2014年12月14日日曜日

★2015年の注目① 米空軍次期ジェット練習機T-Xの行方 ボーイングはSAABと組む



そもそも初等練習機からジェット中級練習機へというパイロット養成過程の常識が根底から検討直されるかもしれませんね。競争は熾烈なものになりそうですが、米空軍向けだけの需要ではなく世界各国への売り込みも図るのでしょうね。

Boeing Official: T-X Design Won't Be Unveiled Soon

Dec. 2, 2014 - 04:43PM   |  
By AARON MEHTA   |   Comments

Pilots practice touch-and-go maneuvers in a T-38 Talon during training at Sheppard Air Force Base, Texas. The winner of the T-X competition will replace the service's T-38 trainers with 350 new aircraft.
タッチアンドゴー練習がシェパード空軍基地(テキサス)でT-38タロンを使って行われている。T-X選定の勝者はT-38後継機を350機納入する予定。 (Danny Webb / US Air Force)


ORLANDO, FLORIDA —ボーイングは独自設計で米空軍向け次期練習機T-Xの開発を続けており、2017年の契約交付を期待しているが、同社関係者によれば社内審査はまだ先のことになるという。
ボーイングディフェンスで練習機事業を総括する副社長ボブ・ガウワーBob Gower は記者の質問に答え、「同機ファミリーのロールアウト日程は未定で新型機となるかも未定」と発言している。
ボーイングはT-X事業で固く秘密を守っており設計案の片鱗でさえ外部に漏れ伝わっていない。
わかっているのはボーイングがスウェーデンのSaabと提携して米空軍の要求内容に合致する機体を開発しようとしている点だけだ。ボーイングディフェンスのトップ、クリス・チャドウィック Chris Chadwick含む同社幹部はグリペン戦闘機を改修した機体にはならないと一貫して発言している。
T-X選定の最終勝者はT-38後継機として350機の新規受注を獲得することになり、その規模から業界に相当の関心を呼んでいる。
ボーイングの競争相手はホーク高等ジェット練習機システムBAEシステムズノースロップ・グラマン共同事業)、ロッキード・マーティンが推す韓国航空宇宙工業のT-50、ジェネラルダイナミックスとイタリアのアレニアアエルマッキがM-346を発展させたT-100の各機だ。テクストロン・エアランドも新型機スコーピオンの練習機型で参入する。
ガウワーによればボーイングは空軍が予定通りの工程表を守ると考えている。またT-X予算はいまのところ確保されているが、次期議会が予算をどう扱うか次第で状況は簡単に変わることをガウワーも意識している。
「今のところ当社の顧客は日程表通りに進めているようで、決定は2017年になり、初期作戦能力獲得は2023年想定です。予算のやり取りが発生するでしょうが、当社としては粛々と進め、当社のシステムファミリーは予定通り開発を進めます」■


2014年12月13日土曜日

オスプレイを攻撃任務に想定する米海兵隊の動き


なるほど海兵隊はオスプレイのミッション拡大を狙っており、F-35Bの岩国配備ともリンクした計画を有していることがよくわかります。攻撃、輸送、給油、さらに通信中継と多様な期待があるのですね。

Osprey Fires Guided Rockets And Missiles In New Trials

Dec 8, 2014Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology


ロッキード・マーティンKC-130ハーキュリーズを武装偵察機材に変えた米海兵隊はV-22オスプレイでも同じことをしようとしている。.
  1. 全ての機材にセンサーや武装を施すというのが海兵隊の持論であり、V-22メーカーのベル・ボーイングは自社予算でオスプレイに前方発射兵器を搭載し実証した。
  2. 実証はユマ試射場(アリゾナ州)で、戦闘機への空中給油能力、電子戦機材、通信中継機材の機能実証後に行った。
  3. もともとCH-46シーナイト輸送ヘリの代替機として高速兵員輸送任務お想定していたオスプレイが大きく異なる想定になってきた。
  4. 今回海兵隊が試用した前方発射兵器能力は攻撃が主眼で、地上部隊の支援や戦闘機の一部任務を肩代わりすればAV-8ハリアーやF-35を別任務に振り向けることができる。
ベルとボーイングはテスト機材を使ってオスプレイで前方発射兵器の運用を実証する Credit: Bell Helicopter
  1. ベルはテスト機を投入し、海軍航空システムズ本部の承認を必要とせずに改修を迅速に行った。
  2. 実証テストでは2.75インチ非誘導ロケット弾26発を5回のフライトで発射し、誘導ロケット弾2発はBAEシステムズの高性能精密攻撃兵器システムとして発射している。後者はすでに海兵隊が採用済みだ。さらにレイセオンのグリフィンB軽量精密誘導ミサイル二発も発射した。オスプレイはホバリングモード、速度110ノットでエンジンナセルを60度にした状態の双方で発射している。
  3. 「非誘導型ロケット弾の発射で機体にかかる荷重のチェックができました」とベルヘリコプターは語る。「非誘導型ロケット弾を発射すれば悪いやつらは頭を下げる。オスプレイには誘導型兵器も搭載できます」
  4. 機体前部に小型パイロンアームが機長コックピット下にとりつけられあ。機体構造が7発のロケットポッドもしくは同様の重量の兵装の装着に耐えられることが分かった。機首下に標準装備のレイセオン製AN/AAQ-27A電子光学式(EO)カメラの代わりに、L-3ウェスカム製MX-15センサーにレーザー照準器を搭載し、コックピットから作動切替し、乗員が任意に目標を捕捉できるようになった。
ベル・ボーイングはテスト機左側にパイロンを追加装着したほか、新型センサータレットを機首下に付け加えた。Credit: Bell Helicopter
  1. ロケット弾発射時の熱と破片から降着装置を収納したスポンソンを保護するため、技術陣は表面に保護塗膜を施した。
  2. 攻撃能力の付与の検討は2月に開始され、空軍特殊作戦司令部が特に関心を示していた。ベルは今秋の実証に間に合う形で仕様固めをした。テスト機はそれに先立ちニューメキシコで高温高回転エンジンテストに入っていた。
  3. オスプレイに武装を与える構想は前からあり、もともと防御用に側面ドアに機関銃を装着していたが、BAEシステムズは 7.62-mm ガトリング銃を貨物スペースに搭載する装備を開発していた。ただし、この装備は重量が大きく、アフガニスタンでは使用されることは少なかった。
  4. 強化パイロンの追加で大重量兵装の装着が可能となり、ガンポッドもつけられるが、反動発生のため機体との一体化は複雑になるという。理想だけでいえば、海兵隊・空軍ともに機首に武装をつけ、ヘルメットの視野と直結して、着陸地点で急に表れる敵を排除したいのだ。
実証では高性能戦術ティルトローター機が非誘導型、BAEシステムズの誘導型ロケット弾を発射したほか、レイセオンの精密誘導ミサイルも発射した。Credit: Bell Helicopter

