2019年3月4日月曜日

F-35誕生の背景と今後の展望 

Jointとは三軍共通の意味なので当ブログでは一環して共用と訳しています。同じ発想でF-111が以前ありましたが構想どおりにならず、F-35でなぜ再び同じ道をたどるのかわからなかったわけです。(逆に海軍用機材に空軍が目をつけたF-4、構想だけに終わりましたがF-15を海軍用に改造する話もあり、共通機材の概念が間違っているわけではないようです)西側防衛をこの機体に任せていいのか、というのが当ブログの一環した疑問点です。みなさんはどう思いますか。ヤコブレフの基礎研究をうまくロッキードが利用したというのは本当かも知れませんね。

The Crazy Story of How the Stealth F-35 Fighter Was Born ステルスF-35誕生の不思議な経緯

Development and procurement of roughly 2,400 F-35s through 2037 is now estimated cost over $400 billion, roughly eight times the annual defense spending of Russia. 約2,400機のF-35の開発調達が2037年まで続き、総額4,000億ドル事業となる試算があり、これはロシア国防予算の8年分に相当する。
February 24, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Yak-38RussiaStealth FighterU.S. Air Force

2019年に初の完全戦闘対応F-35ライトニングがブロックIIIFソフトウェアを搭載し就役する。構想から27年、350機超が引き渡された後での達成だ。ペンタゴン官僚組織の中で構想が生まれた直後から人類史上最高額の兵器体系になるまでの経緯をたどってみよう。
1980年代にペンタゴンは第4世代機の後継機はステルスと決めた。空軍の高性能戦術戦闘機競作から航空優勢戦闘機として十分な能力を有するF-22ラプターが生まれたが、海軍・海兵隊は独自のステルス機を求め、空軍は単発F-16多任務戦闘機を大量供用中だったが、ラプターは高額すぎ後継機になり得なかった。
こうして1992年に海軍と空軍はそれぞれのCALFとJASTを共用打撃戦闘機事業に統一した。目標は安価かつ単発で攻撃に主眼を置くステルス戦闘機として三軍で共用しコストを節約しつつ米同盟国へも輸出を目指すというものだった。この点でF-22と異なる機体をめざした。さらにJSFでは最先端デジタル技術と素材技術で効率を引き上げるねらいもあった。
三軍が使用する共通設計のため要求内容は当初から重荷となった。たとえば海軍向け「C」型は空母運用のため主翼が大型で降着装置が強化される。海兵隊はハリアー後継機のジャンプジェットを求め小型揚陸空母から運用可能な垂直離着陸能力VTOLを必要とした。
だがVTOL能力により機体は大型となりハリアーやYak-38のようなそれ以前のVTOL機は速度、ペイロード、航続距離いずれも通常型より劣っていた。さらにJSFとして共通性を求めるあまりその他のJSF各型も抗力を生むずんぐり形になってしまった。
ここでF-35の源をたどる物語はエリツィン時代のロシアへ奇怪な寄り道をする。ソ連崩壊で資金不足となったヤコヴレフは共同開発からYak-141ジャンプジェットの開発資金の確保に必死だった。同機はリフトファンを別個に設けながら超音速を狙っていた。1991年にロッキードはYak-141の3機と貴重なテストデータを総額4億ドル程度で入手した。
1996年にペンタゴンはボーイングロッキードにそれぞれ7.5億ドルで試作機を2機ずつ製作させ5年後にテスト飛行させた。ボーイングのXF-32は不格好でずんぐりとしたデルタ翼機で排気口を傾けて偏向推力を確保し垂直飛行を目指した。一方X-35はYak-141同様にリフトファンを用いながらリフトファンの回転軸は別に確保する技術的に複雑ながら高度な内容だった。
2001年、空軍はJSF選定で完成度が高いとしてF-35を採択すると発表した。国防総省は開発費用として調達が期待される各国、オーストラリア、カナダ、イスラエル、イタリア、日本、オランダ、ノルウェイ、韓国、トルコ、英国からも資金を確保した。F-35事業協力国には莫大な部品製造や整備作業の一部が与えられ、国産ミサイル統合等の特権が与えられた。
だが「完全新型」機の設計は簡単な部分でペンタゴンはライトニングに未完成かつ最先端技術を採用しようとしていた。モジュラーパネルにレーダー吸収素材を焼き込み機体表面としたのは一つの進歩だった。
新技術にヘルメット装着画像表示システム、オープン・アーキテクチャのミッションコンピュータでアップグレード対応を可能としたもの、高性能防御装置と多面的センサー(分散型開口システム)の組み合わせ、ステルス性のあるデータリンクで機体とセンサーデータをネットワークで結ぶこと、低探知性のAPG-81レーダーがある。地上では複座練習型を作らずフライトシミュレーターを使い、補給活動では整備記録を蓄積し予備部品調達を迅速にする狙いもあった。
新技術は実証ずみの基本設計に取り入れるのが妥当である。だがペンタゴはF-35のエイビオニクス、ソフトウェア、機体を並行開発させようとした。つまり「基本型」のF-35はなく、つねに進化していくことになる。このため一つの部門の遅延が他部門にも影響し新型技術の取り入れが遅れるとコストも超過した。
ライトニングの機体重量は2千ポンドも増え航続距離が犠牲になった。とくにF-35Bでこの影響が顕著となった。このため再設計で重量を削ろうとしたため構造問題がF-35B初期生産機材で見つかっている。
米会計検査院は早くも2006年に警鐘を鳴らし始めた。2009年になると費用超過の大きさからロバート・ゲイツ国防長官(当時)の厳しい目にさらされF-35事業の仕切り直しを図り事業中止の可能性も話題に登った。だがライトニングは中止できないほど大きな事業になっており、予算と開発力を他の事業から奪い取っていた。ゲイツはハイエンド機材のF-22を当初の500機生産から180機で終了させている。
F-35開発日程が5年程度遅れる中でペンタゴンは追加予算で旧型機の供用期間延長を図る必要に迫られた。一方で省内の試験評価部門は数百にのぼる不具合点を見つけ、酸素供給装置の不良、機関砲の射撃方向のずれ、突然のコンピュータ終了などだった。カナダがまずF-35発注を取り消した。
海兵隊が2015年に「初期作戦能力」を認定し、空軍が2016年にこれに続いたが要求性能を水増ししていた。海軍のF-35Cは2019年にIOC獲得の予定。
低率初期生産で機体価格は200百万ドルになった機体には重要な性能がついておらず、テスト機材として活用されてきた。こうした機体を実戦にまわすと高額の性能改修が必要となる。
では三型式運用で費用節約はどうなったか。実は三型式の共有部品は2割程度しかない。
2013年にF-35は再び批判にさらされた。航続距離が足りず速力も劣り、上昇限度が低く、操縦性、機内兵装搭載量がいずれも旧型機水準に達しないというのだ。F-35支持派はライトニングのステルス性能、長距離センサー能力、ミサイル発射性能に比べればこうした点は取るに足らないとした。理屈の上ではF-35パイロットは長距離で敵探知し短距離での空中戦闘を回避できる。
2,400機ものF-35を開発調達すると2037年までに推定4,000億ドルとなり、ロシア国防予算の8年分に相当する。2070年まで運用すれば1.1兆ドルが別に必要となるとの試算もある。
不良、遅延、低稼働率が更に加わったF-35だが2018年は一定の進歩を示した。F-35Aの機体単価は89百万ドルに下がり、イスラエルのF-35Iと海兵隊F-35Bが戦闘デビューした。ライトニングは空戦演習で強い性能を発揮している。ベルギーとシンガポールがF-35導入を決め、さらにギリシャ、インド、ポーランド、ルーマニア、スペインでの採用が期待視される。F-35Bジャンプジェットはイタリア、英国の空母でも供用中で、日本が空母航空戦力を再構築するきっかけになった。
同機を好きか嫌いかは別としても辛い開発過程から参考になる教訓や反面教師の側面もあるのは確かで、F-35がいまやしっかりとその存在を示しているのは確かだ。同機が成功するか、あるいはペンタゴンが求める航空戦の新しい姿の実現に失敗するかが数十年にわたり厳しく問われていくだろう。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Wikimedia

2019年3月3日日曜日

中国がSu-57を検討して出した結論とは....異様な中国のステルス戦闘機運用思想

米ロが似通った設計思想を持っているのに対し中国が異質なのか、そもそも戦闘シナリオが違うのか、米空軍が機種を絞り込もうとする中で、中国はむしろ特化した機体をたくさん揃える傾向があると思います。Su-57は中国からすれば魅力がないのでしょうか。

China Is Studying Russia's Deadly Su-57 Stealth Fighter: Here's Why They Think 中国がロシアのSu-57を研究してわかったこと

February 26, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaRussiaMilitaryTechnologyWorldSu-57J-20F-22F-35
国人専門家はロシアのSu-57ステルス戦闘機に複雑な見方をしていると中国国営メディアが伝えている。Su-57には欠点も多いが「ユニークな」機体というのがWang Yongqingの結論だと環球時報にある。
WangはJ-31を開発した瀋陽航空設計研究所の主任設計者だ。中国海軍が同機の採用を検討中と伝えられる。
トラブル続きのSu-57を詳しく検討したWangは中国にも参考となるはずの教訓を見逃しているようだ。
Su-57が大量にロシアで供用される可能性はないようだが、同機の設計に欠陥があったわけではなく、むしろ非常に洗練されよく考慮されている。一番の問題は同機に機関銃が搭載されているが中国のJ-20は搭載していないことだ。
.だが機関銃問題はWangには重要でないようだ。
「中国観測筋はSu-57の性能を低く見ているが、軍用機設計者のひとりにはSu-57はとてもユニークに映るようだ」と環球時報の2019年1月24日付けが伝えている。
Su-57は大型双発戦闘機で大型主翼があり、2010年に初飛行した。ロシア空軍は10機ほどを取得しテストしてきた。スホイはSu-57全機を手作業で生産したといわれるが、出来具合がいかにも雑だ。
Su-57には戦闘装備がないといわれる。2機はシリアに2018年2月に展開したが、ロシアは根拠を示さずに空爆に投入したと発表している。
クレムリンは2018年8月に生産型機材10機ほどを発注し、2019年に初の実戦飛行隊の編成を目指した。だが国防予算が減少する中で同機の大量調達はしないとの決定が出た。
ロシア政府はSu-57の調達削減方針を正当化してきた。「Su-57は現時点出世界最高の機体ですよ」とユーリ・ボリソフは2018年テレビで語っている。「そのため同機の量産を急ぐのは理にかないません」
人民解放軍空軍はJ-20ステルス戦闘機で遥かに高い成功を実現してきた。2011年初飛行し、2018年初頭にPLAAFは同機初の飛行部隊が作戦可能となったと宣言している。
中国は少なくとも三種類のステルス軍用機を開発しており、戦闘爆撃機、爆撃機、そしてJ-31があり、後者は中国空母への搭載になる可能性がある。
PLAは米国に次ぐ世界第二位のステルス機運用をめざするがWangはSu-57開発から学ぶところがあるという。
.Su-57の性能は全体としては「まったく悪いものではない」とのWang発言を環球時報が引用している。
Wangの分析ではSu-57は「革新的空力特性の機体設計で推力偏向制御が可能なSu-57では超音速巡航飛行能力があるところが重要で操縦性もずばぬけている」とある。
Su-57の設計を検討しWangはロシアと米F-22、F-35ステルス戦闘機の作戦思想を比較している。
「米側の次世代航空戦闘の概念では視界外戦闘を重視していますが、その場合にミサイルは相当の距離を飛翔するわけでSu-57では操縦性を極限まで高めて回避する必要があります」「ロシア戦闘機は特殊レーダーを搭載しミサイルの飛来方向を正確に探知します」
「超射程ミサイルは別にすると最終的な対決は近接距離で発生するでしょう。そうなるとステルスや極限までの操縦性は意味を失います」と環球時報は伝えている。Su-57には30ミリ機関砲を近接戦に備え搭載する。
Wangの評価から米・露・中のステルス戦闘機での方向性が見えてくる。Su-57設計がF-22やF-35との近接航空戦を想定するのに対し、米戦闘機両型も機関銃を搭載していることに要注意だ。米空軍はステルス機も超接近戦に備える必要があると考えている。
対照的に中国のJ-20には機銃がなく、中国がステルス機の作戦想定を全く違う形にしているのはあきらかだ。「USAFや業界はJ-20は機敏な操縦性を想定せず速度とステルスを前面に押し出した機体と見ている。陸上目標あるいは給油機やISR機材への奇襲攻撃を想定しているのだろう」とAir Force誌は結論を出していた。
.言い換えればJ-20は防空網を高速突破してミサイルを発射する機材だ。近接航空戦闘は想定していないのがあきらかだ。
「空力特性上の成約とミサイルの運用条件を考えると将来の戦闘でも銃は不可欠だろう」とスチュアート・ニコルス少佐は1998年に空軍大学校で論文を書いていた。
「機銃は単純ながら運用維持が楽だ」とし、「敵の電子対抗手段やフレアでミサイルの性能は下がるが機銃は無関係だ。追う一つ銃の大きな特徴は搭載レーダーの機能と独立していることで、レーダーが敵の対抗措置に脆弱であることが重要だ」
.Su-57,F-22、F-35を比較することでWangは中国のステルス戦闘機部隊に有益な知識を得たと主張する。おそらくその中心は設計思想こそ違うがロシア、米国ともにステルス戦闘機に機銃を搭載していることだ。■
David Axe serves as the new Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring  and Machete Squad.

Image: Creative Commons.

お知らせ ターミナル1がお引越し

いつもこのターミナル2をごらんいただきありがとうございます。

さて、この度民間航空宇宙開発等を扱うターミナル1(以下T1)を移転することにしました。

あたらしいURLは
https://aviationspacet1.blogspot.com/
です。

T1は2008年から開設していますが、掲載記事が見にくくなっておりますのでこの度移転を決めました。

これまでの記事はそのまま残し、3月中は新旧サイトで同時掲載、4月kら新サイトのみに記事配信の予定です。

T1にもご愛顧をお願いします。

ご参考 現行のターミナル1URLは
https://wind.ap.teacup.com/aviationbusiness/

です。

オーストラリア>空軍力の整備と防錆装備輸出への期待

アジア太平洋時代に日本もオーストラリアとの連携を強めていますが、意外に同国の実態は知られていない気がします。防衛産業の積極輸出を目指す点では日豪は共通していますが、方法論や仕組みづくりは微妙に違うようですね。


Australia formulates its path to military modernization and industrial growth オーストラリアは軍事装備近代化と産業発展をこう進める


By: Mike Yeo

2015年2月の航空ショーでオーストラリア空軍のF/A-18Aホーネットがフレアを投下した。(Scott Barbour/Getty Images)



国に最も忠実な同盟国といってよいオーストラリはアジア太平洋の要衝で空軍力の再整備と国内防衛産業の振興を通じてグローバル競争力実現を近未来に実現したいとする。

オーストラリアは世界と隔離されているように見えるが、アジア貿易への依存から地域内安全保障に多大な支出をしてきた。
.
同国軍は多国籍軍の一員としてアフガニスタン、イラクに展開し、イスラム国との戦いも支援してきた。国内政界には米国との同盟を重視し法の支配を世界規模で維持すべしとの意見が強い。南部ヴィクトリア州で隔年開催の航空ショーが今月末に始まるが、同国はロッキード・マーティンF-35Aの初号機を受領して空軍装備近代化に向かう中で陸軍海軍とのネットワーク化を目指している。

第5世代機の導入

ジェリコプランPlan Jerichoとして王立オーストラリア空軍RAAFは統合ネットワーク化された空軍力を情報化時代に恥じない形で届ける組織への変革を模索している。その中核がデータや状況把握の増強を図りつつ新鋭機供用を開始することだ。F-35Aの72機がF/A-18A/Bホーネットの後継機として主力戦闘機となる。これを支えるのが24機あるボーイングF/A-18FスーパーホーネットとEA-18Gグラウラー(11機)電子攻撃機だ。

F/A-18A/Bは順次退役を始めており、2022年頃に完全退役する。カナダが25機購入し、うち18機を稼働させ残りは部品取り用にする。

オーストラリアはロッキード・マーティンAP-3Cオライオン対潜哨戒機の後継機としてボーイングP-8Aポセイドンとノースロップ・グラマンMQ-4Cトライトン高高度長時間飛行UAVを海上の状況把握ミッションに投入する。

P-8Aが先行し、発注15機のうち7機が引き渡し済みだ。トライトンは6機発注で2023年から引き渡しが始まる。

P-8Aは国連の北朝鮮制裁にも投入されており、昨年12月に沖縄から運航を開始した。

ジェリコプランで輸送機部隊との接続実証試験を開始し、業界と協力しRAAFのロッキード・マーティンC-130Jスーパーハーキュリーズ部隊にワイドバンド衛星通信装置と主翼に落下式増槽を追加し、今後ライトニングAT電子光学照準ポッドも追加され戦術能力を引き上げる。


A Boeing-made Australian E-7A Wedgetail airborne early warning and control aircraft in 2014. (Melina Young/Royal Australian Air Force via Getty Images)
オーストラリアが運用するボーイングE-7Aウェッジテイル早期警戒統制機。 (Melina Young/Royal Australian Air Force via Getty Images)


装備調達での展望

オーストラリアの防衛白書2016年版に将来の調達計画の片鱗が伺え高速救難機材や特殊作戦用ヘリコプターが予定されている。

後者についてRAAFのボーイングC-17戦略輸送機への搭載が条件で白書では『特殊部隊の兵力投入・撤収により偵察行動から対テロ作戦、人質奪回作戦と多様な条件に投入する」想定だ。C-17で三機ないし四機の輸送が可能な小型機にする想定だ。

白書ではRAAFの初等練習機の更新を2022年開始としている。空軍はBAEシステムズのホーク127を初等練習機兼戦闘機として供用中だ。
ホークは2026年頃まで供用可能と見られる。

RAAF参謀総長のレオ・デイヴィス空軍中将Air Marshal Leo Daviesは次期練習戦闘機で選択肢を複数検討中で、ホークの供用期間延長も含むと昨年の取材でDefense Newsに述べていた。

同国は海軍艦艇から無人機を運用する構想も検討中だ。海軍はシーベルS-100カムコプターで実証試験を行い今後導入するパトロール艇やフリゲートに搭載する無人機の調達も検討中だ。

防衛産業への期待

現時点のオーストラリア政権は国内産業育成に高い優先順位をつけており、現地産業界の参画にむけて努力してきた。

F-35生産事業でオーストラリア企業が垂直尾翼、兵装庫、機体表面パネルの製造で実入りの良い仕事を獲得している。

さらにF-35運用の維持に絡むオーストラリア企業は多い。この内BAEシステムズオーストラリアが南太平洋地区の機体補給修理場に指名されたほか四社がティア1部品65点のうち64点で地域内補給整備業務を請け負う。
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英国はボーイングE-7ウェッジテイルを空中早期警戒機に昨年選定したが、オーストラリアは同機を供用中だ。国防産業相スティーブン・チオボには英国との共同開発や企業提携の機会と写る。「オーストラリア産業界にはウェッジテイル取得と運用に関与する企業200社超があり防衛輸出案件として大きな効果が期待できる」

オーストラリア政府も防衛装備輸出を重要視しており、昨年発表の輸出戦略構想で輸出実績につながる企画、指導、評価の仕組みを提唱した。

また2018年-19年に14百万ドルを追加計上し防衛装備輸出を支援するとし、国防省内に輸出を専門に扱う組織を創設し戦略の実施を目指す。目標は2028年までに世界の防衛装備輸出トップ10カ国になることだ。■

2019年3月2日土曜日

戦力強化型ストライカー装甲車をヨーロッパに派遣しロシアへの抑止効果を狙う米陸軍

設計に拡張性があるのが利点のようですね。大量調達(ストライカーは4,500両近く生産)のメリットでしょうか。


Pentagon to Send Up-Gunned, Drone-Killing Strykers to Europe to Deter Russia

火力強化し無人機攻撃も可能なストライカー戦闘車両をヨーロッパへ送りロシアへの抑止効果を期待するペンタゴン
The US Army is arming its Stryker vehicle with attack drones, lasers, up-gunned cannons and anti-aircraft missiles
米陸軍はストライカーで無人機攻撃能力、レーザー、火力を強化し対空ミサイルの搭載もめざす




陸軍は米陸軍はストライカーで無人機攻撃能力、レーザー、砲塔を強化し対空ミサイルまでの搭載を2020年までに実現し、ヨーロッパに展開しロシアの「侵攻」を食い止めるべく国境防備体制を図りたいとする。

ロシアの脅威を前に米国は機動性と前方配備を重視した多機能装甲車両のヨーロッパ派遣を決定し、新型対空兵器を搭載させ「威力を増した」ストライカーが中心となる。

でたばかりのRAND報告書がこれまでロシアの脅威と動機について解説しており注目される。「ロシアの欧州における敵対行動」と題された報告書ではロシアの動向について説得力ある指摘が見つかる。

「2016年のロシア国内エリート層向け調査では82.3%が『現在の領土を拡張すること』がロシア国益につながると応え、2012年の43パーセント、2008年の64パーセントから増えている」

報告書の著者ラファエル・コーヘンとアンドリュー・レイディンは同時にロシアが「パラノイア」あるいはNATOの脅威を国境地帯で感じていると指摘。

「ロシアは一貫して脆弱に感じ防衛のあまり強硬な態度を時として示してきた....ロシア国境付近の小国が友好国として見られることは少ないのは敵勢力の前方基地になるとの恐れからだ」とし、プリンストン大教授スティーヴン・コトキンの見解を紹介している。

報告書にはロシアの関心地域の詳細が盛り込まれており、注目を集めるバルト海地区のみならず東ヨーロッパのスラブ語圏も含むとある。

この戦略構図を考慮すれば通常型のストライカーではヨーロッパ派遣に不十分な理由がわかる。派遣対象の車両には新型短距離防空兵器(SHORAD)としてヘルファイア、スティンガー、ジャヴェリンの各ミサイルでロシアを意識した防空能力を強化する。

中国あるいはロシアのヘリコプターや無人機がロケット、ミサイル、小火器で武装しており、SHORADはこの排除のため構想された。

これまでのストライカーに防空能力が欠けていたのでこれで解決する。またSHORAD兵器の搭載で無人機、ヘリコプター、低空飛行機、さらにミサイルも攻撃可能となる。陸軍の兵器開発部門では冷戦時に米軍はソ連脅威に直面し地上発射型対空兵器が当然ながら高優先順位を与えられていたがその後の15年は対戦闘員作戦に重心が移り能力が萎縮していたのだとする。

これによりSHORAD事業により30mm機関砲、攻撃型無人機、レーザー兵器を搭載し装甲戦闘車両を「大国間」対決想定に合う装備にする。
.
陸軍上層部によればSHORAD対応ストライカー試作車が今年製造され、その後144両を生産する。

現在のストライカーにM2 50口径機関銃が搭載されているが、新型30mm機関砲は射程が二倍で火力も強力になる。

ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズの兵器開発部門ではストライカーに搭載する小型センサー兼攻撃用無人機のテストを続けている。砲塔部分から垂直発射する小型無人機はシュライク2の名称で敵標的を探知、捕捉、追尾する。ビデオデータリンクを介し攻撃用ミサイルと協同して探知した標的を攻撃する。この技術でセンサーと攻撃の連携機能が生まれ「ハンター・キラー」になるとGDは説明。

同時に陸軍開発部門はストライカーで移動式高エネルギーレーザー兵器の運用が重要になると見ており、5kw級レーザーのテストで無人機に命中させている。レーザー兵器にはKuバンド追尾レーダーを用い自律的に標的を捕捉しその他センサー装備が戦闘中に破損しても対応可能とする。レーザーにより静かな防御攻撃が実現し、敵に位置を知らせずに戦闘任務を展開できる戦術面の優位性がストライカーに実現するという。

装甲車両の支援対象の歩兵部隊には近接航空支援の敵脅威に対抗する為移動式防空装備が必要となる。ここでストライカーのSHORADが真価を発揮する。歩兵隊がスティンガーを携帯してもストライカーが発射するヘルファイアやスティンガーの威力には及ばない。機械化部隊の大規模交戦では前方配備の歩兵隊に装甲車両の支援が必要となる。

SHORADで移動式防空力をリアルタイムで実現するのが目的だ。大型で固定式の地上発射ミサイルでは困難な任務となる。
例えばペイトリオットミサイルは中距離弾道ミサイルの迎撃に適しており、移動式とはいえペイトリオットでは敵ヘリコプターや無人機から歩兵部隊を守る能力は不足している。

「展開力」「移動力」「遠征派遣能力」を試される事態が米陸軍の目指すストライカー投入戦略の根幹だ。その意味でウェストポイントの近代戦研究所が発表した論文が注目される。ロシアは広範囲に整備した鉄道網があり兵力展開を迅速に行えるとある。ストライカー旅団は時速60マイルで移動できロシアの展開に対抗できる。この能力を数年前にDragoon Rideで示しており、ストライカー部隊は東ヨーロッパで護送任務を展開しながらNATO同盟軍との共同作戦体制を誇示している。■

-- Kris Osborn is a Senior Fellow at The Lexington Institute - HERE
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters in Comparative Literature from Columbia University.

2019年3月1日金曜日

☆インドMiG-21がパキスタンF-16撃墜との主張から浮かび上がる興味深い事実

The Indian Air Force Claims A MiG-21 Bison Managed To Shoot Down A Pakistan Air Force F-16D Block 52

インド空軍がパキスタン空軍F-16Dブロック52一機をMiG-21バイソンで撃墜したと主張



インド空軍のMiG-21バイソン (Image credit: IAFIAF発表ではMiG-21パイロットは身柄拘束されているが、被撃墜前にPAFのF-16を撃ち落としたという。

ずおことわりしておく。カシミール上空での事態ではい違う内容の発表がここ数日食出ており、インド・パキスタンの武力衝突で一部は確認が難しく実際に何が起こっているのかわかりにくい。


ひとつだけ両陣営発表から確認できたのはインド空軍IAF所属のMiG-21バイソン一機が撃墜されパイロットがパキスタン軍に身柄を拘束されていることだ。


本日判明した事項をお伝えしたい。


IAF発表によれば2月27日に撃墜されたMiG-21は8機編隊の一部で他にスホイ30(4機)、ミラージュ2000(2機)、MiG-21バイソンがあり、パキスタン空軍PAFの24機編隊(F-16が8機、ミラージュ-3の4機、JF-17サンダー4機含む)に空戦を挑んだものだった。


F-16の型式と存在を証明すべくIAFはインド領内で回収したAIM-120C5AMRAAM空対空ミサイルの残骸を公開した。


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Indian Armed Forces show parts of AIM-120 Advanced Medium Range Air-to-Air Missiles (AMRAAMs) launched from Pakistan Air Force F-16 over Kashmir near the LoC yesterday.
11:19 AM - 28 Feb 2019

最も興味を引くのは撃墜されたMiG-21バイソンが墜落前にPAFのF-16Dを管理境界線上空で撃墜したとのIAF発表だ。


「パキスタン空軍所属のF-16一機をインド空軍のMiG-21バイソンが撃墜した。F-16の破片は境界線沿いにパキスタンが実効支配するジャンムとカシミールに広がった。インド空軍もMiG-21一機を喪失し、パイロットは脱出したもののパラシュートが流されパキスタン軍に身柄を拘束された」とインド空軍は発表した。


「インド空軍第51飛行隊所属のMiG-21がロシア製ヴィンペルR-73近接対空ミサイルで敵機を撃墜した」との報道がある。


F-16が撃墜された証拠は示されていない。

PAFの F-16DがネリスAFBをレッドフラッグ演習 RF 16-4 で離陸している (Image credit: Tomás Del Coro)

確認がとれればだが、MiG-21による撃墜実績の意味は大きい。空戦で新型機(この場合はF-16)が必ずしも勝つ保証はないとの実証が加わることになるからだ。以下を頭に入れておく要素がある。パイロットの技量、他機材の支援(僚機やAEW機材など)、地上レーダー等だ。なかんずく交戦規則RoEが重要で、敵機のポジティブVIDが必要とあれば戦闘機はWVR(視界内)交戦を強いられ、MiG-21が威力を発揮する。このため第5世代戦闘機でも旧型機との交戦を常時訓練している。


今回の事案は確認は取れていないが第3世代機でも第4世代機の撃墜はWVR交戦なら可能だとわかる。


MiG-21バイソンはロシア製機体の性能改修型だ。設計こそ旧式だがレーダー被探知性が低く鋭い旋回性能、加速性能にヘルメット搭載視認装置やR-73空対空ミサイルが加わり改修型MiG-21はあなどれない敵になる。2004年のコープインディア演習で米F-15を相手にインドのMiG-21等が9:1の優れた空戦記録を残した事を忘れてはならない。■