スキップしてメイン コンテンツに移動

フィンランドのNATO加盟でロシアを取り巻く構図はこう変わる。すべてロシア自身に原因があるのに報復措置とは....

 

 


Finland

2018年10月31日、NATO演習Trident Juncture 2018の砲撃演習の前に、常備NATO 海洋集団2(SNMG2)の旗艦HNLMS De Ruyter乗員がゴールキーパー近接武器システム(CIWS)を点検している。ゴールキーパーは、高機動ミサイル、航空機、高速機動水上艦から艦船を短距離で防衛するためのシステムです。Trident Juncture 18は、NATO各国軍を訓練し、共に活動でき、全方位の脅威に対応できるようにするため立案された。Trident Juncture 18は、ノルウェーと、アイスランド、フィンランド、スウェーデンの領空を含む北大西洋とバルト海の周辺地域で開催された。31カ国約5万人が参加した同演習は、NATO演習でも最大規模のもの。250機以上の航空機、65隻の艦船、車両1万台以上が演習に参加し、空、陸、海、特殊作戦、水陸両用の訓練を実施・実行した。

フィンランドとロシアの歴史が教えてくれる - 5月12日、フィンランドのサウリ・ニーニストSauli Niinistö大統領とサナ・マリンSanna Marin首相は、NATO加盟を正式に申請すると発表した。フィンランド政府ホームページで発表した声明は、断固たる言葉で以下結んでいる。


「NATO加盟は、フィンランドの安全保障を強化する。NATOに加盟することで、フィンランドは防衛同盟全体を強化できる。フィンランドは遅滞なくNATO加盟を申請しなければならない。この決定を下すために必要な国内措置が、今後数日以内に迅速に取られることを希望する」。

声明は、ロシアのウクライナ侵攻に一切触れていないが、ヘルシンキはここ数カ月、ロシアの侵略で自国が動かされてきたと、はっきりと述べている。5月11日のボリス・ジョンソン英首相との記者会見で、ニーニスト大統領は、フィンランドの決断はロシアのプーチン大統領に責任があると述べた。

予想通り、この発言にクレムリンが素早く反応した。クレムリンは、フィンランドがNATOに加盟すれば、軍事的影響を受けると繰り返し脅してきた。クレムリンのドミトリー・ペスコフDmitry Peskov報道官は記者団に対し、「フィンランドは、EUがわが国に対してとった非友好的な措置に加わった。これには遺憾の意を喚起せずにはおられず、我々の側も相応の反応をさせてもらう」と述べた。

しかし、民主主義世界は反対の見解を示した。英国、フランス、隣国のポーランド、エストニア、リトアニアなどNATO加盟国が、フィンランドの加盟で支持を表明している。ニイニスト大統領は、発表後にウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談したとツイートした。「フィンランドがNATO加盟に向け歩みを進めていると伝えたところ、全面的な支持を表明してくれた」とある。

フィンランドのNATO加盟は、同盟の東側における戦略的バランスの地殻変動となる。なぜなら、ロシアはNATOと810マイル(1300キロメートル)の国境を新たに共有することになるからだ。また、サンクトペテルブルク近郊のロシア軍にNATOが近づくことになる。

NATO加盟はまた、フィンランドの歴史において、伝統的な中立姿勢に終止符を打つ点で重要な転機となる。また、フィンランドとロシアとの長年にわたる険悪な関係にも恒久的な変化がもたらされる。これまでフィンランドは、大きな隣国から侵略を受けたり、脅威にさらされてきた。

スウェーデン王国領時代から、ロシアとスウェーデンの戦争で何度もロシアの占領を受け、1809年にロシア帝国に大公国として併合されたのがフィンランドだ。その後、ロシア帝国の崩壊に伴い、1917年に独立宣言するまで、フィンランドはこの地位のままだった。

