦さらに空母を建造できるはずがないと言い始めた。だが中国技術陣はこうした見方をひとつずつ否定していった。

過去の海洋対決での挑戦者の実績を調べると、ゼロから域内海軍力の整備を始めると15年かかっているのがわかる。外洋海軍の整備が完了するにはさらに15年かかっている。合計30年だ。共産中国の指導部はPLANを世界に通用する兵力に育てる決定を25年前に下した。こうしてみると世界史の通例通りの展開だ。

歴史の教訓はそこまでだ。ヨシハラは一次資料を調査し、中国にある海洋紛争を宿命とみる見方が、戦略的目標を推進する過剰自信と表裏一体だと発見した。「中国の視点では、日中間の海軍対決は運命の定め」とし、同時にヨシハラは中国専門家に勝利の確信が共通し、PLAはJMSDFに楽勝すると考えていると見出した。

著作物に見られる宿命論と虚栄心をごっちゃにする見方が中国共産党上層部の考え方そのものだったらどうなるか。数量面で有利な状況に加え、エリートのみならず一般の風潮は強硬策に走りやすくなるだろう。PLAに有利な状況になれば、危機が来た、好機が来たと習金平が判断すれば攻撃命令をちゅうちょなく下すだろう。

中国著作物に別のパターンもある。中国の戦略思想家に興味深い側面があり、危機が現実になれば米国は日本への条約義務を回避するとみている。「中国が仮定する作戦勝利は米国の介入がないことが条件」(ヨシハラ)で、言い換えれば、中国戦略では将来の海上対決で中国が相手にするのは孤立無援の日本となる。一対一の対決に米国の海軍、海兵隊、空軍が不在なら中国の作戦展開や戦術は容易になる。

この仮定が誤りである可能性が高い。だが誤った仮定をもとに行動に入り失敗になった事例は多い。

戦力が願望に追いつきつつあるのが中国の現在だ。このためPLAは攻撃作戦に目が移りやすくなっている。「決定的交戦こそ中国の戦闘勝利を目指す戦略の核心部分」とヨシハラは記している。海上では従来の「積極防衛」戦略を攻撃的な姿勢に変えてきた。ただその場合、PLANは開戦時に弱い立場になる。そうなると中国は戦略的防御に身を任すしかない。強力な敵を粉砕し戦略的攻勢をかけ、その後の勝利に至るまでは。

ただし中国軍事戦略の立案者はずっと前から防御策から攻勢に移る策を想定してきた。2004年白書は攻撃的性格を示し、軍事課題への対応策を述べ、PLAに「制海権制空権双方」の獲得に向けた戦力の準備を命じていた。制海制空はマハン流の言い方だ。中国の海軍戦略家はアルフレッド・セイヤー・マハン大佐の「制海権」概念を忠実に信奉している。海洋支配を確立するためには敵部隊を敗退させるかほぼ永久に海域から追い出す必要がある。つまるところ勝利側が海空を支配し思いの通りにするのだ。

5年前に初めて発表された海洋戦略関連文書で中国は積極防衛は意味がないばかりか軍事行動の「本質」でもあると記していた。かなり強い表現だ。だがPLAとその前身の紅軍は日本との戦いや国内内戦を経て大規模だが不釣り合いな組織に肥大していたのが事実だ。PLAが緒戦で攻勢に出て勝利を収める可能性が高いと判断すれば、これまでの戦闘方法を捨てることが意味を持ってくる。習得するなら早いほうがいい。

ではどうしたらよいのか。事態はそこまで進んでいるがヨシハラは希望はあるとする。まず、地理条件が日本に有利だ。日本が第一列島線の北側で弧を描く形になっていることで西太平洋の交通を制することが可能だ。日本が海空地の兵力を適正配置すればPLAの艦船航空機を封じ込めつつ輸出入に依存する中国の生命線たる海上交通も止められる。日本は数の上で不利だが中国に相当の苦痛を与えることができる。この能力が抑止力になる。

