2021年1月29日金曜日

第6世代戦闘機はもう飛んでいる。早期実現させたデジタルエンジニアリングは装備品開発のパラダイムシフトを引き起こす....デジタル化を進めたローパー博士の強い信念。

 アメリカはデジタル設計で新型装備品をかつてないスピードで完成させている。

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2020%3Anewsml_RC2DUG9YN9MU&share=true

 

世代第6世代戦闘機が飛行開始している。一体どうやってこんなに早く機体が完成したのだろうか。

 

また新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)が予想より早く供用開始できるのはなぜか。更にペンタゴンは新型の次世代迎撃ミサイル(NGI)を2020年代末に運用開始する計画だ。驚くべき早さの進展はすべてデジタルエンジニアリングの成果だ。

 

加速するデジタルエンジニアリング技術ではコンピュータシミュレーションと高性能アルゴリズムを駆使し実物と性能仕様を複製する。

 

政権交代で空軍を去る直前に調達トップのウィリアム・ローパーはデジタルエンジニアリングの「三位一体」に触れ、大規模装備開発でどんな違いが現れているか説明してくれた。例として第6世代ステルス戦闘機や新型陸上配備戦略抑止手段をあげた。デジタルエンジニアリング技術は正確かつ効果が高く、技術陣兵装開発部門は現物を使わず、あるいはテスト用試作モデルの政策に何年も費やさずに選択肢を逐一検討できる。

 

 

ローパーは「デジタル三位一体」について「新しいデジタル調達の実際』と題した文章でソフトウェア開発、コンピュータモデリング、共通技術標準の3つで構成すると解説している。

 

「『デジタル三位一体』のデジタルエンジニアリングおよび管理、アジャイルソフトウェア、オープンアーキテクチャがこれからやってくる次の大きなパラダイムシフトだ。単に優秀な装備を実現するのではなく、より良いシステムを構築する。これまでより早い設計、一気通貫の製造、アップグレードを簡単に行う。早くして悪いことはなにもない」

 

コンピュータモデリングで細部に至る評価を行い、実戦の各種状況を想定し、各種条件を変えつつ装備品の設計を検討できるというのは驚くべきことだ。

 

「デジタルエンジニアリングにより、利用者はデータの出どころを一つに絞ってアクセスできます。究極の透明性が開発中システムに生まれるわけです。NGIの例では開発工程が早まり、問題点やリスクをすばやく早くできました」とレイセオン・ミサイル&ディフェンスのメリッサ・モリソン−エリス部長がNational Interestに語っていた。

 

GBSDの開発元ノースロップ・グラマンはレイセオンと共同でNGIをミサイル防衛庁(MDA)に提示し、デジタルエンジニアリングを多用し、新型ICBMの製造、試験、改良に成功し、NGIでも同じ方法を採用した。

 

「MDAからは産業界にはミサイルは現実になってこそ意味がある、技術の裏付けの取れた性能を実現してほしいとの要望が伝えられました。エンジニアリングソフトウェアを使い、デザインサイクルを加速しました」とノースロップ・グラマン副社長(NGI担当)のテリー・フィーハンも述べている。

 

「デジタル調達でデジタルライフサイクルが実体のライフサイクル並になると、はるかに現実に近くなってくる。eシステムを構築し、『プリント』して検討する日が来るだろう」(ローパー)

 

この戦略が重要となる例は新型迎撃ミサイルNGIで、MDAが開発企業二社に契約交付すれば、数週間で次の段階に入れる。MDAは増大する新世代ICBMの迎撃性能の実現を急いでおり、この意味は重大だ。敵陣営は核兵器運搬手段を単に数の上で増強するにとどまらず、ミサイル誘導方式を大改良し、信頼性、標的捕捉能力、おとり装備の導入、対抗手段の採用で迎撃ミサイルを無効にしてくるはずで、NGIは大きな課題をかかえている。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How America's New Sixth-Generation Stealth Fighter Was Born

January 28, 2021  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryNGIGBSDICBMU.S. MilitaryStealth

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 


ソウルが「火の海」になる? DMZ沿いに北朝鮮が展開する大口径火砲コクソンの脅威はどこまで真実なのか。

韓国の現政権はことあるごとに北に媚を売っており、あたかも統一のためなら北にすり寄っても構わないと考えているようです。同様に国内の左翼陣営も親北の姿勢を隠そうともしていませんが、北朝鮮は罵詈雑言で韓国を見下しており、韓国など眼中に無いような態度です。万一有事となれば躊躇なく砲門を開くのではないでしょうか。そのときに左翼陣営は自らの過ちに気づくでしょうが、時遅しでしょうね。

都市ソウルの都市計画は他と全く違う。市東部は北朝鮮国境から30マイルと離れておらず、火砲数百門の射程内だ。北朝鮮はソウルを「火の海」にすると脅かしている。このため都市計画では23平方キロに及ぶ退避壕を念の為市内に構築している。

 

北朝鮮は弾道ミサイル開発で核弾頭を搭載するとの観測もあるが、高性能砲弾や化学弾が人口1千万人とニューヨーク市を上回る韓国首都に降り注ぐ光景を想像するだけで背筋が寒くなる。

 

ただし、DMZの反対側からソウルまで届く射程の火砲はごく一部のみだ。その装備が500門を揃えた170ミリ自走砲コクサンで、性能は実戦で実証されており、ロケット推進弾を発射すれば射程は37マイルに伸びる。

 

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コクサンは20世紀前半の長距離砲への回帰といえる装備で、戦線後方の防御陣地や弾薬集積地、司令部、補給上の急所など高価値標的の打撃が任務だ。1950年代に大型砲の半自力走行車両搭載が増え、戦術核兵器を発射するものも現れた。だが米軍の175ミリM107、203ミリM110は用途廃止された。空爆、戦術ミサイルで同じ効果を上げるようになったほか、155ミリ砲でも発射弾の性能向上があったためだ。

 

だが朝鮮半島の地理条件と軍事境界線の整備された環境は火砲の使用に有利となっている。朝鮮戦争でも米軍の移動式火砲が北朝鮮軍、中国軍の人海戦術を撃退する効果を示した。さらに北朝鮮軍は航空支援に期待できる状態ではなく、精密誘導兵器も頼りにならない状況にある。

 

北朝鮮装備品の出自には謎が多い。M1978コクサンも制式名称ではなく、1978年に西側が初めて同装備を目視してこの名称がついた。北朝鮮装備品は多くがソ連の原設計だが、ソ連は170ミリ砲を開発していない。コクサンは第二次大戦中の日本軍の沿岸砲あるいはドイツ製K18装備が原型かもしれない。

 

M1978は中国製59型戦車の車台に搭載するが、方の装填を行う兵員には遮蔽物がない。これは米M107やM110でも同じだった。M1978には車内に砲弾を持たず、軽装甲の弾薬車あるいは事前集積地がないと発射を続けられない。当然ながら、北朝鮮は境界線沿いに構築した硬化火砲陣地の利用をしてくるはずだ。多くは山腹に掘ったトンネルで、一部には居住部分をそなえたものもある。

 

コクサンは実戦で洗礼を受けている。1987年に北朝鮮はイランに同装備を売却し、当時イランはイラクと戦闘中だった。テヘランの軍事パレードにも登場した。

 

イランはアルフォー半島の占領に1986年成功した。同地はクウェイトの油田地帯に隣接し、クウェイトは当時はイラクの同盟国だった(中東の同盟関係はすぐ変化する)のでクウェイト油田地帯の砲撃にコクサンが投入された。1988年にイラク軍が化学兵器も投入し奇襲攻撃を断食月中に実施し、イラン陣地を占拠した。コクサン数門を捕獲し、米国関係者も視察した。

 

ほぼ同時期に北朝鮮はM1989をコクサン改良型として運用開始し、車台の延長で安定度を増し、4名の搭乗スペースもついた。随行車両にさらに装填手4名が乗る。M1989は車内に12発の砲弾を運ぶ。これによりM1989は最初の一分で3-4発を連続発射し、その後は毎分一発の通常発射になる。

 

ソウルは「火の海」になるのか

 

2012年にノーチラス研究所からの詳細な研究発表では、コクサンや240ミリ連装ロケット砲の脅威が誇張気味と主張した。最近でもNational Interestのカイル・ミゾカミも同様の主張を展開している。

 

まず、長距離砲コクサンといえどもソウル北西部を射程に入れるにはDMZに沿いごく狭い範囲に展開する必要があり、すぐに空爆や地上からの攻撃の標的になる。

 

戦例ではシリアのアレッポ、チェチェンのグロズニーの砲撃は数ヶ月かかっており、第二次朝鮮戦争がそれを数週間にまで短縮する可能性はある。さらに北朝鮮軍が民間人を集中攻撃し、軍事目標を後回しにするだろうか。またソウルに中国国民も居住しており、犠牲となれば中国が黙っていないだろう。

 

とはいえ、検討すべき点もある。まず、ソウルの人口はアレッポやグローズニーの数倍の規模があるので、死傷者も数倍に登るだろう。韓国人口のほぼ半分の24百万人が首都圏に暮らす。砲撃による死傷者は大部分が退避壕に隠れる余裕もないままで発生する。そのため実際の死傷者が多くなる場合もある。ノーチラス報告書では死亡を最大29千人と試算し、市街地は壊滅するとある。それ以外にパニックで何十万人が避難しようと道路にあふれ、一帯が混乱を極めるのは朝鮮戦争で経験済みだ。

 

北朝鮮火砲が化学砲弾を発射すれば混乱の規模は更に拡大する。コクサンで化学砲弾運用は想定されているものの確認できていない。最後に韓国と米国が過剰なまで装備を北朝鮮の戦略野砲部隊に振り向ければ、野砲部隊は真価を発揮したことになる。

 

大型砲が国境ぞいに配備されているのは南北朝鮮で戦闘が始まれば、韓国民間人に多大な犠牲が発生することを意味している。一旦民間人に照準をあわせれば、コクサンが大損害を発生させる冷徹な事態になる。

北朝鮮は反攻に耐え抜くと豪語している。ただし都市部を狙えば、北朝鮮体制が崩壊に向かうのは確実で、北朝鮮が事実関係を理解していることを祈るばかりである。

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

North Korea’s Artillery Guns are Nearly as Threatening as Its Nuclear Weapons

January 27, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWarWeaponsGunsNorth KoreaKim Jong-un

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This piece was originally featured in October 2017 and is being republished due to reader's interest.

Image: Reuters


 

2021年1月28日木曜日

米軍は真剣だ。中国ミサイル攻撃で既存基地被害を想定し、アジャイル前方展開で未開地の臨時航空基地から高性能機材を運用し、移動し続ける構想。2月のコープノース演習で実証する。

 

国との開戦が限定戦となっても主要航空基地の滑走路が使用不能となる恐れがあり、米軍に真剣な課題になっている。グアムのアンダーセン空軍基地は中国弾道ミサイルの射程に入っており脆弱性は否めない。そこで空軍は前方基地としてウェーキ島やテニアン島の利用を検討している。そのアンダーセン基地の北西滑走路はジャングルに囲まれ過酷な環境のままだが、ここから戦闘機を運用させようというのが多国籍演習となるコープノース航空戦力演習でグアムを主舞台とする。

 

Air Force Magazineのブライアン・エバースティンがアンダーセンの北西飛行場でエイルソン空軍基地のF-35、三沢航空基地からのF-16を運用すると他に先駆け報じた。同地ではC-130、ヘリコプターの運用はあったが、最近延長工事のため航空機運用は行っていなかった。もともと頑丈な作りでなく、インフラに依存しがちな戦闘機を同地で運用するのはUSAFでも前例のない試みとなる。

 

GOOGLE EARTH

2018年9月当時の画像では北西飛行場の東滑走路が整備作業を受けているのがわかる。

 

コープノース演習に未整備飛行場の運用を含めたのはペンタゴンがすすめるアジャイル戦闘展開戦術構想を磨く意味もあり、敵の裏をかく形で少数機材を過酷環境や地上支援体制が限られる地点から運用する狙いがある。構想の実効性を高めるべく、地上支援部隊は最小限人員とし、最小限の機能だけの不完全飛行基地を確保し、移動を繰り返しながら敵の攻撃防衛案を混乱させる。またアジャイル戦闘展開部隊の生存性も高まる。

 

演習は2月開始で、現地では全長8千フィートの滑走路に手を入れており、緊急拘束装置の設置を目指す。これは緊急時に滑走路だけでは静止できない機体を安全に回収するための追加装備だ。

