2021年5月1日土曜日

F-35は失敗作?それとも画期的な新技術を満載した高性能機?簡単に結論づける前に事実を見てみよう。少なくともF-35の教訓は次期機材に活かされるべきだ。

 

(Lockheed Martin)

ラブル続きのロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機に再び失敗作のラベルを貼る動きが強まっている。まず財務上のトラブルがあり、さらに技術問題のため開発が「戦略的一時停止状態」に入っており、さらに機体への信頼性が欠如していると空軍高官が公然と発言しており、同機事業がここまで厳しい状況に直面したことはない。

これだけの逆風の中で、F-35事業は調達の失敗例と片付ける向きまで現れている。つまるところ、同機はあまりにも問題が山積みしており、本格生産に入れない状態なのに数百機が納入済みだが、実戦対応が完了しておらず、米空軍も同機の運用維持ができるのか自信が持てない状況だ。

F-35の真価とは。コンセプトと現実の対立

F-35は概念段階を脱しており、重要機材として期待が高まる存在だ。概念だけなら失敗、成功と簡単に区分できるが、現実の機体はそこまで簡単に区分できず、新技術も動員して原設計をどこまで実現できるかが勝負だ。これまでの従来と一線を画す機体には困難が付きまとうのが普通だった。F-35以上の費用が発生した機体は皆無だが、費用だけで期待される性能は否定できない。はっきりさせよう。F-35事業を肯定するわけではないし、同機を空軍の優先リスト最上位にいつまでもおいておくわけにはいかないと考える。同機に期待できる性能を客観的に見るだけだ。

概念設計としてはF-35は「合格」の区分に入るが、実現に向けた作業は「不合格」だ。ただこうした分類をしても議論のためにならない。F-35がもたらす画期的性能を見れば、ここまで投入してきた予算を生かして望ましい機能の実現を図る方法が見えてくるはずだ。あるいはその逆か。F-35の調達で得た教訓は次の戦闘機(あるいは別の形の機体か)の場合に活かされるべきだ。

数兆ドルを投じてきたことにつながる感情論とは別に、開発遅延で味わった苦しみとは別に、同機の本来あるべき姿を見つめ、今後数年で実現する機能に集中したい。失敗は確かにこれまであったが、だからと言って今後も未解決問題のまま留まるとは限らない。

会計の視点でF-35は恐怖の物語だろうが、運用側は大成功例ととらえている。

不可能を求めた出発点

X-35共用打撃戦闘機の実証機材 (U.S. Air Force photo)

 

その後JSFになった初期研究は判明している限りで1993年に始まっており、米国は短距離離陸垂直着陸可能な戦闘機を模索していた。

ペンタゴンは別の戦闘機開発事業に着目して仮説を立てた。単独機種が老朽化した各機種の代わりになれば、調達コストが節約でき、整備・訓練が合理化でき、補給支援の悩みが解消し、多数を展開することで、将来対応が容易になるのでは。実はこの想定にそもそも問題が潜んでいたのである。

世界初の実用ステルス機F-117ナイトホークを制作したロッキード・マーティンは初の実用ステルス戦闘機F-22ラプターも完成させ、共用打撃戦闘機選定でボーイング案を破り契約を勝ち取ったのは、ステルス機分野での知見とならび技術実証成果の好印象によるところが大きい。

現在は米国の三軍さらに海外の求める要求にこたえるのがF-35最大のセールスポイントになっているが、あたかも1990年代末にケネディ大統領が10年以内に月に有人飛行を実施すると公約したのと似ていた。問題は実現の方法が誰にもわからなかったことだ。

2000年時点で、『ステルス性があり、垂直離着陸可能かつ超音速飛行可能な機体の製造は可能だ』と言おうものなら業界の大半はそれは不可能、と答えていただろう」2000年から2013年までロッキードで同機事業を担当したトム・バーベッジがニューヨークタイムズに語っている。「当時の常識ではこれだけの機能を単一機体に盛り込むのは無理とされていた」

(Lockheed Martin)

 

超音速ステルス戦闘機でホバリングで強襲揚陸艦運用が可能な機体というと常軌を逸していたが、予算がつくと不可能が実現可能に見えてしまった。

不可能とされた機能の実現は多大な費用を必要とした

 

各軍の広範囲ニーズを一機で対応し、既存5機種に代わる機体を実現すべく、ロッキード・マーティンは新型機を三型式にすることとした。

F-35Aがこの中で従来型の多任務戦闘機に一番近い存在で、整備された滑走路で広く運用可能とする想定だった。二番目の海兵隊用F-35Bには方向転換可能なジェット排気ノズルと格納式ファンを搭載し、ホバリング揚力を実現し、強襲揚陸艦へ垂直着艦可能とした。あるいは未整備の間に合わせ施設での運用も想定した。最後に航空母艦運用を想定したF-35Cでは主翼面積を増やし着艦速度を低下させ、艦載機として過酷な運用に耐える仕様とした。

三型式で可能な限り共通化を図り、運用環境が違うが部品、生産、訓練、整備をなるべく同じにしようとした。即座に実現は困難だと判明した。

「三軍の要求を一つにまとめたF-35だが、多くの点で必要水準に達せず各軍が望まない機体になってしまった」(戦略国際研究所の航空宇宙専門家トッド・ハリソン)

ロッキード・マーティン設計陣は一番単純なF-35Aから作業を開始した。次にF-35Bに移り、計作業が始まると機体中央部にファンを内蔵する必要があり、設F-35Aを流用できないと判明した。B型には18カ月62億ドルが余分に必要となった。

(Lockheed Martin)

 

F-35開発で予想を裏切る進展が生まれたのはこれが初めてだったが、その後も同様の事態が発生している。一言でいえば、計画の甘さが原因とはいえ、F-35では前人未到の戦闘機開発をめざし、ロッキード・マーティンにはJSFを予算通り実現しても見返りがなかった。

並列開発という矛盾に満ちた用語

ロッキード・マーティンが要求実現に苦労することは米政府にも最初から分かっていた。ステルス機はF-117から最新のB-21レイダーまですべて機体価格と性能のバランスに苦しんでいるが、F-35の場合はバスケットに卵を多く乗せすぎた感があり、事態は急拡大した。ロシアのSu-35、中国のJ-10といった高性能第四世代戦闘機の供用が始まっているのに、米国のステルス戦闘機は開発中のままという事態が2000年に発生した。米国は困った事態になった。ドッグファイトの王者F-22はわずか186機製造で打ち切りとなり、F-35が唯一の新型戦闘機事業になった。そのため、同機にはいかなる機材より優秀となり、その座を数十年維持できることが求められた。しかも、即座にこの目標に向けスタートする必要があった。

この実現のためペンタゴンは「並列開発」、またの名を並行開発が最良の方策と考えた。並行開発では設計が固まった時点で生産開始し、テストで解決すべき問題が見つかれば完成ずみ機体に変更を加える。紙の上では新型高性能戦闘機の配備、パイロットや整備員の養成、戦術開発に有益で機材が成熟化してスムーズに部隊配備につながるように思えた。だが現実にはテスト完了前に機体製造が始まっており、完成済み機体の改修に巨額予算を投じることになった。

その後続々と問題が浮上した。2017年までに初期完成分のF-35A108機を放棄すべきか空軍も真剣に検討したほどで、214億ドルで調達した各機の改修が高額になるためだった。2020年末までにロッキード・マーティンが再び生産を停止したのは解決すべき問題が多くなりすぎたためだった。

こうした事態での支出が増えただけでなく別の財務上の問題が現れた。機体運用コストが法外な水準になったことである。非ステルス機ながら高性能を誇るF-15EXの時間当たり経費は28千ドルなのに対し、F-35では44千ドルになった。しかもF-35の稼働率はF-15EXの三分の一にも満たない。いいかえれば、F-35は開発で法外な金食い虫となったが、運用でも同様ということだ。このため空軍も安上がりな別機種との混合運用案を検討している。

f-35 failure(Lockheed Martin)

空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウンJr.大将もF-35について「同機の稼働を減らしたい」と発言しているほどだ。「通勤にフェラーリはいらないだろう。日曜に乗ればいい。『ハイエンド』戦闘機はローエンド戦闘に投入すべきではない。性能は必要な時に使いたい」

やはりF-35は失敗作なのか

いや、結論を急いではいけない。この記事をここまで読んだ方なら大事なのは実際に同機を操縦する戦士たちの声だとおわかりのはずだ。

規律ある支出の事業だとF-35事業は米空軍が擁護し、ロッキード・マーティン社員にも守られていると耳にすることがあろうが、性能に限れば同機を賞賛する声が多数あるのも事実だ。

「ウィングマンは新米のF-35乗りで訓練飛行を7回か8回こなしただけだった」と388作戦集団司令のジョシュア・ウッド大佐がレッドフラッグ演習での出来事を語っている。「そいつが高性能第四世代機に乗る3千時間の飛行経験のパイロットに無線交信してきたんだ。『方向を変えないと死ぬぞ。危険がすぐそこまで来ているぞ』とのたまうのだ」

ウッド大佐によれば、この「新品」パイロットはわずか一時間で3機撃墜の成果を上げた。

こうしたエピソードが同機をめぐる悪いニュースほどに伝わってこない理由がある。まず、悪いニュースは売れるし、読者も高額の値札が付く米国装備品の失敗に食指を動かされがちで、戦術面での業績達成は注目を集めない。二番目はやや微妙だ。戦闘機というと映画「トップガン」の世界を思いがちだが、F-35はそのような想定で運用できないのだ。

F-35共用打撃戦闘機はF-15より速力が劣り、退役ずみのF-14の運用高度に達せず、F/A-18より搭載兵装量が低く、かつ機敏な飛行性能ではF-16の比ではない。戦闘機の機能で思いつく分野すべてでF-35には旧型機をしのぐ性能がない。ただし、ステルス以外にも同機の優れた性能が実は存在する。

データ融合こそF-35最大の武器f-35 failure(Lockheed Martin)

F-35は音速を超えた速力で飛行し、防空体制の整った空域に進入しペイロードを投下し、ヘリコプター空母に着艦できるが、これらは同機を特別の機材にする理由の一部にすぎない。最重要な機能として多くの専門家が言及するのは敵探知を逃れ兵装を投下するためのステルスよりも、情報を吸い上げ処理しパイロットに適切な情報として提供する能力だ。

戦闘機パイロットも元をただせば普通の人間と変わりないが、機内でこなす仕事は想像を超えた困難の連続だ。体力の限界以外に強い精神力と集中力が必要なのだ。

第四世代機でさえパイロットは20を超えるダイアル、数値に集中を迫られ、水平線、周囲の空域に目を凝らして敵機をさがし、ミサイルの接近がないか警戒するの作業を同時に行う。

f-35 failure運転中にラジオに気を取られ事故を起こすドライバーもいるのに、これだけの計器類を操作しながら敵機がこちらに向け攻撃してくる状況を想像してもらいたい。 (Cockpit of an F-111 Aardvark, courtesy of the U.S. Air Force)

 

こうしたダイアル、センサー、画面にデータが次々と流れる。上空の状況も含め頭にすべてが入るかはパイロットの読み取り能力に左右され、ときには二種類のセンサーがそれぞれ食い違う情報を示すこともある。ドッグファイトとなればこうした計器にかまう暇はない。

F-35では信じられないほど高価な特注ヘルメット、強力な機内コンピュータを使い情報すべてを処理し、追加し、さらに別の機体、地上部隊、衛星、海軍艦艇からのデータを取り入れる。コンピューターが情報を抽出し分類し、再構築してわかりやすい形でパイロットの目の前に提示してくれる。計器多数を扱い、敵機を目視でさがすかわりに、視界内に重要情報がすべて提示されるしくみをF-35パイロットが利用できる。敵機の情報、友軍部隊の状況、ミッション目的など一目で理解できるが、機内の高性能コンピューターはこれ以外の仕事もこなしてくれる。

F-35のデータ融合機能でパイロットが得る状況認識の程度はこれまでの機材では実現できなかったものだ。データ共有で効果は複合的に増大する。F-35単機から第四世代各機の戦闘効果を増やす効果が生まれるのは、戦闘空域の状況情報を中継することによる。この結果としてF-35を「空のクォーターバック」と呼ぶパイロットは多い。戦闘を一変する性能だ。F-35では標的情報をリアルタイムで地上に伝え、地上兵器で敵を撃破することも可能だ。

F-35のデータ融合機能はステルス性能ほどには注目されていないようだが、ステルスは50年前生まれたコンセプトなのに対し、データ融合は未来の象徴だ。

F-35は今後どうなるのかf-35 failure(Lockheed Martin)

米空軍が「第五世代マイナス」機を調達しF-35よりステルス性が劣るものの低価格機体で、激甚戦闘空域でF-16より高い性能を発揮できる機体を求める可能性があるようだ。しかし、これでF-35の役目がなくなるわけではない。

米軍並びに同盟国の航空戦力の中心になると目されたF-35は高すぎる期待の犠牲でもあり、膨大な米国防予算でさえ正常に扱えなくなってきた。米国標識をつけたF-352千機も飛び回る事態にはならないかもしれないが、だからと言って失敗作と簡単に片づけられない。

ロッキード・マーティンが2019年に批判の的になったのは、日本に対しF-35F-22の性能を兼ね備えたステルス戦闘機を低コストで実現可能と述べたためで、F-35事業の財務無責任状態を自ら認識してしまったためだ。ただし、この言いぶりには別の解釈も可能だ。なんでも最初は高いが、次回から安くなる。時間がたてば、高性能技術も普通の存在になり、価格も低下する。さらに新しい技術が登場してくる。次のステルス戦闘機はコストは下がりながら高性能を発揮するはずだ。軍事技術や戦闘の世界ではこれは普通のことだ。

次に登場する戦闘機はF-35開発で生じた高い代償を伴う教訓を生かすはずだ。教訓にはエイビオニクス、機密通信ネットワーク、厳しい空域での運用が含まれる。このような得難い情報がF-35調達の14年間で生じた財務負担をうわまわるだろうか。答えは否である。F-35には画期的な技術が盛り込まれているが、機能は別で費用対効果の目安となる。

F-35を空論から生まれた機体と見れば、失敗作と決めつけたくなるのは理解できる。だがF-35はそもそも現実に作戦投入するための機体だ。この戦闘機は米国の第一線部隊を有利にすべく生まれた機体であり、実際に同機を操縦するパイロットに尋ねれば、この役目のために生まれた機体だと答えるだろう。

F-35は調達失敗作なのか、戦術面での成功事例なのだろうか。答えは簡単ではない。共に正しい。

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How the F-35 flies the line between failure and success

Alex Hollings | April 28, 2021

  

核兵器の意義を考える。冷戦時に日本が核武装していたら世界は大きく変わっていた。米国の核の傘の下にとどまり、核兵器保有を断念した(させられた)日本の決断は妥当だったと言える。

 

 

 

ここがポイント:米国が日本の核武装を認めなかったことが長期的に良好な結果を生んだといえるが、日本が核武装していれば北京政府はパニック状態になっていたはずだ。

 

戦時の米国は選択的核兵器拡散を認め、ソ連によるヨーロッパ侵攻への抑止効果を狙った。ロシア側も英仏両国の脅威を現実に感じていた。

 

米国は同じ戦略をアジアでは採用しなかった。米国には日本の核武装を支持する理由がなかった。逆に日本が核兵器に野心を見せると毎回米国が抑え込んでいた。

 

この方針は熟考の結果で、日本が核武装すれば世界規模の核拡散につながるためだった。しかし東アジアの力のバランスが望ましくない方向に動いていたら、日本の核武装が理にかなっていたはずで、これが世界の核兵器拡散に大きな意味を持ちかねなかった。

 

第二次大戦の遺産

 

第二次大戦中に日本も核兵器開発を模索していた。ただしドイツに匹敵する進展はなく、米国には及びもつかなかった。占領初期に研究基盤は米国が破棄し、日本に核兵器開発を許す意思がないことは明白だった。真珠湾の前例が米国に重くのしかかり、日本が強力な兵器を保有し再び奇襲攻撃を実施するのは受容できないというのが一般の受け止め方だった。米国が英仏両国に核開発を容認したのは両国が第二次大戦で同じ戦勝国だったからであり、なんといっても日本は侵略国家であり、敗戦国だった。

 

一方で唯一の核攻撃被害国として日本の国内政治は核武装に否定的だった。とはいえ、1960年代の日本政府が核兵器開発を積極的に検討していた事実があり、佐藤栄作首相は日本に核兵器がないと中国に対抗できないとまで発言した。米側はこれを問題視した。ジョンソン政権は日本に不拡散条約加入を求め、当時はこれで日本の核武装構想は封印された恰好になっていた。

 

日米両国での核兵器に関する意思決定

 

ではどうしたらワシントンの方針が変わり、日本にどんな影響が生まれていただろうか。中ソ対立が米国の懸念材料だった。日本の核武装で中国がソ連に再接近すれば、東アジアで共産勢力が強固になっていたかもしれない。だが二大社会主義国が仲たがいしていなければ、日本の核抑止力構想の魅力が高まっていただろう。

 

日本国憲法は攻撃兵器保有を禁じており、各装備に防衛的性質があるのか言葉遊びが延々と続いている。例えば航空母艦は「ヘリコプター護衛艦」と呼ぶ。日米当局が憲法による禁止事項の回避策を見出しているのは明らかだ。日本経済の成熟度を見れば、核兵器開発の方針が決まれば自衛隊の核武装は短期間で実現していただろう。

 

核兵器運搬手段として日本は中距離弾道ミサイルを開発、あるいは米国から導入していたはずだ。アジア中心部を標的に収めても米本土には到達できない。さらに米国がポラリスあるいはトライデントSLBM技術を供与し、原子力潜水艦建造も並行して進めていれば実用化に道が開いたはずだ。長距離爆撃機となると飛躍しすぎになるが、F-15なら戦術核攻撃任務はこなせていただろう。

 

日本核武装はこんな影響を及ぼしていたはず

 

日本核武装による最大の影響は北京に現れ、中国側は大パニックに陥っていただろう。中国は核武装で米、ソ、日本の三か国に抑止効果を発揮できるようになった。ただ日本については通常兵器に限定した武装であり、国内に平和主義の政治風潮があることから、核兵器による抑止効果は不要となった。とはいえ、日本が核兵器保有により米国から独立した政治力を持つと中国は懸念したはずだ。日本が米国の核抑止力に依存している限り、米国が有利となる。日本の核兵器は覇権を求める動きを再開させ、中国は最終的にロシアに再接近、あるいは自国の核抑止力強化に向かっていたはずだ。

 

日本の核武装は域内で警戒を招いていたはずだ。ソウルも米国に安全保障で依存する中で、当面は「苦笑いで我慢する」態度を取りつつ、長期的に自国の核開発に向かっていたはずだ。同様に日本の核武装で米国は台湾の核武装志向を押さえるのに苦労していたはずだ。遅れてはならないとインドも核武装に走り、同国の場合は政治制約もなく進展していたのではないか。

 

さらに日本が核武装していたら、実際に日本が世界規模の核不拡散の進展に果たした役割は果たせなかったはずだ。世界唯一の被爆国として日本は世界各地の反核の動きに重みを示していた。こうした動きも日本が退場していれば大きく制約を受け、世界各地の核兵器拡散防止は支障をきたしていたはずだ。

 

長期的には日本の核兵器開発を認めないワシントンの決断が効果を奏している。中国はロシアからさらに離反し、日本は米国依存を保ち、域内とともに世界規模の非拡散体制が効果を上げている。しかし、米国が中ソ関係を読み間違え、日本政府の一部が強硬な態度に走っていれば、全く別の状況が生まれていたはずで、日本のみならず世界各地で核武装が実現していただろう。■

 

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What if Japan Became a Nuclear Weapons Powerhouse in the Cold War?

April 30, 2021  Topic: Nuclear Weapons  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: Nuclear WeaponsJapanChinaJapanese MilitaryMilitaryDefense

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and the Diplomat.

 

This article first appeared in 2016.

Image: Reuters


2021年4月30日金曜日

新空軍長官に元国防次官フランク・ケンドールを指名したバイデン政権。オバマ政権時の懐かしい人物が再びスポットライトを浴びる。空軍次官には非白人女性ジョーンズを指名。議会は難なく承認するのでは。

  

 

英国向けF-35の引き渡し式典(2012年)でフォートワース(テキサス州)で招待客に祝辞を述べるフランク・ケンドール(調達、技術、補給活動担当国防次官、当時)。(Tom Pennington/Getty Images) 

 

 

イデン政権は空軍長官にフランク・ケンドールFrank Kendall、空軍次官にジーナ・オーティス・ジョーンズGina Ortiz Jonesを正式指名した。

 

4月27日午後にホワイトハウスが発表し、同日朝にDefense Newsが先に報じていた。

 

ケンドールはオバマ政権で国防総省の調達最高責任者を2012年から2016年にかけて務めた。調達、技術、補給活動担当の国防次官として調達活動の機動性確保のため “Better Buying Power” を提唱した。

 

ケンドールは国防総省内で数々のポストを歴任しており、2010年から2012年には主席次官代理だった。また国防産業でも1990年代にレイセオンで技術部門副社長だった。

 

陸軍で軍歴を有する人権派弁護士のケンドールは選挙運動中のバイデンチームで早くから国防問題の顧問となり、国防総省あるいは軍の長官ポストの噂が出ていた。

 

ケンドールは陸軍出身だが、ペンタゴンで空軍向け及び航空宇宙関連の兵装調達トップ歴が長い。ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機には鋭い批判をすることで知られ、「調達の悪例」とまで呼んだ。

 

ジョーンズはペンタゴンでは新参者だが、その他政府組織で広い経験を有する。空軍では2003年から2006年にかけ情報官としてイラクに派遣された。2008年には国防情報局へ顧問として移動している。その後、米国通商代表部に勤務した。

 

ジョーンズは2018年2020年連続して下院議員に立候補し、テキサス23選挙区で民主党候補となったがともに共和党候補に敗れている。

 

ジョーンズはフィリピン系米国人で「聞くな、話すな」の軍方針の元で同性愛者として勤務する困難な日々を過ごした。任命が確定すれば、初の非白人女性空軍次官となる。

 

両名は厳しい局面に立たされている空軍を指導することになる。空軍参謀総長C・Q・ブラウン大将は空軍の変革をめざい、高性能機材を投入するロシアや中国の脅威に対抗しようとする。ただし、本人も変革は意味のなくなった事業や既存機種の削減があってこそ実現できると見ている。

 

米空軍は議会に自らのメッセージを伝えるのに苦労してきた。ケンドール=ジョーンズ両名は空軍の戦略的意義を議員に伝えるのを助ける役目を果たしそうだ。

 

新人事の公表を受け、下院軍事委員会委員長アダム・スミス議員(民、ワシントン)は両名の指名を支持する旨の声明を発表した。

 

「フランク・ケンドールこそ公僕として空軍を率いるのが適任の人物で、空軍に多くの将来の脅威に対し模索を続けているところだ。40年に及ぶ国防、安全保障での経験に加え、オバマ政権時の調達業務への献身ぶりから、これ以上の逸材は見つからない」

 

スミス委員長はジョーンズが空軍勤務時の経験を評価し、今回の指名はバイデン政権が米国民の多様性を反映する形に国防総省を構築する動きの一環と述べた。

 

上院の軍事委員会院長ジャック・リード議員(民、ロードアイランド)もケンドール指名を支持すると述べている。両名は1971年のウェストポイント陸士卒でもある。

 

「フランクの指導力は実証済みで有効だ。本人には技量、経験、誠実さ、トップ文官として空軍を率いる性質が備わっている」との声明文を発表した。■


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Biden to nominate Frank Kendall as Air Force secretary

By: Valerie Insinna and Joe Gould

Aaron Mehta in Washington contributed to this story.

 

コメント F-35に批判的な空軍長官が誕生するとロッキードには逆風ですね。これまで大きすぎてつぶせないとまで言われてきたライトニングIIですが、空軍内部にも見切りをつける動きが顕著になっています。それにしてもバイデン政権はまるでオバマ政権の延長の様相を明確にしてきましたね。


2021年4月29日木曜日

遼寧空母部隊の動向を日本等の外部発表を使って伝えざるを得ない中国の異常な情報管理の実態。環球時報記事は中国のおかしな主張、考え方を反映している。

ご注意 以下は共産党の機関紙ともいわれる環球時報の記事を忠実に訳したものです。PLAの情報公開が国内でも圧倒的に不足しているので、統合幕僚監部発表を引用せざるを得なかったり、台湾報道にふりまわされるなど中国国内体制の不備がうかがえます。記事にある「解決」が中国の望む形での日本封殺にあるのは間違いなく、台湾、南シナ海情勢ともあわせ、これからのCCP=PLAの動きには注意が必要です。中国人とCCPは別の存在としたトランプ政権のアプローチは共産党側には痛いところで、なぜバイデン政権が同じ路線を踏襲していないのか不思議でなりません。CCPはテロ集団よりはるかに質の悪い組織犯罪集団と言ってよいでしょう。

   

The picture shows the aircraft carrier <em>Liaoning</em> (Hull 16) and other vessels and fighter jets in the maritime parade conducted by the Chinese People's Liberation Army (PLA) Navy in the South China Sea on the morning of April 12, 2018. Chinese President Xi Jinping, who is also general secretary of the Communist Party of China (CPC) Central Committee and chairman of the Central Military Commission (CMC), reviewed the parade. (eng.chinamil.com.cn/Photo by Zhang Lei)

空母遼寧 (艦番号 16) 他の艦艇、戦闘機が南シナ海で2018年4月の軍事パレードを展開した。中国共産党総書記兼中央軍事委員会委員長の習近平が閲兵した。 (eng.chinamil.com.cn/Photo by Zhang Lei)

 

 

寧空母任務群は4月26日宮古海峡を通過し、翌日に搭載機一機を釣魚諸島付近に展開させた。


これについて中国国内専門家は同諸島をめぐり誤った主張を繰り返す日本への警告と評し、同様の展開をPLAが今後も繰り返すとも述べた。

 

海上自衛隊は中国艦6隻を見つけた。空母遼寧以外に055型大型駆逐艦南昌、052D型駆逐艦成都および太原、054A型フリゲート黄岡、901型補給艦呼倫で、沖縄本島と宮古島の間を通過し東シナ海北方へ移動したと統合幕僚監部が27日報道発表した

 

各艦は4月3日に同海域を南方へ移動しており、今回は本国へ帰投の途中だった。

 

遼寧から発進したのはZ-18早期警戒ヘリコプターで釣魚諸島のChiwei Islet に接近したと日本側発表にある。

 

中国側軍事専門家は任務部隊が台湾付近及び南シナ海で行われた演習から本国帰投のため宮古海峡を通過するのは想定内としつつも、航空機を釣魚諸島付近に発進させたのは異例とのコメントが出た。

 

遼寧空母集団の最近の動きは日本への警告であり抑止効果を狙うものと中国軍備管理軍縮協会のXu Guangyuが環球時報に4月28日語っている。

 

釣魚諸島に関する繰り返し誤った主張を日本が発表しており、米国が同地区を日本防衛の対象と再確認したとする4月初めの主張もその一部である。また中国沿岸警備隊が中国領有の島しょ部分で展開する合法的かつ正当に法執行活動を外交青書が4月27日に批判している。

 

同上のXuは中日関係の進展に応じ、問題が解決するまでPLAは今回と同様の活動を今後も定期的に展開すると見ている。

 

また遼寧の最新の動向を伝えた日本側発表により、同艦が「出力喪失」したとする台湾国内の風説が否定されたとXuは指摘した。

 

台湾メディアは商用衛星画像を使い、米艦艇がPLA空母集団を追尾したと伝えているが、中国本土の専門家には衛星画像は無関係であり、軍艦や軍用機が他国艦艇の動向を公海上で監視するのは通常のこと、国際法を遵守し安全距離を保ち衝突を避けるべく安全措置を取ることも通常の行為との指摘があった。

 

PLA海軍からは遼寧空母任務集団が台湾周辺で演習を通常の形で展開すると4月5日に発表があった。その後の報道は同空母集団が南シナ海まで展開し追加演習を行ったことを示している。■

 

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China's Liaoning aircraft carrier group crosses Miyako Strait, patrols Diaoyu Islands, 'warning to Japan'

By Liu Xuanzun

Published: Apr 28, 2021 08:28 PM

 

HMSクイーンエリザベス空母打撃群は5月出港し、アジア太平洋へ進出。日本含む40か国歴訪する。米海兵隊と英空軍F-35B混成部隊を搭載。

  

USSジェラルド・R・フォード乗組員がHMSクイーン・エリザベスを見ている。両艦は大西洋を航行した。Nov. 25, 2019.ANGEL THUY JASKULOSKI/U.S. NAVY

 

 

リゾナに配備中のF-35BライトニングII戦闘機隊がインド太平洋地区へ展開の準備に入った。各機は英海軍空母に搭載される。米海兵隊が4月27日に発表した。

 

英国最新の空母HMSクイーンエリザベスは随行艦艇と来月ポーツマスを出港し、インド、日本、南朝鮮、シンガポールなど40か国を歴訪すると英海軍は4月26日発表している。

 

同空母に搭載されるF-35Bはアリゾナ州ユマの211海兵隊戦闘攻撃飛行隊「ウェークアイランド・アヴェンジャーズ」と英空軍617飛行隊「ダムバスターズ」との発表があった。

 

日本の防衛省は27日に発表内容を歓迎しながら、在日米軍はF-35Bが日本で具体的に何をするかについて詳しく述べていないものの、日本に配備がぞ供されている第五世代機材の一部に加わることは確かだ。

 

米海兵隊211戦闘攻撃飛行隊のF-35BライトニングIIがHMSクイーンエリザベスの飛行甲板に現れた。Sept. 28, 2020.ZACHARY BODNER/U.S. MARINE CORPS

 

海兵隊は昨年10月に海兵隊岩国航空基地の配備部隊を交代し、242海兵隊戦闘攻撃飛行隊がF-35Bを運用する二番目の海外駐留飛行隊となった。初の飛行隊は121海兵隊戦闘攻撃飛行隊で岩国に2017年1月到着していた。

 

日本は通常型のF-35Aを三沢基地で運用中で、最終的にF-35Aを105機、F-35Bを42機調達し、後者はヘリコプター空母いずも、かがの両艦で運用すべく、現在改修工事中だ。

 

ユマ基地配備のF-35B隊は英国で空母配備前の最終テスト中と海兵隊が発表している。米英両国混成部隊が空母搭載第五世代機部隊として最大規模の戦力を実現すると声明文にある。

 

クイーンエリザベスは排水量65千トンと、横須賀海軍基地を母港とするUSSロナルド・レーガンよりかなり小さい。

 

同空母とあわせ、HMSダイアモンド、HMSディフェンダーの両駆逐艦、フリゲートはHMSリッチモンドとHMSケント、アスチュート級原子力潜水艦一隻、支援艦RFAフォートヴィクトリア、RFAタイズスプリングで打撃群を構成する。

 

なおオランダ海軍のフリゲートHNLMSエバーツェン、米海軍駆逐艦USSサリバンズも同打撃群に加わる。■

 

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Marine Corps F-35B fighters prepare for Indo-Pacific deployment aboard Royal Navy carrier

 By SETH ROBSON | STARS AND STRIPES

Published: April 28, 2021

 


台湾が潜水艦国内建造に乗り出し、戦術・戦略地図はこう変わる。日米など同盟国も台湾の自助努力を見て、台湾支援へ動きやすくなる。そうなると中国には不利な状況が増えるばかり。

 

 

湾の潜水艦建造は大歓迎だ。

 

米国政府が台湾向け潜水艦の艤装兵装品輸出に課していた制限を解除したため建造が可能となった。台湾国内の建造所で8隻建造し、海外提携先がセンサー、戦闘システム、兵装を技術支援とともに提供することになりそうだ。末広がりで縁起の良い八隻がそろえば、現有の老朽艦2隻、旧式化が進む2隻にかわり、政治戦略的な効果を台湾にもたらす。

 

台湾は自国の運命を自らの手で開くことが可能となる。なんといっても世界では自助努力をする側が救われる構図となっている。賢明な社会は自らの手で安全と権益を守る傾向があり、頼りにならない海外同盟国に任せることはない。

 

自助努力が国際関係の基礎となるかは人間の特性を見ればわかる。ジョージ・S・パットン将軍は人間観察に優れ、人は勝者には惜しみない賛辞を送り、敗者には軽蔑を送るものと述べた。実際その通りだ。勝ち目のない側にわざわざ寄り添うものがいるだろうか。

 

ウィンストン・チャーチルの下で英国は1940年から1941年にかけ枢軸側に単独立ち向かう状態となったが、勇気を示した。それだけの価値があった。台湾の潜水艦部隊は英国の戦いにおける英国空軍に匹敵する。台湾海軍(中華民国海軍ROCN)は本国をめざす敵部隊の接近を拒みつつ、同盟諸国による台湾支援に勢いをつけるだろう。

 

軍事の賢人カール・フォン・クラウゼビッツは優先事項が競合すれば同盟軍は集中できなくなると述べている。相互に支援しあっていても対象国の主張を自国のものととらえなければ効果が生まれない。中途半端な対応のまま外交、経済、軍事各面で資源を使ってしまう。

 

事態が悪化すると、体力のない同盟国が姿を消すことになるとクラウゼビッツは警告していた。台湾住民はこの現象を骨身にしみて知っているはずだ。外諸国には台湾防衛にかけつけないよう中国本土が外交、経済、軍事で露骨な脅かしで求めているからだ。

 

このため台湾は台湾海峡をはさむ強大な兄弟国に対する防衛体制を自らの手で強化する必要がある。海軍作戦に関しては、「制海」から「海上拒否」戦略に移行することである。制海とは強者の戦略だ。制海任務にあたる海軍部隊は対抗勢力を重要水域から排除し、兵力展開の航路を制御するべく水域を確保する。

 

かつては台湾海軍も制海任務を目指し、実際にその実現の好機があった。装備人員で優秀性があったため、規模こそ大きいが遅れた人民解放軍海軍に対抗する立場にあった。だがそうした日々は回想のかなたとなり、中国はハイテク軍艦軍用機を大量生産能力を手にし、沿岸には強力な支援火力を整備している。

 

端的に言えば、台湾海軍は近隣水域さえも統制できず、海洋支配の再確立の可能性は皆無に近い。だからといって台湾が敗北にむかっているわけではない。自国防衛のためROCNは台湾周辺のPLANによる支配を打破しようとするはずだ。揚陸部隊を撃破し、封鎖をうちやぶり、海上輸送を寸断すれば、同盟国なかんずく米国が救援にかけつける時間をかせぐことができ、中国による侵攻を食い止めることができる。

 

海上拒否は昔からある戦略で弱者のものだ。巧妙に運用すれば敵部隊には暗い一日になる。歴史家セオドア・ロップは世紀末のフランス海軍を観察し、弱小ダビデが巨人ゴライアス(英海軍)に勝つためには巨人の沿海地区で移動の自由を奪えばよいと考えた。

 

ロップの海上拒否構想には今も魅了するものがあり、ディーゼル潜水艦に「大気非依存型推進」が搭載され、探知困難なまま海中待機できるようになった。高速警戒艇は水上交通にまぎれ、混雑する沿海部を気づかれずに移動できる。

 

洋上あるいは水中から魚雷攻撃や対艦ミサイルを発射し、侵攻部隊の接近に対抗できる。また無人機、無人艇、無人潜水艇を併用できる。混みあった台湾海峡でこうした装備から攻撃を受ければPLANは反撃が難しく、対応に使える時間も限られる。

 

近代海戦では一隻の小舟艇でさえ敵の戦略に打撃を与えられる。英海軍とアルゼンチン海軍で1982年のフォークランド戦争でこれを学んだ。英海軍の原子力攻撃型潜水艦がアルゼンチン海軍の誇り巡洋艦ヘネラル・ベルグラーノを撃沈した。だが英海軍任務部隊は遊弋するアルゼンチン潜水艦一隻のため対潜装備をほぼ全数投入したものの排除できなかった。台湾海軍の技量はアルゼンチン海軍以上とみる向きがあろう。ROCNが米国や西側装備品、戦術、知見を活用できるためだ。ROCNが水中戦を有利に展開すればPLANの作戦展開を妨害でき、台湾は有利になる。すべて理想通りになれば台湾近海への侵入そのものを防げるはずだ。

 

そこで潜水艦の連続建造が台湾の目的にかなうことになる。8隻を新規建造し、旧型艦を退役させる。訓練、維持、整備を順当に行えば常時三隻ないし四隻が出撃可能になる。各艦に戦略的価値が生まれる。海軍は哨戒活動を常時展開し、乗員の戦術対応能力を磨きながら、潜水艦部隊が停泊中に奇襲攻撃で壊滅する事態を回避できる。

 

台湾海軍にこれ以外にも海上拒否の手段があるのだろうか。海上拒否は防御的に見えるが、実は攻撃戦術も含まれる。攻撃が戦略的防御の中心であることは海洋戦略の大家も認めるところだ。ROCN潜水艦部隊は、高雄などの沖合で哨戒任務にあたるが、こうした地点は揚陸強襲作戦の対象になりかねない。あえて攻撃されるのを待ってから反撃を強烈に加える作戦だ。

 

潜水艦艦長に攻撃精神が旺盛なら中国本土の港湾地点沖合まで移動して海中に潜むことも可能だろう。あるいは台湾海峡周辺に待機する。ルソン海峡がPLAN潜水艦の西太平洋、南シナ海への重要な移動経路で、ここをふさげば大きな効果が生まれる。台湾北部の宮古海峡も潜水艦の狩場になりそうだ。

 

中国が第一列島線から自由に動けなくなれば台湾の東海岸が安全になる。そうなれば台湾軍は中央部防衛に集中し、米軍も同盟諸国と第一列島線に展開し、PLAの海上作戦に大きな障害が生じる。

 

政治面の効果はこうなる。ROCNにより台湾の戦略価値が高まり、全体としての同盟国側戦略にも弾みがつく。同時に米海軍、海上自衛隊といった同盟国部隊に台湾防衛に手を貸す大義名分が生まれる。同盟国側は共通の大義名分のもと団結できる。台湾が自助努力で存続をかけ努力する姿が他国からの支援につながる。好循環が生まれる。

 

就役艦が増えれば、目標実現がそれだけ早くなり、よいことづくめだ。他方で各国潜水艦部隊間で戦術、訓練、水域管理を共有する議論を静かに始めるのは早ければ早いほど良い。

 

台湾の水中戦力増強問題はつまるところ新型潜水艦調達になる。多国間部隊で水中戦技術を磨こう。ともに前進したいものである。■

 

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The Need for Taiwan's Forthcoming Submarine Program Is More Than Pressing

April 27, 2021  Topic: Submarines  Region: Asia Pacific  Blog Brand: The Reboot  Tags: TaiwanMilitaryTechnologyWorldSubmarinesChina

by James Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, coauthor of Red Star over the Pacific, and author of A Brief Guide to Maritime Strategy. The views voiced here are his alone.

Image: Reuters.