次にPLANに中国の威信をかけることが習金平の誤りにつながる。習は海軍に中国の再興をめざす「中国の夢」を重ねる。それはよいとしても、中国の夢を追求して大打撃を受ければどうなるか。日本帝国海軍は清朝の北洋艦隊を日清戦争(1894-95年)で撃破した。手痛い歴史の記憶だが北洋艦隊の後継者たるPLAN水上艦部隊がこれも明治時代の後を引き継いだJMSDFに敗退したらどうなるか。

敗退あるいは勝利するとしても相当の代償を払えば習は国民の前で威信を失う。周辺国にも同様だ。中国の夢にハッピーエンドはなくなる。習は自身の政治生命を考え、行動を控えるだろう。日本が創造力あふれた戦略や軍事力整備に走れば習金平は一層不安に駆られるはずだ。

海上戦闘で日本は「損害を与える」ことを希求すべきだ。PLANを撃破し、中国指導部に恥辱を与えることこそ目標だ。

日本の指導層は米国指導部と協力し両国の戦力を一貫維持すべきだ。両国は海上防衛へ「自己投資」する姿を共産中国の指導部にも見せつけるべきだ。目標を共有するとの文書を公表するのはよいとしても両国の課題はほかにある。厳しい状況でも両国が一緒に対応すると各国に信じさせるのもそのひとつだ。たとえば、統合部隊を編成し、指揮命令系統を統合し、両国の人員が同じ艦艇や航空機を運用すれば有事でも相手国を放置はないと示せよう。

日米同盟の課題の一部は軍事力そのものである。ヨシハラが記しているが、中国専門家にはJMSDFはバランスが劣ると見る傾向があり、このため日本独力では戦力に限界があるとする。これはある程度正しい。創設期以来のJMSDFは日本に母港を置く第七艦隊に不足する戦力を補完してきた。水中戦や掃海任務が例だ。さらにJMSDFは米空母や揚陸艦の護衛部隊としての兵力編成になっている。日本が「大金を払って」自国艦艇を米海軍作戦の穴を埋める存在にしているとまで豪語する中国評論家もいる。揚陸戦、兵站補給、有効射程さらに空母の欠如を指摘する向きもある。

そこでヨシハラは以下提言する。「日本には戦力バランスの変更が必要だ」とし、「小型、安価かつ多数の装備」を海上展開すべきとする。たとえば重武装ミサイル艦艇をイージス駆逐艦や軽空母のような「優雅な装備」と並行整備する。バランスを変更し、隻数を増やした部隊構成なら中国が望む一対一の対決となっても弾力的運用できる。中国も手が出せなくなる。だがここでも日米の政府首脳に仕事が残る。戦火を開けば日米両国が中国軍を撃破する事態になると中国に理解させることだ。
日米両国に政治面で意見を異にする余裕はない。龍には太陽・鷲の連合軍が立ち向かうと知らせよう。

最後だが、急ぐ必要がある。今後は中国に有利な状況となりそうだ。日米両国がこの勢いを削ごうとすれば決意だけでは足りない。物資資源も投入すべきだ。これで有利な状況に戻せる。無為に時間を過ごす余裕はもうないのだ。■

この記事は以下は再構成したものです。


July 24, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Unfortunately, this has been the case for a while now.


James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific. The views voiced here are his alone.
This first appeared earlier in 2020 and is being reposted due to reader interest.

2020年7月24日金曜日

主張 技術だけで戦闘の構図は変えられない。有望な新技術はこれだ。

資金が潤沢で、未来志向の考え方の軍組織なら戦闘の様相を一変しそうな技術に投資する余裕があるが、当然とはいえ新技術すべてが期待通りの効果を上げるわけではない。
2018年4月、S・ラジャラトナム国際研究スクールの客員研究員リチャード・ビツィンガー Richard Bitzinger がエイシアタイムズ紙上に寄稿し、画期的軍事技術の概念そのものを批判した。驚異的なまでの威力の装備以外の要素のほうが影響力があるというのだ。例として2017年11月に筆者が発表した中国のJ-16Dが敵レーダーを妨害し防空網を突破する性能を有するとの記事を取り上げた。

ビツィンガーが筆者も同意できる点を取り上げていると素直に認める。軍事史を通じ、経験則や物資面の要素ならびに組織力が技術面での優位性を上回る効果を示している。

ただし筆者にJ-16Dを革新的兵器とする意図はない。戦闘の様相を一変させる装備とは性能であれ、効率であれ、過去からの延長線を一気に突破した存在のことであり、従来の装備品と一線を画する存在だ。

筆者はJ-16Dを中国がめざす米装備品の一部性能を模し特殊機能を実現する一例とみており、中国側のいうようなイージス艦への「悪夢」にはならないと自信を持って言える。ロシアのメディアもSu-24がUSSドナルド・クック上空を通過飛行した2014年に同じような言い方をしていた。ただし、中国がその方向に向け技術開発中であることに要注意だ。

ビツィンガーと大きく意見が異なるのは「戦闘の様相を一変させる」問題で、ビツィンガーはこれに大いに懐疑的で、技術そのもので軍事対決の構図が変わることはめったにない、技術に戦術、教義や物資面の支援があってこそだとする。

確かにそうだ。F-35ステルス戦闘機、V-2弾道ミサイルや戦闘員の即席爆発装置(IED)も突き詰めれば金属の塊に過ぎない。戦闘の様相を一変させるのは技術そのものではなく、技術要素を運用可能なシステムに洗練させ、性能を発揮できるよう配備することだ。例として対ゲリラ戦でIEDは画期的な兵器かもしれないが、F-35は違う。装備を有効に活用するための作戦構想がその上にある。

技術要素のフル活用には数年どころか数十年かかることがある。ただし、いったん活用できれば文字通り「構図を一変させる」効果が猛烈な速度で生まれる。

戦艦と空母が好例だ。20世紀初頭に強力な装甲を施し巨大な主砲を備えた戦艦は海軍力の究極の存在と思われていた。空母は1910年代に登場したが即席仕立てで搭載機材も布張り複葉機だった。空母が初めて実戦投入された1918年に7機が発進したが着艦できたのは1機のみだった。浮かぶ飛行場に脆弱な機体多数がちっぽけな爆弾を抱える構図は戦艦に真剣に挑戦する存在には映らず冷笑を買ったはずだ。

だがその後二十年で英国、日本、米国が空母運用の経験を積み、戦術を編み出し空母の性能をフル活用しはじめた。機材も速力、航続距離、ペイロードいずれも進歩した。日本が第二次大戦緒戦で戦艦巡洋戦艦五隻を空から攻撃し排除したが空母は一隻も沈めていない。航空機を搭載し、遠方の敵艦を壊滅させる能力を有する空母に対し戦艦はわずか15マイルしかその威力を発揮できなかった。

未来志向で潤沢な資源がある軍組織が画期的な効果を生みそうな装備に予算を投入しても、もちろんのことすべての技術が期待通りの効果を生むわけではない。発展を続け実用上の意味をうむものがあるが、あまりにもニッチな効果しかあげなかったり、低性能のままで終わる装備品もある。中にはさらに上の技術や対抗措置で簡単に圧倒されてる技術要素もある。米海軍は空母開発と並行し、航空機搭載可能な硬式飛行船二機も試験運用したが、ともに墜落してしまった。

「適正」技術開発に成功した軍組織がかならずしもその正しい稼働方法を編み出す保証はない。フランス、ドイツ、ソ連、英国の各国が機械化部隊を大戦間に編成した。しかし、ずっと後に整備を開始したドイツが偶然というべき下達で電撃戦戦術を唯一開発し、西欧を席巻したのは事実だ。英仏両国は戦車を無意味に分散させて戦力を制限してしまい、設計構想でも誤りがあった。ソ連は優秀性能の戦車を設計したがその稼働の前に革新的な発想を有する将官多数を処刑していた。

「新規手段」が旧来の秩序の中でしばしば冷遇され、新しい投入方法を試されて真価を発揮すること、あるいは必要に迫られ新しく活用されてきたことに注目すべきだ。軍も人間が作った組織であり事なかれ主義や特定の活用方法にのめりこむことがある一方で、新規の手法に抵抗を示す。パットンも戦車が騎兵部隊に代わる存在になると当初は見ていなかった。技術から生まれる劇的なほどの初期の優位性は短命に終わる。ただし戦場を一変させる奇襲効果が迅速かつ圧倒的な効果を生めば話は別だ。ドイツ機械化部隊がフランスを席巻した1940年の事例がここにあてはまる。

ビツィンガーは中国の中距離弾道ミサイルDF-21D「東風」を西側が不安視しているとする。同ミサイルの最終誘導シーカーは最大900マイル先を航行する艦艇を沈める性能があるといわれる。ビツィンガーは不安感はPLAがDF-21を真の「空母キラー」にするには標的補足以外に戦術や技術で課題が多数あることを失念していると考えている。懐疑的にさせているも一つの要素はDF-21Dが移動目標を相手に試射された事例が公式にはないことだ。

とはいえ空母に搭載された軍用機が急速に発展したように対艦弾道ミサイル技術が必要な支援戦術や支援にあたる情報収集監視偵察技術、監視機材、衛星、潜水艦とともに成熟度を高める可能性もある。東風が優秀な対艦兵器になれば、アジア太平洋全域が前例のない海上全体にわたる接近阻止バブルに覆われ、空母兵力は深刻な事態に直面するだろう。

そこで21世紀の戦闘の様相を一変しかねない技術で以下を選んでおきたい。

無人機の戦い:長期的にはジェット戦闘機、潜水艦、戦車は無人戦闘装備に発展しそうだ。短期的には低性能ながら多数の無人装備で高性能装備を飽和圧倒する事態が生まれそうだ。防御は攻撃より高価につくことが経験則でわかっているが、消耗品扱いの無人装備が将来の戦闘に投入される事態が発生してもおかしくない。カギを握るのは生産費用が十分に下がるかどうかだ。
サイバー・電子戦: 安全と思われたコンピュータネットワークが破られたとのニュースがない日はない。各国の軍部がコンピュータネットワーク依存を深めている。弾道ミサイル迎撃手段のような戦術レベルでも同様で、イージスミサイル防衛装備やF-35のセンサーやALIS補給ネットワークも同様だ。中国やロシアが通信活動やセンサー、データリンクを寸断し米軍活動を妨害するジャマーを開発し、電磁機能で送信元の探知と攻撃を狙っている。
ステルス機はどうか:ステルスジェット機は敵の領空に侵入し遠距離から探知されずに活動できると広く信じられ、21世紀の戦闘形式を形成したといわれる。たしかに、ステルスジェット機はテストを繰り返し効果を引き上げているが、最新の防空網や装備品を相手に性能を試したことはない。
ミサイルの拡散と領域拒否戦略: 巡航ミサイルの普及で海上艦艇には海面が危険な場になっている。GPS誘導のロケット弾で陸上部隊にも空爆同様の攻撃手段が手に入った。短距離から中距離の弾道ミサイルが従来型の戦略兵器に匹敵する威力を上げるようになり、航空優勢の維持が困難になっている。ここでも中国やロシアが空母から航空基地に至る軍事拠点を迅速かつ精密な攻撃の脅威にさらしている。

こうした技術の中には限定的効果しかないものや、これ以上の発展はのぞめないものもある。だがその他は未経験の効果を生み、既存ルールを破る効果もある。そう、技術自体が戦闘の様相を一変させることはない。だが強力な軍事力に組み込まれ、運用戦術や教義が生み出され、試行されれば実戦で威力を生む存在になる。歴史では迅速とはいかなくても戦闘の構図が変わった例がみられる。

組織内の維持勢力に抵抗し時代を先取りする思考の知恵を引き継けば戦闘の様相を一変させることは可能だ。これは健全かつ不可欠な動きだ。このため必要なのは競合相手を悪の存在だと警句をいいふらすことでも恐怖をあおることでもない。ただし、技術、経済、社会、軍組織の進化にあわせ既存の関係や「ルール」、さらにハードソフト両面の国力がどう変化するかを考え、先取りで企画計画していく必要がある。■

この記事は以下を再構成したものです。

What New Technologies Will Change Warfare Forever?

July 22, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWorldF-22V-2ChinaRussia



Sébastien Roblin holds a master’s degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared two years ago.

燃料タンク装着したMQ-25スティングレイの近況写真を次期副大統領候補と噂の上院議員がツイッターで公開

ーイングMQ-25空母艦載無人給油機のテスト機材T1が主翼下にコバム製バディ燃料給油タンクを装着する姿がはじめて明らかになった。タミー・ダックワース上院議員(民、イリノイ)がミッドアメリカ空港を訪問し、ツイッターでT1の写真を掲載した。

同議員によればボーイング施設を訪問したのは先週のこと。ミッドアメリカ空港はスコット空軍基地に隣接し、セントルイスから18マイルほど離れている。ボーイングはT1を4月に同地に移動し、民間機登録番号N234MQを取得し、5か月後に初飛行させた。

OFFICE OF SENATOR TAMMY DUCKWORTH
中央車いすに乗るタミー・ダックワース上院議員。ミッドアメリカ空港のボーイング施設でT1が背景に見える。July 2020.
OFFICE OF SENATOR TAMMY DUCKWORTH

「先週、@MAAirportを訪問し、海軍の新型MQ-25無人機システムを見ることができた」と同議員はツイッターに写真数点を掲載した。「ミッドアメリカ空港はわが州の経済で大きな推進役となっており今後も必要な連邦政府支援を得られるよう努力して行きたい」

ダックワース議員は退役米陸軍中佐で、2004年にイラクで乗機UH-60ブラックホークがロケット推進手りゅう弾の攻撃を受け両脚を失った。2013年から2017年イリノイ州選出下院議員ののち上院に当選した。現在は上院軍事委員会に籍を置き、今年の大統領選挙ではジョー・バイデンの有力副大統領候補といわれる。

ボーイングはT1試作機を2019年からミッドアメリカに置き、作業を進めている。同社はMQ-25スティングレイ無人給油機の契約を一年前に獲得していた。コバムのバディ給油ポッドは海軍でF/A-18E/Fスーパーホーネットが給油機任務で運用しており、無人艦載機(UCA)ではその運用が重要視されている。UCAは開発中止となった無人艦載偵察攻撃機(UCLASS)構想を引き継いでいる。

T-1テスト機はボーイングのUCLASS提案に手を加えたもので、同社は技術開発モデル(EDM)試作機を計4機引き渡す契約になっている。この一号機は来年の引き渡しとなる。残る3機も2024年までに納入される。

ボーイングはT1で空母艦上の各種取扱いテストを近い将来に始めたいと説明。ただし、艦上での飛行テストはEDM各機を使い、2022年以降の開始という。

MQ-25により海軍艦上航空部隊には革命的効果が現実のものとなり、将来の運用に変化が生まれる。同時にF/A-18E/Fスーパーホーネットを給油機任務から解放し、本来のミッションに投入し、機体の疲労度も軽減できる。

スティングレイ以外に今後登場する新機種や改良型がその他ミッションも引き継ぐはずで、情報収集偵察監視(ISR)もその一つだ。海軍は空母航空部隊の将来像として有人機無人機の併用を描いている。

ダックワース上院議員が公開した写真から少なくとも今はボーイングがMQ-25を給油機として開発を進めている様子がわかる。■


この記事は以下を再構成したものです。

Illinois Senator Tammy Duckworth saw the prototype fitted with the pod during a recent tour of a Boeing facility in her state.

BY JOSEPH TREVITHICKJULY 20, 2020

Contact the author: joe@thedrive.com

2020年7月23日木曜日

2030年のF-35はここまで性能強化される(はず)

ッキード・マーティF-35にはこれからの10年で以下が期待されている。

  • 世界各地で2千機超が供用され、さらに増える。機体販売単価、運航費用双方で第四世代機をわずかに上回る程度になれば販売に拍車がかかる。最新のブロック4仕様では現行型のコンピュータ処理能力の25倍になり、機内のデータ融合エンジンでアクティブ、パッシブ双方のセンサーのデータが有効活用可能となる。
  • コックピットの状況認識機能が向上し、パイロットは各種兵装を選択可能となる。ロッキード・マーティンAIM-260あるいはレイセオンAIM-120高性能中距離空対空ミサイル6本を機内搭載する、洋上標的攻撃に共用打撃ミサイル、新型長距離打撃ミサイルのスタンドイン攻撃兵器 (SiAW) を機外に搭載する。極超音速巡航ミサイルの外部搭載の可能性もある。ロット22機材がロッキード組立ラインを離れる2030年には新型空中発射回収式装備により探知能力が向上し、兵装搭載量もミッション内容により倍増する。
  • F-35の役割も制空攻撃任務から広がる。陸軍、海軍ともにF-35のセンサーデータで迎撃ミサイルを遠隔制御している。空軍の分散型指揮統制体制ではF-35の処理能力、センサーデータや通信能力で各ドメインで広範な攻撃効果を上げるのが狙いだ。F-35は空軍が通常使用する範囲を超えた役割を果たしそうだ。

U.S. Air Force F-35A
米空軍のF-35Aが5月にネリスAFBで飛行テストに供されたが、GBU-49レーザー誘導爆弾を搭載していた。性能改修でレイセオンGBU-53/Bストームブレイカーの運用が可能となる。Credit: Airman 1st Class Bryan Guthrie/U.S. Air Force

10年先といっても決して遠い先のことではなく、実現は大いに可能だろう。10年前のF-35は危機的状況にあった。飛行テストは2009年に停止され、サプライチェーンは混乱していいた。当時国防総省で調達・技術導入の責任者だったアシュトン・カーターは状況説明を受け事業中止を提案していた。

ロッキードはF-35の500機超を9か国に引き渡しずみで、さらに三カ国が導入を決めた。2022年にロット14生産が始まると機材単価は77.9百万ドルまで低下する。

ただし同機開発のこれからの10年では、初期と同様の苦しい状況が予想される。

F-35共用開発室(JPO)はブロック4追加改修策でハードウェア・ソフトウェア66点の改修が必要と把握し、2019年5月に議会に報告していた。まず改修8点が2019年中に実施の予定だったが、実現したのは自動地上衝突回避システム一点のみだった。フルモーションヴィデオ機能を海兵隊向けF-35Bに搭載する構想もハードウェア面で予定より遅れていると会計監査院(GAO)が報告している。

JPOではブロック4開発の迅速化対策も採用した。性能改修は4回の主要改訂で実現するべく、ブロック4.1、4.2、4.3、4.4と六か月間隔で性能向上をめざすとし、継続性能開発提供 Continuous Capability Development and Delivery (C2D2)と呼ぶ。ロッキードでは30P5ソフトウエア開発が今年第三四半期内に完成する予定だ。この後、30P6が2021年第一四半期に登場する。この迅速開発体制は遅延の影響を縮小するのが狙いで、従来は大型ソフトウエア改修が二年おきにリリースされ都度遅延が発生していた。だがC2D2がテストに入ると、新たな問題がみつかった。たとえばブロック4のソフトウェアコードでブロック3Fで問題なく作動した機能が「問題」になったとGAOは指摘している。

ブロック4で次の大型改訂は2023年の予定で、ブロック4.2では Technical Refresh 3 (TR-3)ハードウェアがはじめて扱えるようになる。ここでは新型統合コアプロセッサ、機内記憶装置、パノラマコックピット表示が含まれる。ブロック3i(2016年)以来初のコックピット内演算処理となるTR-3でセンサー能力は一気に向上し、とくにBAEシステムズ製ASQ-239電子戦装備の利用が注目される。

F-35 panoramic cockpit display
F-35ではパノラマコックピット表示に加え、TR-3で新型統合コアプロセッサが導入され、処理能力が一気に25倍に増強される。Credit: U.S. Air Force


ただしTR-3改修にも開発面で課題がある。JPOは2021年度に42百万ドルを追加投入しTR-3の「技術的複雑性」の打開を目指すとしている。

「ハードウェア-ソフトウェアをひとつにとらえた開発日程の課題にサプライヤー各社が苦労している。このためハードウェアの暫定発表によりリスクを減らしつつソフトウェアを並行開発する」と空軍は2021年度予算説明書で述べていた。

F-35の特定調達報告書selected acquisition report (SAR)最新版を国防総省は7月初めに公表し、TR-3について同様の記述があり、とくに新型プロセッサ用のゲートウェイで課題の複雑さのため追加支援がサプライヤー一社で必要となったためのコスト上昇に触れている。コアプロセッサと機内記憶装置の開発も遅延中と同SARにある。

TR-3を搭載したブロック4.2仕様が配備されればF-35のパッシブセンサー能力は大きく向上する。またこの性能向上でBAEの電子戦装備特にジャミング発生装置がラック2A、2Bを有するASQ-239で使用可能となる。主翼前縁部に搭載の帯域2、3、4向け受信機、また帯域5用受信機により低周波から超高周波に至る無線信号受信を可能とする向上策もBAEが検討している。TR-3の強力な処理能力が加わればF-35は未遭遇の信号に対しても有効なジャミングが可能となる。敵対勢力がソフトウェア依存の無線交信や周波数変更方式のレーダー装置に切り替える中で認知電子戦cognitive electronic warfareといわれる分野が重要性を増している。

現行日程のままならTR-3とブロック4.2改修はロット15機材で間に合う。ロッキードは機内兵装庫改修に取り組んでおり、レイセオンAIM-120ミサイル搭載量を6発に増やす。ロッキードのAIM-260が実用化されれば外寸が同じなため6発搭載できながら射程は大幅に伸びる。

兵装庫改修で空軍の新型SiAWミサイル運用も可能となる。これは海軍の高性能対放射線誘導ミサイル射程向上型に新弾頭をつけるものだ。イスラエル資金を導入し主翼に燃料タンクを追加すれば有効距離は25%増加する。ただし、これは機体のレーダー探知特性を重視しなくてもよいミッションの場合だ。

2020年代末までにF-35の運用実態は1990年代末の設計段階と大きく異なるはずだ。空軍のスカイボーグ事業は地上及び空中から発射する各種無人機開発で、自律飛行可能なウィングマンの実現を目指している。F-35パイロットにはスカイボーグ自律装備の運用技量の訓練を意味し、各種ミッションを実施させることにつながる。米空軍はF-35パイロットにスカイボーグを再利用可能装備として運用させたいとする。いいかえればいったん発射したミサイルを標的が無価値と判明すれば回収して再利用するのと同じだ。

20年前に設計陣が想定したF-35は当初予定より遅れ調達運用経費は上昇しととはいえ、実戦機材として利用可能となった。次の10年でJPOとロッキードは利用可能となった新たな性能を追加し、さらにスカイボーグやSiAWといった最新技術の導入も図る。F-35の歴史を特徴づけるのは過大な期待と開発期間中の低い実績だ。ブロック4開発が構想段階から現実に移行する中でこれまでの過ちの繰り返しは避けるべきだろう。

 

【これからどうなる】

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楽観視だと

  • 一時的に停滞したものの世界各国の防衛支出は拡大に戻り、ロッキードは4千機の販売に成功する
  • 懸念は残るもののロッキードはブロック4改修化を予定通り予算内で実現する

中立的見方

  • 各国の防衛支出は2040年まで増加せず、事業には逆風となる
  • ブロック4近代化改修は遅延し予算超過するものの調達に悪影響は出ない

悲観視すれば

  • 各国の国防支出は減少を長期間続け、戦闘機分野は1990年代同様の「調達閑散期」に入る。
  • TR-3リフレッシュとブロック4は大幅に遅れ、大幅予算超過で調達予算がさらに削減される。

この記事は以下を再構成したものです

 

Lengthy F-35 Upgrade List To Transform Strike Fighter's Future Role


Steve Trimble July 20、 2020