2021年3月5日金曜日

期待はずれに終わった装備品----実戦化したものの失敗した装備品から教訓を学ぶ----(1)米陸軍向けM551シェリダン軽戦車の場合

 

 

この装備品はなぜ失敗に終わったのか

失敗から学ぶ兵器史 M551シェリダン

 

現場部隊は必要な場面で現れるシェリダンを頼もしく思ったが、兵装に問題があり、機構上のトラブルが多すぎた。

 

M551シェリダン軽戦車は今となっては懐古の趣がある。登場した当時は画期的な兵器システムだったが、いろいろな要素がからみ、実戦で失敗作だと実証してしまった。しかし、同戦車数百両が戦役3回に投入され、それなりに有益さを発揮し、1990年代に用途廃止されると戦力構造でギャップを残し、米陸軍は今もその穴埋めに苦慮している。シェリダンは空輸で容易に移動可能で、パラシュート投下もできたためだ。

 

南北戦争時の北軍騎兵隊将軍の名前を冠した同戦車が導入された時点で米陸軍は主力戦車を優先し、軽戦車の概念そのものは廃止寸前だった。装甲、火砲を犠牲にし高速力を実現する軽戦車は、全てをバランスよく実現した車両が生まれれば無用の存在になると思われていた。

 

ただし、当時のパットン戦車は最大時速30マイル程度と低速で、空挺師団に軽戦車は不足していた。第二次大戦の経験から空挺部隊は敵装甲部隊の前には脆弱とわかっていた。米陸軍はこれ以前にグライダー搭載可能のM22ローカスト戦車を開発し、ライン河作戦で空挺部隊と投下されてていた。さらにソ連は水陸両用のPT-76軽戦車の配備を始めており、米陸軍も同等装備品の導入の必要を痛感した。

 

 

そこで13億ドルを投じ「装甲偵察/空挺強襲車輛」M551シェリダンが実質上の戦車として1,562両が1966年から1970年に量産された。車両重量15トン、時速43マイルのシェリダンは乗員4名を薄い鋼鉄装甲砲塔とアルミ車体に乗せた。浮体装備をつけ、時速3マイルで渡河通行が可能だった。

 

シェリダンで最も目を引く特徴がM81で152ミリ主砲・ミサイル発射装備だった。パットン戦車の90ミリ・115ミリ主砲より強力な薬莢なしの砲弾を発射可能な短砲身では必要な精度が長距離射撃で得られず、敵戦車の装甲貫徹も不可能だった。そこで、中長距離の敵装甲車輛にはMGM-151シレーラ対戦車ミサイルを発射した。射程は3キロ程度であった。シェリダンはシレーラを9発、砲弾20発を標準搭載し、.50機関銃、7.62ミリ機関銃も搭載した。強力な火力を軽戦車に詰め込むのはすぐれた発想のように思われた。

 

影響力の強いクレイトン・エイブラムズ大将がシェリダン構想を支持し、152ミリ砲弾が利用可能となると、第一陣として200両をヴィエトナムに1969年1月に送り込まれた。第4騎兵連隊第3戦隊ならびに第11装甲騎兵連隊「ブラックホース」の各戦車中隊に導入され、大型で鈍足のM48パットン戦車に交代した。だが、実戦投入されると新発想の兵装が欠点を露呈した。

 

シェリダンの軽量車体は主砲発射で飛び跳ねる事が判明した。車長がハッチから外を覗いていれば胸部負傷の恐れがあり、ミサイル用の電子装備が機能不全になった。これに自動装填装備の実行速度が低いことが加わり、毎分2発しか発射できなかったが、M48では経験をつんだ搭乗員なら毎分12発以上発射できた。さらに、無薬莢砲弾の推進剤が漏れやすく戦闘場面で危険な状況になることがあった。

 

ただしシェリダンの最大の欠点は軽戦車の宿命とうべき残存性にあった。M551の装甲は重機関銃なら跳ね返したが、地雷やロケット推進手榴弾には脆弱だった。更に悪いことに敵弾が貫通し車内で152ミリ無薬莢砲弾が誘爆すると致命的だった。アルミ車体は引火しやすく、乗員の生存は厳しかった。第12装甲騎兵連隊は渡河作戦で一度に3両のシェリダンを地雷で喪失した。第11装甲騎兵連隊では5両がヴィエトコンのロケット推進手榴弾で破壊された。あわせて約100両をヴィエトナムで喪失している。ヴィエトナムにはシレーラミサイルは投入されなかったが、この装備も失望ものだった。故障が多く、赤外線センサーは800メートル以上ないとロックできなかった。陸軍はM81とシェリダンをM60A2「スターシップ」パットン戦車の後継装備品として投入したが、供用期間は10年に満たず第一線を退いた。

 

とはいえ、シェリダンは現場部隊に好評だったとの報道がある。152ミリ砲弾は強力な威力を印象づけ、M625キャニスターにフレシェット弾数千発を入れ、タイニン、ビエンホアの両戦闘でヴィエトコン部隊に大損害を与えた。またシェリダンの低地上圧はパットン戦車では通行不能な場所でも有効でヴィエトナムの地形に合っていた。前線部隊ではシェリダンを改造し、.50機関銃に防御板をつけたり、地雷対策として追加側面装甲をつけていた。

 

装甲騎兵連隊の撤退が1972年に完了し、シェリダンもヴィエトナムでの供用を完了した。陸軍は1970年代末から順次この複雑な構造の車輛を騎兵部隊から廃止していった。しかし、空挺部隊では後継機種がないため、そのまま残り、M551A1 TTS仕様として熱探知機能で夜間戦闘に備えた改良型になった。

 

1989年のパナマ侵攻には73装甲師団第3大隊のシェリダン10両がC-130から初めてパラシュート投下されたが、これが唯一の事例となった。M551はさらに4両が戦闘開始前に送り込まれ、パナマ警備隊陣地を強力な火砲で攻撃した。その際に使われた低速空中投下用パラシュートの作動には困難がつきまとい、M551のうち2両は沼地に投下され、回収できなくなった。残りの車輛は稼働状態にされ、パナマ独裁者ノリエガの部隊と市街戦を展開した。

 

一年後にシェリダン51両が第82空挺師団とサウジアラビアに急派された。砂漠の嵐作戦で、米陸軍の軽歩兵部隊の防御にあてられた。この動きでサダム・フセインのサウジアラビア侵攻を食い止める期待があったが、大量の装甲部隊による侵攻シナリオが実現せず幸運だったと言える。その間に米国は重装甲部隊を現地に送り、戦力を構築できた。

 

シェリダンが実戦投入されていれば、イラク戦車の餌食になっていただろう。それでも同軽戦車にも湾岸戦争で活躍の機会がやってきた。イラク陣地にミサイル数発を発射し、T-59戦車一両を撃破している。これが88千発も生産されたシレーラで唯一の戦果となった。

 

シェリダン戦車は82空挺師団の急速展開部隊用にその後も共用されたが、1996年に用途廃止となった。多くが敵軍想定部隊として国家訓練センターで使われたが、これも2003年に廃止され、その後人工環礁として生涯を終えている。

 

空挺部隊にはシェリダン戦車を上回る後継装備品は実現していない。陸軍はM551に軽量105ミリ砲を搭載し、同様の火力を搭載したXM8と試用した。結局、車輪走行式のM1128ストライカー機動砲装備を採用した。

 

現時点の空挺部隊には対戦車装備としてジェヴェリンがあるが、他方で軽戦車があれば敵拠点の突破など歩兵部隊に頼もしい支援が実現する。小火器攻撃なら無傷でいられる。近年のアクティブ防御装備なら小型対戦車兵器にも有効だろう。

 

M1エイブラムズ戦車にはシェリダンと同等の高速走破性能があり、火力装甲ともに相当強力なうえ、C-5輸送機に搭載可能だ。だが、車重70トンの同戦車は橋梁も破壊しかねず、燃料補給や整備が負担となる。当然、パラシュート投下は不可能だ。■

 

 

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Tank Trash: Why the M551 Sheridan Ultimately Failed`

March 3, 2021  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: U.S. ArmyTanksArtilleryDefenseMilitarySheridan Tank

The tank had troublesome armament and inadequate armor.

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

 

This article first appeared in 2019.

Image: Wikimedia Commons

 


2021年3月3日水曜日

太平洋の島しょを移動しながら作戦を行い、中国の攻撃を免れようとするアジャイル戦闘展開構想を試行したコープノース演習

 Two F-35A Lightning IIs fly over the Atlantic Ocean in 2018.

Two F-35A Lightning IIs fly over the Atlantic Ocean in 2018. U.S. AIR FORCE PHOTO BY AIRMAN 1ST CLASS ALEXANDER COOK

 


ジェット2機が同日内で別の飛行施設から発進し、別々のミッションを展開し、攻撃を狙う中国を混乱させる...

太平洋空軍(PACAF)は遠隔島しょ部基地多数からの攻撃を統合し、中国軍の標的になる前に迅速に作戦を展開しようと必死で、このたびコープノース演習でこのコンセプトを試行した。

 

「アラスカのエイルソン空軍基地のF-35の2機をグアムのアンダーセン空軍基地まで展開し、翌日に2機を出動させ、パラウに着陸させた」と太平洋空軍司令官ケネス・S・ウィルバック大将が空軍協会主催イベントで述べた。「C-130を地上給油用に1機派遣し、2機が地上にいたのは一時間未満で、そのまま離陸し、別のミッションをこなしてからアンダーセンへ帰投した」


今回試されたのはアジャイル戦闘展開ACEで指揮命令系統似従来より機動性を持たせるのが狙いだ。ウィルバック大将は中国を念頭に強力な敵軍と対峙を想定すれば必要な新機軸だと説明している。「アジャイル戦闘展開では出発地に戻らないことが多くなる...それだけ敵にとっては出発地点が見つけにくくなるし、何時間展開しているのか、どこから出発したのかがわかりにくくなり、敵としては標的の策定が困難になる」

 

欧州の米空軍部隊も同じコンセプトを試行している。しかし、ヨーロッパの基地の防御はずっと簡単だとウィルバック大将は指摘する。「各基地には道路網が接続しているが、こちらにはない。そのためこちらでは補給活動の難易度が高い。ということはこちらの基地防御も極めて薄く、艦船機材も絶えず移動させておく必要がある」

 

PACAFでは空軍隊員の訓練を進め広範な任務を実施する能力を確保することがアジャイルにつながる。これをコープノース演習でも行っている。警備担当の隊員が給油作業について、さらに通信について学ぶといった格好だ。「これで少ない人数でも一定の機能を実施できるし、補給活動そのものも減らせる」とウィルバック大将は述べた。

 

5月には2回目の演習をアラスカで行う。ウィルバック大将は「さらに大規模になる」とし、海軍、陸軍も参加するという。■


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Island-Hopping F-35s Test Pacific Air Forces’ Agility Concept

BY PATRICK TUCKER

TECHNOLOGY EDITOR

FEBRUARY 24, 2021


2021年3月2日火曜日

B-2スピリットにあらためてEMP攻撃への防御力を強化する意味とは。


EMP攻撃が制御可能な形で実施できるのか不明ですが、シナリオとしてはもっとも恐ろしい影響を与えるはずで、我々の生活が電気中心となっているなか、テキサス州のように大規模停電が発生すれば飲水も確保できなくなります。防御策を強化しても攻撃側が出力を増やせば効果がなくなるといういたちごっこの構図になるはずですが、サイバー含め日本も真剣にこのシナリオを考えておかないとまたもや想定外として言い逃れをする状況を許すことになります。



Airmen prepare a B-2 Spirit for takeoff.

Airmen prepare a B-2 Spirit for takeoff at Naval Support Facility Diego Garcia in support of a Bomber Task Force mission, Aug. 17, 2020. (U.S. Air Force/Tech. Sgt. Heather Salazar)

 

空軍がB-2スピリット爆撃機で電磁パルスEMP攻撃への防御強化を目指していることが政府調達関連公表サイトから判明した。

 

空軍物資司令部が先月から「B-2をEMPから防御する技術の性能一式」及び関連提案を公募していることをMilitary.comに認めた。

 

情報開示の締切はすでに終わっているが、空軍は引き続き同機の「残存性増強」のため近代化改装を狙っていると同司令部は述べている。「B-2装備担当部門は近代改修を続け核攻撃の指揮統制通信 (NC3) の機能を維持していく」(同司令部)。

 

EMPとは核爆発の際に発生する膨大なエナジー放出で電気系統を機能一時停止あるいは破壊する効果がある。中国のEMP攻撃に米国は脆弱と警告する向きもあるが、EMPより核爆発そのものに注意すべきとの声もある。

 

EMPは自然現象の地磁気嵐でも発生するが、いずれにせよ爆撃機には脅威となる。ドナルド・トランプ大統領は2019年に米政府各省庁に対し、EMP攻撃への対応での調整を求める大統領命令を発出した。その内容では研究開発を続けて脅威が最も深刻な影響を及ぼしかねない機能の防御策を求めており、全国送電網や軍事装備品、基地を対象としていた。

 

B-2のエイビオニクスは一部兵器からの攻撃に「耐える」強化策を施されている。今回想定する改修では「画期的手段により接近阻止領域拒否環境でも兵装としての有効性を維持し残存性を高める」のが目的と物資司令部は述べている。A2/ADとは敵部隊の陸海空活動をさせないための軍事戦略であり実施体制を意味する。

 

B-2の性能を段階的に引き上げる計画だが、具体的な内容は保安上の理由で説明できないと物資司令部は説明している。

 

B-2は20機あり、B-21の供用開始となる2020年代中頃までは唯一のステルス爆撃機だ。ただし、空軍はB-2の退役を2032年より開始する予定。

 

B-52Hストラトフォートレスは2050年代まで供用予定で、現時点でEMP防護テストが行われている。

 

空軍発表資料によればティンカー空軍基地(オクラホマ)のコンパス・ローズテスト施設でアンテナから電磁エナジーを機体に放出する実験を昨年行っていた。

 

EMPで機体がどう反応するかを実証すると、同基地の第555ソフトウェアエンジニアリング飛行隊が説明していた。機体に何が発生するのか、性能への影響はどうなるのか、電子装備に影響が出るのかをテストしたという。

 

空軍は実験はトランプ大統領指令に沿うものであり、同時に2017年の国家安全保障戦略でも中国、ロシアの脅威の高まりを強調し、両国がEMP技術に関心を高めていると指摘していた、と説明している。■

 

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Air Force Wants to Harden the B-2 Bomber to Withstand an EMP Attack

22 Feb 2021

Military.com | By Oriana Pawlyk




 

2021年2月28日日曜日

第6世代戦闘機では長距離性能を有する太平洋仕様が必要と米空軍トップが発言。F-35の性能限界を認めた格好だが、初飛行済みと言われる第6世代機は依然として実態がつかめません。

 https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2020%3Anewsml_RC245G9NSOF1&share=true

 

 

空軍が極秘開発中の第6世代戦闘機で「太平洋仕様」を検討している可能性がある。

 

第6世代戦闘機は昨年突如として想定より早く飛行開始し多くを驚かせた。極秘機体であり判明している内容は皆無に近いが、同機について空軍参謀総長チャールズ・ブラウン大将はヨーロッパ仕様、太平洋仕様の2種類の開発を想定していると述べた。

 

ブラウン大将は具体的な構想を明らかにしていないが、2021年空軍協会年次シンポジウムの席上で記者から尋ねられ、開発を否定せず、太平洋での戦闘機には今以上の航続距離が必要となることは認めた。

 

偵察や攻撃任務では日本やオーストラリアのような友好国との距離を考慮すると航続距離を延長する技術は必須と言える。とくにステルスが機能を発揮できる高度防空体制を想定すれば、この必要が痛感される。つまり、新型かつ高性能化する防空装備の前に非ステルス給油機では探知、被撃墜を免れなくなる。このため第6世代機ではステルス性能に加え、従来を上回る後続性能が求められる。新型エンジン技術では燃料効率が大幅に改良されており、これから改めて注目を集めそうだ。

 

ステルス効果が期待される機体一体型燃料タンクはすでにF-15EXやF/A-18スーパーホーネットに搭載されている。速力を上げつつ燃料消費を抑える技術課題が解決されれば、長距離ミッションが実現し、滞空時間も伸びる。グアム、さらに南下してオーストラリアを離陸した第6世代戦闘機が北朝鮮上空に進出し偵察あるいは攻撃任務を実施可能となればどうなるか。

 

 

米空軍は2015年からジェネラルエレクトリック他業界各社と連携し、適応型多用途エンジン技術の実現にむかっており、狙いは航続距離、速力、燃料消費をそれぞれ改善することにある。この開発で生まれる新技術が今後意味を持ってきそうだ。


GE

 

ヘリコプターは固定翼ステルス戦闘機と全く別の存在だが、少なくともコンセプト上では陸軍が次期垂直離着陸機の初期段階で成功を収めていることから従来型を上回る速力と航続距離双方の実現は可能だとわかる。新型アパッチは燃料効率に優れた701Dエンジンならびに改良型タービンエンジン技術を搭載してこれを実現している。今後注目すべきはエンジン、推進系の技術分野だ。■

 

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6th Generation: What the U.S. Navy Wants in Its Next Stealth Fighter

February 27, 2021  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryU.S. NavyStealthSixth Generation FighterSixth-Generation Stealth Fighter

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


2021年2月27日土曜日

シリア空爆作戦の第一報。空爆効果は限定的でイランへのメッセージとしての意義のほうが大きい。イランは米政権交代で淡い期待を早くも裏切られた格好だ。

 

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340th EARS refuels F-16C's and F-15E's  over Iraq

USAF


爆はバイデン政権による初の軍事作戦で、イラン対応で新しいパラダイムを整備したと言える。


米軍によるとイランが支援するシリア国内の戦闘員に空爆を実施したのは先週発生した北イラク、アルビル空港へのロケット攻撃への報復とのことである。空港攻撃で米主導の連合軍によるイラク、シリアのISIS攻撃作戦を支える民間企業社員一名が死亡したほか、米軍隊員数名が負傷していた。今回の空爆はジョー・バイデン大統領による親イラン集団へ向けた初の攻撃となった。


ペンタゴン報道官ジョン・カービーは2021年2月25日に声明文を発表し、バイデン大統領が非公表の施設数カ所の空爆を直接命令したとある。その他報道から今回の標的はシリア国境地帯のアル・ブカマル周辺に展開するイラン支援を受ける各種集団とわかる。報道資料ではイラン支援を受ける集団としてカイティブ・ヒズボラおよびカイティブ・サイイド・アル−シュハダを例示している。カイティブ・ヒズボラはイラクに本拠地を置く特に強力な親イラン武装組織で、これまでも米軍の標的となっていた。


GOOGLE EARTH

A map of the region, with an inset focused on Al Bukamal in Syria.


今回発表の声明文を紹介する。

バイデン大統領の命令により、米軍部隊が今夕早くイラン支援を受ける戦闘員集団が東シリアで利用中のインフラストラクチャを空爆した。今回の空爆は最近発生したイラク国内の米国・連合国の人員を狙った一連の襲撃への対応として許可が出ており、現時点も脅威は続いている。具体的には今回の空爆作戦で国境地帯の複数地点の破壊に成功し、標的にはカイティブ・ヒズボラ(KH)およびカイティブ・サイイド・アルシュハダ(KSS)を含む。

今回の軍事対応は外交措置と並行して実施されたもので、連合軍派遣国と協議を行った。今回の作戦で明白なメッセージを送った。バイデン大統領は米国ならびに連合軍派遣国の人員の防御に注力する。同時にシリア東部、イラク双方の全体状況の緊張緩和をめざし熟慮あるかたちで実行した。

ロイド・オースティン国防長官は空爆の発表を受けワシントンに移動中の機内で報道陣に「選択した標的は撃破できたと確信する」「攻撃対象の各施設は以前の襲撃を実行したのと同じシーア派戦闘員が利用していたのは間違いない」「以前から繰り返し、我が国はこのまま黙っているわけではないと述べてきた」と述べ、空爆作戦をバイデン大統領に進言したという。


フォックスニュースのジェニファー・グリフィンは米空軍の「F-15」が空爆に投入されたと報道した。状況からF-15Eストライクイーグルであることは確実で、興味ぶかいのはアル・ブカマル上空の空域はシリア国内に進駐しているロシア軍が統制している点だ。ロシアはシリアのバシャ・アル−アサド独裁政権を支援している。ただし、今回の空爆がロシアと調整して実施された兆候はない。


フライト追跡ウェブサイトを見るとE-11A戦場空中統制ノード (BACN) 機が空爆時に同じ空域に一機展開していた。同機は高性能通信機材を搭載し各種部隊間で情報共有を実現する。空中給油機のKC-10A エクステンダーも一機同じ空域に飛んでいた。


空爆数日前には米特殊作戦部隊の偵察機材が空爆地点周辺を飛行していたことがわかる。


フォックス・ニュースのグリフィンは空爆は念入りに計画され、指揮命令所や補給処を物資ともに破壊し、人員殺傷は二の次だったとも伝えている。政府関係者は「強い警告射撃」でイランならびに代理勢力に「警告」を送ったと述べているとも報じた。


今回の空爆地点はヒズボラやイランの支援を受けたシーア派戦闘員が利用するイラクへの移動地点で、実施時間では大量の負傷者を発生させないよう勘案されていた。軍関係者によれば指揮命令施設、補給施設が標的となり、建物2棟が吹き飛び出火した。


昨年のことだが、イランの支援を受けた勢力がアル・ブカマルの本拠地を拡張している兆候が見つかり、地下施設も新規構築された。この基地は2019年に米軍の空爆を受け、2020年にもイスラエルが独自に展開する親イラン代理勢力への攻撃の一貫で空爆している。


今回の空爆の標的が何だったのか正確に判明していないが、わかっているのは空爆の計画と実施に意味があることだ。バイデン政権はエルビル襲撃の首謀者への報復によりイランへ明白なメッセージを送りながら、直後のエスカレーションのリスクを可能な限り低く抑えた。

 

これはドナルド・トランプ前大統領時代に同様の事態にイラクで対応した事案と対照的である。ペンタゴンが同盟国協力国と事前調整したと公言していることから、前政権の方針や外交姿勢との違いを強調するねらいもあったのだろう。

 

すべてはバイデン政権が物議を醸したイラン核開発をめぐる多国間取り決めへの完全復帰を画策する中で、一方でバイデンは合意内容を完全履行するまで制裁解除はありえないとも述べている。トランプ大統領により米国はイラン合意から2018年脱退した。

 

今回の空爆がイラン支援を受けるシリア国内戦闘員を狙い、意図したメッセージがイランにどう受け止められるかはまだわからない。ただし、一定条件がそろえば、バイデン政権が軍事力の行使もためらわないことが明らかになった。■

 

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Biden Strikes Back: What We Know About The Bombing Raid On Iran's Militias

BY JOSEPH TREVITHICK FEBRUARY 25, 2021

THE WAR ZONE


2021年2月26日金曜日

中国包囲網が強まる。NATOもついに米国と協調し、中国に焦点を当て集団安全保障体制を強化へ。日本はどんな対応をするのか。

大西洋条約機構加盟国が集団安全保障で協力協調を強め、中国に対抗する米国に加わる。ロイド・オースティン国防長官は中国を「着々と脅威になっている」と評している。

 

NATO加盟国相とのリモート会議を終えたオースティン長官は中国封じ込めの動きがフィンランド、スウェーデン他EU加盟国から出てきたことを評価すると報道陣に述べた。

 

「NATOの中国対応を称賛し、米国は国際ルールをもとにした秩序を今後も防護する姿勢であると伝えた。中国は自国権益を前面に主張し、既存秩序の弱体化を狙っている」とのオースティン発言がペンタゴン発表の議事録でわかる。

 

NATOは旧ソ連に対抗するべく結成されたが、現在はその他地区も活動範囲に入れ、アフガニスタンでは9/11直後にNATO憲章第五条により加盟国が攻撃を受けた際の対応として部隊を投入した。衛星やネットワークで世界が緊密につながる状態でNATOが太平洋にで活動を展開する事態も当然考えられる。

 

これには多くの要素がからむ。その一つが中国が世界規模で拡張しようとしていることで、アフリカでは中国のやりかたは「経済帝国主義」とまで呼ばれ、影響力、所有権、権力を強めている。PLAはジブチの米軍基地近傍に新基地を構築し、同地区でプレゼンスを強化している。NATO部隊の行動範囲に入るアフリカにとどまらず、地中海でも中国のプレゼンスが見られ、NATOが警戒心を強めている。

 

ではNATOは太平洋でどれだけの戦力を展開できるだろうか。NATO加盟国が太平洋へ部隊を派遣し、共同訓練や演習を展開する可能性が関心を集めそうだ。宇宙サイバー両面には国境は存在せず、地理条件と無関係の影響が現れる。NATO加盟国の衛星群は中国のミサイル発射を探知する以外に中国軍の動きを追尾できるはずだ。

 

「ペンタゴンでも中国を課題の最上位におき、NATOの協力で作戦構想や予算投入戦略を練り直しこの課題に対応できるものと信じる」(オースティン長官)

 

ペンタゴンの最優先事項は安全保障、抑止効果、世界規模での脅威への対抗だが、報道会見では中国との緊張緩和の可能性について聞かれ、「共通する関心事項があり、相互に関与する余地はある」とオースティン長官は述べた。ただし同時に長官は相互関与も「あくまでも当方の利益を増進する視点でおこなうべきもの」と加えた。

 

「我が国の防衛であり我が国の権益の防護が一番の懸念だ。そのため、国防総省では正しい作戦構想、正しい立案、その実現手段として正しい機能を実現し、機能する抑止効果を実現していく。中国にかぎらず我が国に敵対するあらゆる勢力を念頭に置く」とオースティンは述べた。■

 

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Is NATO Getting Ready to Take on China?

February 21, 2021  Topic: NATO China  Blog Brand: The Buzz  Tags: NATOChinaJoe BidenLloyd AustinMilitaryU.S. Military

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


 

2021年2月25日木曜日

フランスが第3世代SSBN建造に乗り出した。水中核抑止力をなんとしても維持する姿勢。完成すれば2090年までの供用をめざす。

 


Naval Group Image

 

ランス国防相フローレンス・パルリがSNLE 3G計画が正式開発段階に入ったと2月19日発表し、フランスは第3世代の原子力弾道ミサイル潜水艦 (SSBNs)を建造する。

 

式典はノルマンディのヴァル=ド=ルイユで開かれた。ここにフランスで装備調達にあたるDGAが流体力学試験施設を運営している。

 

パルリ国防相は「第3世代SSBNはル・トリオンファン級よりわずかに長く、排水量も微増する。聴音能力を改良し、防御力が向上する。静粛度も高まる。海中の環境音の中と一体化し、運用上の優越性を実現する」と演説した。

 

フランスの2019-2025年の軍事計画法では四隻あるル・トリオンファン級SSBNsの代替艦として第三世代 SSBNs (SNLE 3G)に2035年から交代させるとある。フランスは常時一隻のSSBNを展開し、海洋配備抑止力を引き続き維持する。

 

フランス軍およびDGA (Direction Générale de l’Armement, フランス政府国防装備保調達技術開発庁)がSNLE 3G事業を統括する。産業界とは新型SSBNs4隻の開発、建造の大枠合意をめざす。このうちナバルグループが主契約企業となり、テクニカトムが原子力ボイラーを製造する。

 

第一段階契約は2021年中に交付し、開発研究を2025年までに完了する。

 

フランスの国防産業界200社以上がナバルグループと協同し、艦設計を完成させる。工期30年、100百万時間相当の作業量となり、設計に15百万時間、建造に80百万時間を想定する。

 

ナバルグループの潜水艦建造部門はシェルブールにあり、300名超が設計部門に従事し、建造部門で2千名が働く。シェルブールで艦体を建造し、各システムを搭載し、潜水艦として完成させる。

 

 SNLE 3Gの一部としてDGAはタレスとソナー開発で合意書を締結しており、各種ソナーとともに処理装置の開発を目指す。

 

タレスは新世代艦側部・艦尾曳航式ソナーを完成させる。これは光学技術をもとにした直線的アレイ(ALRO)で、その他として聴音アレイ、反響探知装置、水中通話を実現する。

 

センサー情報の処理に用いるALICIAは分析、探知、識別、分類、統合、警告の略で入手済みデータを活用し、操作員の負担を軽減しながら指揮命令を支援するのが狙いだ。

 

新型ソナーは段階的に性能を向上させ、最初の基本技術ブロックは第2二世代 SSBNs (SNLE 2G)に2025年から搭載される。第3世代 (SNLE 3G) 艦には2035年以降搭載となる。

 

テクニカトムは原子炉の設計、製造、搭載を受け持つ。同社によれば第3世代SSBNの原子炉には50年に及ぶ小型原子炉のノウハウを盛り込み、安全性を担保しながら軍用に必要なエナジーを実現する。SNLE 3G用の原子炉はバラクーダ級原潜の低出力原子炉と今後登場する次期空母 PANGとの中間の位置づけだ。K22と呼ばれる原子炉は高出力を実現する。設計研究は2020年12月8日のエマニュエル・マクロン大統領の決定を受け始まった。

 

SNLE 3Gの艦体設計はSNLE 2G(ル・トリオンファン級)の正常進化形となるようだ。先に登場したル・トリオンフォン級同様に見えるが、流体力学性能は向上し、艦体上を海流がなめらかに流れる。またポンプジェット推進方式を採用する。潜舵をX字形にしシュフラン級SSNとの共通性もあるが、曳航式アレイのため中央部にフィンをつける。想像図を見るとSNLE 3Gの艦体はすべて無音響タイルで覆うようだ。現在供用中のフランスSSBNでも同様のタイルが導入されているが、重要部分のみに装着している。無音響タイルはゴムあるいは合成ポリマー製でアクティブソナーの音波を吸収し、艦から出る音を低減する効果がある。

 

潜水艦に詳しいH.I.サットンによれば、艦首すべてをソナードームにするのは極めて大型の半球ソナーを搭載するためだと言う。魚雷発射管四門はソナードーム後方に配置する。発射管は外側に向け角度をつけているはずで、魚雷発射時に潜航速度に制限がつく。

 

式典会場でフランス海軍の SNLE 3G事業担当者は次期SSBNsは2035年以降の脅威に対抗する想定で、なかでもソナー探知を最も重視しているとNaval Newsに語ってくれた。

 

Naval Group Image

 

数字で見るSNLE 3G 

 

全長: 約150 メートル

排水量 15,000トン (潜航時)

乗組員: 100名程度

兵装:

  • 16x M51 SLBM(名称は M51.4か)

  • 4x 魚雷発射管、 F21大型魚雷および次期巡航対艦ミサイルFCASW を運用か

建造開始 : 2023年

初号艦の海軍引き渡し: 2035年

退役(級全体): 2090年

 

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By: Xavier Vavasseur

February 22, 2021 4:35 PM