スキップしてメイン コンテンツに移動

今の米国で中国、ロシアと同時に戦えるのか、日本はどう対処すべきか

ファーレイ教授は意外に日本が米国政策を支援しない可能性を想定していますね。ま、たしかに国際政治では大国の政策に盲従することは考えにくいので極めて現実的な認識でしょう。要は国益をどこまで認識しているかと言う問題ですが、日本が黙っていられない状況に国際貿易の自由が脅かされることがあり、この国の去就を握るのは海上交通路であることはどこまで理解されているのでしょうね。米国主導の国際秩序の維持には有志連合であり、共通の価値観を認識できる国家群が集結するしかありません。NATOに比べ、こっち側の状況は相当遅れているようです。



War Nightmare: Could America Fight Russia and China Simultaneously? 

ロシア、中国を相手の同時開戦はアメリカの悪夢か。

Let's find out.



国は誤解されがちだった「二方面戦」方針を2000年代末に放棄した。これは2つの戦域での継戦戦力の実現が狙いだった。北朝鮮へ抑止力をきかせながらイランやイラクのどちらかと戦う構想をもとに国防総省は調達、補給、基地配備の戦略を冷戦後に模索してきた。前提としてソ連の脅威が消えたことがあった。米国がこの考え方を放棄した理由に国際環境の変化があり、中国軍事力の台頭、テロリスト勢力のネットワーク拡大があった。
だがこの瞬間に二方面作戦を米国が強いられたら、しかも北朝鮮やイラン以外の相手の場合どうなるか。中国やロシアが協調し太平洋と欧州で同時開戦したらどうなるか。
政治協調
そもそも北京とモスクワが調整のうえ危機的状況を発生させ米軍に二方面で挑む事態は発生するのだろうか。可能性はあるが高くない。両国とも目指す目標が別であり自国の大日程がある。より可能性が高いのは一方が発生中の危機状況を利用して自国の権益を伸ばそうとすることだ。たとえば米国が南シナ海で動きがとれない間にモスクワがバルト海諸国に圧力をかけることだ。
いずれにせよ、戦火を開くのはロシアあるいは中国だ。米国は両方の地域で現状維持から利益を享受する側であり、政治目標達成には外交経済面の手段を選ぶのが普通だ。米国が有事に至る状況をつくれば、ロシアあるいは中国が引き金をひくだろう。
柔軟対応力


良い面は欧州、太平洋の戦闘に必要条件が重複することだ。第二次大戦事例のように米陸軍が欧州防衛にあたり、米海軍を太平洋に集中すればよい。米空軍は両戦線の支援役にまわる。
ロシアには北大西洋でNATOを打ち負かす戦力がないし、政治的にもこれを試す度胸はないだろう。つまり米国とNATO同盟国はロシアを海上で脅かすべく資源を割り振るればロシア海軍への担保とできる。米海軍は太平洋に主力を集中できる。戦闘期間や事前警告の有無にも左右されるが、米国は米陸軍装備を欧州に大量に運びこみ戦闘力を増強できる。
一方で空母、潜水艦、水上艦の大群を太平洋からインド洋に展開し、中国のA2/AD体制を崩し、中国の海洋交通路を狙い撃ちする。長距離航空戦力としてステルス爆撃機の投入が両方面で必要になるだろう。
少なくとも片方の戦域で可能な限り迅速に勝利を掴む圧力を米軍は感じるはずだ。このため米国は空、宇宙、サイバーの各領域の装備を重視して戦略的かつ政治的な勝利を確立し、残る装備をもう一方の戦域に集中するはずだ。欧州内同盟各国の軍事力を考えると米国はまず太平洋に中心をおきそうだ。
同盟関係
太平洋での米同盟国の構造は欧州と大きく異なる。欧州では一部同盟国の取り組み方に懸念が残るものの、米国としてはNATO同盟関係の維持を除けば欧州でロシアに対して戦闘を行う理由がない。もし米国が戦えば、ドイツ、フランス、ポーランド、英国が続くはずだ。通常戦シナリオの大半では欧州同盟国だけでも中期的にはロシアへ優位に立てる。ロシアがバルト海諸国を占拠してもNATO空軍力の前に相当の被害を受け占領地も長く維持できないだろう。この関連でUSN、USAFともに支援役にまわりロシア軍を打ち破る優位性をNATO同盟各国に確保する。米核戦力がロシアの戦術、戦略核兵器投入への担保となるはずだ。
だが太平洋で米国の状況はより困難だ。日本あるいはインドが南シナ海に権益を感じても参戦してくれる保証にならないし、中立に回る可能性もある。同盟国が戦列に加わるかは有事の個別条件で変わる。フィリピン、ヴィエトナム、韓国、日本あるいは台湾が中国の主要標的だ。残る各国は米国の圧力は別としても様子見にまわりそうだ。これにより西太平洋における優位性の確立が米国単独では課題になる。
結論
米国には同時に二方面で勝利することも可能だが、それにはロシアあるいは中国が大きな賭けに出てこないことが条件となる。米国にこれが可能なのは世界最強の軍事力を維持し、ずば抜けて強力な軍事同盟を率いているためだ。さらにロシアや中国による軍事課題がそれぞれ異なるため、米国は軍事力を一方に割り振り残りをもう一方に配分できる。


とはいえ、今の状況が永久に続く保証はない。米国も優位性を無期限に維持できず、長期的にはより慎重に対応策の選択を迫られそうだ。同時に米国が形成した国際秩序から世界有数の各国が繁栄を享受しているので当面はそうした各国を頼りにできる。■
Robert Farley , a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

コメント

  1. 私が日本人だからでしょうか?直近の不安定要因はロシアのプーチン政権より、中国の習政権の方がはるかに高い気がします。ロシアも抜け目無く機会を伺うでしょうが、中国はこの先もトンデモナイ無茶をしそうで全く予想がつきません。
    また、ドイツ軍の装備の稼働率が現状、悲惨な状態とは言え、NATO全体で見ればロシアに対抗できると思っていますが、アジアでは、核保有国の中国に対抗できる戦力がありません。このため、中国は今後、益々無茶な言い分を要求してくる可能性が高いと思います。

    この中国への対抗策は、日本が明確に、南シナ海や東シナ海への安定のために、軍事面も含めて米国と協力することを約束し、核保有国の中国に対抗して、日本の核爆弾と核弾道ミサイルの開発、保有を認めさせることでしょう。日本自体で核開発するか、あるいは、核保有国との有事の際は米国の核爆弾を借り受けるなどの話がつけば、これが中国への抑止力になると思います。日本の核保有は政治的ハードルが高いですが、憲法ごっこをしている状況では無いことを示し、現実的な策として是非進めて欲しいと思います。

    返信削除
  2. ぼたんのちから2019年3月26日 9:05

    この記事の状況は、現在のものであり、しかも中露の能力をかなり低めに見積もっている。記事は、第3次世界大戦を想定しているようだが、その想定展開は、第2次大戦型であり、最近の軍事傾向やウクライナ内戦の事例さえ組み込まず、しかも危険なことに独善的である。
    中露は、負ける戦争を決して行わないだろう。しかし、戦争準備は怠っていない。少なくても戦争ともなれば、中露は、サイバー攻撃、電子戦、衛星攻撃等による社会インフラ破壊、通信の破壊を先ず行うだろう。西側の部隊は、状況不明な孤立した状態に陥り、各個撃破されるだろう。
    中露が戦争を起こし、西側不利の状況が現出すれば、それに乗じて、個人的に「北京ブロック」と呼ぶイラン、パキスタンや北朝鮮等の親中国家群、及びグループが戦火を開くだろう。地域の米軍、イスラエル、サウジ、インドは攻撃され、韓国は蹂躙されるだろう。この状況では、日本の中立など有り得ない。
    戦争に備えることは、最悪の状況を想定してから始めるべきだ。甘い想定は、間違った結論を導くばかりか、敗北に繋がる危険なことだ。この記事の想定はそのようなものでなかろうか。

    返信削除
  3. あとは、西側各国内にいる中国人やロシア人、その協力者を排除しないと、内部から破壊工作をされかねないですね。特に日本はその点が甘すぎるし、法整備も十分でないのが心配です。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM