2022年10月17日月曜日

珠海航空ショー開幕前に今後登場する予想の中国新型機の動向を予想してみた

 

西安 Y-20輸送機 Credit: Steve Trimble/AW&ST

国軍にとって「戦略的・歴史的」の意義のある新型戦闘機が、7月の重要な飛行試験イベントを間近に控えていた

中国共産党が発行する日刊紙「環球時報」は、中国飛行試験施設の政治委員葛和平Ge Hepingの発言を引用し、節目の試験を達成するため一層の努力を部下に求めていると報じた。新型機の正体は確認されていない。

北京はこの20年間、戦闘機の分野で多くの進歩を遂げてきた。十数年前、成都J-20ステルス戦闘機は、高速タクシー試験で偽装されていた。西安Y-20輸送機の最初の画像は10年前に公開され、ハルビンZ-20ヘリコプターの初飛行は9年以上前だった。

  • H-20計画のタイミングは謎のまま

  • 珠海ショーに天宮宇宙ステーションのレプリカが登場か

珠海で11月8日に開催される「第14回中国国際航空宇宙展(Airshow China 2022)」だが、人民解放軍空軍の「20シリーズ」軍用機のうち、4番目、最後、おそらく最も興味深い機体となる西安H-20ステルス爆撃機の状況は不明のままだ。

 

成都J-20ステルス戦闘機。Credit: Steve Trimble/AW&ST

長距離戦略爆撃機の一般公開タイミングでの憶測は何年も前から出回っている。中国の軍事指導者の会議はPLAAFがそのような航空機を必要としていると2015年に結論づけた。2016年に当時のPLAAF司令官馬暁天大将Gen. Ma Xiaotianが、中国が新型爆撃機を開発中と公に認めた。製造元のAvicは、2018年5月のプロモーションビデオで、同機デビューが間近であると予告している。米軍は2020年の議会報告で、「先進爆撃機」がこの10年間は就役しない可能性があると述べつつ、プログラムの存在を認めている。

12月に予定されているノースロップ・グラマンのB-21レイダーのロールアウトは、エアショー・チャイナの1カ月後に行われ、PLAAFとAvicは米空軍の新ステルス爆撃機からスポットライトを奪う公の舞台を手にできる。

しかし、中国がこのチャンスを掴もうとしている証拠はほとんどない。7月の初飛行が近いことを示唆するコメントがあったももかかわらず、その間、H-20含むどのプログラムで何の確認も得られていない。

珠海エアショー・チャイナに先立つ9月27日の記者会見で、新たな憶測が飛び交った。中国のあるジャーナリストは、中国空軍の報道官沈錦科上級大佐Senior Col. Shen Jinkeに、「20シリーズ」の新機種が静態展示に登場する可能性があるか尋ねた。環球時報は、沈大佐が「長距離戦略輸送」の新たな成果として、観客が「これまで見たことのない」装備と展示すると答えたと報じている。

新型爆撃機が「戦略的輸送」が可能な長距離機として適格だが、他の選択肢もある。沈大佐のコメントは、西安Y-20Uを指していると解釈できる。中国国営メディアは7月に空中給油型Y-20Uを「公開」し、配備前訓練で戦闘機に給油している様子を見せた。同機は8月下旬に中国北東部の長春航空ショーで一般公開された。

航空ショーもまた、一般公開の場としてはありえない。Y-20のように、計画開始後2年以内に珠海ショーに登場した機体もある。しかし、ほとんどの中国軍用機は航空ショーへの登場前に写真公開されている。

例えば、J-20が珠海に初登場したのは2016年で、飛行試験に入って5年近く経っていた。PL-15ミサイルは2018年に珠海で公式発表されたが、最初の写真が登場して5年後だった。昨年、中国は瀋陽J-16D電子戦機を初めて披露した。2021年の珠海開催はCOVID-19の大流行で1年遅れたが、予定通り開催されていれば、同機も初飛行から5年後にデビューしていたことになる。

その代わりに、同イベントで中国の航空・宇宙産業全体の進展が明らかになる期待がある。中国政府は、約100トンの天宮宇宙ステーションの実物大レプリカを初展示すると決定している。

瀋陽WS-10。 Credit: Steve Trimble/AW&ST

 

注目される新型中国軍用機

H-20戦略爆撃機

米国の公式情報筋は、ステルス性を備えた全翼機計上の亜音速爆撃機が、2020年代末までに実用化されると予想している。製造元Avicは、このプロジェクトは2008年に正式に開始されたと述べているが、コンセプト開発は1990年代から始まっていたようだ。2016年11月には、当時のPLAAF司令官である馬大将が、長距離爆撃機が開発中と述べ、プログラムの存在を公式に認めた。それ以来、Avicはパンフレットや広告で機体の形状を予告し、ノースロップ・グラマンB-2に概ね似た形状の機体をベールで覆っていた。実際の機体形状は公表されていない。

JH-XX 戦術爆撃機

西安H-20を補完する、ステルス性のある超音速中型爆撃機として、長い間噂されていたコンセプトだ。公式に確認されていないが、2011年以降、JH-XXに関連する未確認のコンセプト画像が時折登場している。米国防情報局が発表した「2019 China Military Power」レポートで「戦闘爆撃機」開発プロジェクトが登場した。同レポートは、この爆撃機がアクティブ電子走査アレイレーダー、長距離空対空ミサイル、精密誘導弾を搭載すると記述しているが、出典や引用はない。

J-?? 次世代戦闘機

成都航空機研究設計研究所の主任設計者王海峰Wang Haifengは、2019年1月、西安の雑誌『Ordnance Industry Science Technology』のインタビューで、第6世代戦闘機は2035年より以前に就役すると述べた。そのような航空機は、改良型ステルス、適応型エンジン、レーザー兵器、極超音速ミサイルを搭載する可能性があると、王は付け加えた。中国の次期戦闘機が軽量J-10の後継機になるというアナリストもいるが、成都J-20の主任設計者である楊偉Yang Weiは、別のビジョンを提示している。中国の月刊誌「Acta Aeronautica et Astronautica Sinica」の2020年7月号で、楊は、次期戦闘機は現在の航空機より高いステルス性、耐久性、航続距離、武器搭載量が必要になると記している。また、次世代戦闘機は非常に大量の情報を収集するため、パイロットがデータを理解するための人工知能アルゴリズムが必要になると楊は述べています。

Y-19/Y-30戦術輸送機

1950年代後半のアントノフAn-12輸送機が原型の陝西Y-8/Y-9型輸送機の後継機として、様々なコンセプトが登場した。Y-19は、提案中のWJ-10エンジンをベースにした双発ターボプロップの後継機となる可能性がある。Avicは2014年の珠海航空ショーで、Y-30と呼ぶ13万ポンドの4発輸送機のコンセプトを披露している。■

 

China Teases New Bomber, But Timing Remains Unclear | Aviation Week Network

Steve Trimble October 13, 2022

 

 

Steve Trimble

Steve covers military aviation, missiles and space for the Aviation Week Network, based in Washington DC.