USAF

大規模なアンダーセンAFBの全体像

 

北西飛行場はその他部隊も利用しており、THAAD部隊もそのひとつで同島を弾道ミサイル攻撃から守っている他、衛星通信施設もある。滑走路の東端に小さな建屋が2つあるのを除くと、通常の基地にあるような建築物は見当たらない。滑走路は濃いジャングルに囲まれており、この環境でハイエンド機材を運用するのは冒険的でもある。

 

USAF

2000年代はじめの北西飛行場は再整備前の姿を示していた。

 

コープノースでF-15C/Dヴァイパー部隊とF−35ライトニングII部隊が同地に着陸し、燃料補給し、兵装を再搭載し、離陸するが、あたかも遠隔地での戦闘任務の想定となる。設備が整った基地でさえ、ハイテンポ運用に困難となる。遠隔地で通信交信もなく、支援車両もない状態で高性能機材を運用するのだから難易度はさらに高い。例えば燃料搬送でMC-130特殊作戦支援機が投入されるはずだ。現地の野生動物対応が必要となる場合もあろう。

 

USAF

MC-130が前方兵装燃料補給拠点 (FARP) となり、F-35Aを支援する。この訓練は近年増加しており、今回は統合運用としてテストされる。

 

演習から補給活動の知見が大量に得られるはずで、整理した上で今後の前方基地展開に応用されるはずだ。

 

コープノース演習が実際に始まれば、現地の動きを逐一お伝えしたい。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

F-35s And F-16s Set To Operate From Austere Jungle Airfield During Major Exercise On Guam

BY TYLER ROGOWAY JANUARY 27, 2021

 


 

中国が空母練習機を模索。パイロット養成をシステム的にすすめる必要に迫られているのは、空母建造が進み、空母が海軍戦力に定着してきた証拠なのか。

 


 

母運用訓練を受けていないパイロットのみでは空母は機能を発揮できない。

 

米海軍ではこの問題はない。一世紀近くに渡り、新米パイロットは暗闇の中、大洋に浮かぶ小さな飛行場への着艦方法を叩き込まれている。だが中国海軍では事情が異なる。人民解放軍海軍航空隊の運用機材はこれまで陸上配備機材が大部分で、空母は旧ソ連艦が比較的最近に利用可能になったに過ぎない。

 

そこに中国国内建造の空母2号艦が加わった。またその後も空母建造が続く。つまり、中国には海軍パイロット養成の強化が必要で、適切な訓練用機種が必要となる。

 

 

そこでJL-9山鷹練習機を空母運用訓練用に転用すると中国国営メディアが報じている。JL-9は超音速複座機で中国空軍、海軍が2014年から高性能機材のSu-27、Su-30MKK、J-10戦闘機パイロット養成用に使っている。その前はMiG-21戦闘機を改修したJJ-7が練習機だった。なお、JL-9はFTC-200G軽攻撃機として輸出されている。

 

「JL-9の開発元である貴州航空機工業は国営中国航空工業 (AVIC)傘下で宣伝資料でJL-9を空母運用する様子を伝えており、JL-9が艦載練習機に採用されるとの観測を呼んでいる」と環球時報が伝えている。「中国海軍でJL-9は陸上基地で空母航空隊パイロット養成に投入されているが、中国には空母運用可能な練習機がまだない」

 

艦載機と陸上運用機材は外観上は同じように見える。だが空母運用では個別の仕様が必要で、着艦を考慮した降着装置の強化が一例だ。山鷹も機体構造、エンジン含め改修が必要と環球時報も伝えている。

 

また環球時報はJL-9の空母練習機採用には競合相手もあると伝えている。「単発JL-9山鷹の強力なライバルが双発のJL-10猟鷹でエイビオニクスが高性能で飛行性能も優れている」「だがAVICの洪都航空工業集団が開発したJL-10は機体価格が高い」

 

米海軍海兵隊ではT-45ゴスホークを1991年から供用中で、英ホーク練習機を空母運用仕様にした。小型亜音速複座機でエンジンは単発だ。

 

中国が訓練機材を必要としているのは、空母整備が順調に推移している証拠だろう。空母が一隻だけなら特別装備扱いで、ロシアがこの状態にある。だが中国は空母4隻以上の建造に向かいそうで、空母訓練機材やインフラが必要になっていると見るべきだ。

 

 

China’s Growing Air Force Has a Pilot Problem

January 26, 2021  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot 

Tags: ChinaAircraftPilotsMilitaryTechnology

by Michael Peck

 

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter, Facebook, or on his website. This article first appeared two years ago and is being republished due to reader interest.