しかし、新生ソビエト連邦との関係は、友好的なものではなかった。赤軍はフィンランドの一部を頻繁に占領し、再併合は常に脅威であった。こうした緊張は1939年の冬戦争(第一次フィンランド・ソビエト戦争)で頂点に達し、第二次世界大戦が勃発の数カ月前のことであった。フィンランドは領土の一部を割譲されたが、戦車、飛行機、兵力など軍事的に優位のはずの赤軍を撃退し、現在のウクライナにおけるロシアの屈辱とよく似た結果を生んだ。その後、フィンランド政府は、1941年から1944年の継続戦争(第二次フィンランド・ソビエト戦争)において、ナチス・ドイツと同盟しソ連軍を領土から追い出すまでに至った。

5月12日の発表以前から、フィンランドのNATO加盟問題は、同国とロシアの歴史と深く結びついていた。特に2014年にロシアがクリミアを併合してから、今回の案が浮上するたびに、モスクワは現在の声明とほぼ同じ脅しを発し、毎回のようにフィンランド国境に軍隊を近づけるとしてきた。

フィンランドのロシア国境が最新の脅威の中で再び引き合いに出された。ペスコフは、「NATOの拡大は、大陸をより安定、安全にするものではない」と述べ、モスクワの反応は「NATOの拡大プロセスがどう展開されるか、軍事インフラが我方の国境にどこまで近づくか次第だろう」と述べた。

幸いにも、フィンランドはロシアとの長い国境を守るため十分な備えがある。フィンランドの防衛は西ヨーロッパ最大規模の野砲部隊で固められており、ロシアのウクライナ侵攻に先立ち、フィンランドはロッキード・マーチンのステルス戦闘機F-35ライトニングII調達でワシントンと合意し、64機を発注している。

F-35は、東欧におけるNATOの戦略的立場を変える決定的な役割を果たすはずだ。情報収集、監視、偵察能力により、ロシアのレーダーに事実上見えないまま、ロシア軍に関する情報を収集できる。また、同機は、将来の戦争に対し説得力のある抑止力にもなる。フィンランドがNATOに加盟し、同地域にF-35が存在すれば、ロシアはバルト三国への侵攻の前に考え直さざるを得なくなり、NATO同盟国から地理的に孤立した状態が大きく緩和されるだろう.

フィンランドの加盟手続きは加速される見込みで、NATO関係者によれば、2週間弱で終了する可能性があるという。NATO加盟を間もなく発表すると思われるスウェーデンも、加盟が早まるだろう。あるNATO関係者は、「今は尋常な時ではない」と説明している。■

Finland Joining NATO Is a Game Changer (And Russia's Fault) - 19FortyFive

BySarah White

 

Sarah White is a Senior Research Analyst at the Lexington Institute. Prior to joining Lexington, Sarah held internships at the Albright Stonebridge Group and the Woodrow Wilson International Center for Scholars. She earned an M.A. in Latin American Studies in 2019 from Georgetown University’s Walsh School of Foreign Service, and a B.A. in political science and Spanish from Wake Forest University in 2017. Sarah is fluent in Spanish, proficient in Portuguese, and conversational in French. She is a native of McLean, Virginia.

 

 



コメント

  1. ぼたんのちから2022年5月18日 7:53

    ウクライナ戦争の帰趨はほぼ決まり、後は和平が成立するまで、ウクライナがどの程度国土を取り戻し、ロシアがどの程度深刻な打撃を受け、国力を回復するのにどのくらい年数が必要になるかが焦点になるのだろう。
    問題は戦後であり、ロシアの政治体制がどのように変わるかであり、それと共に戦争責任と賠償責任を徹底的に追及することだ。甘い結末は、ロシアの利益となり、その場合、将来、ロシア軍がウクライナに再来したり、フィンランドで冬戦争が再現されるだろう。
    このような歴史は、ロシア帝国成立から拡大の過程で何度も繰り返されてきたものだ。過去のロシア皇帝や、スターリンやプーチンの亡霊が、ロシアに再来するのは確実だと考えておくべきだ。今回のウクライナ戦争は、ロシアの隣国との対立点をより深化させる結果となるだろう。ロシアは執念深く、また、NATOも永遠のものでないならば、将来、戦争がまた起きるのは確実だろう。
    さて、振り返ってアジアを見ると、ロシアの体制変換や弱体化の時は、日本にとってチャンスである。目指すべきはもちろん全千島の回復であり、千島樺太交換条約の履行である。粘り強い交渉が実を結ぶ可能性が高い。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM