スキップしてメイン コンテンツに移動

令和6年防衛白書でわかったASEVの最新動向について(Naval News)

新しい防衛白書でASEVについて新しい画像が公表され、Naval Newsが伝えてくれましたのでご紹介します。将来の拡張性も考慮して艦体が大型化していますが、電力容量も考えるとこの大きさで間に合うのでしょうか。また2隻建造するとありますが、3隻ないと常時パトロールができなくなるのではないでしょうか。もともとは地域住民のエゴで断念したイージス・アショアの代替なのですが、配備が完了するまでとんでもないコストになっていますね。

令和6年度防衛白書


防衛省がASEVの最新イメージを公開


日本の防衛省は最新の防衛白書で、イージスシステム搭載艦(ASEV)の最新画像を公開し、説明を加えた。



陸上イージス・アショアに代わる弾道ミサイル防衛(BMD)システムとして海上自衛隊はASEV2隻の調達を計画している。ASEV1号艦は2028年3月末までに、2号艦は2029年3月末までに就役する予定である。

 7月12日に発表された2024年防衛白書で公開された最新の画像は、ASEVの詳細設計の進展を示している。

 防衛省によると、ASEVの大きさは全長190メートル、全幅25メートル、基準排水量1万2000トン。これに対し、海上自衛隊の最新型イージス艦「まや」級は全長170メートル、全幅21メートル、基準排水量8,200トン。また、ASEVはトン数で米海軍の最新イージス艦アーレイ・バーク・フライトIIIの1.7倍である。

 艦橋構造のデザインは「まや」級イージス駆逐艦を踏襲しているらしいが、窓の形状は「もがみ」級フリゲート(通称FFM)のように横長になっており、視認性を向上させつつ、人員削減による艦橋スタッフの少人数化にも対応している。

 主兵装の構成も、Mk-45(Mod.4)5インチ/62口径(127mm)主砲を含むまや級に似ているようだ。

 ASEVが、全方位監視と警戒を向上させるために、FFMに搭載されているOAX-3電気光学・赤外(EO/IR)センサーシステムと同様の機器を搭載するかは、まだ不明だ。

 各国軍艦の設計に詳しい日本の海軍専門家は、匿名を条件に本誌の取材に対し、空中線やその他の装備は第一ファンネルの外周の突起部に集中しているようだと語った。

 「主エンジンの排気煙による熱問題や、その部分での電波干渉の影響はないのだろうか」と専門家は指摘し、「このような艤装を見るのは初めてなので興味深い 」と付け加えた。

 専門家はまた、第1ファンネルと第2ファンネルの構造についても注目した。

 「通常の艦船では、SSMはそこに設置される。甲板の作業通路になる部分に何らかの構造物が配置されているのは、将来的に長距離ミサイルなどを増設するためのスペースを確保するためかもしれない」と専門家は指摘している。

 海上自衛隊の元幹部も、匿名を条件に本誌取材に対し、ASEVはまだ設計段階であり、設計次第で細部の変更が続くと予想している。

 「将来的には、もがみ級フリゲート艦のように、船体側面にハッチを増やし、装備を隠しステルス性を向上させることになるだろう」と元幹部は語った。


ASEVの兵装とセンサーシステム

 2隻のASEVには、もともとイージス・アショア用に調達されたロッキード・マーチン社のSPY-7が搭載されることになっており、イージスシステムのバージョンは、SPY-7をベースライン9(BL9)に統合するために改良されたJ7.Bとなる。

 2024年4月4日、ロッキード・マーティンは、ASEV用の初の実写トラックAN/SPY-7(V)1レーダー(SPY-7)のデモンストレーションに成功したと発表した。

 防衛省は最新の白書で、SPY-7はSPY-1の5倍の追跡能力を持ち、ロフテッド軌道で発射されたミサイルや同時に発射された複数の弾道ミサイルに対処できると述べている。

 ASEV艦は、垂直発射システム(VLS)セル128個を搭載する。これは、まや級護衛艦のMk41 VLS 96セル(前方64セル、後方32セル)を上回る。

 また防衛省は、ASEVのVLSは、滑空段階で極超音速滑空体(HGV)に対処する将来装備に対応できる拡張性が与えられると説明している。


ASEVのその他兵装には以下が含まれる:

  • SM-6、別名RIM-174標準長距離アクティブミサイル(ERAM)

  • SM-3ブロックIIIA地対空ミサイル

  • 他の艦船が追尾した対空目標を遠隔射撃することを可能にする協同交戦能力(CEC)など。

2032年以降に搭載が想定された装備(拡張性/将来の増加):

  • 水上戦における脅威範囲外からの敵艦隊に対処するため12式SSMの改修

  • 敵の脅威範囲外で地上部隊に対処するトマホーク・ミサイル

  • ドローンによる飽和攻撃に対処する高出力レーザーなど


 防衛省は、今年度から2隻のASEVの建造を開始した。建設費を含む取得費用として、今年度予算に3731億円を計上している。さらに、各種試験準備や試験場などの運用支援施設などの関連費用として815億円(5億400万ドル)を確保している。つまり、2024年度だけでASEVの費用として4546億円が計上されている。■


Japan’s MoD Unveils Latest Image Of ASEV

Kosuke Takahashi  12 Jul 2024


https://www.navalnews.com/naval-news/2024/07/japans-mod-unveils-latest-image-of-asev/


コメント

  1. イージスアショア計画がボツになったのは、どうでもいい(どうせ左翼煽動の)住民の反対騒動が原因では無く、その騒動を政権側が利用したかは知りませんが、近年の飛行コースを変える超音速ミサイル群に対して、固定目標じゃ生存性が確保できないと判断しての撤退じゃないでしょうか?またドローンの脅威にも弱い。
    もちろんこれも一つの憶測でしかないですが。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...