Image: Wikipedia


2021年1月27日水曜日

UH−60後継機をねらうボーイング、シコースキーが共同開発のディファイアント新型を発表。ベルのティルトローターと競合。米陸軍は2022年選定で2030年代の運用開始へ。

 


Sikorsky-Boeing graphic

Sikorsky-Boeing Defiant-X



コースキーボーイング両社はSB>1ディファイアント複合ヘリコプターを「大規模研究」と陸軍との協議を経てディファイアント-Xとして本日公開した。


どう変わったのか。両社は詳細を明らかにしておらず、今後順次公開するとしている。だが慎重な発表文に報道陣がそれでは満足せず、電話会議で両社に問いただし、以下判明した。

  • ディファイアント-Xは降着装置を強化し、機首にも追加した。SB>1には大型車輪ふたつを前方に、小型車輪を尾部につけていた。機体重量が増えたのは確実だが、その分未整備着陸地点で安定性が向上したのだろう。

  • ディファンアント−XはSB>1にあったエンジン下の排気口を廃止している。これで「熱特徴を減らした」と両社は記している。言い換えれば、新設計はエンジン余熱処理を工夫し探知されにくくなった。搭載エンジンは未定だが出力水準、整備性、排熱のバランスを考慮するはずだ。

  • ディファイアント-Xでは機体形状を変更し、機首が鋭角になり、機体後方にリッジをつけており、両社はこれにより「空力特性の扱い」が改良されたと述べている。陸軍の優先事項は速力だが、この点で改良の言及がない。SB>1はライバルのベルV-280ヴァラーとこの点で劣っていた。


The Sikorsky-Boeing Defiant X

Sikorsky-Boeing image


シコースキー・ボーイングチームはUH-60ブラックホークの後継機を目ざす将来型長距離教習航空機 (FLRAA)の採用をめぐり、ベルと競合している。FLRAAは高速長距離かつ大量の搭載量をめざす。FLRAAは広義の将来型垂直輸送構想の一部で、偵察用から小型無人機まで各種を整備する陸軍の構想だ。両陣営はFLRAA試作機の飛行を開始済みで、ベルが先陣を切った。V-280ティルトローターは性能実証済みのV-22オスプレイを小型化し、スッキリした姿になっている。同機は2020年12月18日に初飛行から三周年を迎え、150回200時間の飛行実績と、水平飛行で時速305ノットを記録している。


Bell V-280 Valor



これに対しシコースキー・ボーイングのSB>1は生産問題で出遅れ、複合ヘリコプター設計特有の超硬性ローターブレイドとギアボックスの組み合わせで課題に直面したのが原因だが、機体前方にローターが二重となり、後部に推進用プロペラをつけている。SB>1の飛行実績は二年未満で31回26時間の実績がある。速力は水平飛行で211ノットで両社の目標は250ノットだ。


両社と陸軍は同機設計の改良に必要なデータは十分得ており、ベルV-280と比較可能な機体になるという。


飛行時間以外にも重要指標がある。ボーイングのヘザー・マクブライアンは報道陣に、飛行テスト機に加え、推進系試験機、システム統合試験、風洞テストを活用していると説明し、このうち推進系試験機とは地上固定式のディファイアントで135時間運転を計上しており、システム統合試験室でのコンピュータシミュレーションは1,500時間超実施したという。


更にシコースキー・ボーイング、ベル両陣営は競合実証リスク低減Competitive Demonstration & Risk Reduction (CDRR) 契約を陸軍と結び設計の完成度をあげようとしている。


シコースキー・ボーイング両社はV-280より速力が劣るものの、両社設計案は陸軍の戦術ニーズによりよく適合すると主張。複合ヘリコプターは基本的にヘリコプターなので、陸軍で供用中の機材と違和感なく運用でき、訓練、戦術、支援施設の変更点は極めて少ないとする。ディファイアントは現行UH-60より大型かつ高速になるが、全長及びローター直径はほぼ同じで、同じサイズの着陸地点に収まる。


