2020年8月14日金曜日

米中両国は開戦に近づいているのか

 中国の戦力を過小評価すれば深刻な過ちにつながる。中国軍は自国近海なら米軍に十分対抗できる実力を有している。

 

政府は中国との新冷戦に進む決定をしたようだ。中国の在米ヒューストン領事館閉鎖を迫ったのが最新の動きで、中国は成都の米領事館閉鎖を命じた。世界一位二位の経済大国の軍事対決に一歩ずつ近づくのか。両国を開戦一歩手前に進ませないためには政策を即座に変更するしか手段がないようだ。

 

はっきりさせよう。中国のここ数年の動きは米国の権益に真っ向から挑戦するものだった。知的財産侵害を巡る争いに中国はさしたる関心をしめしてこなかった。中国は「台湾問題」解決に軍事力行使も辞さないと公言した。中国は香港住民に自由を与える約束を覆した。さらにコロナウィルス拡散を進めたのは中国の事実隠ぺいだ。だがこうした問題に対し米国は断固たる態度で臨む決心をしている。

 

マイク・ポンペイオ国務長官は中国に対抗する「連合を構築」すると7月にロンドンで発言した。真意は「力を合わせ中国共産党の行動を変えさせること」と本人は説明している。英国訪問に先立ち、さらにヒューストン領事館閉鎖の前に、米国は中国に極めて厳しい態度を示しており、香港の貿易上の特別待遇の取り消し、中国政府関係者への渡航制限、コロナウィルスを巡り中国の落ち度を非難し、米海軍の南シナ海での活動を強化し中国の主張に対抗したことが含まれる。

 

これに対し、中国も南シナ海で軍事演習を展開し、ヒューストン領事館閉鎖を巡り対抗措置を講じたのは予測通りといってよい。中国外務省報道官汪 文斌Wang Wenbinは領事館閉鎖は「国際法違反...であり中米関係を悪化させるための試み」と論評した。中国が米領事館閉鎖に動いたのも予想通りの動きだった。

 

米中両国はこのような動きと対抗措置を延々と繰り返していくだろう。関係悪化で恩恵は何ら生まれず逆に軍事対決の可能性が増えるだけだ。偶発的な戦闘もありうる。不幸なのはワシントンに頭を冷やそうという動機が見られないことだ。

 

米国の世論に影響を与えかねない言論人多数は意図しなうちに戦闘がおこるはずがないと達観しているようだ。米国は強大であり、何でも好きに行動でき、戦闘が発生しても敗北はないと信じこんでいるようだ。砂漠の嵐作戦が完了した1991年、翌年のソ連崩壊以来この考えが流行している。

 

中国は砂漠の嵐作戦での米軍作戦を熱心に研究している。1996年にはビル・クリントン大統領が台湾海峡に空母一隻を航行させ、中国は台湾への脅威をひっこめざるを得なくなり面子を失った。それ以来10年単位で軍全体の変革を行ってきた。戦闘第一の部隊編成にし、戦闘の教義を整備し、装備品を劇的に一新した。すべて米軍が中国攻撃にやってきても敗退させるためだ。

 

今日の中国軍は朝鮮戦争で米軍の前に数十万名を失った古色蒼然たる歩兵中心の軍ではない。また1996年に米軍に対抗できなかった旧式装備の軍でもない。中国共産党首脳部は自らの軍組織を近代的かつ強力な威力の軍に変革し、米国を相手にしても十分戦える組織に仕立て上げた。中国近海を舞台に米軍が容易に勝利できると思ったら大間違いだ。

 

米国の動きを見て中露両国は往年の対立をわきに置き経済ならびに軍事面でつながりを強めている。中国はイランともエナジー・軍事両面の協力協定を結んだばかりだ。さらに習金平主席は欧州、アフリカ、ラテンアメリカ各国との関係強化を効果的に進めている。

 

ワシントンは対中タカ派であふれている。その中で中国と戦闘回避することで米国の地位を守れると主張すれば「宥和派」のレッテルを貼られかねない。理性的な外交を続けることで安全も繁栄も将来にわたり実現するはずなのに、これを捨てて武力を前面に中国に強気で対抗する態度に出たことが結果として悪い選択にならなければよいのだが。■

 

この記事は以下を再構成したものです。


America and China Hurtling Towards War?

August 2, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Tags: ChinaXi JinpingWarConsulateHong Kong

It would be a grave mistake to underestimate Beijing’s ability to fight the U.S. forces on its home turf.

by Daniel L. Davis Daniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former lieutenant colonel in the U.S. Army who retired in 2015 after twenty-one years, including four combat deployments. Follow him @DanielLDavis1.

2020年8月11日火曜日

やはり中国が嫌がらせ。エイザー長官の蔡英文総統会見直前に戦闘機編隊を台湾領空へ侵入させた

今回の長官訪台は今後の台湾承認、台湾独立につながる布石と見ています。中国の主張が真っ向から否定された形で北京はヒステリー状態になるはずです。トランプの思考形式が中国の凝り固まった思考を粉砕している構図ですね。面子をつぶされた中国共産党が次に何をするか注視する必要があります。それにしても習金平が全く姿を現さないのも変ですが

 

国が成都J-10、瀋陽J-11戦闘機編隊を台湾海峡上空に8月10日飛行させた。編隊は海峡中央線という極度に微妙な地点を短時間ながら通過したと現地報道が伝えている。中央線は非公式ながら中国本土と台湾を分ける境界線となっている。今回の飛行は米保健衛生省長官アレックス・エイザーAlex Azarが8月9日に台湾へ到着し、前例のない米高官訪台が始まったことを受けて実施された。

 

中国の示威行動はエイザー長官が蔡英文総統との会見を始める直前だった。人民解放軍空軍 (PLAAF) が戦闘機を出撃させたことで台湾国防部は以下声明文を発表した。「PLAAFジェット機が意図的に台湾海峡の現状を侵害し破壊したことで地域内の安定と安全が深刻な被害を受けた」

 

J-10やJ-11は現地時間午前9時ごろ台湾海峡の台湾側空域に侵入した。中国機は台湾が陸上に配備した対空ミサイル装備で追尾された。台湾側は台湾空軍が中国機を「追い出した」と発表しているが、中国から発表はない。

 

CHINESE INTERNET

 

 

CHINESE INTERNET

A Chinese J-11B.

 

 

エイザー長官は40年間で訪台した米政府関係者で最高位となった。ときあたかも米中関係が悪化している中でのことだ。中国は同長官訪問を米外交政策がトランプ政権になり台湾寄りになっている表れと非難しえいる。中国は内容不詳だがエイザー訪台へ報復措置をとると明言している。

 

台湾、中国が展開している軍事示威行為の中で今回の侵入は最新の出来事になった。台湾はF-16にAGM-84ハープーン実弾を搭載し、南シナ海の中国海軍演習周辺を哨戒飛行させた。米軍も監視偵察ミッションを強化しており、同海域で演習をオーストラリア、日本と共同で展開している。

 

中国は台湾を反乱地方省とみなし、中台間で政治軍事両面で緊張がここ数年高まっている。トランプ政権は中国と貿易戦争を展開しており、台湾への武器売却に前向きになっているほか、COVID-19を巡る意見対立もあり、米中台間で冷たい空気が一層強くなっている。今回の米高官の訪台により中国本土はさらに苛立ちを強め、台湾も有事に備え部隊を展開している。特に台湾空軍は米台外交折衝を横目にしながら敵対行為に備え高度の警戒態勢を維持しているはずである。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

Chinese Fighters Cross Into Taiwan’s Side Of The Strait As High-Level U.S. Visit Begins

The Chinese fighters emerged over the channel as U.S. Health and Human Services Secretary Alex Azar was about to meet with Taiwan's president.

BY JAMIE HUNTER AND TYLER ROGOWAYAUGUST 10, 2020

 

Contact the author: jamie@thedrive.com


F-15EXの先を行く「デジタル・センチュリーシリーズ」構想の驚くべき内容とは

 米空軍が目指す「デジタル・センチュリーシリーズ」でF-15EXが一番手になるのだろうか。 防衛記事担当編集者スティーブ・トリンブルが以下答えている。

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F-15EXはデジタル技術で成熟ずみ機材を再強化される好例になりそうだ。ただし、米空軍のデジタル・センチュリーシリーズ構想でのアプローチとF-15EXは異なる。同構想は空軍次官補ウィル・ローパーが提唱する調達、技術、維持全般にわたる新しいアプローチだ。

 

空軍は144機調達を目指すF-15EXで二機を先行発注し、2021年8月に引き渡しの予定だ。機体で目を引くのがBAEシステムズによるEpawss(高性能パッシブ/アクティブ警戒監視装置)だが、その他はF-15QA(カタール向け)と共通する。F-15QAの主翼と前部胴体は新設計で軽量化されている。ボーイングはデジタルエンジニアリング手法で設計し、生産方式を安価ながら高効率で実現した。

 

この手法を応用し、ボーイングは新規サプライヤーに再設計主翼と機体の競作を行わせる。ボーイングによれば再設計部品は整備コストも大幅に引き下げる。従来の航空機製造方式と比べ大幅な改良になるが、空軍はデジタル・センチュリーシリーズでさらにその先を狙っている。

 

空軍は次世代制空機材(NGAD)がデジタル・センチュリーシリーズのビジネス事例になるとみている。モデルではボーイングがF-15EXで使ったデジタルエンジニアリングが採用されそうだが、空軍の要求は機体の全部品でデジタルモデルを使うことにある。もう一つ違うのは機体の設計で空軍が権利を取得することだ。F-15EXの知的財産所有権はボーイングにあるが、デジタル・センチュリーシリーズでは政府に売却あるいは使用許諾することになる。

 

デジタル・センチュリーシリーズでは複数機種を同時並行製造するのを目指すが、生産数は10機単位あるいは多くても100機単位となる。機種形式は異なるが共通部品を極力採用し、再設計コストを抑え、生産施設の経費や機体維持コストを抑える。全機種で共通のオペレーティングシステムとし、ソフトウエア上の改良を機材全機を対象に同時かつ即座に行う。■

 

F-15EX aircraft in flight

Credit: Boeing


この記事は以下を再構成したものです。

 

Is F-15EX A Good Example Of USAF's Digital Century Series?

Steve Trimble August 05, 2020


2020年8月10日月曜日

戦車全廃! 大胆すぎる米海兵隊の変革は中国との戦闘を想定したものなのだが......

 

  • 海兵隊の大胆な戦力再編で戦車中隊の一部が解隊されている

  • 再編は迅速な戦力展開をめざすためだが、他軍に海兵隊業務を任せると各軍間の関係が悪化すると危惧する向きもある


兵隊は戦車を全廃し太平洋の離島伝いに展開できる機動力の整備を進めているが、陸軍が業務を引き受ければ軍間の分断状態が発生すると防衛専門家が警句を鳴らしている。


海兵隊戦車中隊の一部で運用停止がすでに発生しており、今週も第二戦車大隊C中隊がノースキャロライナ州のキャンプ・レジューンで解隊された。同中隊のM1A1エイブラムズ戦車が搬出された。第一戦車大隊でも同様の光景が展開された。


この動きには複雑な心情もあり、方針に不満を感じる退役海兵隊員は、保守系シンクタンクのヘリテージ財団主催の仮想イベントで「これからの戦闘にむけた海兵隊再編はそもそも必要なのか、それとも狂気の沙汰なのか」と題するセッションを開いた。


Marine Corps tank

第一戦車大隊にあった最後の戦車がカリフォーニア州の海兵隊航空地上戦センターから搬出された。2020年7月6日。 US Marine Corps/Sgt. Courtney White


「海兵隊は自らをスイスアーミーナイフと見られるのを好む」とマーク・キャンシアン退役海兵大佐(現戦略国際研究所顧問)が発言。「だがスイスアーミーナイフの持ち主はもう不要になったからと切れ刃数枚を外してしまった」


キャンシアンと、退役中佐フランク・ホフマン(国防大学特別研究員)はともに強力な敵を相手とする次の戦闘に備える海兵隊総監のデイヴィッド・バーガー大将の部隊再編構想には良い点もあるとも認めている。


ホフマンは改編は国家防衛戦略につながる点が多いと指摘。長射程精密火砲や小型揚陸艇への予算重点投入は中国と開戦の際に必要な措置とキャンシアンが追加コメントした。


ただし両名は海兵隊から戦車全廃の決定には懸念を表明した。


「海兵隊でなくなる能力は陸軍が提供してくれるという。だがこれは実現しないと思う」とキャンシアンは述べ、「海兵隊で必要な場面が発生すれば陸軍に助けを求めることになる。そうなると軍間で利害が対立するのではないか」


エリック・スミス中将は海兵隊で戦闘開発本部を率い、Military.comに即応部隊としての海兵隊は可能な限り軽装備で移動可能にする必要があると今年初めに語っていた。


「国防総省にはその他の軍組織があり、そもそも統合運用をしているので大規模な威力を発揮できる」とスミスは述べ、「例として陸軍に戦車大隊は37個もあり、戦車戦力として十分な規模だ」とした。


m1a1 abrams tank

キャンプペンドルトンのホワイトビーチで海兵隊のM1A1エイブラムズ戦車を揚陸舟艇から誘導する海軍隊員。 US Marine Corps


これに対しホフマンは海兵隊構想が統合部隊の戦略方針に合うかまだわからないと指摘した。陸軍部隊に海兵隊任務を補完させるのであれば、今までと違う訓練や戦闘方針が必要という。


キャンシアンも同じ意見で、海兵隊構想で陸軍に追加任務が課せられると指摘。両名は海兵隊予備部隊に戦車を温存すべきと提言した。


「これならリスク対応としては妥当な戦略方針だ」とホフマンは述べた。両名とも海兵隊予備部隊にいたことがある。


だが予備部隊では第四戦車大隊A中隊がすでに解隊されている。第四大隊の六個中隊は大隊司令部と2021年までに解隊される。■


この記事は以下を再構成したものです。


The Marine Corps' big plans to get rid of its tanks could end up being a hassle for the Army


Gina Harkins, Military.com 18 hours ago


2020年8月9日日曜日

発足2年目の新興企業に極超音速機を開発させ、次期大統領専用機にする米空軍の大胆な決断

 

Hermeus 

 

 

空軍は高性能複合サイクルエンジンを推進力とする極超音速機の製造契約をハーメウス・コーポレーションHermeus Corporationに交付した。空軍は今回の契約をもとに高速飛行可能なVIP輸送などミッションをこなす機材の実現をめざすとしている。

ハーメウスは契約交付をAFWERXを通じ2020年8月6日に発表した。AFWERXとは米空軍が2017年に設立した技術インキュベーターだ。契約規模はおよそ1.5百万ドルでビジネスジェットほどの大きさで極超音速飛行可能な9から19席程度の輸送機設計の構想を確認する。

 

「空軍が求める高速機を既存の通信や空港、航空管制のインフラに統合する基礎作業により、そのまま将来の運用が可能となります」と同社報道発表資料にある。「さらに当社はテスト計画も準備し、技術リスクを下げ、空軍の要求性能の実現をめざします」

 

ハーメウスはアトランタに本拠を置く新興企業で今回の作業は空軍の大統領専用空輸局と実施する。同局はライト-パターソン空軍基地(オハイオ州)の空軍ライフサイクル管理センターにあり、ボーイング747を改装したVC-25A大統領専用機二機の管理にあたることで知られる。また更新機材のVC-25B二機の支援にもあたる。また757が原型のC-32A機材、737を改装したC-40クリッパー含む各種ビジネスジェットやターボプロップも管理している。

 

「大幅性能向上が敵の対応を狂わす上で重要だ」と空軍准将ライアン・ブリットン大統領専用空輸隊事業主幹が述べる。「民間投資を活用し空軍に新技術を応用すれば国防総省予算を最大限活用できる」

 

ハーメウスは2018年設立で極超音速技術を民生機材に導入することに注力している。設計の核心的部分が複合サイクルジェットエンジンで、同社は今年2月からテスト運転を始めていた。

 

複合サイクルエンジンとは従来型ジェットエンジンとラムジェット(スクラムジェット)を併用する技術で、後者は高速度域での未作動する。ラムジェットを付けた極超音速機はロケットブースターで設定速度域にまず加速する。

 

「当社の予冷技術を利用し、SR-71以上の速力を出せる条件で既存品のガスタービンを運用します。さらにラムジェットモードでマッハ4から5まで加速し、全域で極超音速空気取り入れ式推進を実現します」とハーメウスの最高技術責任者グレン・ケイスが説明している。

 

理論上は複合サイクルエンジンで通常型機同様に離陸し、極超音速域に加速し、着陸も通常通りに行い、特殊装備等は不要だ。低速域飛行中はジェットエンジンで飛行し、その後ラムジェットに移行する。実は同じ構想はロッキードのブラックバード後継機「SR-72」にも採用されている。既存空港施設を利用できる極超音速機ので民生用として大きな利点が生まれる。低速域運用も可能なため、これまで民生用超音速飛行に抵抗してきた飛行ルート下の居住地の懸念も解消できる。

 

「マッハ5だと時速3000マイル以上となり、ニューヨークからロンドンまで飛行時間は90分となり現行の7時間から大幅に短縮できる」とハーメウス報道資料にある。「高速飛行可能機ではスピードが差別化の手段となり、マッハ5機で世界経済が年間2兆ドル成長し、世界の問題解決に使える余裕が生まれる」と同社は報道資料で主張。

 

この技術は軍用にも応用できる。まずVIP用が新型機にはぴったりで、世界を迅速かつ効率的に移動したり、長距離飛行させるのがよいだろう。

 

このサイズの機体で極超音速あるいは超音速可能となれば情報収集監視偵察(ISR)、電子戦、あるいは長距離攻撃機に転用できる。ハーメウスは既存給油機に対応する空中給油能力も想定し、飛行距離がさらに伸びそうだ。

 

現段階では空軍もハーメウスとは初期段階にあるのみであり、実機がいつ実現するのか確かではない。契約規模も2百万ドル弱というのは高性能機材開発事業としては極めて小規模だ。

 

「大統領専用空輸局はハーメウス社を支援し、画期的な性能の実現をめざし、将来の機材を整備していく」とブリットン准将は声明文を発表。

 

ハーメウスの開発内容が今後のの空軍機材に反映される姿を考えると興奮してくる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Air Force Eyes Hypersonic VIP Passenger Aircraft In New Deal With Aviation Startup                  

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 6, 2020        

鹿児島県馬毛(まげ)島にFCLP建設決まる。米海軍と自衛隊の訓練施設へ

本政府が鹿児島県馬毛島を米海軍空母航空隊5(CVW5)ならびに自衛隊F-35B向けに陸上空母発着艦訓練(FCLP)施設を開発する案を発表した。

131027 Mage Island Nishinoomote Kagoshima pref Japan01ss

663highland / CC BY-SA

 

政府は151百万ドルを地主に支払い、環境影響アセスメントを今秋にも行う。▼滑走路二本、機体格納庫、燃料施設が基地に構築される。主滑走路は8千フィート、横風滑走路は6千フィートとなる。自衛隊員150から200名が駐屯する。工期は4年の予定。▼基地への物資補給は陸上自衛隊のMV-22が行う。▼米海軍パイロットは空母想定の着艦訓練を硫黄島のFCLPで行っているが、海兵隊岩国航空基地から1,400キロ離れている。馬毛島FCLPが完成すると移動距離は400キロに縮まる。■


馬毛島を巡って過去にもお金が絡んだ話がいろいろあって、あらさがしが好きな野党が政府を攻めたてそうですね。ただし、野党にそこまでの調査能力があればの話ですが。自然破壊の大義名分をかざすのでしょうか。工期4年とありますが、すでに島では滑走路を想定した開発が先行しており、十分完成しそうですね。ただし、某国の息のかかった反対運動の妨害がなければですが。

この記事は以下を再構成しました。

Japan unveils plan to develop Mage Island into FCLP for CVW 5 and JSDF F-35Bs

http://alert5.com/2020/08/08/japan-unveils-plan-to-develop-mage-island-into-fclp-for-cvw-5-and-jsdf-f-35bs/#more-83704

Posted on August 8, 2020


2020年8月4日火曜日

スカイボーグ製造競作始まる。実現すれば空の上の戦いの様相はどう変わるのか。

空軍は納期および納入数を特定しない形でノースロップ・グラマンボーイングクレイトスジェネラルアトミックスの4社競作で、スカイボーグの製造契約を交付した。各社は米航空宇宙企業で技術力の高い企業である。


スカイボーグとは
スカイボーグは「自律運航機能で低コストかつ有人機との共同運用を可能としつつ、制空権が確保できていない空域で敵に対し迅速かつ決定的な行動を実現する手段」と空軍は定義している。

同事業のねらいは無人航空装備にパイロット主体の作戦を支援させることだ。スカイボーグで「空軍パイロットは重要データを得て、迅速な意思決定が可能となる。スカイボーグは有人機に広範囲の状況認識を可能とし戦闘ミッションでの生存性を高める」という。

空軍の調達責任者ウィル・ローパーはスカイボーグで戦闘中に「集合インテリジェント」が生まれ、人工知能と有人機を統合し米国の航空優位性が維持できると語っている。

低コスト無人機の登場で空軍戦術はこう変わる。まず、無人機は長時間かつ単調な哨戒飛行に投入できる。詳細な状況認識以外にパイロットを解放し別任務に投入できるようになる。スカイボーグは高価値機材のF-22やF-35の防御にも投入でき、高リスクミッションでパイロットの生命を守る効果も生まれる。

「実現すれば、各種機材に発展し、情報収集の神経網を共有しつつ敵に対しマシンのスピードで対応できるようになる」とローパーは説明しており、マン-マシン統合に言及した。興味深い話だがスカイボーグには課題もある。

単純な事前プログラムどおりの戦術行動に加え、スカイボーグでは人工知能と無人機ネットワークで収集するデータを組み合わせて高度の意思決定が可能となると、敵無人機だけでなく敵有人機への攻撃も可能となる。

なかでも物議になりそうなのはスカイボーグ含む無人機にどこまでの自律性を認めるかだ。武装している場合は攻撃させていいのか。

ローパーも武装無人機に倫理上の落とし穴があるのを認めており、武装無人機でも米軍搭乗員が守る倫理基準を順守させると主張している。「自律型UAVsで選択の幅は広がるが、交戦規則は守る。プロとしての空軍隊員は空軍創設時以来この倫理基準を守っており、自律型UAVsだからといって、これを変えることはない」

これからの航空戦への影響は
もう一つの問題は低価格無人装備の登場で武力対立がエスカレートする危険だ。人命や財産への危険が下がれば戦闘の敷居も低くなる。この意味は将来の航空戦で明らかになるはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

August 1, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35SkyBorgU.S. Air ForceMilitaryDefenseUAVs

Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

2020年8月3日月曜日

GPSの脆弱性をカバーする地磁気センサーをもとにした航法技術の実用化を狙う米空軍

空軍が人工知能を応用し、地磁気から航法地図を作成する技術の開発を民間公開方式でスタートした。

GPSの脆弱性については軍関係者から何度も警鐘が出ているが、研究陣は解決に取り組んでおり、量子時計から慣性航法まで多様な手段を研究している。米空軍ではあらたに地球の磁場の利用を提唱し、安全に位置情報をまず航空機で入手する方法となるとし、その他装備にも展開できる可能性がある。

磁場は地表の場所で強度が異なり、磁気異常分布図としてこれまで整備されてきた。2017年に空軍工科大学助教授のアーロン・カンチアーニが航空機に磁気センサーを装備すれば磁場強度が把握でき、判明している「地理特徴」に参照させれば機体の現在位置がわかるはずと考えた。論文ではセスナ機の前後に磁力センサーを搭載するとある。40時間のフライト分のデータと読み取り時のノイズ除去の工夫で主張に根拠があることが分かった。

だがGPSのかわりに磁場を使うのはそう簡単ではない。宇宙空間なら信号は明瞭だが、機体自体に流れる電流がセンサーに干渉し磁場測定の支障となる。そこで人工知能の出番となり、センサー読み取り値からノイズを除去し信号を明瞭にし、精度も上げる。

空軍で民間と連携してイノベーションを研究するAFWERX部門はMIT研究者とこの問題に取り組み、7月にペーパーを発表したところだ。磁場読み取りの精度は最高10メートルとGPSよりわずかに劣る程度まで実現できるとある。GPSの精度は3メートルだ。だが磁場センサーの読み取り値はGPS信号より妨害にはるかに強い。GPSは特定波長で送信する遠距離信号に依存するが、磁場センサーは機体周辺の磁力環境を読み取るだけだ。

「地球自体と磁場の大きさのため、地球自体の信号を妨害するのは相当困難で、相当というのは核爆発に相当する規模になる」とAFWERXのデイヴィッド・ジェイコブス少佐が本誌に語ってくれた。「それ以外に地殻からの信号を妨害しようとすれば巨大なスケールのマシンが必要となる。ただ機械学習によりこれも克服は可能でしょう」

空軍はAI業界に対しAIツールによる磁場航法の精度向上策を公募中だ。申し込みは8月28日に締め切る。

軍としては異例の動きで空軍上層部はデータセットを民間研究機関に公開し事業実現を目指している。空軍情報部でAIおよび機械学習の次長をつとめるマイケル・カナーンは民間企業向けに厳しい制約を課すのが通例の契約方式と異なり、民間のオープンソースデータと同様の共有ライセンス方式を考案した。契約ではユーザーは研究目的でデータを利用できるが、結果をAI業界に公開する義務を負う。「この方式は今年できたばかりですが、今回の案件以外でも利用がはじまっています」(カナーン)■

この記事は以下を再構成したものです。


Officials just launched a public challenge to help create the artificial intelligence needed to turn the planet’s magnetic fields into readable maps.

TECHNOLOGY EDITOR
JULY 31, 2020


トップガンにF-35C配備始まる。海軍航空戦術が変わる可能性に期待する。

TOPGUNスクールを傘下に置く米海軍航空戦闘技術開発センター(NAWDC)へF-35CライトニングIIの配備が始まった。同機はファロン海軍航空基地(ネヴァダ州)に昨日着陸し、機体には同センターの象徴とTOPGUNバッジがつくが目立たない形で米第五世代戦闘機の標準を守っている。


厳しい米海軍戦闘機ウェポンスクール(NFWS)を修了した初のF-35パイロットが5月に生まれており、F-35の登場で同スクールにこれまでにない変化が生まれそうだ。TOPGUN学生は所属飛行隊から機材を借りて訓練課程に参加する。F-35CがNAWDCに到着し、TOPGUN教官他はライトニングを別飛行隊から借りずに運用できるようになった。


NAWDCは各種機材を運用しており、敵機想定や戦術開発に投入している。TOPGUN教官はF/A-18Cホーネット、F/A-4/E/Fスーパーホーネット、F-16A/Bファイティングファルコンを敵機の想定で空対空戦術訓練に使っている。F-35Cが加わり、低視認性機材(ステルス)の敵機を模した飛行を教官が展開することで、スーパーホーネットやライトニングIIを操縦する学生の技量を完全に試すことが可能となる。


JAMIE HUNTER
F-16Aに乗るTOPGUN教官.


NAWDCの F-35C一号機は初期製造の海軍航空機番号168843の機体で以前は海軍初のF-35教育隊となった打撃戦闘機飛行隊101(VFA-101)「グリム・リーパーズ」に配備されていた。同隊は共用訓練センターのあるエグリン空軍基地(フロリダ州)で2013年から活
動していたが、VFA-125「ラフレイダーズ」が2017年1月にカリフォーニア州レムーア海軍航空基地で発足したため昨年解隊された。機体は2014年にVFA-101に配備され、飛行時間は少ないようだ。NAWDCは初期生産型機材を受領することが多く、海軍は新型機材は実戦部隊に配備するのを好む傾向がある。


米空軍も初期生産型機材のアグレッサーF-35Aをネリス空軍基地(ネヴァダ州)に配備しており、高水準の脅威対象を模擬し、ウェポンスクール学生向けに使う以外にレッドフラッグ等の演習にも投入している。


STEVE LEWIS
尾翼に目立たない形ながらNAWDCのシンボルと有名なTOPGUNバッジが描かれている。

NAWDCのF-35C各機はTOPGUN以外にファロン基地の教官にステルス戦術を駆使して第一線部隊に挑戦することが任務となる。第一線配備前に各パイロットはいったんネヴァダに集まり、訓練を受けている。より重要なのはF-35Cを普通に運用できるようになったNAWDCが新戦術をいちはやく試せば艦隊航空部隊へ大きな効果が生まれることだ。

F-35Cが一機ファロンに到着しただけだが、海軍航空部隊には大きな出来事につながり、海軍仕様の共用打撃戦闘機に歴史が刻まれたといってよい。■

この記事は以下を再構成したものです。

BY JAMIE HUNTERJULY 31, 2020