2016年6月23日木曜日

★中国は本当に大国なのか、五つの通説を切る



以下は主張が偏りがちなNational Interestの中でも極めてバランスの取れた観察だと思います。一読をお勧めします。


The National Interest  5 Common Myths about China's Power

Beijing’s no supervillain.
June 16, 2016

世界から孤立した途上国から経済大国かつグローバルに活動する国に変身を遂げた中国は21世紀の国際政治でもっとも重要な変化といってよい。今や世界二位の経済規模になり、軍事予算は1989年の200億ドルから2015年の2,150億ドルへ大幅に増えた。これはロシア、ドイツ、英国の国防予算の合計よりも大きな金額だ。
  1. 中国の台頭を恐れるあまり事実に反する報道や誇張された話が広がっており、米国内での議論では「通説」となっており多くの中国のかかえる問題の姿が見えにくくなっている。その例に社会に深くしみ込んだ汚職問題、経済成長の鈍化、人口高齢化がある。
  2. 中国のイメージは危険な強奪者で米国に変わり世界支配を企む大国になっている。そこで中国の国力に関する通説を解明して中国台頭の理由を理解し、今後の国際社会での中国の役割を理解ことが米中関係の今後を占うために必要だ。

通説その1 中国はグローバル軍事超大国
  1. 目を見張る経済成長が二十年続き人民解放軍の近代化を多方面で進める余裕が生まれた。1995年から2015年の国防予算は平均して二ケタ成長を維持してきた。ストックホルム国際平和研究所の試算では中国の2015年国防予算は2,140億ドルで、米国に次ぐ世界第二位とする。中国の軍事支出だけでアジア太平洋地区の防衛総支出の48%に相当する。
  2. 支出増大により中国は軍事力を伸ばしたが、依然として中国軍事力の到達範囲は限定的だ。超大国の定義として軍事力を世界各地に投射する能力が必須だが、中国は東アジアまでにとどまっている。物議を醸す人工島建設さらに滑走路やレーダー施設の建設で南シナ海では中国軍事力を増幅する効果はあるが、それぞれの施設は攻撃に脆弱であり九段線を超えた作戦には役立たない。同様に中国の接近阻止領域否定能力や対艦ミサイルは近距離地点で米国との対決には有効だが、離れると途端に効果がなくなる。
  3. 政治的決断があれば中国はゆくゆくは超大国能力を手に入れるだろう。中国初の空母遼寧は2012年に就役しているが、元はソ連空母を再整備したもので、技術的成約が残る。しかし中国は新型空母を国産技術で建艦する挑戦に着手している。国産国防装備の開発は研究開発や技術力の基盤の拡大につながり、中国は米国との技術格差を埋めていくだろう。さらに中国は今のところ海外基地の使用合意ができていないが、米軍は世界規模で作戦を展開している。その中でジブチで初の海外「支援施設」の建設が2016年2月に発表されている。
  4. また金銭で解決できない別のハードルもある。中国は1979年以降に実戦経験がない。軍事力は試す機会がないままで、将校は戦闘経験が欠けているのは米軍とは好対照だ。PLAの内部再編が最近行われたが状況を悪化させるかもしれない。指揮命令系統の階層を再構成したからだ。こうした制約で中国が軍事力をグローバルに投射する能力を手に入れるのはまだ数十年かかるかもしれない。

通説その二  米国債務1兆ドル相当を保有する中国はアメリカに強みを発揮できる
  1. 中国が米国の借金を所有することで米経済へ影響力を及ぼすとの恐れは誤りであり誇張されすぎだ。ある国の債務を外国が購入すること自体は通常の取引で世界経済の透明性を保つ作用がある。
  2. 各国が債権を保有するには理由がある。外国債はその国の外貨準備の一部となり、海外から財の購入とともに海外投資の手段となる。中央銀行が政府債を購入するのは為替レートを維持するためと経済不安定化を未然に防止するためで低リスクの債権として買い入れる。中国が米国の借金を買い上げるのも同じ理由だ。
  3. 米債券の大口所有者は中国だけではないのが重要な点だ。米国債は安全で便利な資産対象で世界に通用する準備通貨の保有になる。ドルは国際決済に広範囲に使われている。たしかに中国は1.2446兆ドルの米債券を保有し世界最大だが日本も1.1371兆ドルと二位で迫っており、実は米債券の大多数およそ6割は米国内の諸機関が保有している。
  4. 中国の大規模債券保有に関していつか中国が「取り立て」に来るのではと言われることが多いが、債権を使った強圧的な行動をとることは厳重に制限されている。は債務国に打つ手がなくなった時に初めて債権国は影響力を支払い条件に行使できる。
  5. これを米国の例に当てはめると米国債は世界経済では極めて需要が高い資産とみなされている。米国債は広く保有されており、ほぼ常時買い手が見つかる。仮に中国が保有する債権を売りに出しても米国への影響は限定的だ。例として2015年8月に中国が米国債を1,800億ドル減らしたが、米国債価格の下落幅は無視できるほどだった。

通説その三 中国は温室効果ガスの排出削減対策をとっていない
  1. 中国は環境汚染問題を抱えているのは議論の余地がない。数十年にわたり急速な経済成長を進めた結果、中国のエネルギー需要は大幅に拡大し、今や世界最大のエネルギー消費国になっている。化石燃料特に石炭、石油を大量に消費する中国は世界最大の二酸化炭素排出国になった。
  2. 経済発展と環境保護、社会福祉の均衡が各国に求められるが、この課題は特に中国には待ったなしだ。多くの点で中国はいまだに開発途上国である。これまでの中国は経済成長を阻害する要因に抵抗してきたが国内からも環境意識が高まっている中で指導部は環境水準を改善し環境にやさしい選択肢を模索し始めたところだ。
  3. 中国政府の公約では2030年までに2005年実績比で二酸化炭素濃度を60から65パーセント削減する。2015年には国内で排出権取引市場を発電、製鉄、セメント産業を対象に創設すると合意している。
  4. 中国の石炭消費量は残りの世界合計を上回るが、同時にに中国は水力発電、太陽光、風力発電でも世界最大規模だ。大規模投資をインフラ部門に行い、水力発電が中国の再生可能エネルギーの中心となり、2014年の総発電量の16.8パーセントを占めるまでに成長した。また太陽光発電パネルの生産でも世界最大であり太陽光発電量も世界有数の規模となっている。すべてあわせて2015年に中国は世界の発電容量の三分の一を占めている。
  5. にもかかわらず、中国が化石燃料の消費を減らすには相当の年数が必要だ。風力発電は2012年実績で総消費量の2.1パーセントしか占めず、米国の3.7%やドイツの9.4%と比べると見劣りがする。中国は水源と土壌を汚染から守ろうと懸命になっている。再生可能エネルギーへ投資しながら、喫緊の課題と言える国内国際公約の実効に向け各方面の力を投入しており、昨年のパリ合意内容含め効果が出てくるのを期待しているところだ。たしかに中国は世界最大の公害発生源だが、クリーン化を進めているのも事実だ。

通説その四 中国は通貨操作で有利な貿易条件を作り、米国は不公平を強いられている
  1. 2016年は米大統領選挙の年で両政党の候補者はともに中国の通貨操作を非難しているが、その声明文を見ると為替交換レートが国際経済で果たす役割を誤って理解しているとよくわかる。通貨切り上げ切り下げは通常の金融政策手段である。中国が交換レートに手を入れると米国では同時に中国国内市場への介入手段として金利水準を変更してくる。
  2. 政治家の中国批判は実質交換レートと名目レートの一体化に原因を求めている。自国通貨を発行する各国政府は通貨の名目為替レートを設定できるが通常は貿易実務では実勢レートを重視するものであり、これは国内の購買力を国際比較して決まる。そのため名目為替レートは貿易実務ではほとんど参考にされない。例えば米ドルは日本円に対して長年ドル安となっていたため、日本との貿易赤字が1970年の12億ドルが1995年には591億ドルまで拡大した。2004年から2014年にかけてドルは中国元にもドル安のままで中国との米貿易赤字は1,622億ドルが3,657億ドルへ倍増している。
  3. 歴史的に見れば、中国は名目為替レートを調整して物価安定化を図り、雇用を維持したきたといえる。中国は元の価値を安定させることで輸出主導で経済成長を維持しようとしたきたのであり、元の価値を巡る問題は重要性を。しかし中国が内需主導型経済構造に切り替えようとする中で経済政策も強い元を目指すようになり、輸入品価格を下げることで内需を刺激しようとした。強い元を求めることは国際舞台で元の使い勝手を良くさせる願望のあらわれである。
  4. 2015年11月に国際通貨基金IMFが元を特別引き出し権SDRの対象通貨に加えたことで元の国際的な役割が改めて認識された。SDRとは各国通貨を組み合わせて各国はIMFから受け取る。元が加わったことで世界経済も恩恵を期待できる。というのは中国人民銀行が自国通貨の管理でいっそうの透明性を発揮せざるを得なくなったからだ。しかしながら元の国際化には難題も相当残っている。元を中国国内市場でも強力にしておくため中国指導部は資本市場を開放することにしたが、その実施で逆に元には切り下げ圧力が働くようになる。
  5. 中国の金融政策を批判するよりも国際社会は中国にいまだに残る貿易や投資上の障壁の撤廃を働き掛けるべきである。中国では知的財産権の仕組みが完全でなく、国内企業を優遇する傾向があるため公正かつ競争原理の働く国際取引の実現には課題が残っており、このままだと通貨操作よりも大きな被害が発生するだろう。

通説その五 中国は世界の統治に貢献していない
  1. 世界規模の問題では多国間協力が必要で中国にとって平和と安定への貢献を見せる絶好の機会となる。歴史を振り返れば中国は介入勢力に抵抗を示し、特に国家主権が国連決議で侵害されるのを恐れていたが、時代は変わりつつある。
  2. 中国が汎地球的統治機能に前向きになっている証拠の中で一番明確なのは国連への参画だ。ここ数年で中国は従来の傍観者の立場から、いやいやながら支援する側へ、さらに国連内部で指導力を発揮するまでと大幅な変化を示している。国連一般予算への拠出金では中国は世界三番目規模となっており、平和維持活動では二番目で三千名を派遣している。
  3. 国連内部での中国の役割変化は北朝鮮制裁でも見える。長年にわたり決議案成立を拒んできた中国が今や北朝鮮へ最も強硬な制裁を支持するまでになっている。特に北朝鮮が2016年2月に核実験を敢行したことへの反感だ。
  4. 世界規模の統治機能を中国は支持しており、経済力で気前の良さを武器にしている。現時点で中国は途上国向け協力で最大の資金提供国で、国家開発銀行、輸出入銀行、新開発銀行(BRICSsが設立)、アジアインフラ投資銀行を通じて提供している。中国の財務力は増大しており、G-20、世界銀行、国際通貨基金での発言力が増えている。
  5. さらに中国は多国間取り決め各種を調印して世界規模の重要構想を支援している。2015年のパリ気候条約が好例だ。だが中国が一般的に支援しているのは基準規則を元にした国際秩序だが、ハーグの国際仲裁裁判所で現在南シナ海を巡る意見衝突を審理中で中国も各国同様に自国だけの利益と国際社会全体の利益を調和させる必要がある。だが中国は裁定結果を受け入れないとし、国連海洋法条約では自国の都合よい解釈をしている。にもかかわらず多国間協力取り決めに中国の参加が増えているのは事実だ。

ボニー・S・グレイサーはアジア問題の主任研究員兼中国兵力投射問題の研究主任を戦略極再研究書で務めている。マシュー・P・フネオレはCSISで中国兵力踏査問題を研究員でアジア太平洋における同盟関係と国力の関係を専門としている。



リムパック参加の中国艦隊が米海軍エスコートで真珠湾に移動中


なるほどPLAN部隊はハワイまでの移動に米海軍がエスコートすることになったのですね。今回も中国はこれとは別にスパイ船を派遣するのでしょうか。

 Chinese, U.S. warships rendezvous in west Pacific Ocean for RIMPAC 2016

Source: China Military OnlineEditor: Zhang Tao
2016-06-20 16:410

中国海軍誘導ミサイル駆逐艦西安の乗組員がボートで誘導ミサイル駆逐艦USSストックデール(DDG-106)での事前打ち合わせに向かう。RIMPAC2016に参加する中国艦は西太平洋で米海軍艦艇と現地時間6月18日正午に合流した。

WESTERN PACIFIC, June 20 (ChinaMil) –RIMPAC2016演習に参加する中国海軍部隊が大東諸島南方海域に到着し、米海軍のUSSストックデール(DDG-106)とローレンス(DDG-4)に6月18日合流した。
中国部隊の編制は誘導ミサイル駆逐艦西安Xi'an、誘導ミサイルフリゲート艦衡水Hengshui、補給艦高邮Gaoyouhu、病院船和平方舟Peace Ark、潜水艦救難艦長島Changdao、艦載ヘリコプター三機、特殊作戦チーム1、潜水チーム1で浙江省舟山市Zhoushanの軍港を6月15日に出発していた。
合流した中国艦隊の幹部は硬式膨張ボートで移動しUSSストックデールに乗艦し、調整会議に臨んだ。
会議後に二国の艦艇七隻は任務部隊の陣形を組み、USSストックデールが旗艦となりパールハーバーに現地時間6月29日に入港する。
中国海軍艦隊司令官Wang Sheqiangによれば二国間協議の結果、パールハーバー到着前に通信、戦術行動、煙幕行動、海上物資補給、緊急処分、主砲発射、航空撮影の演習を行う。■


イスラエル向けF-35A一号機がロールアウト



Lockheed Martin has officially unveiled Israel’s first F-35

Jun 22 2016 -

イスラエルはF-35Aに「アディール」(強者)と呼称を与え、イスラエル空軍向けライトニングII一号機がロールアウトした。

ロッキード・マーティンは実況中継https://youtu.be/AvYEHZa_z_Uでイスラエル向けF-35初号機がロールアウトする模様をフォートワース工場(テキサス)から6月22日伝えた。初号機AS-1はイスラエル空軍(IAF)に今年後半に引き渡される。

イスラエル国防相アヴィグドール・リーベルマンは同機を「世界最高性能の機体でイスラエルに航空優勢をもたらす」と評し、イスラエルの抑止力を今後維持すると式典であいさつした。

イスラエルはF-35Aを33機を米政府の海外軍事装備有償援助制度で導入し、さらに17機のオプション枠がある。

機体にはイスラエル企業製の部品も採用されており、イスラエル航空宇宙工業は主翼外側、エルビットシステムズ・サイクロンは胴体中央部の複合材、エルビットシステムズはライトニングII全機向け第三世代ヘルメット内蔵ディスプレイシステムをそれぞれ製造している。

ただしイスラエルが「国内対応」改修をどこまで行うか不明で、EW電子戦ポッド、兵装類、C4システム他が機体に独自に搭載されるはずだ。このため機体はF-35I(イスラエルのI)と呼ばれる。■


2016年6月22日水曜日

6月22日ムスダンミサイル試射の一次評価 北朝鮮の技術進展ぶりは要注意


今回のミサイル発射でも日本は早々に警戒態勢を取り、情報を入手していたことを示していますが、韓国との事前情報交換はあったのでしょうかね。

 N. Korea fires 2 missiles in quick succession; one flies 620 miles high

Stars and Stripes
Published: June 21, 2016

SEOUL, South Korea – 北朝鮮が22日に発射した弾道ミサイルの一発は高度620マイルに到達し、太平洋の米軍基地を狙える兵器開発を目指す同国には大きな一歩となった。
  1. 中距離ミサイルのムスダンは2か月で5回の発射に失敗していたが今回は技術面で大きな進歩を示した。22日も初回発射が失敗に終わり、発射後およそ93マイル地点で空中分解したと韓国聯合ニュースが匿名軍事筋から伝えている。
  2. 米、日、韓およびNATOがミサイル発射を強く非難した一方、北朝鮮の同盟国である中国は自制を求めた。
  3. 韓国統合参謀本部は一回目は午前5時58分で元山ロケット施設からの発射に失敗したが、二回目は8:05に発射され250マイル飛翔したと述べている。
  4. ただし同本部は詳細情報やテスト結果の判定は今後の分析を待つとし発表していない。
  5. 日本の防衛省はレーダー解析により二回目の発射で高度は少なくとも620マイルに達したと述べたのをAPが伝えている。韓国はまだ確認していない。
  6. ミドルベリー国際研究所(カリフォーニア)のジェフリー・ルイスによれば今回の高度は十分な高さに達しており、ミサイルは通常の軌跡で発射されれば射程距離は最大になっていたはずと語る。
  7. 「その通りなら北朝鮮は推進系のテストに成功したことになる」とルイスは電子メールで伝えてきた。「北朝鮮のロケット技術陣はムスダンの能力を実証するべく相当の圧力を受けている」
  8. 今回のミサイル試射は北朝鮮が核開発の野望を捨てず緊張が高まる中で実行された。国際社会は1月の第四回核実験後に厳しい国連制裁を実施している。
  9. 米戦略軍は各種システムで発射を探知し二回の発射を探知し日本海に落下したのを確認したと発表している。
  10. またミサイル発射は国連安全保障理事会決議の違反で、北朝鮮は弾道ミサイル技術の使用は禁じられているとも発表。「北朝鮮に挑発行為を自粛し、緊張をこれ以上高めないよう求める。逆に国際社会への責務義務を果たすよう求める」
  11. 韓国大統領朴槿恵は「完全な孤立を招き、自滅への一歩となる」と警告し、「無謀な挑発行為だ」と北朝鮮政府を非難した。
  12. 中国外務省報道官華春瑩は「関係各国」がこれ以上の緊張発生につながるエスカレーションをしないよう求め「朝鮮半島の状況は極めて複雑かつ敏感だ」と述べたと聯合ニュースが伝えている。
  13. ムスダンは中距離弾道ミサイルで日本本土や米領グアム島に到達する能力があると見られる。2010年の平壌軍事パレードで初公開されたが、今年4月、5月末のテスト三回まで一発も発射されておらず発射したものの失敗に終わっていた。だが北朝鮮は失敗から学び、技術を進展させているようだ。
  14. 北朝鮮指導者金正恩は1月の第四回実験の後で核兵器開発を進めていくと公言しており、同時に韓国に軍事協議を申し出たが、韓国は核開発を断念しない北朝鮮には誠意がないと一蹴している。
  15. 米国の科学国際安全保障研究所の試算では北朝鮮は核爆弾21発を備蓄している可能性があるという。だが弾頭運搬用ミサイルを開発しないと北朝鮮は米本土攻撃の公約が実現できない。
  16. 北朝鮮と韓国は1953年に休戦協定に合意したが技術的には交戦状態にある。28千名の米軍部隊が韓国に駐留中だ。■

★★海水から燃料を生産へ>米海軍が新技術で特許取得



これは海軍作戦を革命的に変える可能性がありますね。まだ軍用のためコストがネックと思いますが、民間に開放されればまさしく革命的で、中東他の原油生産国に依存しなくても無尽蔵な海水が人類のエネルギー問題を解決してくれそうです。今年最大の技術革新となるかもしれません。詳細は不明ですが、相当の電力消費が必要なはずで、原子力推進艦で燃料合成をするのが賢明ではないでしょうか。

Naval Research Lab Issued Patent for Seawater Carbon Capture Process

TOPICS:RefuelSea
POSTED BY: BRYANT JORDAN JUNE 21, 2016

In this May 27, 2016 photo the guided-missile destroyer USS Barry (DDG 52) conducts an evening underway-replenishment with the Military Sealift Command dry cargo and ammunition ship USNS Cesar Chavez (T-AKE 14) in the Philippine Sea. The Naval Reserach Laboratory has been issued the first U.S. patent for a means of simulaneously capturing from seawater the basic materials for making synthetic fuels. U.S. Navy photo誘導ミサイル駆逐艦USSバリー(DDG-52)が洋上燃料補給を海軍輸送本部所属のUSNSシーザー・チャベス (T-AKE 14)からフィリピン海で受けている。海軍研究所はこのたび米国特許を取得し、海水から合成燃料生産に必要な物質を同時に得る方法を確立した。 2016年5月27日撮影。U.S. Navy photo

米海軍研究所に米国特許が下りた。海水から二酸化炭素と水素を同時に回収する技術で一回の処理で合成炭化水素燃料を生産できる。
  1. 米国特許庁の特許番号#9303323が交付された。
  2. 合成燃料生産が可能となると補給作戦上で大きく有利となり、化石燃料補給の制約から解放される。また海上燃料輸送の脆弱性が減る。
  3. 「艦船内で戦闘群に必要な燃料が生産できると燃料補給の必要時間を減らし逆に作戦上で柔軟性が増え、現場にとどまる時間も延長できることになる」とフェリス・ディマシオ中佐が製法の発明者5名を代表して説明している。
  4. ディマシオ中佐によれば今回の技術で燃料運搬の移動が減る一方でエネルギー自立が海軍で増える、環境負荷は最小限に抑え、電解カチオン交換モジュール(E-CEM)の実現に不可欠な技術だ。


The Electrolytic Cation Exchange Module (E-CEM), developed at the U.S. Naval Research Laboratory (NRL), provides the Navy the capability to produce the raw materials necessary to develop synthetic fuel stock for production of LNG, CNG, F-76, and JP-5, at sea, or in remote locations. U.S. Naval Research Laboratory illustration
電解カチオン交換モジュール(E-CEM)が海軍研究所で開発され、米海軍は合成燃料生産に必要な原材料の確保が可能となる。各種燃料を海上あるいは遠隔地で自由に生産できる。U.S. Naval Research Laboratory illustration




  1. この製法で米海軍はLNG, CNG,F-76、JP-5など各種合成燃料を自由に海上であるいは遠隔地で行う能力を入手できる。
  2. E-CEMプラントは海軍研究所のキーウェスト施設(フロリダ)に設置されており、実証運転に成功し、海水からCO2およびH2を回収し、次工程の合成プロセスで触媒を使い炭化水素に転換できる。
  3. 第二世代の大型E-CEM研究試作機もキーウェストで実証する。E-CEMの外寸と容量が次の目標のシステム統合や商用化の鍵だと海軍研究所は発表している。■


ご参考 当ブログでは米海軍の合成燃料開発取り組み状況をご紹介していました。



★中国がBrexitを恐れる三つの理由



この通りならいよいよ迫ってきた国民投票の結果で中国の目論見が崩れると面白いですね。
僅差で残留が決まると見ていますが。

The National Interest 3 Reasons China Fears Brexit

英国の離脱でEU内経済権益の消失を恐れる中国
June 19, 2016


  1. 疑いなく米国はBrexitで多くを失う。この数か月で多数の評論家がオバマ政権とともにこの点を強調している。だがその中で中国でも同様と指摘したのは皆無に近い。英国がEU離脱すれば、中国にも経済政治上の打撃は大きいため中国政府は憂慮している。中国は静かだが明確にBrexitに反対姿勢を示し、習近平主席自らが昨年10月の訪英時に伝えている。他国の内政へは不干渉を貫くべきという公式な立場を離れて、中国政府は「中国は繁栄の下でEUが団結していくと希望する」との声明を出しており、真意は明白だ。
  2. だがなぜ中国がBrexitの可能性を心配するのか。そこで中国が対英関係を重視する理由三つを理解する必要がある。
  3. まず第一にかつ最重要なのが中国政府が英国との緊密な関係を利用してEUの対中政策に影響力を行使したいと考えていることだ。日米両国の圧力のため、中国はこれまで以上にEUに経済利益の機会を求めており、これが一帯一路構想の原動力になっている。このため中国は英国と経済政治関係を大幅に強化しており、英国を重要なパートナーとしてEU内の代弁者に変えようとしている。中国指導部が英保守党の関心を引こうとしているのは同党が貿易立国をかたくなに信奉しているためだ。中でもジョージ・オズボーン蔵相はデイヴィッド・キャメロン首相の後継者とみなされている。
  4. 早くもこの戦略が二方面で結果を生みつつある。国内外の反対を押し切るかたちで英国政府は中国の市場経済待遇を受け入れるようEUにロビー活動を展開し、中国製品への反ダンピング課税を軽減することを狙った。英国政府は数十億ドル単位のEU中国自由貿易協定の推進を公に進め、ここでも中国は大きく貿易投資をヨーロッパと拡大させる目論見だった。中国の観点では、貿易拡大など追加効果により米国が進める環太平洋貿易投資連携の実現を一掃難しくさせたい。そこで英国がEU離脱となれば中国が狙うEUへの影響力拡大構想が大きな打撃を受けてしまう。またEUもパートナーとしての経済政治力が低下してしまう。
  5. 二番目として中国にとって英国は欧州市場への重要な入口となる。規制が比較的緩い英国に中国企業多数が多額の投資をし、巨大だが規制が厳しい5億人の欧州大陸市場への飛び石として利用している。こういった戦略的投資が近年増えており、中国企業がヴァリューチェーンを構築する事例が特にサービス産業で目立っており、米国など安全保障や技術移転のため投資が思い通りに進まない他国と好対照になっている。当然のこととしてBrexitが実現すればEU市場に英国から入る中国の目論見が崩れる。英国に大規模投資をしている大連万達Dalian Wandaの創設者王健林Wang Jianlinは「Brexitは英国にとり賢明な選択ではない。投資する側には余分な障害が生まれる」と警告している。内部関係者によれば中国企業各社は英国との新規取引を中止しており神経を尖らせながら国民投票の結果を待っているという。
  6. 三番目の理由としてロンドンは中国が進める通貨元の国際化戦略に重要な場所だ。世界有数の金融ハブとしてEU内に位置し、時差の関係から東アジア、欧州、米国をカバーできるロンドンはアジア外で元の利用促進を進めるのに理想的な場所だ。元の国際化は中国政府の大きな目標であることに注意が必要だ。中国は元建て国債を発行し、金融の力を借りた成長が可能となり、外貨依存を減らし、元が安定し自由に取引決済できる通貨になる。また元の国際化で中国は世界の金融秩序を形成できる立場になり真の大国となる。したがってロンドンを元国際化戦略の中心とすることは中国にとって重要事項だ。
  7. すでにこの戦略が効果を上げている兆候がある。ロンドンは香港に次ぐ世界第二位の元取引高を誇り、北京通貨取引市場は中国中央銀行の下部組織としてロンドン支部を開設すると発表している。もし英国がEUから離れたら、元国際化の野望と世界金融界での地位向上がロンドン通じ実現するか確証が持てなくなる。特にロンドンはヨーロッパの金融サービスの中心地であり、英国に本拠を置く金融企業はEU加盟国すべてで追加登録なしで活動できる「パスポート」機能があるので、これがなくなれば大きな打撃だ。
  8. ここまでは戦略レベルの大きな理由だが、中国にはこれとは別にBrexitがEUに即効で与える効果にも気をもんでいる。それは中国にはEUが最大の貿易相手であり2015年には5,200億ユーロ相当の財サービスの交易があった。英国がEUから離脱すればEUへの影響は深刻で世界経済にも同様だ。すると翌年から数年間は世界経済が減速しかねない。輸出依存の経済構造の中国はすでに経済不況にも直面しており、さらにこのシナリオが加わると困難な事態になる。
  9. さらに中国指導部はBrexit国民投票そのものに当惑を隠せない。予想不可能な事態になるかもしれず一度結果が出れば元に戻れない国民投票という賭けにキャメロン首相が出た理由が理解できないのだ。中国専門家のケリー・ブラウンによれば実利を追い求める中国指導部は英国が国家主権だけを理由にEUの恩恵である経済や政治上の利益から背を向ける可能性にショックを受けているという。
  10. 要約すればBrexitは中国にとって何もいいことがなく、戦略経済的に悪い結果をもたらす。そこで6月23日の国民投票を中国指導部はかたづを飲んで待っている。当然だろう。中国にとっては高くつく結果になるからである。

イヴァン・リダレフはキングスカレッジロンドン校で博士号取得予定で、ブルガリア国民議会で顧問も務める。Diplomat,China Brief, Eurasia Reviewで論文を発表しており、専門は国際関係論とアジア安全保障問題である。記事は著者自身の見解である。
Image: Flickr/Number 10 (Crown copyright).


A-10が高速道路で離着陸運用を訓練! エストニアで、1984年以来の実施




 Four A-10 tankbusters have landed on a highway (in Estonia): it’s the first time since 1984!

Jun 20 2016


A-10サンダーボルトIIがセイバーストライク演習Saber Strike 2016で冷戦時代同様に高速道路へ着陸した。

ミシガン州空軍部隊第127飛行隊の所属機4機が32年ぶりに高速道路への着陸訓練を行ったのは6月20日でエストニア国内でのこと。


セイバーストライク演習は在欧米陸軍が中心となり各国と共同運用能力を引き上げるのが狙いで計14か国が国際緊急作戦を想定して行っている。
A-10 land Estonia 2

第二次大戦終結後、冷戦を経て一部国で高速道路を航空機用に転用する構想が生まれ、滑走路を使わない運用を可能とした。各空軍基地の位置は判明ずみで戦闘初期に破壊を免れない。

1920年代から1930年代にかけ企画されたドイツのアウトバーンには滑走路に転用可能な部分があり、今日でも戦術ジェット機や軍用輸送機の運用が可能だ。A-29号線のアイホムAhlhorn-グローセンクネテンGroβenkneten間が例で冷戦時にNATOがソ連戦が勃発した場合に軍用機運用を想定して建設している。

当時のワルシャワ条約加盟国にも同様の高速道路滑走路があった。このうちポーランドには21か所あり、路肩を広げて駐機場に使う構想だった。

現在も一部が健在でシュチェチンStettin近郊にはドイツが設計したハイウェイがカリニングラードに伸びている。この部分はアドルフ・ヒトラーが1930年代に建設したものでまだ利用可能だが旧帝国高速道路網Reichsautobahnの他の部分はもはや使用に耐えない状態になっている。

高速道路への着陸は冷戦時に欧州の中央部、東部、北部では標準訓練の一部だったが、ワルシャワ条約の消滅で高速道路離着陸は見られなくなっていた。

しかしロシアの脅威が再び高まる中で、滑走路を使わない運用がフィンランド、スウェーデンが再開の傾向にあり、米A-10も今回訓練をした。同機はロシアに近い各国へ頻繁に展開している。■
Image credit: U.S. Air Force

仲裁裁定結果後の中国の動きに備えた準備を怠るな


6月から7月にかけてはかなり荒っぽい展開になりそうです。中国が国連海洋法条約を脱退する動きを早くも見せていますが、当の米国も批准していなかったのですね、これでは片手落ちです。次期大統領には何とか政治手腕を見せてもらいたいものです。

U.S., Partners Should Prepare For Chinese Reaction To Impending Territorial Dispute Arbitration

June 20, 2016 3:12 PM

A map of China's shifting definition of the so-called Nine-Dash Line. US State Dept. Image
いわゆる九段線を示す資料 US State Dept. Image

南シナ海領有をめぐる中国とフィリピンの対立で国際仲裁裁判所が司法判断を今月中に出すが、中国の反応に米国は備える必要があるとシンクタンクのパネル討論が指摘している。
  1. アンドリュー・シアラーは戦略国際問題研究所CSISのアジア太平洋安全保障問題で上級顧問で、裁定結果で中国不利となれば米国は今後半年間にわたり「抑止モード」に入る必要があると述べた。現在空母二隻が同海域に展開中であるのは良い選択であり今後は増強の必要があるとも述べ、他のパネリストも同意見だった。
  2. 「中国政府は大統領選挙で米国が関心をそらすと考えている」とし、いわゆる九段線の内側はすべて自国の領有との主張を通す絶好の機会と見ているとシアラーは述べた。延長1,000マイル超で中国本土から伸びる九段線を中国政府は歴史上の経緯があり、70年間以上にわたり主張してきたとする。
  3. USSジョン・C・ステニス(CVN-74)、USSロナルド・レーガン(CVN-76)の二隻の空母を中心とする打撃群ふたつが問題の地点に近い場所に展開していることが重要と指摘したのはエイミー・シアライト(CSIS東南アジア研究部長)で、もし中国がスカボロー礁の埋め立て工事と軍事拠点化を先に進めれば同地点が今回の仲裁裁定の争点そのものであることもあり「簡単な解決方法はない」と見ている。同礁はマニラから200マイル未満の近さにあり、最も豊かな漁場でもある。中国海軍は同礁を2013年に実力占拠している。
  4. 「同地の持つ意味は大きい」は中国だけでなく、米国やアジア太平洋地域全体二も同様だと指摘する。シアライトは元国防総省勤務でスカボロー礁の軍事拠点化で中国は「戦略三角形」の基地設営を完成し、「兵力投射能力が大幅に上がる」という。
  5. スカボロー礁に空軍基地ができると中国は防空識別圏を設定し、海上交通も南シナ海ほぼ全域で管制するようになると述べたのはCSIS東南アジア研究部門で顧問を務めるアーネスト・バウアーだ。では米国、日本、韓国などに加え欧州の同盟各国や東南アジア連合内の協力国各国が中国が裁定結果を受け付けない場合にどう対応するかはまだ見えてこない。
  6. 中国はフィリピンとの二国間協議にこだわり、ヘイグの裁判所の権限そのものを認めていない。フィリピンでは政権が交代し、新大統領ロドリゴ・デュアルテが中国との交渉に動くか不明だ。
  7. 「ASEANはバランスを重視する」と日本が1970年代に太平洋で台頭し始めた際に敷衍しながらバウアーは述べた。先週ASEANは裁定結果が出た場合に中国に国際法順守を求める内容の声明文原案を採択しなかった。
  8. 「中国を孤立化させようと誰も考えていない。面子を守ることが重要だ」とバウアーは述べている。アシュトン・カーター国防長官はこの地域を訪れた際に「中国は孤立化の長城を築いている」と発言し自分の主張を経済的外交的軍事的にインド太平洋で押し付ける中国を批判した。
  9. シアラーはASEANへは期待できずかわりに法の支配はいかなる場所でも有効、とする内容で米国は各国と協議のうえ「二国間声明」を出すことに重みを置くべきと主張した。
  10. また不法占拠との裁定結果が出た場合に「米国他は即座に支持を」裁定結果に示し、航行の自由原則が国際公海で有効と主張すべきともシアラーは発言。
  11. またシアラーは選挙後の米新政権および新上院の面々は国連海洋法条約を再考し米国の進める法の支配原則による海上対立を解決すべきと提言した。上院では条約批准に必要な三分の二賛成が得られず、過去数回にわたる大統領府からの批准への訴えを退け、米海軍含む広範な支援も得ていない。

John Grady

本記事の著者ジョン・グレイディはNavy Timesの前編集主幹で米陸軍協会の広報部長も務めている。国防及び国家安全保障分野での報道をBreaking Defense、GovExec.com, NextGov.com、DefenseOne.com、Government Executive、USNI Newsに寄稿している。

2016年6月21日火曜日

オーランド大量殺人事件後にISIS作戦をどう進めるべきか



 The Global War on ISIS After Orlando

Image: “An Iraqi School of Infantry instructor instructs an Iraqi soldier from 2nd Brigade, 7th Iraqi Army Division on how to fire a Pulemyot Kalashnikov Machine Gun (PKM) in the Iraqi School of Infantry at Al Asad, Iraq, March 19. (U.S. Marine Corps photo by Cpl. Shane S. Keller)”
“An Iraqi School of Infantry instructor instructs an Iraqi soldier from 2nd Brigade, 7th Iraqi Army Division on how to fire a Pulemyot Kalashnikov Machine Gun (PKM) in the Iraqi School of Infantry at Al Asad, Iraq, March 19. (U.S. Marine Corps photo by Cpl. Shane S. Keller)”


今こそ戦いを熾烈かつ賢く進めるべき時だ。

June 16, 2016

フロリダ州オーランドで6月12日発生した悲劇を受けて、米国は全世界でISIS打倒を進める総合戦略の重圧をかけるべきだが、今後発生する攻撃をすべて確実に予防できないのは確かである。ISISは成功事例を新たな戦闘員の勧誘に利用してきた実績があり、英雄的行為と持ち上げ関心を引く傾向でも知られている。アメリカは封じ込め戦略あるいは無視を決め込む戦略ではISISの崩壊は期待できず、今回の事態を受けてこちら側の力を結集して強力な敵の脅威に国家として挑むべきなのである。
ISISが米国で能力以上の成果を上げている、あるいは犯人オマール・マティーンはISIS戦闘員以上に精神を病んでいるという向きがあり、イラクやシリアで米軍はじめ連合軍が着実に成果を示していることからISISが早期に崩壊すると見る向きもある。いずれも説得力はない。マティーン容疑者が米国史上最悪の単独犯だとしても別の犯行が簡単に繰り返されるはずで、射撃訓練を受けAR-15のような武器を入手すればいいだけの話だ。マティーンは精神を病んでいたのだろうが、同時にISISに刺激を受けた勢力に動かされ、憎悪の教えをそのまま受け止め、イスラム教を曲解して大量殺人を正当化したといえる。おそらく同様の事件は再発するだろう。

イラク軍、米および連合国の空軍力、クルド人戦闘部隊、スンニ派部族やシーア派はイラクで40パーセント、シリアでも20パーセントの領土をISISから奪回している。ISISはこの二国での収入源の半分を失っただろう。だがラッカ、モスルの二大都市はまだISISの手にある。また一昨年からISISはシナイ半島からリビアまで活動範囲を広げ、拠点をアゼルバイジャンからアフガニスタンにまで設け、さらに東南アジアも視野に入れ、ナイジェリアではボコハラム運動と連携している。打倒は可能だろうが、簡単ではないし完全に消滅しないだろう。

オバマ大統領の主導で66カ国の有志連合がISIS対抗勢力として生まれ次の五つの戦略方針を2014年以来維持している。
--軍事作戦
-- 外国人戦闘員対策
--財政対策
--逆宣伝活動
--地域内安定の実現

イラクとシリアで成果も生まれており、両国への外国人戦闘員の流入は今年は大幅に減っている。ただし一部がリビアに流れているのは残念だ。だがリビアでも新しく生まれた連立政権がISISをスルトから放逐しつつあるとの朗報がある。
つまり一部作戦で停滞が見られるものの再強化に時間を使っているといえる。国別状況は以下の通りだ。

イラク 政府軍が突破口を開きつつあるが、平和回復には時間がかかり、最大の懸念はモスルをISISから奪還しても有効に統治できるかだ。イラク政府には米国の力を増強して平和と安定を実現できる勢力を作る必要があり、ISISに似た集団の出現は早期に刈り取る必要がある。このため援助を拡大し、米国の支援内容を強化する必要があるが、イラクが石油でどれけ収入を得られるかにかかってくる。ただし原油価格の低下傾向がどこまで続くかも考慮すべき要素だ。

シリア 当地の政治戦略は完璧とは言えない。平和交渉は停滞し、アサド大統領が盛り返しているのはロシアの支援があるからだ。こちら側は政治目標の水準をを下げるべきだ。連合のしくみで少数集団の保護を図るのが成功のめやすとして妥当だろう。クルド人のみならずアラブ中道集団も援助していくべきである。また援助対象の基準を緩和しつつ米軍による訓練や装備提供を増強する。安全地帯を爆撃するシリア政府軍機への報復行動は有効策だろう。

リビア 連立政権がこれから生まれる想定の中、西側は大幅な援助とリビア軍向け訓練の体制を今から準備しておくべきで、ISISが占拠したままの中部沿岸地方を奪還する。

ナイジェリア ムハマドゥ・ブハリ大統領の汚職対策が効果を示しつつある中、今こそ米国の援助を拡大すべきで、ナイジェリアの要請が前提だが、小規模顧問団を送り、同国陸軍のボコハラム戦を手助けすべきだ。

アフガニスタン オバマ大統領は米軍削減をこれ以上行うべきではない。現地指揮官には柔軟に指揮命令権限を与えタリバンへの空爆を進めるべきだ。

米本土 ISISは三つの頭を持つ怪物だ。胴体はイラク・シリアにあり、その周辺各地がある一方で、グローバルネットワークで各地を結んでいる。このネットワーク対策を国内外で強化すべきだ。このネットワークから国内襲撃事件が発生するからだ。このためFBIは疑わしい国内テロリストや武器の所在を的確に捜査すべきだ。海外でもISISのグローバルネットワークを容赦なく遮断する。ここで米国が対ISISグローバル連合でリーダーシップを迅速に発揮する必要ある。スマートフォンの暗号化技術のため捜査が困難になっているが、ネットワーク監視を強化し執拗に捜査すれば司法機能と情報機関の融合につながり、容疑者へ迅速に対応し犯行の未然防止が可能なはずだ。ニューヨーク、ロンドン、また最近パリでこの方法の実施が見られるが、まだ一般化されていない。実施のためには一層強いリーダーシップがアメリカに必要になるだろう。

各対策は大規模にならず、組み合わせて実施しても同様だが、米側は人員数千名規模を追加する必要があり、少なくとも数十億ドルの年間追加予算が必要となる。ISISの三つの頭をそれぞれ攻撃し徹底的に撃つべきだ。これまでのISIS対策はそこそこの成果しか出ていないが、今こそ大幅に活動を強化し次の大惨事を招く攻撃を事前に防止すべき時なのだ。

本記事の著者ジョン・アレンとマイケル・オハンロンはともにブルッキングス研究所の上席研究員。


★なかなか進まないPAK-FA事業のネックは高性能エンジンだ




Russia's New PAK-FA Stealth Fighter Might Have a Fatal Flaw (or Two)

Creative Commons.
June 17, 2016

合同航空機製造企業UACのスホイT-50 PAK-FA第五世代ステルス戦闘機が量産に向け準備中とロシア報道が伝えている。試作第八号機はロシア当局の要求内容に沿った形で完成しており、6月20日初飛行の予定だ。
  1. 「八号機は最初からシステム、装備が完全で仕様を満たしており、このまま第一線の防空任務に投入できる」との防衛筋の発言がロシア語日刊紙イズベスチアに掲載されている。「T-50は実戦投入段階に到達し大量生産の準備が整えばロシア航空宇宙軍での活躍が期待される」
  2. 現在ロシア極東部にあるコムソモルスク・オン・アムル航空機製造協同企業でさらに四機のT-50が最終組み立て工程にある。通算九号機が9月にフライトテスト機材に加わる。だがフライトテストが完了していないのにUACはロシア航空宇宙軍から契約交付を期待しており、今年秋にも量産を開始したいとしているとイズヴェスチア記事が伝えている。機体納入は2017年に始まる予定だ。
  3. ロシア国防省はまず10数機の調達を考えており、ロシア航空宇宙軍が運用テストに投入する。その結果で追加調達を決める。ロシア情報筋によれば軍部内でT-50が金額に見合った機体なのか論争があるという。さらにロシア経済の不振のためロシア航空宇宙軍は当面は調達に走らず静観すると見られる。
  4. ロシア航空宇宙軍を悩ませるのはエンジンだ。T-50はサトゥルンのイズデリエ117エンジン(別名AL-41F1)を二基搭載し、アフターバーナー使用時に31,967lb (142kN)の推力を生む。同エンジンはAL-31FP(Su-27やSu-30フランカー各型に搭載)を元にした高価格エンジンで、もともとSu-35の最新版S型フランカーE向けに開発されたものだ。
  5. AL-41F1はフランカーE用に最適化されており、第五世代戦闘機には不十分と判明している。ロシア筋によればAL-41F1は超音速飛行を持続する推力を実現しているが、ロシア航空宇宙軍の求める推力重力比や燃料消費率水準に達していないという。
  6. しかし、AL-41F1はあくまで当面の解決策でしかない。サトゥルンは40,000lbs級のエンジン開発に取り組んでおり、これをイズデリエ30と呼称し、新型戦闘機用の決定版エンジンとしたい考えだ。だが開発には課題が残っている。イズヴェスチアはT-50に新型エンジン搭載のは2025年ないし2027年と伝えている。開発を妨げているのはロシアに旧ソ連時代から続く資金不足で技術開発が十分に行えない状況だ。
  7. エンジン開発は技術的に複雑度が一番高く、特に戦闘機用となれば難易度が高い。米国もグラマンF-14トムキャットやマクダネル・ダグラス(現ボーイング)F-15イーグルで1970年代に苦労している。当時ペンタゴンはF119エンジンとジェネラルエレクトリックYF120エンジンも代替策としてロッキード・マーティンF-22ラプターに先行して開発させている。
  8. だが成熟度が高いエンジン設計でも想定外の用途に投入すると初期段階で問題を発生する。プラット&ホイットニーF135が例で、F-22で完璧に作動しているF119が原型だが、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機に搭載したところアフターバーナーの異音問題であり、タービンブレイドがケーシングと摩擦して機体喪失が一件発生している。

Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


韓国へISISテロ攻撃の可能性浮上、警備体制を厳重にしています


不穏な情勢が韓国で何も発生しないことを祈るばかりです。

S. Korea beefs up security after Islamic State threatens US bases

Stars and Stripes
Published: June 20, 2016


SEOUL, South Korea — 韓国政府は在韓米軍基地及び韓国一般市民がテロ攻撃を受ける脅威があるとし警備体制の強化を6月20日発表した。イスラム国に近い筋が韓国内の基地等を襲撃リストに載せているためと言われる。
  1. 懸念の浮上は週末のことでイスラム国が世界各国で合計77か所の米空軍、NATO軍基地の攻撃を想定し、韓国ではオサン、クンサンの両空軍基地がリストに入っていると韓国情報機関から発言があったためだ。また福祉機関に働く韓国人一名もリストにあると情報筋は述べている。
  2. 韓国は仇敵北朝鮮に加え新しい脅威が加わることになった。韓国・北朝鮮は1953年の休戦協定で戦闘は終わったものの戦争は終結しておらず、米軍はおよそ28,500名を韓国に駐留させている。
  3. 韓国国家情報院NISの発表では「韓国一般市民や国内の外国人がテロ攻撃対象になるのが現実味を帯びてきた」とある。
  4. 同機関が参照したのは今月初めにISIS寄りのハッカー集団ユナイテッド・サイバー・カリフェイトが公表したいわゆる殺人リストのことで、氏名、住所、電子メールアドレスおよそ8千名分を掲載している。リストではどういう基準で選ばれたのかは不明だ。
  5. 同グループは世界各地の米空軍基地の衛星写真も公表したが、同じ写真がグーグルアースで入手可能と6月8日に同リストの存在を報じた報道技術企業Vocativは指摘している。
  6. NISによれば在韓米軍、韓国軍及び警察当局に警備を厳重にするよう伝え、言及のあった施設では警護を固めるよう要請した。
  7. 在韓米軍からは各施設の保安態勢を重視し朝鮮半島の安全に対し最大限の配慮をしているとの発表があった。
  8. 「警戒を怠らず通常の体制で韓国とともに対応していく。脅威事象発生の場合は直ちに対応する準備ができている」.
  9. 韓国首相黄教安 Hwang Kyo-ahn が20日、韓国政府はテロ攻撃を未然に防ぐ体制にあると述べたと聯合ニュースが伝えている。首相は国内の対テロセンターが捜査対象を広げ、国民一般に被害が及ばないようすべての対策をとっているとも述べている。
  10. 「イラク・シリアのイスラム国は次の攻撃目標に韓国を昨年9月以来加えています」と首相は発言したといわれる。■