  1. 海兵隊の2015年度航空運用計画ではオスプレイの威力増大では武装の追加に加え新型目標捕捉ポッド、ビデオデータリンク、ソフトウェア変更可能な無線装置、飛行中の通信ゲイトウェイ機能も想定し、オスプレイを空中通信中継基地とすることを想定する。
  2. またオスプレイはKC-10エクステンダーからの空中給油が許可され、長距離の展開が可能となった。今後はKC-46や民間空中給油企業Omega Aerial Refueling のボーイング707の利用に拡大する。海兵隊はMV-22による空中給油能力の実証テストを2013年秋に実施しており、予定されるF-35Bの日本配備2017年夏までに対応可能にしようとしている。■


2014年12月12日金曜日

中国の空軍兵力は米国にどこまで近づくのか


艦船篇に続き、空軍力での中国の脅威を取り上げるレポートです。中国が米国の兵力構成と同じ方向を目指すとは思えず、かつ開発も多方面で一斉に行われており(それだけ資金が潤沢)今後が案じられます。国家の軍ではなく、党の軍なのですが、党そのものがマネーマシンとなっており、軍も追随し、将来的に軍需産業とつながる産軍複合体に発展しないとはだれも断言できないでしょう。

Report: Chinese Air Force Closes Gap With U.S.

by KRIS OSBORN on DECEMBER 4, 2014
FC-31-2

米空軍の中国航空兵力に対する優越性は急速に縮小に向かっており、中国は戦闘機、輸送機、ステルス機で装備近代化を進めているとの議会報告が公表された。
  1. 2014年度版米中経済安全保障検討委員会The 2014 U.S.-China Economic and Security Review Commission は議会が外部専門家を任命した審議会で米中の軍事バランスを評価し、今後の米軍の作戦立案、予算他で提言することが目的だ。
  2. 委員会はこのたび報告書をまとめ、中国人民解放軍は作戦機材約2,200機を保有し、そのうち600機が新鋭機だとする。
  3. 「中国空軍の近代化は1990年代初頭にはじまり、次第に多任務の実施が可能な空軍兵力投射能力を国境の外で可能とし、防空・ミサイル防衛能力、早期警戒能力を整備してきた。」とまとめている。
  4. 委員の一人がMilitary.comに対して議会が十分な予算を準備し、中国の迅速な進歩に対応した技術優越性の確保につながることを期待と発言。予算手当には太平洋重視の兵力再配備も含むべきと述べている。
  5. 「毎年40から50項目の提言を議会に投げて、委員各位が最重要と考える事項を10点別に提言している。今年のトップ10には太平洋リバランスを実施する予算手当が入っている」とラリー・ウォーツェル Larry Wortzel 委員(報告書編集、刊行を総括)は言う。.
  6. 中国ステルス機について報告書ではJ-20試作型の飛行から同機は現時点でアジア太平洋地区に配備中のいかなる機種よりも先進的と表現。また小型ステルス機ではFC-31のテストも進んでいると報告。
  7. このうち瀋陽FC-31は珠海航空ショーで展示されたが、専門家の中には同機がF-35と同等の技術水準の機体なのか不明と指摘する声もある。
  8. 米国の技術優位性は、兵装、航空機材、艦艇のいずれでも急速に縮まりつつあると報告書は指摘する。ある専門家が米中の戦闘機で20年前と現在を比較したところ、1995年当時の米側高性能機のF-15、F-16、F/A-18は大中国のJ-6より幅に優れていたが今日の中国J-10やJ-11はF-15と同程度の性能を有する機体だという。.
  9. J-10、J-11以外にロシア製Su-27、Su-30を保有する中国は新鋭Su-35をロシアから購入せんとしていると指摘する。
  10. 「Su-35ははるかに高性能で航続距離が大幅に伸びるので台湾海峡、東シナ海、南シナ海での航空優越性の確保に役立つほか、同機の各部品をリバースエンジニアリングする材料にもなる。具体的には高性能レーダーやエンジンがあり、中国の国産機に利用することになる」
  11. ステルス、高性能戦闘機以外に中国は空対空ミサイルでもこの15年で相当の進展を示していると指摘する。
  12. 「2000年時点で中国空軍の戦闘機が搭載していたミサイルは視界範囲に有効射程が限定されていた。15年間に中国は短距離・中距離の空対空ミサイル、精密誘導爆弾、全天候型衛星誘導爆弾、対レーダー見しある、空中発射対地巡航ミサイル、対艦巡航ミサイルを導入した」
  13. 報告書ではY-20輸送機にも言及している。新型戦略輸送機として現在テスト中の同機は米空軍C-130の三倍の貨物搭載量を誇る。同機を空中給油機に改装すれば、中国空軍機の飛行距離を大幅に延ばし、はるか遠距離に空軍力を投射することができる。
  14. 現時点で中国には近代的な空中給油機部隊はなく、作戦機材も空中給油対応でないので有効到達範囲が限定されている。
  15. 「人民解放軍海軍の初の空母搭載飛行隊が作戦可能となるまでは空中給油機が遠隔地での航空作戦のカギだが、現有給油機が1950年代のH-6U爆撃機改装の12機では大規模な作戦の支援は不可能だ。」
  16. そこでY-20を給油機に転用すれば南シナ海、東シナ海での作戦を有利に進められる、とウォーツェルが見る。
  17. 報告書ではロシア報道を引用し新型次世代地対空ミサイルS-400の対中販売をロシアが認めたとしている。
  18. 「この交渉は2012年から続いており、従来の中国の防空有効範囲をS-400で2倍の250マイル地点まで広げ、台湾全土、尖閣諸島、南シナ海の一部を有効範囲に収めることとなる」
  19. 核兵力、長距離大陸間弾道弾としてDF-31、DF-31A、さらに開発中のDF-41を列挙している。
  20. 「中国は道路移動式ICBMに核兵器を搭載しているが、DF-41は再突入核兵器10基を搭載する」(ウォーツェル)
  21. 国防関係に強い議員からは下院軍事委員会海軍力部隊投射小委員会HASC Seapower and Projection Forces subcommittee の委員長ランディ―・フォーブス議員(共、ヴァージニア)のように報告書の指摘事項に懸念を表明するものがある。フォーブス議員はかねてから米国は中国の軍拡脅威に適正に対応すべきと主張してきた。
  22. 「10年前のペンタゴンは中国の動きに注意を払っていなかった。」「グローバルな視点で我が国をこれから数十年に渡り防衛できるしっかりした戦略を構築する必要がある」
  23. フォーブス議員は中国との関係改善、平和と安定の追求は重要としながら、米国も軍事力の近代化、準備態勢を図りつつ、中国の意図よりも実際の能力を見て判断すべきだとする。
  24. 「準備は相手の能力を見てすべきで、意図は事件があれば一夜にして一転するものだ」■

★米海軍のレーザー兵器がペルシア湾で稼働中



これはすごい。海軍の砲術士官はこれからレーザー士官になるのでしょうか。そのためには相当の発電容量が必要で、ズムワルト級ががぜん注目されるでしょう。目標捕捉すれば即破壊、となればスターウォーズの世界が海上で実現しますね。もちろんそんなに簡単ではありませんが。

Star Wars At Sea: Navy’s Laser Gets Real

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on December 10, 2014 at 3:43 PM

PENTAGON: レーザー兵器の時代が正式に幕開けした。今年9月より米海軍は40百万ドル相当100キロワット級のレーザーウェポンズシステムLaser Weapons System (LaWS)をUSSポンセ に搭載し、ペルシア湾で運用中。海軍研究部長マシュー・クランダー少将 Rear Adm. Matthew Klunderによれば「毎日利用している」とのこと。乗組員が訓練用標的に命中破壊させており、それとは別に超高性能望遠鏡としてレーザーの光学性能を活用し、疑わしい艦船や航空機を監視している。
まだ戦闘時の発射は行っていないが、ペンタゴンはレーザー兵器の交戦規則を作り、ポンセ艦長には必要と判断すれば艦の防衛に発射する許可が下りているという。
通常の弾丸と比較した場合のレーザーの利点は「拡張性」 scalabilityだと海軍の技術トップ、ブライアント・フラー少将 Rear Adm. Bryant Fuller (海軍海洋システムズ本部)は語る。もし疑わしい船舶あるいは航空機がポンセに接近しすぎた際はレーザー兵器操作員は低出力の「目くらませ」 dazzling モードで標的対象の乗員の目に入るが、損害は発生させない。さらに接近してきたらレーザーの出力を上げ相手のセンサーを破壊、モーターを焼きつかせ、さらに相手が搭載する爆発性物質を起爆させる。演習では標的無人機の急所を狙い「二秒以内」で撃墜したとクランダーは言う。
ただし有人標的の場合はジュネーブ協定が盲目化させる兵器の利用を禁じているので事情が複雑だ。レーザーは出力によって盲目になることがある。そのためペンタゴンは交戦規則のまとめに一年ほどかかっている。国際法や米国内法規を適用するとレーザーは「対人目標には使えない」とクランダーはいい、「それを順守している」
「もし相手の舟艇に人が乗っており、こちらを狙っていたら、照準は人には合わせず、舟艇に合わせる」とクランダーは言う。
US Navy photo
USSポンセが搭載するレーザーウェポンズシステム(LaWS)
「艦船の機能を奪う方が効果的」とフラーも言う。センサー、兵装、エンジンのいずれかを破壊すれば効果的に対象を無力化できる。(提督は二人ともレーザーを最高出力にしたらどうなるかは述べていないが、おそらくおぞましいことになろう) 海軍公開のビデオ画像ではレーザー照準は恐ろしく正確で小型ボートに搭載したロケット推進式手りゅう弾(RPG)の一発に照準を合わせている。ビデオではRPGがレーザーで起爆する光景がうつっており、ボートの兵員を直接殺害する必要はない。
海軍はイランお得意の小型強襲艇による同時多数接近にレーザーを使うテストもしているとクランダーは言う。ボートは爆発しなかったが、レーザーを一艘に照射し、目標捕捉したままの状態を「一秒か二秒」保持した。この時間があれば重要な装備を焼け焦がせることができる。その後、次の小艇、さらに次の次の、と連続して短時間で照射した。
ではどこまでの大きさの目標を破壊できるか。「大型ヘリコプターの機能停止は可能」とクランダーは述べる。その場合、当然機体は墜落する。小型艇は海上で機能停止する。
今後の課題は高速移動目標で、それには今以上の出力のレーザーが必要だ。2016年か2017年までに海軍は100キロワットから150キロワット級レーザーの艦艇搭載を目指すとクランダーは言う。「これがあればUAVや高速舟艇以外の目標を対象にできる」 現行の30キロワット級LaWSであれば多くの艦艇にそのまま搭載できるが、「100キロワットや150キロワットとなるとより広範囲な利用が想定できる」
高出力が利用できればレーガン大統領時代から実現を目指してきたミサイル撃墜が達成できる。クランダーとフラーによれば海軍はこれは100ないし150キロワット級レーザーで実現可能とみているが、確証はできないとする。現行のレーザー兵器の発射コストは一回0.59ドル分の電気消費量であるが、現在使用中のミサイル迎撃手段であるスタンダードミサイルが数十万ドルから数百万ドルであるのと比較してはるかに安価だ。ミサイル迎撃レーザーだともっと安価になり、無限に発射可能だ。
逆に低出力レーザーではポンセ搭載の例のように効果が限定的だが、驚くような副次効果がある。高い光学水準で安定化した目標捕捉のアルゴリズムがレーザー発射で必要だが、これを超高性能望遠鏡として活用できる。防御用の第一義的利用に加え、「この効果を毎日活用し、識別・目標捕捉に使っている」とクランダーは言う。
「水平線上に航空機を発見した場合、裸眼では小さな点にすぎない。双眼鏡で航空機とわかるがレーザーだと何を搭載して、どこの所属なのか、何をしようとしているのかが分かる」「尾翼の登録番号も見える」
この素晴らしい装置が高温、湿度、粉塵の舞うペルシア湾の過酷な環境でどこまで機能するかを試している。
「風速30ノットの砂嵐までならシステムは機能する。翌日にチェックしてみたらアラインメントは正確で再調整の必要がなかった」(クランダー)■



2014年12月11日木曜日

★イタリアのFACO生産一号機は2015年ラインオフ、日本のFACOは?



First F-35 Assembled In Italy To Roll Out Early Next Year

Dec 10, 2014Amy Butler | Aerospace Daily & Defense Report

イタリア関係者によるとカメリ空軍基地 Cameri Air Base(イタリア北部)内の最終組立点検施設 (FACO) からF-35A一号機がするのロールアウトは来年初めとなる。同機がラインオフするのは2015年3月までとなる見込み。
  1. イタリアは10億ドルを投じ同施設を建設したが、F-35導入を巡り政治的対立のさなかのできごとだった。施設は昨年から運用開始しており、カメリはユーロファイター・タイフーンやトーネードの生産で以前より中心地となっている。
  2. イタリア軍はFACOで最低250機の組立を期待し、イタリア向け131機とオランダの85機を想定していたが、ともに現在は最終数字が未定だが、イタリアのFACOは今後の拡張を想定している。今後ペンタゴンが求めるヨーロッパ内の大規模機体修理施設の誘致でイタリアは一番有望で、来年早々に最終発表がある見込みだ。
  3. イタリアはロッキード・マーティンのフォートワース施設で想定した移動式生産ラインの採用は見送った。ただし、最終組立工程に特化した作業場を11か所設け、そのうち4か所は電子装備関係専門の組立electronic mating and assembly system (EMAS) 専用だ。フォートワースのEMASと同様だが、5か所は点検修理オーバーホール(MRO)業務用でその他も必要に応じてMRO用に転じることができる。
  4. イタリアはきわめて積極的だ。MRO関係で地元経済に186億ドルの効果が発生すると同国空軍高官がAviation Weekに昨年述べている。
  5. 一方、日本でもFACO建設が名古屋で進行中だ。5月起工ずみで、2015年12月にはフォートワースと同様の電子装備組み立て設備が建屋内に設置される。
  6. 日本が発注したF-35の42機中最初の4機はフォートワース工場で生産するが、日本製のF-35Aのラインオフは2017年秋、納入は2018年となる見込み。■


2014年12月9日火曜日

2020年に米中の海軍力バランスが逆転する可能性はあるのか


かつてソ連海軍の脅威が叫ばれましたが、今や中国がかつてのソ連の立場ですね。米海軍も空母中心主義のまま、周辺技術の整備を怠っており、(例 巡航ミサイル)、かつ海軍艦艇数も減少の一歩という中で、現実的な対応が求められるわけです。サイバースパイ活動は頭が痛いですが、逆もまた真なりで実は米国も中国の技術にアクセスしているかもしれませんね。海上自衛隊に求められる方向もこの報告書の延長線にありそうですね。

Report: Chinese Navy’s Fleet Will Outnumber U.S. by 2020

by KRIS OSBORN on DECEMBER 3, 2014
中国は2020年までに海軍艦艇を合計351隻とし、世界各地を攻撃目標に収めるとの報道がある。
  1. 米中経済安全保障検討委員会 U.S.-China Economic and Security Review Commissionの議会向け提言では米海軍も艦艇建造のペースを早め太平洋でプレゼンスを強化すべきとの内容だが、米軍はこの戦略をすでに開始ずみだ。
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  1. 同委員会は太平洋艦隊を67隻に増強し、兵力再配置の一環で母港の6割を太平洋に2020年までに移転すべきだとする。

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  1. 米海軍の再配備計画では艦艇の6割を太平洋に配属し、太平洋地区の軍港に艦艇を順番で派遣する他、海兵隊部隊をオーストラリアのダーウィンに駐留させる。また沿海戦闘艦を4隻シンガポールに交代で派遣する。

  1. ただし国防専門家の間には中国の脅威急拡大に対抗できる太平洋でのプレゼンス増強の予算がどこにあるのかと疑問視する向きがある。また厳しい予算削減策の他にも米海軍には今後の課題がある。

  1. 報告は中国が開発中の各種武器、機材について言及しており、太平洋で米海軍の空母他水上艦艇が今後作戦を展開する前提条件が変わると指摘している。特にDF-21D精密誘導陸上発射型の対艦弾道ミサイルに言及しており、900カイリ以上の有効射程で水上艦艇が標的になるとしている。今回の年次報告をまとめたラリー・ウォーツェル Larry Wortzel は「真の海洋型海軍になりつつある」と評す。

  1. 「中国が目指すのはミサイル中心の装備整備で米海軍の航空母艦を中国近海に近づけさせないことだ。中国海軍の整備状況と米海軍が艦艇数で減少傾向にあることを考えると、力とプレゼンスのバランスは中国に有利に働いていく」と同委員会は述べる。

  1. 中国の軍事支出規模を正確に把握できないが、2014年度は1,310億ドル相当で前年から12.2%増と委員会は見る。この規模は米国の軍事支出の六分の一に相当する。ただし中国は1989年以来毎年二桁で軍事予算を増やしており、その結果2008年実績から倍増したと報告書は指摘している。

  1. ランディ・フォーブス下院軍事委員会海上権力部隊投射小委員会委員長(共、ヴァージニア)は潜水艦および水上警備艦艇が2007年比で三倍増になったことを懸念している。

  1. 「警備能力増強は氷山の一角にすぎない。今後5年ないし8年で中国潜水艦は82隻となるのに対し我が方はアジア太平洋地区で32隻ないし34隻しか運用できない」「現状でも中国は60隻対32隻と潜水艦で優位な立場にある。水上艦艇では中国の対艦ミサイルは我が方より有効射程が長い」

  1. また報告書はサイバースパイ活動で中国は兵器開発を早めていると指摘。2012年度の国防科学委員会報告では沿海戦闘艦、F-35、F/A-18、ブラックホークヘリコプター、イージス弾道ミサイル防衛、ペイトリオット、グローバルホークとことごとく情報が盗まれたとする。

  1. 中国の海軍技術はまだ現行の米艦艇の水準まで到達していないが、今後数十年で大幅に関係が変わる可能性がある。中国もハイテクの次世代艦、兵装の開発を進めているとの報道がある。

  1. 中でも旅洋III型 LUYANG IIIは新型駆逐艦で今年中に艦隊に編入の予定だ。同艦には垂直発射型長距離対艦巡航ミサイルを搭載し、射程を伸ばしたHHQ-9対空ミサイルも搭載するという。

  1. さらに国産航空母艦数隻の建造を開始しているという。現在はウクライナが建造した遼寧一隻だけで、搭載する航空部隊が戦力化するのは2016年以降だと報告書は指摘する。空母運用を想定したJ-15の開発が進行中だ。

  1. 揚陸強襲艦では玉昭(Yuzhao)級LPDの追加建造の計画がある。同艦は兵員800名、ヘリコプター4機、装甲車両20台を搭載すると報告書は伝える。

  1. 新型055型巡洋艦は陸上攻撃用ミサイルに加え、レーザー兵器、レイルガンも搭載するとしている。

  1. 水上艦部隊を補完するのが少なくとも60隻と言う小型高速ミサイル艇と、青島級軽フリゲート艦だ。

  1. また潜水艦では攻撃型、核ミサイル搭載型、SSBN型が急増すると委員会は見る。現時点で中国の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦SSBNはJL-2ミサイルを搭載し、4,500カイリ以内で攻撃が可能だ。JL-3搭載で射程距離を拡大するという。またロシアと共同で新型攻撃潜水艦の開発を進めている。

  1. 「中国はロシア製高性能通常型潜水艦4隻ないし6隻の建造をめざし、ロシアの最新ソナー、推進手段、静粛化技術を手に入れようとしている。交渉がまとまれば人民解放軍海軍の次期潜水艦の能力向上、静粛化につながり、中国潜水艦の追跡探知が米国にとって困難となる」と報告書はまとめている。

  1. さらに新型誘導ミサイル搭載原子力潜水艦095級SSGNを開発中と言われ、中国初の潜水艦発射型対地巡航ミサイルを搭載する。■

2014年12月8日月曜日

財政難でNATOのAWACS隊が規模縮小へ


ヨーロッパ各国も財政負担の捻出で大変ですが、ウクライナはじめ不穏なロシアの動きがある中で大丈夫なのでしょうか。また、一部抜け駆けをするのはいかにもヨーロッパらしい。通貨ユーロというのもインチキではないかと見ているのですが、偏見でしょうか。

NATO Faces AWACS Fleet Shrinkage

Funding shortfall is reducing key NATO surveillance fleet
Dec 1, 2014Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology

NATOが加盟各国に防衛支出増額を求めている中、空中早期警戒機では各国に要望が虚しく伝わるだけだ。
  1. NATOの空中早期警戒指揮統制機隊(AEW&C)のE-3Aコンポネントが1980年代創設以来はじめて縮小を迫られている。しかもロシアがウクライナで強硬策に出ている最中に。

  1. 部隊はドイツのガイレンキルヒェンGeilenkirchen基地で、ボーイングE-3A17機で構成され、空中監視の他NATOの空軍演習を支援する。9.11以降は米国の要請で米領空内をパトロールしたほか、アフガニスタンでの運用を最近終了したばかりで、2015年には合計4,300飛行時間をウクライナ近隣のNATO加盟国向けに実施する予定。

  1. 運用に年間250百万ユーロ(312百万ドル)が必要で16カ国が分担しているが財政負担になっており、三年前にカナダ政府が分担を中止する決定をし、経済不況で予算節約を図った。.

  1. ガイレンキルヒェン基地ではカナダは三番目の規模で分担をして、乗員4組を派遣していた。カナダは今年8月に同基地から撤退している。

  1. カナダはAWACS以外に共同地上監視 Alliance Ground Surveillance (AGS) 運用からも手を引いて90百万カナダドル(79百万ドル)を毎年節約しようとする。カナダの資金提供がないと部隊は17機の全機運用ができなくなる。地上待機となる一機は部品取りに使うことになろう。

  1. カナダ撤退でNATO AEW&C部隊は不安定な状態になると司令官はみており、NATOはAGS導入(グローバルホークを投入)による戦力構造の再編を検討中だ。

  1. 再編でE-3AとAGS運用に2,000名が従事する。E-3Aコンポネントは現在2,300名規模で、AGSでは600名を投入する予定だったので、1,400名を削減することになる。

  1. コックピット近代化と新規航空管制対応の機体改装は米空軍のドラゴン事業として実施中だ。だがNATOはカナダ撤退後の16機のうち14機のみに改装を実施する。非対象の2機の退役は発表されていないが同一機種で仕様が異なる機材の運用の可能性は低い。改装作業が完了した初号機は12月17日に飛行可能となり、NATOへ2016年1月に復帰する。また残る全機も2018年中に改装を終える。

  1. 問題を複雑にするのは加盟国の中に独自にAEW&C整備をする動きがあることだ。トルコにはボーイング737を原型にしたEW-7Tピースイーグルがあり、イタリアはが降るストリームG550をAEWに改造した機材をイスラエルから購入した。

  1. またE-3Aの削減で英空軍のE-3Dセントリーに大きな役割が期待される。英国はNATOのE-3運用予算を分担していないが、自国の6機をNATOミッションに編入している。

  1. 国防予算削減の動きで英空軍機材でも影響は避けられないが、NATO、フランス、米空軍が運用する改造型の性能は既存機を上回るものがある。そこで英軍も運用機材の改修を急がないといけないとの危機意識がある。

  1. NATOのE-3A各機の退役は2025年予定だが、2030年代にかけて運用延長は可能だ。今のところ代替候補がなく、現行機材を使い続けるために「必須の性能とあったらよい性能」の仕分けで近代化を行っていくのだという。 その必須性能のリストには新型暗号化機能や多機能情報分散型の共用戦術無線システム Joint Tactical Radio System がある。■


2014年12月7日日曜日

★主張:イランは米国の同盟国に復帰できる



なるほど面白い観点ですが、イスラムの宗派の違いを無視していますね。ただし、イスラムとはイデオロギーよりも実は実利を重んじる考えのはずなので、イランをカウンターバランスとして米国が重視する可能性も排除できません。イラク領土内でイラン空軍が作戦を展開している事実も(国内向けに)イランは否定しているようですが、意外に早く事態が急変するかもしれませんね。原油価格低下とともに米国としては中東湾岸地区の安定を早く回復したいと思っているはずなので。こうなるとイスラム国は一層孤立感を覚え自暴自棄になる、それで滅亡が早まる、と言うシナリオなのかもしれません。

Opinion: Iran — America’s Old/New Ally

By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired)
Published: November 24, 2014 4:14 PM • Updated: November 24, 2014 4:15 PM

Behesht-e_Zahra,_Tehran,_Iran_(5072246576)
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ジュネーブで本日、関係六か国はイラン核問題協議を7か月延長すると決定した。

ジョン・ケリー国務長官は各国の気持ちを代弁した。米国、中国、英国、フランス、ドイツ、ロシアとイランだ。「一年でここまで来たこと、特にこの数日での進展を見ると、ここで決裂しては元も子もない」


交渉先送りする間に米国はイランを巡り新しい国家戦略目標を探る時間がとれるだろうか。こんな仮説はどうか。イランをペルシア湾岸における主要な戦略関係国にもう一度復帰させるのだ。

今になって振り返るとペルシア湾岸地方で安定が失われたのは米国の同盟国としてのイランを失った1979年のパーレヴィ国王の退場以降である。その後の米国は新しい同盟関係の構築に走り、巨額の予算と国民の生命を犠牲にして新しい勢力構図を作ろうとしてきた。イランに制裁措置をしてきたが、歴史から見れば、3,000年の歴史と文化を有する国が相手なのだ。


一見、米イラン接近は非常識に見えるが、歴史と地理の教訓からこの発想が実は理不尽ではないことがわかる。

まずイランは第二次世界大戦終結から1979年まで米国の主要戦略同盟国だった。イラン革命が終止符を打った。地理と文化的条件からイランは地域内で主導的立場を数世紀にわたりとってきた。直近の34年間がいかに混乱していたとはいえ、もっと長期視点からすれば例外的な期間であり、イランの地理文化的条件を直視すべきだ。

シャーが国王の座にあった時代を思い返してみよう。1979年までのイランは地域内で突出した軍事力を保有していた。第二次大戦後は英国に代わり我々がイランを同盟国の地位に押し上げたのである。そのため、当時の先端装備、F-4、F-14、ホークやハープーンミサイルを供与してきた。

現在のアメリカがイランを語る際は底流にある文化面を無視している。イランの有利な地理条件、65百万人の人口、そして古代文化が同国の地位を重要にする要素だ。石油は問題ではない。

二番目に同地域で発生した三つの危機状況で、イランは米軍作戦を妨害していない。

ひとつめが砂漠の嵐作戦で、イランの宿敵イラクを相手とした米国はペルシア湾に4個空母打撃群を投入したが、イランは干渉しなかった。2001年9月11日以降はアフガニスタンのタリバン勢力排除にイランは協力している。さらに現在進行中の対イスラム国作戦でイランと米国は共通の利害関係を見出している。

米・イラン関係はとげとげしく、上記の三例をもってイランとの関係を単純化するつもりはない。だが、事例は米国、西側諸国が危機に直面した1991年、2001年、2014年のいずれにもイランは米軍作戦を妨害しなかっただけでなく、一定の範囲で米国を助けていたのである。

三番目に地域内の9・11以降に現れた敵に米国の同盟各国が資金、人員、イデオロギーをそれぞれ供給していたという事実がある。9・11実行犯19名のうち、15名はサウジアラビア、2名はUAE、残りはエジプトとレバノン一名ずつだった。イラン出身者は皆無、またイランが資金援助した事実もない。

現在進行中の対ISIS作戦は第三次イラク戦争と言ってよく、ISISに資金・人員を提供するのは地域内の諸国だが、ここにイランは含まれていない。

イランには独自の代理テロリスト集団があり、レバノンのヒズボラは1983年に米海兵隊退舎をベイルートで爆破している。

ヒズボラやイランのQudsのような遊撃隊が代理勢力になっていることが今後の問題となるが、イラン関係の正常化がすすめば非対称的なそのような脅威勢力は不要となるのではないか。また地域内の同盟各国はたとえ国民の一部が航空機をハイジャックし、米国内で力の象徴に突入させてもやはり同盟国だと証明している。そうなると米国が各国に寛容になる余地が出てくる。

イランに何が起こっているのだろうか。イランが各国との外交関係を構築しようとしてるのは自ら課した外交的孤立を終えようとしている証拠ではないか。いかにも脅威を与る姿勢を示してきたイランはとてつもない経済的犠牲、地政学的犠牲を払ってきた。とくにアフマディネジャド政権下がひどかった。今のイランはこの孤立を終える寸前にあり、米国や西側各国との信頼関係を再構築する寸前でもある。

核協議の延長が決まったことで、将来の米イラン関係はこの段階では先が読めず、これまでの経緯から筆者の仮説はいかにも先走りしすぎとの観を与えるかもしれない。

しかし最後に付け加えたい。過去の世代では日本とドイツがアメリカで最重要の同盟国になるとは想像さえできなかったはずだ。両国とは全面戦争しているが、イランとの対立は比較すれば一度は友人だった二人が頑なに反目しあっているようなものだ。歴史と地理を注意深く観察すれば、筆者はイランとの関係正常化が米国の目指す方向であると楽観視している。



日曜日はのんびりと 真珠湾攻撃を描いた映画作品を並べてみた


日本では真珠湾攻撃は12月8日の出来事とされていますが、アメリカにとっては12月7日(日曜日)に「ひきょうな」奇襲を受けた屈辱の日、としています。今年は同じ日曜日になったため、海軍協会がこんな特集を組みました。どうも協会には映画好きのスタッフがいるようですね。ただし日本の「ハワイ・マレー沖海戦」はここに入っていませんね。


Movies About Pearl Harbor

By: US Naval Institute Staff
Published: December 5, 2014 12:28 PM • Updated: December 5, 2014 12:29 PM

Promotional painting for the 1970 movie Tora! Tora! Tora! by artist Robert McCall via Airport Journals
トラ・トラ・トラ!の宣伝用ポスターより。作Robert McCall via Airport Journals

真珠湾攻撃 DECEMBER 7th (1943) 日本未公開


アカデミー短編ドキュメンタリー部門で受賞したジョン・フォードによる本作は真珠湾攻撃を再現構成したもので、一部は完全なフィクションだ。また、作品中のシーンには真珠湾での実写に別のドキュメンタリー映画のシーンが含まれている。陸軍省が完成版からおよそ一時間分をカットしたのは、軍が開戦準備を怠っていた印象が植え付けられるのを恐れての事だった。


エアフォース、AIR FORCE (1943) 日本未公開


台詞は古臭く、演技は硬く、セットはボール紙製、効果は特殊とは程遠い本作だが、開戦直後のハリウッドが産んだ愛国心をそそるプロパガンダ映画としては抜きん出ている。物語はB-17爆撃機の乗員を中心とし、ハワイに攻撃寸前に着陸すると言う不幸なめぐり合わせを辛くも生き残り、後半で日本艦隊の攻撃で先陣を切る爆撃でしっかりとお返しをする。


地上より永遠に FROM HERE TO ETERNITY (1953)


フランク・シナトラ、ドナ・リード、監督フレッド・ジンネマンがそろってオスカー受賞し作品賞も得た。物語はハワイ駐留の陸軍を中心とし、開戦前の束の間の平和で始まる。バート・ランカスターとデボラ・カーが浜辺で波にもまれるシーンが一番有名だろう。

太平洋の嵐 I BOMBED PEARL HARBOR (1960)


米国内公開では原題をもっとセンセーショナルな“I Bombed Pearl Harbor” (ワレ真珠湾攻撃に成功セリ)に変更している。大戦を日本の視点で描くのは珍しい。物語は搭乗員を中心に真珠湾から緒戦の勝利に酔う日本海軍がミッドウェーで惨敗するまでを描く。

危険な道 IN HARM’S WAY (1965)


オットー・プレミンジャーが多層的に組み立てたソープ・オペラである本作は真珠湾の海軍軍人生活から始まり、ジョン・ウェイン、カーク・ダグラスはじめお馴染みの顔が多数出てくるが、1940年代の女性のはずが1960年代の髪型となっているのがご愛嬌である。ウェインはリラックスして、自信たっぷりだが、撮影時にすでに肺がんを発症しており二ヶ月後に左肺を摘出している。本作は大作であり、考えさせられる内容だが、海軍を扱ったものとしては楽しめる映画だ。

トラ・トラ・トラ! TORA! TORA! TORA! (1970)


真珠湾攻撃を巨額の予算で活き活きと再現している。日米合作で双方の視点から描く本作は史実の詳細に忠実にこだわり、攻撃当日の様子は観る者の記憶に焼きつく。特殊効果でオスカーを受賞している。本作と「パットン大戦車軍団」の二本で1970年は戦争映画の当たり年になったが、ベトナム戦争がまだ続いていたことを考えると皮肉に見えてくる。


パール PEARL (TV – 1978)


本作はABCテレビのミニシリーズでアンジー・ディキンソンとロバート・ワグナーが日本艦隊の来襲前のハワイで数々の登場人物がどんな暮らしをしていたかを語る。トラ・トラ・トラ!の使い回しで攻撃シーンを楽しめる。


地上より永遠に FROM HERE TO ETERNITY (TV – 1979)


オリジナル劇場上映作品をテレビのミニシリーズにしたもので、予想がつくと思うが、安っぽい作品にしあがっている。ただしジェイムズ・ジョーンズ原作を忠実に映像化しており、ナタリー・ウッドも最良の演技を披露してくれる。その他出演者にはドン・ジョンソンやキム・ベイシンジャーのようにその後90年代にかけて活躍していく者が出演している。

ファイナル・カウントダウン THE FINAL COUNTDOWN (1980)


本作の筋書きはあたかも高校生二人があの時歴史が変わっていたらと議論して作ったみたいだ。原子力空母で高性能超音速機を搭載したまま時間をさかのぼり、真珠湾攻撃の直前に日本艦隊を食い止めたらどうなるか、というもの。カーク・ダグラスとマーティン・シーンが歴史をの改変は許されるかと自問自答に苦しむ。米海軍全面協力の元で制作された本作にはUSSニミッツのドキュメンタリーとしても楽しめる要素があり、F-14他の艦載機の空母運用の様子がよくわかる。


戦争の嵐 THE WINDS OF WAR (TV – 1983)


ハーマン・ウォーク原作をミニシリーズ全盛期に映像化した本作は世界大戦の開始時の世界を描来、クライマックスは真珠湾攻撃により米国が参戦していくところで終わる。主演ロバート・ミッチャムは冒険心たっぷりの主人公ヴィクター・「パグ」・ヘンリー海軍大佐にはミスキャストであり、いつも昼寝したくてしかたない顔をしている。ただ高視聴率となり、続編「戦争と回想」が1988年に制作され、連合軍の勝利までを描く。


パール・ハーバー PEARL HARBOR (2001)


台詞が陳腐と批評家からバカにされ、歴史家からは不正確な描写で毛嫌いされ、観客からは冷笑されたベン・アフレック、マイケル・ベイ主演の本作はそれでも全世界で450百万ドルを稼いでいる。難点は多いが、攻撃シーンだけはなかなかのものだ。おかしなことにラブシーンに重点をおいた日本公開版は大ヒットになっている。
 
Article Keywords: Imperial Japanese Navy, Oahu