V-280はティルトローターで大型ローター2つを航空機に似た形状の主翼に装着し、全幅は供用中ヘリコプターより大きくなる。だが、同機は全長が短い。このためベルはV-280は90度向きを変えればUH-60用の着陸地点に収まると説明。そうなると、同じ機数の機材を運用するとしても角度を変えての運用となる。ただ、UH-60やディファンアントで運用可能となっても、V-280では使えない場所が生まれそうだ。


Sikorsky-Boeing photo

SB>1ディファイアント(左上)とUH-60ブラックホークの機体サイズ比較。 同じサイズの着陸地点で運用可能とアピールする。



シコースキー・ボーイング両社はディファイアントは低高度での取り扱いがV-280より優れると主張し、これは陸軍パイロットには重要な観点だ。ベルは当然ながら反対意見を示している。


またシコースキー・ボーイング両社はディファイアントは機体下に貨物を吊る輸送スリングローディングが長距離でも実施可能と述べている。V-280でもスリングローディングを実証したが、最大重量や長距離は試していない。両陣営ともに実際のスリングローディング能力は未公表なので、公平な比較はできない。


報道陣に判断がつかなかったのは機敏な飛行性能についての両社の言い分と自律飛行ソフトウェアでパイロット負担を減らすとの説明内容だ。またどちらが整備が楽なのか、モジュラーオープンシステムズアーキテクチャーModular Open Systems Architecture (MOSA) のインターフェイスで本当に性能改修の実施が容易になるのかが判断できない。


当然ながら米陸軍はデータ全てを入手して選定に向かう。最終選定の予定は2022年で、採用案の戦闘部隊配備開始は2030年の目論見だが、COVID-19収束後の予算で負担可能なら、という条件付きだ。



この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


Defiant-X: Sikorsky, Boeing Unveil FLRAA Design 

By   SYDNEY J. FREEDBERG JR.

on January 25, 2021 at 6:31 AM


2023年度予算で戦術機材構成を検討中の米空軍に、F-16調達再開の動き。F-35に不満がたまり、調達規模縮小案も。ステルス偏重の是正は健全な動き。

 ステルス機偏重、F-35命の米空軍の硬直していた姿勢がここに来て大幅に変化しています。現実の世界を眺めたというより、いつまでたっても完成しないF-35、ステルス対抗技術の出現で、ロッキードの宣伝文句が色あせてきたのが理由でしょう。一方、日本は一生懸命F-35を導入しているのですが....F-15につづいて F-16の新規調達が実現すれば、1970年代の投資が今でも有効だと証明されますね。

 

ステルスF-35の後方を飛ぶF-16が新しい「素晴らしい」性能を提供すると米空軍に新規製造機体の

調達を期待する声が出ている。

Credit: U.S. Air Force

 

空軍関係者にロッキード・マーティンF-16の新規発注が話題に上がっている。空軍での同機の最終号機受領は20年も前のことだ。戦術機材構成の検討が進行中で、2023年度予算要求ではF-16、ボーイングF-15EX、新型のいわゆる消耗品扱い機材、および次世代戦闘機がこれまでロッキードF-35Aが独占してきた予算を奪い合う構図となる。

 

検討作業は空軍が旧式化進む戦闘機や代替機材がないまま能力不足が埋まらない中で進んでいる。F-16生産はサウスカロライナ州グリーンビルで今も続いている。ロッキードは海外向け需要に答えるべく同機組立ラインを2019年に同地へ移転した。

 

「サウスカロライナのF-16新生産ラインを見ると、大幅に機能が改修されており、装備能力の向上にも参考となる」と空軍次官だったウィル・ローパーがAviation Weekに任期終了一日前に述べている。

 

ローパーは在任3年を通じ空軍の調達方法に一連の変革を導入した。また戦新型機を模擬敵機にする検討もしていると述べた。スカイボーグ事業をローパーは2018年に開始し、自律機体制御で新しい形の無人機システム(UAS)を確立し、各種ミッション実施を目指すもので、損耗が苦にならない安価な機体価格とする。こうした自律かつ損耗覚悟の性能により訓練で敵機役を演じさせたいとローパーは述べた。

 

敵機役のミッションはAI応用のUASに大きく進歩する機会となる。「敵機役をUASに任せられれば大幅に予算を節約できる」

 

新規生産F-16と消耗品扱いのUASを空軍に加える構想は2018年に生まれており、空軍戦闘統合能力開発部門が空軍戦闘機ロードマップを起草した。Aviation Week はこの文書を2020年12月に入手し、内容にはF-35発注量を当初予定の1,763機から1,050機程度に抑えるとある。

 

20年にわたり、空軍首脳部は2,100機程度の戦闘機部隊を全機ステルスのロッキードF-22とF-35にするよう求めてきた。今回判明したロードマップでは将来の機材構成に非ステルス機も検討対象としている。

 

2019年に空軍がF-15EX新規生産144機中で先行8機を調達する予算を要求した時点で、予想外の動きとなった。戦術機機材構成検討では非ステルス機に戦闘任務を想定する。F-15EXはF-15C後継機という以外に機体中央部に7,500-lb兵装を搭載可能でロケット推進式の極超音速滑空爆弾を運用でき、戦術機の不足を埋める機体になる。

 

「F-15EXは検討の価値がある機体だ」とローパーも認める。「敵地侵攻能力よりも兵装搭載量が大きい点、特に極超音速兵器の運用が可能なので制空権が確保できない空域でもF-35と別の任務をこなすだろう」

 

空軍は戦闘機4型式の発注が可能となる。F-35A、F-15EX、F-16ブロック70/72および次世代戦闘機であり、ロッキードF-22とA-10の供用も続ける。空軍は同じロッキードに発注を二分することになりそうだ。

 

非ステルス機に新たな任務が検討されているのは、ステルス機の高コストにペンタゴン最上部で不満が高まっている裏返しとも言える。クリストファー・ミラー国防長官代行(当時)は1月14日報道陣からF-35について問われ、国防総省で最大規模の兵装システムになった同機を「いまいましい存在」と述べた。

 

ローパーもF-35Aの維持費水準に空軍が我慢できなくなってとロッキードに伝えた。同社は平均時間あたり運用コストを2025年までに25千ドルと、2018年水準から25%下げると回答した。だが退官が近くローパーはその削減スピードでは満足できないままで、空軍はF-35を年間48-60機調達しようとしている。

 

「買いやすい価格の戦闘機を一括調達するまで道は遠いと見ている」とローパーは報道陣に1月14日語っている。「このため、別の戦術航空機材の選択肢が魅力を増してくる。競作となれば、業界に圧力となり改善が進む」

 

空軍のもう一つの選択肢が次世代戦闘機だ。次世代制空戦闘機(NGAD)の詳細は非公表のままだが、ローパーは昨年9月に飛行実証機が秘密のうちに飛行していることを認めた。次世代戦闘機のエンジンは競作で2025年に選定され、2026年度に実機生産の準備が整うだろう。

 

同機が実現すれば空軍にはハイエンド戦術機の機種構成が完成し、一方でF-35にはブロック4アップグレードを2025年度まで受ける。

 

航空戦力アナリストの中にはF-35のさらなる予算削減が可能性を帯びてきたことに警戒する向きがあある。空軍協会のシンクタンクのミッチェル航空宇宙研究所はローパー在任中のR&D優先方針に批判的だ。ローパーの指揮下で高度戦闘管理システムを戦闘機増産より優先している。

 

「優れた調達専門家なら広義の政治的意味を読み取るべきだ」とミッチェル研究所専務理事のダグラス・バーキーが語る。「R&Dをやっている場合ではない。レーガン時代の軍備拡張が成功したのは各軍に実物の装備が導入されたためだ。トランプ政権下の空軍は機会を逸した。F-35が生産ラインから出てくるがブロック4がないまま不完全な状態でも、まず調達数を最大限にし、その後改修すればよい」

 

ただしローパーには空軍のF-35A要求が48機のままでその後議会により三年間にわたり12機が毎年追加された事態を弁解するつもりはないようだ。

 

「多数調達して戦闘能力で問題を拡大するより、世界最高性能の装備の調達数を少なくした空軍を支持する。戦術機の構成を眺めると、長期間に渡り持続可能な水準で戦力を活用できるよう変更の必要性がある」と述べた。

 

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Steve Trimble January 21, 2021