2014年1月29日水曜日

USAFグローバルホーク2機を三沢基地に5月より配備


US Air Force to Send Two Global Hawks to Japan


UAS VisionがStars and Stripes記事を紹介する形でグローバルホークの三沢基地配備を伝えています


米空軍が運用する無人偵察機では最大の寸法を誇るグローバルホークが2機日本に常駐することになった。日本へは初の配備で今夏に実施米空軍が発表した。同時に人員40名が三沢空軍基地に5月から10月にかけ派遣されると三沢基地の第三十五戦闘機隊の広報担当が明らかにした。

  1. 「グローバルホークのような高性能機材を日本に配備することには戦略的な意味があり、日本及び周辺国の安全保障に一層の貢献をすることになります」と同上士官が電子メールで回答した。
  2. 同機と人員はグアムのアンダーセン基地から移動する。グローバルホークの運用はカリフォーニア州から遠隔操作されており、グアムには三年前から常駐している。
  3. グアムから発進した機体は2011年3月の地震、津波、原子力発電所の危機状況の救援でカギとなる役割を果たしている。さらに昨年の台風被害を受けたフィリピン上空も飛行している。
  4. また同機は北朝鮮の核兵器開発状況、中国海軍の作戦行動を監視している。両案件とも日本政府には重大な関心事項であり、日本も同型機3機導入の検討を承認したばかりだ。メーカーのノースロップグラマンは日本が同機を選択することで自信を持っている。
  5. 「当社が期待するのは理由あってのこと」と同社地域担当副社長のカーティス・オーチャードCurtis Orchardが日本で発言している。一方、同社の戦略用高高度長時間航空機部門の副社長ジョージ・ゲラGeorge Guerraによると韓国、オーストラリアも同機へ関心を高めており、とくにとくオーストラリアは実際に海上監視に特化したトライトンの調達を交渉中だ。
  6. ノースロップ・グラマンはNATO加盟13国で形成したコンソーシアム向けにグローバルホーク5機を追加生産中で、NATOの機材は米海軍のトライトンともにシシリアのシゴネラ基地から運用される。同基地には米空軍所属のグローバルホークがすでに配備中
  7. 三沢基地配備のグローバルホークは太平洋全体にわたるミッションを支援することになる。「二機で相当の地域をカバーできます」(ゲラ)とし、グアム発進のミッションでは30時間も継続していたという。
  8. グローバルホーク全体の飛行時間は10万を超えており、そのうち9万時間が戦闘支援あるいは人道支援だったが、昨年の米空軍機材中で最高の安全記録を達成した。
  9. 「グアム配備のグローバルホークは信頼性実績が80%を超えており、他地点で運用中の機材も同様の実績を示しています。」(ゲラ)
  10. 今年末になると空軍はブロック40の同機を2機ないし3機グアムに派遣し、配備ずみのブロック30機材に合流させる。ブロック30はレーダー、赤外線センサー、通信傍受システムを搭載するがブロック40には地上目標の捕捉に有効な高性能レーダーも搭載しているという。


Posted in Military UAS on January 27, 2014 by The Editor. Leave a comment - See more at: http://www.uasvision.com/2014/01/27/us-air-force-to-send-two-global-hawks-to-japan/#more-29553


2014年1月28日火曜日

★★★米海軍の考える2020年代のA2AD対抗としての航空戦のイメージ


近い将来の海軍航空戦力はこのように戦う、はず、という米海軍協会の紹介記事です。やや長文ですが。F-35Cに期待されている役割が興味深いところですが、航空戦力の運用にはネットワークコンピュータ通信体系がいよいよ重要になりますね。

Inside the Navy’s Next Air War
Published: January 23, 2014 12:35 PM
Updated: January 23, 2014 12:52 PM
EA-18G Growler assigned to the Zappers of Electronic Attack Squadron (VAQ) 130 lands on the flight deck of the aircraft carrier USS Harry S. Truman (CVN-75) on Aug. 15, 2013. US Navy Photo


米海軍の将来の航空戦想定では戦場は本国から遠く離れた場所、敵は高性能の装備を有し、応戦準備がよくできているというもの。戦いの帰趨は情報工学に大きく依存するとしている。実際に海軍はこの想定だと準備ができていないことになる。

ジョナサン・グリーナート大将 Adm. Jonathan Greenertが海軍作戦部長の現職に就いたのが2011年だったが、「戦闘、前線運用、準備態勢」の三つを叩き込んできた。

その意味するところは明らか。海軍は10年にわたりアフガニスタン、イラクの作戦を支援してきたが、海上および空中でハイエンド型の戦闘を実施する能力は後退してしまっている。

米空母部隊でタリバン兵の頭上に爆弾を投下するなど高度技術を駆使した対空兵器の威力を使うまでもなかった。

米国は簡単に戦場の主導権を握れたが、ここにきて次の戦場ではこんなに簡単にはいかないと実感させられている。

「陸上で兵力が必要なら、海軍が兵力を提供できる」とトーマス・ラウデン少将(海軍作戦部長付水上戦担当部長)Rear Adm. Thomas Rowden, director of surface warfare (N96) for the Office of the Chief of Naval Operations (OPNAV)がUSNIニュースの取材に答えている。「潜在敵国は我が国の自由な兵力移動能力を意識しており、最近になり接近阻止領域拒否[A2/AD]の概念が目立ってきている」
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A2/ADは敵を自国領土に近づけない古来の戦略を現代的にひねったものだ。濠や城壁で始まった戦術が現在では安価になる一方の誘導兵器を使う戦略に変化しており、敵を遠くでくぎ付けにできる。

そこで将来のA2/ADの脅威に対抗すべく海軍は航空戦の新しい形式を模索しており、そのためにも通信ネットワークや高性能兵装への依存が増える。
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そのためマイク・マナジル少将(海軍作戦部長付航空戦担当部長)Rear Adm. Mike Manazir, OPNAV’s director of air warfare (N98)が2020年代の海軍航空戦力で必要な性能をまとめようとしている。

Rear Adm. Michael C. Manazir in 2009, as commanding officer of the aircraft carrier USS Nimitz (CVN-68). US Navy Photo

新構想の中核は海軍統合火器管制ー対空対応手段Naval Integrated Fire Control-Counter Air—NIFC-CA(ニフカ)である。
NIFC-CAの中核技術は状況把握能力 situational awareness および射程延長協調型目標捕捉技術extended-range cooperative targeting。
空母打撃群の各構成部隊は空中、水上、水中でネットワーク化され、データリンクにより空母打撃群司令官が戦闘空域を明確に把握できるようになる。
NIFC-CAで想定する能力の多くはすでに海軍の航空母艦で利用可能だとマナジル少将は説明する。ただし現存するとは言っても2020年代にかけて改良していくことではじめてシームレスなネットワークとなり、現在より高度な状況把握能力が実現するのであり、数百マイルを超えた指揮命令統制が正確にできるようになる。.
NIFC-CAにより海軍は空母航空部隊や空母打撃群の各装備の能力活用を柔軟に考えることを求められる。NIFC-CAは打撃群の有する火力の一体運用を可能とする。

The systems the Navy will rely on for its planned Naval Integrated Fire Control-Counter Air (NIFC-CA) concept. US Naval Institute Graphic

例としてF-35C、E-2D高性能ホークアイISR機材がとらえた数百マイル先の目標群を戦闘機に割り振ると、F-35CやF/A18-E/Fスーパーホーネットあるいは将来の無人機が協調しながら対応することになる。攻撃に向かう機材はアーレイ・バーク級(DDG-51)駆逐艦や潜水艦と協調しつつデータリンクで結ばれ、NIFC-CAの全体構成を形成する。
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データを共有しつつ各構成単位の威力はNIFC-CAのネットワークで最大限発揮される。

「従来は各装備をその有する能力を使うために調達してきましたが、現在では統合能力により効果を実現させるための調達を意識しています。」(マナジル)

マナジル少将が示す例では空母打撃群が接近を拒む水域内で敵の強固に防御された領土をどのように攻撃するかを示している。NIFC-CAにより空母の航空隊は全機を発進させる。ステルス機のF-35Cの役割は敵領土奥深くまで飛行してISRデータを収集することになる。

F-35C支援にはスタンドオフジャミング能力があるEA-18Gグラウラーがあてられ、次世代ジャマーが使われて敵の低周波数早期警戒レーダーを妨害し、ISRミッションが侵入することが可能となる。

X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator is towed into the hangar bay of the aircraft carrier USS George H.W. Bush (CVN-77) on May, 13 1980. US Navy Photo

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将来配備される予定の無人空母発進空中偵察攻撃 (UCLASS) 機が空中給油によりF-35Cの有効飛行距離を伸ばすことに活用されるだろう。

ただし中核はF-35Cで敵目標を把握探知することだ。E-2Dホークアイは空母航空部隊と協力しつつF-35Cが得たデータをスーパーホーネット戦闘機部隊に送信する。

武装を満載したF/A-18E/Fが敵の領空の奥深くに入り、スタンドオフ兵器を発射する。またF-35Cと同様にスーパーホーネットもUCLASSから給油を受けることが可能だろう。

「F/A-18E/Fは第四世代戦闘機だと考える向きがあり、ステルス機には追い付かないとみる人がいますが正しくありません。同機はパックス(パタクセントリバー基地)でF-35Cに匹敵する効果を上げることが可能と判明しています」(マナジル)

つまり海軍の長距離兵器で有効射程を最大限に伸ばすことが可能だが。マナジル少将は海軍がさらに長距離射程で生存性が高くなる兵器を開発中と発言。「今よりも厳しい状況でも生き残り射程の長い兵器が必要であり、このすべてを実現する兵器を手に入れつつあります」

The Navy’s Naval Integrated Fire Control-Counter Air (NIFC-CA) will link aircraft and ships with high-bandwidth data connections — like the emerging TTNT capability. Those big data pipes will work with smaller bandwidth connections — like the standard Link 16 data-link. The information from the NIFC-CA network will be routed to the strike group commander aboard the strike group’s carrier. US Naval Institute Graphic


スーパーホーネット隊が長距離スタンドオフ兵器を発射すると、各ミサイルはE-2Dが出すデータストリームにより誘導される。ミサイルは飛行の最終段階でF-35Cが誘導を引き継ぎ、目標に向かう。


そこでNIFC-CAの課題はデータリンクだ。空母航空部隊の各機はお互いにE-2Dを介して接続される。E-2Dが中央接点の役割を果たす。E-2Dも空母他艦艇と結ばれるので、同機は重要な存在になる。NIFC-CAにより空母打撃群は数百マイルに及ぶ領域を作戦対象にできる。

海軍は大胆なNIFC-CA構想の実現に不可欠なデータリンク技術の開発に努力を払ってきた。

「この5年でやっと技術をものにできました」とマナジル少将は明らかにする。「これまでは利用できなかったものであり、だからこそ高性能兵器システムとしてのF/A-18E/FブロックIIでAESAレーダーを搭載し各システムを融合させて活用できるようになります」

ロックウェルコリンズによる戦術目標捕捉ネットワーク技術 tactical targeting network technology(TTNT) の開発により、各構成機材が自分で電波を発信する必要が不要になる。「TTNTをMIDS-JITRS(multifunctional information distribution system joint tactical radio system 多機能情報分散システム共用戦術通信システム)の通信機に入れることで、データを自由に動かすことが可能」とマナジルは説明する。

TTNT波形により大量のデータを待ち時間を大幅に短縮して送信できるので、長距離間での大量データ共有には理想的な手段となる。これは2008年にネリス空軍基地(ネヴァダ州)で共用派遣部隊実証実験で確認されている。NIFC-CAのためにTTNTは空母部隊のE-2D、EA-18Gと空母をつなぎ、将来はUCLASSとのリンクにも使われる。「E-2D2機がTTNTネットワークを利用すれば空域の全体像を共有することが可能」(マナジル)

E-2D Hawkeye from the Pioneers of Air Test and Evaluation Squadron (VX) 1 on Aug. 27, 2013. US Navy Photo


E-2D部隊は個別具体的なデータをEA-18グラウラー部隊と共有し、後者はさらにTTNTネットワークとリンクされるか、Link-16の改良型とリンクされるだろうとマナジルは見る。EA-18Gはさらに高性能の並行複数接続ー4 (CMN-4)を使うことになろう。これはLink-16を重ねた構造だという。

グラウラー各機は連絡しあいながらデータリンクにより正確に敵のレーダー波発信元を特定し、陸上あるいは海上の敵レーダーに対応する。これは着信時間距離time distance of arrival.と呼ばれる技術を応用するもの。

さらにデータリンクされたグラウラー部隊はこの技術で出来の電子戦施設を排除することが可能で、NIFC-CA戦闘ネットワークへの妨害を未然に防ぐことができる。「センサー搭載機を広く分散させれば妨害は不可能となります。仮に一機にきわめて有効な妨害があっても、残る一機があればどこからそのエネルギーが放射されているのかがわかり標的に指定することが可能です」(マナジル)

いったん目標を捕捉すればグラウラーやE-2DがデータをLink-16経由で中継し、スーパーホーネットが攻撃を実施する。「F/A-18E/FやF-35Cは自機のレーダーを作動させる必要がありません。データを受け取るだけでいいのです」

さらにF/A-18E/F は自機から発射した兵器を誘導する必要がない。自分で引き金をひくのではなく、E-2DやEA-18GあるいはほかのホーネットやF-35Cが誘導を担当するのだという。

NIFC-CA 構想ではネットワークが大きな威力になるが、同時に弱点にもなる。とくにF-35Cは海軍が長距離侵入ISR機材としての活用を想定しているが、情報を後方の部隊に送信するには安全かつ妨害の可能性が低いデータリンクが必須となる。

The Navy’s first two test F-35C Lighting II Joint Strike Fighter in 2012.


「敵が探知不可能で妨害も不可能なリンク性能が必要です。リンクがアキレスの健にもなりかねません。そこでリンク防御が必須です」

NIFC-CAには冗長性が持たせてあり艦隊部隊は敵の電子攻撃あるいはサイバー攻撃を受けても運用を継続することが可能。

「実はリンクの妨害を広域で実施するのはとても困難なんです。こちらの目をつぶそうとすればこちらの支配する空域全体を取らないと不可能でしょう」

中国は軌道上の衛星を攻撃する能力を実証しており、独自にサイバー戦電子戦能力を整備している。仮にその種の攻撃が実施される可能性を覚悟して、海軍は宇宙配備の通信手段が喪失した場合の対応策をすでに確保している。
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ただし、NIFC-CA構想は極度に野心的な内容であり、まだ欠点が残っている。ひとつにはネットワークへの依存が高すぎることが現場のパイロットから指摘されている。

EA-18G Growler assigned to the Electronic Attack Squadron 141 (VAQ) flies over the Arleigh Burke-class guided-missile destroyer USS McCampbell (DDG-85) on Sept. 3, 2012


その中でも特に経験の長いパイロットからもしNIFC-CAネットワークが大規模になり全体のシステムを一度で妨害できなくなっても、個別のウェブが切断されることがないとは言い切れないという。

NIFC-CAの個別構成要素が妨害を受ければ、データ分散が深刻な影響を受けるとの心配もある。

他のパイロットからもNIFC-CAが全体像を共有させてくれると多くの利点もあるが、上層部が戦術作戦上で「細かい指示を出してくる」可能性も生まれると指摘する。上層部は戦術作戦の実施には立ち入るべきではないとし、「それが航空戦の現実」とあるパイロットは言い切る。

米空軍関係者はNIFC-CA構想を高く評価しているが海軍がA2/AD対策で空軍に協力をする姿勢を表明していないことに懸念を示している。海軍と空軍はペンタゴンのエアシーバトル構想では密接に協力し合う想定なのだが。

空軍との協力はNIFC-CA構想が成熟すると実現するかもしれない。NIFC-CA自体はより大きなNIFC構想の一部分にすぎない。海軍には海上艦艇と陸上装備を一体化した戦闘ネットワークを形成する案がある。NIFC構想も今後発展すれば次の戦闘で海軍の準備が正しかったのか判明するだろう。■



2014年1月21日火曜日

グローバルホーク、U-2、それとも? 米空軍の揺れるISR機種存続問題


Global Hawk, U-2 Duel Resumes in ’15 Budget Fight

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com January 20, 2014
Credit: USAF Airman First Class Bobby Cummings