2022年10月16日日曜日

ウクライナの次の勝利はケルソンか。ウクライナ戦の最新状況(10月15日現在)

 

Photo by Metin Aktas/Anadolu Agency via Getty Images.


ウクライナ軍は南方攻勢の一環で、ケルソンのロシア軍の遮断をめざしている

 

クライナ軍がケルソン州で再び動き出し、激しい戦闘と様々な段階のパニックがロシアのテレグラムチャンネルで報告されている。

報道によると、ロシア軍を捕捉するため、ドニプロ川西岸で攻勢が続いており、渡河に向け急速に作戦を展開している。

ケルソンのロシア軍陣地は弱体化しており、西側当局者にはケルソンが1週間以内に解放されると考える者さえいる。ウクライナの攻勢が川岸まで続けば、ケルソン市内に入る前に、よく標的になるノヴァ・カホフカ橋とアントニフスキー橋の両方を奪取するか、遮断できる。ロシア軍がケルソンに残る間に両橋を奪取すれば、大規模な包囲網を築くことができる。

ロシア軍は伸び切った前線を維持するか、市街地から川を渡り退却するかの選択を迫られる。包囲される見通しで、ロシア軍事ブロガーやロシア占領当局者をパニックに陥れているようだ。

また、ウクライナ軍が迫っているため、降伏という選択肢もある。ケルソン州でロシア兵が降伏している映像が入ってきた。ウクライナ軍が押し寄せ、急遽動員されたロシア兵が前線に投入される中、緊張したやりとりが一般的になっている。

10月8日のケルチ海峡橋の攻撃以降、ロシア部隊への供給状況は不安定なままだ。悪天候のためフェリー運航が停止し、橋の修理も数カ月かかるというから、事態はすぐに好転しない。

最新情報

戦争研究所による最新の支配地図と、英国国防省の最新情報を伝える。

ロシア軍がベラルーシへ ロシア軍はベラルーシに到着し、モスクワの地域グループの一員の同国に駐留している。MotolkoHelpからの報告によると、ロシア軍はウクライナとの国境付近ではなく、ベラルーシの北部と西部の3つの鉄道駅に到着したようだ。。

しかし、ロシア軍がモスクワのクライアント国家に向かう中、ベラルーシ戦車はロシアに向かっている。ベラルーシのオルシャでこれらの鉄道車両に見られるT-72は、ウクライナの前線で損失が続くロシアの代替に向かうと考えられている。ロシアは機能する装甲車両を求めるている。例えば、数十年前の冷戦時代のT-62戦車数百両を復元し、アップグレードする構想が現在進行中だが、完成するまで何年もかかるという。

こうした動きとは裏腹に、ウクライナのチェルニヒフ市と国境を接する南東部のゴメル市に、ロシア軍が集結しているとの情報もある。ウクライナは、2月にロシアがベラルーシから多方面への侵攻を演出して以来、ベラルーシの正式な参戦を懸念してきた。しかし、いかなる攻撃も、ケルソンで悪化するロシア軍の状況に圧力をかける陽動作戦である可能性がある。

イーロン・マスクが主張を撤回か イーロン・マスクの土曜日のツイートを信じるなら、ウクライナ向けのスターリンク衛星インターネットサービスに関する武勇伝は終わるかもしれない。スペースXが先月、国防総省に、戦争が始まって以来行ってきたウクライナ向けのスターリンク無料サービスは続けられないと書簡を送ったとの報道が出た数日後に、マスクは「もういいや...スターリンクがまだ赤字で他の会社が何十億ドルも税金で得ているのに、ウクライナ政府にただで資金提供を続けるよ」とつぶやいたのである。

衛星インターネットの大失敗は、今月初め、マスクが「平和計画」をツイートし、ウクライナと支援者からただちに批判を浴びたことから始まった。スターリンク故障の報告が加わり、ネットワークのサービスが疑われるようになった。

ドンバスでは塹壕戦? ロシアが得たとされる唯一の成果は、ドンバス地方の都市バフムート付近だ。前線の映像は、数カ月にわたりロシア軍に包囲された塹壕線の黙示録的な光景を映し出している。

数ヶ月(あるいは数年)にわたる攻撃で、人、機械、大地が受けたダメージの大きさは、第一次世界大戦の塹壕戦の恐怖を思い起こさせる。

ルハンスクのロシア軍は、塹壕やコンクリートの戦車トラップなど防御線を構築しており、先月行われたウクライナの機械化の成功が拍車をかけたとみられる。

ロシアの動員は裏目に ロシアの「部分的」な動員は、国内を混乱させたにもかかわらず、人事上の問題や戦場での収穫がほとんどないため、まだ梨の礫のような状態である。ロシアのテレグラムのアカウントによると、動員部隊は、専門に関係なく、手に入る人なら何でも取っている。動員された人々は、戦闘技術を学ぶために、YouTubeを利用していると伝えられている。

ロシア南部では、かなりの数の動員された兵士が、動員証に正しいスタンプが押されていないという理由で入隊を拒否されているようだ。その結果、基地の門前で立ち往生し、森の中で野宿を余儀なくされる徴募兵が大量に発生している。

ところで、ロシアの著名な軍事ブロガー、イゴール・ギルキンは、キーボードをライフル銃に持ち替えたようだ。ロシアのテレグラム・チャンネルは、2014年のロシアのクリミア併合とドンバス分離主義政権の中心人物であるギルキンが、志願兵部隊で戦闘に向かうと主張している。ギルキンの配備が報じられたことで、ウクライナには生きたままの本人捕獲に懸賞金5万ドルをかけるとの声があり、金額は拡大している。

徴兵から最前線に行き、その後ウクライナ軍に死亡または捕虜となるまでの時間は、ロシア軍に動員された者にとっては依然として短い。モスクワ・タイムズ紙は、動員されて2週間で戦死した者を報じている。

ロシア国内で混乱続く 極東のウラジオストク郊外の町で徴兵官が絞首刑に処されるなど、ロシアでは動員をめぐりかなりの動揺が続いている。また、北コーカサスのチェルケスク市では徴兵事務所が焼失した。

また、ベルゴロド州のロシア軍基地で銃撃戦があったという。ロシア国防省は、「CIS諸国から来た」2人の銃撃犯が死亡し、11人の軍人が死亡、さらに15人が負傷したと発表した。犯人や犠牲者が動員されたロシア軍に属していたかどうかは、すぐには判明していない。

ロシアのドローン攻撃に対応するウ空軍 ウクライナ空軍は依然活発で、ウクライナのSu-27フランカーが低空で機動する映像が2本あり、航空戦はまだ争われている。

しかし、ロシアのドローンと滞空弾は、依然としてウクライナを脅かしている。ランセット-2の滞空弾は、未知の携帯型防空システム(MANPADS)による迎撃の試みにもかかわらず、前線のはるか後方で貴重なウクライナ製S-300 SAM発射機のペアに命中した。

ウクライナにとって、無人機の脅威はさらに深刻になる可能性がある。イランが近々、攻撃型無人機「ARASH-2」をロシアに送り込むとの報道がある。無人機というより巡航ミサイルに近いこのタイプは、9月に公開された際、「テルアビブやハイファ」を攻撃するため設計されたとイランは主張していた。また、イランの無人機納入に関して、EUが直ちに制裁することはないだろう。

ロシアが9月にイラン製無人機を採用して以来、ウクライナの防空設備と戦闘機がイラン製無人機を追いかけている。ウクライナ国防省は、10月12日に5機のシャヘド-136ドローンと1組の巡航ミサイルを撃墜してから墜落したとされるVadymという名のMiG-29パイロットの写真をツイートした。

各国のウクライナ支援装備品の動向 ウクライナへの援助として、ドイツの対空砲ゲパルトがウクライナで使用されている映像も出てきた。映像ではゲパルトのレーダーが作動している様子や、35mm径のエリコン製オートキャノンを発射する様子は見られないが、ドローンや巡航ミサイルによる継続的な攻撃で、おそらく元は取っているのだろう。

また、ウクライナ軍がスウェーデンの90mm無反動砲Pansarvärnspjäs 1110 (Pvpj 1110)をロシア軍ターゲットに使用する様子も見ることができる。

サウジアラビアは、ウクライナに4億ドルの人道支援を約束したと伝えられている。リヤドは、先週のOPEC+の減産決定で米国を怒らせたが、捕虜交換を仲介し、援助を提供している。

最後に、冷戦時代の装甲車ファンのために、ウクライナ軍で使用されている元イギリス軍のフェレットMk1スカウトカーを紹介したい。このモデルはイタリア製のMG42/59バズソーのチャンバーが7.62x51mm NATO仕様である。フェレットは8月にウクライナで初めて発見されたが、運用されているのを見たのはこれが初めて。

ロシアのとんでも報道 ロシア国営放送のコメンテーターがまたやってくれた。今回は、ウクライナに関する交渉を強要するために、アメリカの敵に武器を拡散させるという銀河系的なアイデアで、世界各地の米軍基地を破壊し、米国に停戦交渉を求めるというものだ。■

 

Ukraine Situation Report: Noose Tightens Around Russian-Occupied Kherson

BYSTETSON PAYNE|PUBLISHED OCT 15, 2022 6:06 PM

THE WAR ZONE

 


ロシア軍訓練場で銃撃戦が発生、新兵十数名が死亡。ロシアで何が起こっているのか

 



2022年9月27日、クリミアのセヴァストポリで行われた出発式に出席した徴兵予備兵。- ロシアのプーチン大統領は9月21日、ウクライナ戦でロシア軍を強化するため、数十万人のロシア人男性の動員を発表し、デモと男性の海外脱出を呼び起こした。(Photo by STRINGER / AFP)(Photo by STRINGER/AFP via Getty Images)

 

ロシア軍内部での暴力行為で最大規模になった

 

 

シア南西部の軍事施設で兵士2名が内部で攻撃したと見られ、少なくとも11人が死亡、15人が負傷した。

 

攻撃は今日未明、ウクライナへの出撃に備える射撃訓練中に行われた。ベルゴロドで訓練することになっていた2人は、同僚に発砲した。両名は射殺されるまでに10人近くを殺害した。現場に兵士が何人いたのか、銃撃がどのくらい続いたのかは不明だ。

 「10月15日、CIS(独立国家共同体)諸国の市民2名が、ベルゴロド州西部軍管区の訓練場でテロ行為を行った」と、ロシア国防省は本日、記者団に語った。

 ロシア国営通信社タスによると、法執行機関が銃撃事件を調査中。負傷した15人は近くの病院に運ばれた。

 ロシアのメディアと国防省は、犯人をテロリストと呼んだが、AP通信は「旧ソビエト国家」の志願兵と特定している。今日の銃撃の実行犯が、加盟9ヶ国のどの国の出身だったは不明。ベルゴロド州はウクライナ北東部に接し、ここ数日、ウクライナによる攻撃と見られる爆発が続いている。

 2月にウクライナ侵攻が始まって以来、ロシア軍による初の内部銃撃事件と見られ、ロシア軍による死傷事件の一つとなった。

 この攻撃は、プーチン大統領が侵略軍を強化するため予備兵22万人を動員し、30万人の新兵を獲得したロシア軍で発生した最新の内部暴力行為だ。9月下旬には、25歳の男が動員に抗議してシベリアの入隊事務所で募集担当者を銃撃した。軍の入隊用建物も放火された。また、ロシアの各都市で抗議デモが行われ、1万人以上の大量逮捕につながり、抗議者に警察の暴力を加えた。

 ロシアは、ウクライナ北東部で挫折を味わっているにもかかわらず、戦闘の勢いを取り戻そうと、最小限の訓練で招集した部隊をウクライナに送り込んでいる。ウクライナはハリコフ地方を急速に奪還し、ロシア軍を追い返すだけでなく、ロシア軍戦車数台を捕獲した。

 報道によれば、新兵は訓練が不十分で、軍は予備役の経験に頼り、すぐにウクライナに派遣して戦わせている。■

11 dead, 15 wounded in apparent insider attack at Russian training site


BY NICHOLAS SLAYTON | PUBLISHED OCT 15, 2022 6:05 PM

 

 


スターシップトルーパーズ 第8章 少年の非行問題へのハインラインの解答

 

第8章

 

子供はその行く道に沿って育てよ。さすれば、年をとっても、そこから離れることはない。- 箴言XXII:6 


鞭打ちは他にもあったが、ごくわずかだった。ヘンドリックはおれたちの連隊で唯一、軍法会議の判決で鞭打たれた男だった。他はおれのような行政処分で、鞭打ちのため連隊長まで行く必要があったし、控えめに言っても、司令官は嫌がる。それでもマロイ少佐は、鞭打ち台を建てるより、「望ましからぬ除隊」として放逐する方がずっと多かった。ある意味、行政処分の鞭打ちは最も軽い種類の褒め言葉だ。それは、今はまだないが、いずれ兵士として、また市民としてやっていける人格を備える可能性がまだあると、上官が考えているということなのだ。行政処分で最高刑を受けたのはおれだけで、誰も3回以上の鞭打ちを受けなかった。おれほどに近づいた者はいなかったが、これは一種の社会的区別だ。おれはそれを勧めない。

 しかし、おれやテッド・ヘンドリックの事件よりもずっとひどい、本当に病気になりそうな事件が起きた。絞首台が設置されたこともあった。はっきり言っておく。この事件は軍とは何の関係もない。犯罪はキャンプ・カリーで発生していない。この少年をM.I.に引き入れた担当者は、自分のスーツを差し出すべきだ。こいつは脱走したんだ。カリーに到着してたった2日だった。ばかげた話だが、この事件は何もかもが不可解だった。なぜこいつは除隊しなかったのだろう?脱走は当然、「三十一の不時着」の一つだが、軍は「敵に直面した」とか、極めて非公式な除隊の仕方から無視できないものに変わるような特別な事情がない限り、死刑を発動することはない。軍は脱走兵を発見して連れ戻そうとしない。これが一番納得がいかない。おれたちは皆、志願兵だ。そうなりたいから入隊し、入隊したことを誇りに思う。もし、そう思わない男がいたら、そのタコ足から毛深い耳まで、トラブルが起きた時にはおれの脇にいて欲しくない。M.I.だから、おれの肌は自分の肌と同じように大切だと、おれを拾ってくれる男が周りにいてほしい。エセ兵士はいらない。尻尾を巻いて逃げ出すような奴は嫌だ。「徴兵制」に縛られた兵士より白紙のファイルの方がずっと安全だから、逃げたいなら逃げさせればよい。捕まえるのは時間と金の無駄だ。何年かかっても、ほとんどの兵士は戻ってくる。その場合、軍は疲れ果てており、吊るし上げる代わりに50回鞭打し、解放してしまう。警察が探さなくても、市民か合法的な居住者になれるのに、逃亡者になると神経をすり減らすに違いないと思う。「悪人は追わずとも逃げ去る」。自首して罰を受け、また楽に息が出来る誘惑に押しつぶされそうになるはずだ。でもこいつは自首しなかった。4ヶ月間いなかったが、もともと数日しかいなかったので、彼の隊が顔を覚えていたか疑わしい。おそらく顔のない名前にすぎず、朝の招集で無届欠勤として毎日報告する「デリンジャー、N・L」だった。 そして、女児を殺害した。地元の裁判所で裁かれ、有罪判決を受けたが、身分証明書を調べ、未放免の兵士と判明したため、政府へ通知する必要があり、すぐ司令官が介入した。軍法と司法権は民法より優先されるので、こいつはおれたちのもとに戻ってきた。なぜ、将軍を面倒に巻き込んだのか?

 なぜ、地元の保安官に仕事をさせなかったのか?おれたちに教訓を与えるため?とんでもない。将軍は女児を殺さないために部下が吐き気をもよおす必要があるとは考えていなかったはずだ。可能であれば、将軍は我々にその光景を見せなくてもよかったと、今から見ればおれは思う。当時は誰も口にしなかったが、おれたちは教訓を得たのだ。M.I.は仲間を大事にする。何があっても。デリンジャーは我々の物だ まだ名簿に載っているし、たとえ彼を欲しくなくても 彼を持つべきでなかったとしても、 おれたちが彼を拒絶しても あいつはおれたちの連隊の一員だったんだ。 遠く離れた保安官に任せておくわけにはいかない。必要なら、男なら、本物の男なら、自分の犬は自分で撃つもので、下手な代理人を雇ったりはしない。連隊の記録では、デリンジャーはおれたちの一員で、世話はおれたちの義務だった。その夜 おれたちは行進したが、ゆっくりとした行進で 1分間60回(140回に慣れると歩くのが大変だ)で、バンドが「Dirge for the Unmourned」を演奏した。そしてデリンジャーは、おれたちと同じようにM.I.の正装で行進し、バンドは「ダニー・ディーバー」を演奏しながら、ボタンや帽子まであらゆる記章を剥ぎ取り、もはや制服とは言えないマルーンとライトブルーのスーツ姿にした。ドラムがロールを保持し、すべて終わった。おれたちは閲兵式を終え、早足で戻ったが、気絶した者はいなかったと思うし、体調を崩した者もいなかったと思う。悲惨ではあったけれど(おれもほとんども人の死を見るのは初めてだった)、テッド・ヘンドリックの鞭打ちの衝撃はなかった。つまり、デリンジャーの立場になって考えることはできなかったし、「自分だったかもしれない」という感覚もなかった。「自分がやったかもしれない」という感覚を持てなかったんだ。もし被害者が生きていたとしても、誘拐、身代金要求、犯罪の放置など、他の3つのうちのどれかでダニー・ディーバーと踊っていただろう。おれは全く同情しなかったし、今でもそう思っている。

 「すべてを理解することは、すべてを許すことだ」という古い言葉は、たわいのないものだ。理解すればするほど嫌いになるものもある。おれが同情するのは、一度も会ったことのないバーバラ・アン・エンスウェイトと、もう二度と娘に会えない両親だけだ。

 その夜、バンドが楽器を片付けると、バーバラのため喪に服し、不名誉な30日間が始まった。隊旗は黒く覆われ、パレードでは音楽がなく、ルートマーチで歌えない。一度だけ、誰か文句を言ったのを聞いた。確かに、おれたちのせいではない。しかし、おれたちの仕事は小さな女の子を守ることであって、殺すことではない。おれたちの連隊は名誉を傷つけられた。おれたちは名誉を傷つけられたし、名誉を失ったと感じた。その夜、おれはどうすればこのようなことが起こらないようにできるかを考えてみた。

 もちろん、いまどきそんなことはないのだが、1回でも「多すぎる」。おれは納得のいく答えにたどり着けなかった。このデリンジャーは、見た目は普通人と変わらないし、行動も記録もそれほど変ではなく、そもそもカリーに来ることもなかったはずだ。本で読むような病的な性格の持ち主で、見分ける方法はないのだろう。一度だけならともかく、二度目はない。おれたちが使った方法だ。デリンジャーが自分のしていることを理解していていたなら(信じられないことだが)、バーバラ・アンと同じように苦しまなかったのは残念に思えるが、事実上全く苦しんでいない。しかし、もっとありそうなことだが、あまりにも狂っていて、自分が何か悪いことをしていることに全く気づかなかったとしたら?狂犬を射殺するのか?しかし、そのように狂っているということは病気なのだ。おれには二つの可能性しか考えられなかった。治らない--その場合は、彼自身のためにも他人の安全のためにも死んだほうがいい--あるいは、治療して正気に戻すことができるか。後者の場合(おれにはそう思えた)、もし文明社会で十分正気を取り戻し、「病気」である間に自分がしたことを考えれば、自殺以外に何が残されているだろうか?彼はどうやって自分自身と折り合いをつけて生きていくのだろう?そして、もし治る前に脱走して、また同じことをしたら?また同じことをするか?遺された両親にどう説明する?本人の記録から見たら?答えは一つしかない。歴史と道徳の授業で、議論したときのことだ。デュボア先生は、20世紀、北米共和制崩壊前の混乱について話していた。デリンジャーのような犯罪が、ドッグファイトのように普通に行われていた時代が、崩壊直前にあったという。テロは北米だけでなく、ロシアやイギリス諸島にもあった。しかし、北米でピークに達したのは、事態が収拾する少し前であった。 デュボア先生は、「遵法精神に富む人々は、夜の公園に入る勇気がなかった。鎖、ナイフ、手製の銃、鉄砲などで武装した子供の群れに襲われる危険があるからだ。少なくとも怪我をし、泥棒に入られ、おそらく一生残る怪我をするか、殺されるかもしれない。これが、露英同盟と中国覇権主義との間の戦争に至るまで、何年も続いた。殺人、麻薬中毒、窃盗、暴行、破壊行為などは日常茶飯事だった。公園だけでなく、日中の路上や学校の校庭、校舎内でもこうしたことは起きていた。しかし、公園はあまりにも治安が悪いので、まっとうな人は日が暮れたら近づかないようにしていた」。

 学校でおれは、このようなことが起こっていたと想像してみた。しかし、不可能だった。公園は楽しむところであって、怪我をするところではない。公園で殺されるなんて......「デュボア先生、警察とか裁判所とかなかったんですか?裁判所も」

 「いまよりずっと多くの警察官がいた。裁判所も。みんな過労気味だった」

 「理解できないません」

 もし、この街の少年がその半分でも悪いことをしたら...彼と彼の父親は並んで鞭打たれる。だが、そんなことは起きなかった。そしてデュボア先生はおれにこう要求した。

 「非行少年の定義は何だ?」

 「ええと、人を殴った子供」

 「違う」 

 「え?教科書にそう書いてあります」

 「非行少年とは言葉の矛盾であり、彼らの問題と解決の失敗の手がかりを生んでいる。子犬を育てたことがあるか?」

  「はい、あります」

 「飼いならせたか?」

 「 えー...はい、先生。最終的には」

  おれが鈍感なせいで、母は犬は家の中に入れないといけないという規則を作った。

 「子犬がなにかしでかして怒ったか?」

 「え?なぜですか?まだ子犬だからよくわからなかったんです」。

 「何をした」 

 「叱って、鼻をこすりつけて、叩きました」

 「君の言葉を理解できなかったのでは?」

 「はい、でもおれが怒っているのを伝えました!」

 「でも、さっきは怒ってないって言ったじゃないか」 デュボア先生は人を混乱させるのが得意なんだ。

 「いいえ、でもそう思わせる必要があったんです。学ばせたかったんです」

 「そうだな。しかし、君が反対していることをはっきりさせたのに、どうして叩くなんて残酷なことができるんだ?君は、かわいそうな獣は自分が悪いことをしたことを知らない、と言った。それなのに、君は苦痛を与えた。自分を正当化するのか?それともサディストなのか?」おれはサディストという言葉を知らなかったが、子犬のことは知っていた。

 「デュボア先生、そうしなければならないんです! 叱って、自分が困っていると分からせ、鼻をこすりつけて、どんなに困ったかを分からせ、二度とやらないように鞭打つのです。そして、それをすぐに実行しなければなりません!後で彼を罰することは少しも良いことはありません、あなたは彼を混乱させるだけです。それでも、彼は1回の教訓から学ばないので、見ていて、もう一度捕まえ、さらに強く叩きます。そうすれば、すぐ学ぶでしょう。でも、叱るだけじゃ息が詰まります」。そして、「先生は子犬を育てたことがないんでしょう」と付け加えた。

 「あるよ。今ダックスフントを育てている。話を少年犯罪に戻そう。最も凶悪なのは、この教室にいる君たちよりやや若い年齢で、無法なキャリアを若いうちから始めていることが多い。その子犬のことを決して忘れてはならない。この子たちはよく捕まった。警察は毎日何人も逮捕していたものだ。そう、厳しく叱られた。鼻であしらわれた?めったにない。報道機関や役人は名前を秘密にするのが普通だった。お仕置きを受けたか?ない。スパンキングや痛みを伴う罰は、子供に永久的な精神的ダメージを与えるという考えが広まっていたんだ」「学校での体罰は法律で禁じられていた」「鞭打ちはデラウェア州という小さな州でのみ合法であり、そこでは少数の犯罪に対してのみ適用され、めったに発動されることはなかったんだ」。

 デュボア先生は、「『残酷で異常な』刑罰に反対するとは理解に苦しむ」と声を詰まらせた。「裁判官は善良であるべきだが、裁きは犯罪者に苦痛を与えるべきであり、そうでなければ罰にならない。苦痛は、何百万年もの進化によって人間に組み込まれ、我々の生存を脅かすときに警告し我々を保護する基本的なメカニズムなんだ」。

 そんな完成度の高い生存メカニズムを、なぜ社会が拒まなければならないのか。しかし、その時代は科学以前の似非心理学的なナンセンスが満載だった。「異常」については、罰は異常でなければならないし、そうでなければ目的を果たさない。そして、先生は自分の切り株を別の少年に向けた。「もし子犬が1時間ごとにお尻を叩かれたらどうなる?」 

 「ええと...おそらく気が狂ってしまうでしょう!」

 「たぶんね。きっとそうだろう。そんなことしても、何も身につかない。ここの校長が最後に生徒を入れ替えたのは何年前か?」

 「ええと、よくわかりません。2年ぐらいかな。あの子は...」

 「気にしないでいい。十分長い。つまり、そのような罰は、重要であり、抑止力であり、指示であるように、とても珍しい。若い犯罪者たちは、おそらく赤ちゃんのときにお尻を叩かれたり、鞭で打たれたりしていないはずだ。初犯だと警告と叱責、多くは裁判なし、というのが通常の流れだった。何度か罪を犯すと、監禁刑に処されるが、刑執行が停止され、若者は保護観察になる。少年は何度も逮捕され、何度も有罪判決を受ける。そして、それは単なる監禁であり、同じような者たちと一緒にいて、犯罪の習慣をさらに学ぶことになる。拘置中に大きな問題を起こさなければ、たいていは軽い罰さえ逃れて、保護観察、つまり当時の専門用語で言う『仮釈放』を受けることができる。こんなことが何年も続くと、犯罪の頻度と悪質さが増し、まれに鈍いながらも快適な監禁を除き何の罰も受けなくなる。そして突然、通常は18歳の誕生日に、この『非行少年』は成人犯罪者となり、時には数週間から数ヶ月のうちに、殺人罪で死刑執行待ちの監獄に入れられる。子犬をただ叱るだけで、罰を与えず、家の中を散らかし放題にし、時には外の建物に閉じ込め、二度と同じことをしないように警告してすぐに家の中に戻したとする。そしてある日、その子が成犬になったのにまだ飼いならせていないことに気づき、銃を取り出しその子を撃ち殺すのだ。いいたいことはあるか」

 「どうして...そんな犬の育て方なんて聞いたことがありません!」

 「おれもそう思う。誰のせいだと思う?」

 「ええと...なぜかというと、おれかな」

 「またしても同意だ。しかし、自分で推測していない」

 「デュボア先生」女生徒がぼやいた。「でもどうしてですか?なぜ、小さな子供に必要なときにお尻を叩き、年配の子供にストラップを使わなかったのでしょう。つまり、本当に悪いことをした人たちです。なぜいけないの?」

 「社会的な美徳と法の尊重を若い人たちの心に植え付けるという昔からある方法が、『ソーシャルワーカー』や時には『児童心理学者』を名乗る前科学的な似非専門家階級にアピールしなかったということ以外、わからん」と先生は不機嫌そうに答えた。「子犬のしつけに必要な忍耐力と毅然とした態度で、誰にでもできることだからだ。しかし、それはありえない。大人は、どんな行動であれ、ほとんど常に『最高の動機』を意識して行動している」。

 「でも......なんということでしょう!」少女は答えた。「わたしはお尻を叩かれるのがどの子よりも好きではありませんでした。でも、必要なときにはママが叱ってくれました。学校で怒られたのは家に帰ってからだったけど、もう何年も前のことです。わたしは裁判官の前に引き出されて鞭打ち刑に処せられたいとは思いません。命の危険を感じて外を歩けなくなるよりずっといい」。

「そうだね。お嬢さん、当時の善意ある人たちがやったことの悲劇的な間違いは、考えていたこととの対比で、とても深いものがある。彼らにはモラルの科学的理論がなかった。しかし、その理論が誤っていたのだ。半分は漠然とした希望的観測で、半分は合理化された戯言だった。真面目にやればやるほど、迷走する。人間に道徳的な本能があると思い込んでいたのだ」

 「先生、でも...」

 「違うんだ、君には最も注意深く訓練された良心があるが人間に道徳的な本能などいうものはない。道徳的な感覚を生まれつき誰も持っているわけではない。君にもおれにもなかったし、子犬にもない。われわれは、訓練、経験、懸命な心の汗によって、道徳的な感覚を身につける。この不幸な犯罪少年たちは、きみやおれと同じように、生まれつき何も持っていなかったし、身につけるチャンスもなかった。道徳心とは何か?それは、生き残るための本能の精華だ。生存本能は人間の本性そのものであり、人格のあらゆる側面がそこから派生している。生存本能に反するものは、遅かれ早かれ、その個体を排除するように作用し、それによって後世に現れることはない。この真実は、数学的に証明でき、検証可能で、われわれの行動すべてを支配する唯一の永遠の命令だ。しかし、生存本能は、個々人の生きていたいという盲目的な衝動より、もっと繊細でずっと複雑な動機に培われることがある。

 「お嬢さん、あなたが『道徳的な本能』だと誤解しているのは、生存には自分自身の生存よりももっと強い要求がある真実を、年長者があなたに教え込んだからなんだ。

 「例えば、家族の存続。子供たちがいれば、その子供たちの。もし、あなたがそこまで苦労しているなら、あなたの国のために。といった具合に。科学的に検証可能なモラルの理論は、生存しようとする個人の本能に根ざしたものでなければならない。そして、生存の階層を正しく記述し、各階層で動機に注目し、すべての対立を解決しなければならない。

 「われわれには今、その理論がある。われわれは、どんなレベルのどんな道徳的な問題も解決できる。私利私欲、家族愛、国への義務、人類への責任など、対外関係についても正確な倫理を開発しつつある。しかし、すべての道徳的問題は『子猫を守るため死んでいく母猫より大きな愛はない』という誤訳で説明できる。猫が直面している問題と、その猫がどのように解決したかを理解すれば、次に自分自身を検証し、自分がどれだけ高い道徳の梯子を登れるかを知る準備ができる。

「少年犯罪者たちは低レベルに当たる。生存本能だけをもって生まれ、彼らが達成した最高の道徳は、仲間集団であるストリートギャングへの揺るぎない忠誠心だった。しかし、慈善家たちは『彼らのよりよい本性に訴え』、『彼らの心に届き』、『彼らの道徳心に火をつけ』ようとしたのだ。経験上、自分たちのしていることが生き残るための方法なのだ。子犬はお尻を叩かれたことがない。だから、彼が喜び、成功したことは『道徳的』でなければならない。すべての道徳の基礎は義務であり、自己利益が個人に対して持っているのと同じ関係を、集団に対して持つ概念である。誰もこの子たちに、彼らが理解できるような方法で、つまりお仕置きで義務を説かなかった。しかし、彼らがいた社会は、『権利』について延々と語り続けていた。

「人間には自然権もないのだから、結果は予想できたはずだ」。

 デュボア先生がポーズをとった。誰かが囮になった。 「生命、自由、幸福の追求 はどうですか」

 「ああ、そうだ。『譲ることのできない権利』だね。毎年、誰かがその壮大な詩を引用している。生命?太平洋で溺れている人に命の『権利』があるだろうか。海は彼の叫び声に耳を傾けない。自分の子供を救うため死ななければならない人に、命に対するどんな『権利』があるだろうか?もしそいつが自分の命を救うことを選択したら、それは『権利』の問題としてそうするだろうか?二人の男が飢えていて、共食いが死に代わる唯一の方法だったら、どちらの男の権利が『不可侵』なのだろうか?そして、それは『権利』だろうか?自由に関しては、その偉大な文書に署名した英雄たちは、命をかけて自由を買うと誓った。自由は決して不可侵ではない。愛国者の血で定期的に償還されなければならないし、そうでなければ、消滅してしまう。これまでに発明されたいわゆる『自然権』の中で、自由は最も安価なものであり、決して無償ではない。第三の『権利』?『幸福の追求』?それは確かに不可侵だが、権利ではない。それは単に、暴君が奪うことも愛国者が回復することもできない普遍的な条件だ。おれを地下牢に閉じ込めても、火あぶりにしても、王様の王にしても、おれの脳が生きている限り『幸福の追求』は可能だ」。

 デュボア先生は、次におれの方を向いた。「非行少年は矛盾したことばだと言ったよね。非行とは『義務を果たさない』という意味だ。しかし、義務は大人の美徳だ。実際、少年が大人になるのは、義務を知り、それを生まれつきの自己愛より大切なものとして受け入れるときだけだ。非行少年など存在しなかったし、存在し得ない。

 「しかし、少年犯罪者には必ず一人以上の成人した非行少年たちがいる。そしてそれが、素晴らしい文化を破壊してしまった。街を闊歩するチンピラたちは、もっと大きな病の症状だった。市民(当時は全員がそうカウントされていた)は『権利』の神話を美化し...義務を見失った。このような国家では耐えられない」。デュボア大佐ならデリンジャーをどう分類するだろうか。少年犯罪者か、それとも大人の非行少年か。それとも軽蔑に値する大人の不良か?おれにはわからなかったし、知る由もない。ただひとつ確かなのは、あいつが二度と少女を殺さないということだ。それでいいんだ。 おれは眠りについた。(第8章終わり)



インド国産SSBNアリハントがミサイル発射に成功した。インドのめざす核抑止力戦略の大きな柱だが、規模や戦力は西側大国と異なる

 



アリハントクラスの写真は非常に少ないが、衛星画像の解析と数少ない写真から、内部の配置がある程度わかる。


INSアリハントArihantは2022年10月14日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射に成功した



インド国防省(MoD)は声明で以下発表した。

「ミサイルは所定の距離までテストされ、非常に高い精度でベンガル湾の目標地域に衝突した。兵器システムの運用および技術的なパラメータをすべて検証できた」。

 インド国防省は、INSアリハントによるSLBM発射の成功は、乗組員の能力を証明し、インドの核抑止力の重要な要素であるSSBN計画を検証するために重要である、と付け加えている。堅牢で生存可能かつ確実な報復能力は、インドの「先制不使用」を支える「信頼できる最小限の抑止力」政策に沿ったものである。

 今回の実験で使用されたSLBMの正確な型式は明らかにされていない。K-15「Sagarika」またはK-4ミサイルである可能性がある。K-15は1000kgの弾頭を約400海里飛ばすことができる。アリハントには12基が配備可能だ。しかし、同ミサイルは暫定的な解決策と見なされている。 新型K-4はフルサイズのSLBMで、射程距離は約1,900海里で、K-15の約4倍と予想されている。

 しかし、今回事前に出たNOTAMの対象範囲が広いことから、テストミサイルはK-15の可能性が高い。


Indian SSBN INS ArihantIndian SSBN INS Arihant



INSアリハントについて

インドのアリハント級弾道ミサイル潜水艦(SSBN)ほど、写真に撮られていない潜水艦はない。一番艦のINSアリハント(S2)は2016年就役し、今年に2番艦INSアリガット(S3)が就役する予定だ。

 アリハントは、「ポケットブーマー」とも言えるユニークな設計で他の弾道ミサイル潜水艦(北朝鮮の通常動力船を除く)と比べても、はるかに小型だ。船体は短く、薄く、ミサイルサイロは4基しかない■


Indian SSBN INS Arihant Fires Submarine Launched Ballistic Missile - Naval News

 

Posted by : Xavier Vavasseur

 14 Oct 2022

 

Xavier is based in Paris, France. He holds a Bachelor’s degree in Management Information Systems and a Master of Business Administration from Florida Institute of Technology (FIT). Xavier has been covering naval defense topics for nearly a decade.


ロシア陸軍の劣勢は「軍事改革」の失敗が原因だった。地上兵力の有効性が疑問視され、核兵器のブラフを多発せざるをえない状況へ。

 

 

ロシア軍は大規模戦闘に明らかに対応できていない

 

 

 

クライナ北東部での急速な崩壊と無秩序な撤退を見れば、兵站の不備や指揮官の無能さにとどまらない深刻な問題にロシア軍が直面していることは明らかだ。現在のロシア軍の構造的弱点は、14年前に始まった改革の結果だ。しかし、ウクライナ侵攻で、改革がほとんど実行されていないものもあれば、ロシア軍をさまざまな行き詰まりに陥らせているものもあることを露呈した。

 ロシア軍の改革は、機械化歩兵大隊を戦場の主要な組織とすることだった。1980年代のアフガニスタン戦や第1次、第2次チェチェン戦争で、遅すぎ効果がないとされたソ連型連隊に代わる構想だった。500人規模のソ連型大隊の小ささに対応し、改革では、800〜900名の「大隊戦術グループ」に変身させた。ロシア政府によると、ウクライナ侵攻前、ロシア軍は戦闘可能な大隊戦術群170個を有し、「常時戦闘態勢を整えておく」設計だったという。そのうち100個以上が2月以降のウクライナ作戦に参加している。   

 ロシア軍ドクトリンによると、各大隊戦術群は長さ5キロの前線を担当し、攻撃作戦時には2キロに狭める。同時に、大隊は敵を攻撃するとき、エシェロンを形成することが期待されている。ソ連軍ではエシェロンを2つ形成するのが標準作戦手順で、両方のエシェロンを統合軍司令官が統制していた。ソ連軍機械化歩兵連隊は3000人以上(戦時にはさらに増加)の戦闘員を擁し、2つのエシェロンに編成する。それに比べ、今日のロシア地上軍は、2個以上の大隊戦術群を持ち、各編成をそれぞれの指揮官が統制するエシュロン2個編成を取る。

 ウクライナ戦争が繰り返し示しているように、この指揮の分断が攻撃と防御の両方の作戦結果に影響を与えた。また、ウクライナ戦争は、小規模部隊の方が機動的かもしれないが、より広い空間の制圧を期待される場合には、効果的でないこともあるのを示している。800人規模の大隊で5kmの前線を維持するのは非現実的で、特に歩兵が200人程度しかいない場合はその傾向が強まる。

 

 ロシア地上軍がウクライナで直面している頭痛の種は、指揮系統の統一性の欠如だけではない。不十分な指揮系統は、未試験の、あるいは時代遅れの戦闘用通信機器でさらに悪化している。2008 年 8 月のロシア・ジョージア戦争でロシア軍が装備も補給も不十分な敵に勝利した後、ロシアの政治・軍事の指導者は小型かつ機動的な大隊戦術集団構想に熱中した。

 しかし、ロシア軍の指導層は、自軍の戦闘通信システムに大きな問題があることを知り、新たな通信システム開発に踏み切った。そこでロシア軍は、無線機「Azart」と軍用スマートフォン「Era」という2つの新しい通信システムでウクライナに侵攻した。

 どちらも侵攻当初からうまく機能せず、ほとんどのロシア軍部隊はこれを捨てて、ウクライナのSIMカードを搭載した旧式端末を導入したほどだった。そのため、ウクライナ軍情報機関がロシア軍指揮官間の通信を傍受するのは比較的容易だった。

 旧式通信機器は通信距離が4キロメートルと短く、中継車やタワーなど支援機材や、トラック 運転手、通信技師、暗号事務員などの支援要員も必要だったため、効果的に機能しなかった。平時の軍事組織では、こうした人員の補充は優先されないが、戦闘行動時には動員・配備が必要となる。大隊戦術群が中心の新しい地上軍構造では、軍事作戦の成功に必要な戦時中の兵員動員の追加を想定している。

 暗号事務員や通信中継員以外にも、平時では常勤でなくても戦闘作戦に不可欠な職種がある。今回の戦争の報道を追っている人は、ウクライナの農民がロシアの戦車や装甲車を牽引しているのを見たことがあるだろう。使えなくなった装備は、有事に動員された運転手が運転するロシアのレッカー車で牽引しなければならない。しかし、これは開戦7カ月が経過するまで行われず、新たに動員されたロシア人兵士が職業訓練を受けるかは依然不明である。

 ロシア軍指導層は、歩兵大隊に重機メンテナンス要員を加えなかった。ロシアの戦車や装甲車の運転手は整備訓練を受けているので、日常の機械的な整備はできる。しかし、問題が起きたとき、専門的な装備を持ち込んでおらず、重機を持ち上げたり、金属を曲げたりできないため、さらなる支援が必要なのだ。

 さらに、ロシア軍は7カ月間、戦闘衛生兵(ロシアの伝統では「サニタール」と呼ばれる)を動員していない。衛生兵は、部隊に同行し、負傷者に応急処置を施し、戦場から避難させる役目だ。2022年2月から10月まで、ロシア軍に戦闘衛生兵がいなかったため、負傷者は他の戦闘員により避難させていた。つまり、ロシア部隊は負傷兵1人につき、避難させるために戦闘から撤退する兵士1~2人を失っていた。

 ロシアの新軍事組織の最も大きな弱点の一つは、その指導者モデルである。軍事組織はどの国でも保守的な組織で、ロシアではなおさらである。軍隊の構造が変わっても、特定の階級に要求される尊敬と権威は変わらない。旧ソ連時代の連隊は、大佐や下級将校など、経験と権威ある上級将校が指揮をとっていた。歴史的に見ても、ロシア軍において威厳とカリスマ性を有する階級だ。しかし、現在の大隊戦術群の指揮を執るのは少佐や中佐といった中堅将校で、影響力や実効性は限られる。ウクライナ戦争では、大隊の人員・装備の損失が目立つ。ウクライナ情報部が傍受したロシア軍将校の電話によると、ロシア軍大隊指揮官は人員や装備の補充の要求や受け取りがうまくできていない。ある将校は戦争初期に、自分の大隊の司令官(ロシアでは伝統的にコンバトと呼ばれる)が目的さえ知らなかったとさえ述べている。

 

 プーチンの軍事改革が何を意図して行われたかは分からないが、ロシア軍は大陸規模の戦争に対応できるものではないのは明らかだ。むしろ、小規模で装備も準備も整わない敵との短期決戦用の軍事組織を作り上げてしまった。ロシアが国土の広い国であることを考えれば、これは驚くべき結果だ。

 常に戦える軍隊を作る代わりに、ロシアは長期作戦を維持できない地上軍を抱えてしまったのだ。ウクライナでの8カ月に及ぶ戦闘での損失で、ロシアの政治指導者でさえ、自国が攻撃されたら、通常戦力が役に立たないのを理解しているようだ。それゆえ、プーチンが通常戦力の弱点を補うために核オプションを頻繁に発動するのも無理はない。■

 

Why Russia’s Military Reforms Failed in Ukraine | The National Interest

 

by Lasha Tchantouridze

October 15, 2022  

Topic: Russian Military  Region: Eurasia  Tags: Russia-Ukraine WarGeorgia WarRussian MilitaryMilitary ReformRussian Invasion Of Ukraine

 

 

Dr. Lasha Tchantouridze is a professor and Director of the graduate programs in Diplomacy and International Relations at Norwich University.