グローバルホークをめぐる政治上の圧力は何度も方向が変わっている。一度はU-2偵察機の後継機種と期待された同機の新型ブロック30を早期退役案が出て二年にもならないうちにペンタゴンから当初の案を覆し、2015年度予算要求で同機を盛り込もうとしている。
  1. 予算管理の仕組みでは各軍から出る年間支出案を国防長官官房が対応し予算確保が成立することになっており、U-2予算を削り30億ドルをグローバルホーク・ブロック30の勘定に移す。この決定はまだ最終ではないが、空軍は以前はブロック30関連の業務を停止し、U-2に専念することしていた。
  2. 長官官房と空軍から議会提出前は予算案へコメントしないのが通例だが、今回の逆転劇の背景には理由がある。一つは政治であり、機材運用費用の試算の変更もある。.
  3. 今回の議論の行方はペンタゴンが運航停止しようとしている他機種にも波及しそうだ。A-10、カイオワヘリ、TH-67など予算強制削減他財政上の圧力を受けている機種だ。ペンタゴンならびに各軍が議会の近視眼的な圧力をそのまま受け入れて政治家に人気のある事業を温存させることになるのか。あるいは投資的支出が劇的に減少する中で予算節約案を実行するのか。各原案で修正を加えれば、全体としての節約額は消滅し、ペンタゴンに残るのは「からっぽの部隊」が多機種で構成され、フライトの実施がままならなくなるとの危惧が国防計画立案者レベルで出ている。
  4. グローバルホークで議論の中は飛行時間当たり運航費用 cost per flying hour (CPFH) が以前はおおよそ33,000ドルでU-2と同等水準との試算だったものが、2013年は25,000ドル近くになっている。
  5. 同機の飛行時間が急増しているためでとくにブロック40の部隊展開が始まったことが大きい。同機はアクティブ電子スキャンアレイ(AESA) レーダーを搭載しており、地上監視に投入されていると、空軍関係者は語る。この関係者は実際の飛行時間合計については言及を避けたが、飛行時間が延びれば計算上の固定費用は薄く各機に乗せられる。予算案ではブロック40の運航停止は盛り込まれていないが、同機も削減対象に昨年注目された経緯がある。ブロック30の議論の陰に隠れて延命したようだ。
  6. 再計算されたCPFHが正しいとしても、関係者の一人が太平洋地区ではグローバルホークの飛行時間は増えざるを得ないと指摘している。CPFHが下がるとしてもグローバルホークが必要な情報収集にかける総費用にそのまま反映されないのが現実だ。
  7. 無人航空機システム(UAS)では北朝鮮や中東、イランのような対象地での情報収集に飛行時間が54%も多く必要になる。
  8. CPFHはミッション成功率は反映されていない。情報収集監視偵察の需要は高く、機材の稼働率が太平洋地区の司令官には懸念の種だ。たとえば2013年にはグローバルホークのミッションで55%が取り消しとなっているが、U-2では96%のミッションが実行されている。U-2のミッション数は三倍近く多い。グローバルホークには着氷防止装置がついておらず、過酷な気象条件では飛行できない。この欠点の克服は海軍仕様のトライトンで開発中だが、その実施は高価につく。
  9. 関係筋によればCPFHは不正確な指標でこれで決定するのはおかしいという。それによればグローバルホークでグアムに常駐する機材は北朝鮮に到達するため長時間飛行する必要があるが、U-2は韓国の烏山空軍基地に配備されており、短時間で移動できるという。
  10. ついでながら、空軍が同型を早期退役させようとした理由はレイセオン製の高性能統合センサー装備(画像、赤外線、レーダー画像を収集する)の作動がいまいちだったことにある。グローバルホークの通常飛行高度は50,000 ft.近くで天候条件に左右されやすく、敵の領土内偵察範囲が短くなる。これに対してU-2は60,000 ftを超える高度を飛行し、機内の発電容量も二倍近くレーダー画像の情報収集を難なくこなせる。今後配備されるといわれる極秘ステルス機RQ-180 (これもノースロップグラマン製)の存在がグローバルホークは無用の存在と空軍に思わせた理由だろう。
  11. ノースロップ・グラマンは最新のCPFH値について言及をしていない。「空軍と協力しグローバルホークのコスト削減ならびに搭載システムの性能向上を図っております。グローバルホークの飛行時間当たりコストは2010年から大幅に下がっており、今後も削減されていきます」と同社スポークすウーマンは発言している。
  12. コスト論議も実は長官官房が議会の圧力に屈していることのカモフラージュなのかもと関係者は見ている。連邦議員には同機の存続を求める動きが数度となく出ており、ノースロップ・グラマンもグローバルホーク存続のため強力なロビー活動を展開している。■


2014年1月17日金曜日

原子力空母ロナルド・レーガンの日本配備決まる


New Navy Carrier Shuffle Moves Reagan to Japan, Roosevelt to San Diego

By: USNI News Editor
Published: January 15, 2014 10:57 AM
Updated: January 15, 2014 10:58 AM
USS Ronald Reagan (CVN 76) displays holiday lighting while moored at its homeport of Naval Air Station North Island. US Navy photo


USSロナルド・レーガン (CVN-76) が日本への次期前方配備艦になることが決まった。あわせてUSSセオドア・ローズベルト(CVN-71)がサンディエゴ海軍基地に配備されると米太平洋艦隊が1月14日夜発表した。
  1. レーガンが交代対象はUSSジョージ・ワシントン(CVN-73) でワシントンはハンティントン・インガルス・インダストリーズのニューポートニューズ造船所で核燃料交換の三年間工程に入る。.
  2. ワシントンが日本に配備されたのは2008年で、第七艦隊の前方配備海軍部隊 forward-deployed naval forces (FDNF).の中核となっていた。
  3. ニミッツ級空母を引き続き配備することで米国は東太平洋に迅速に兵力を投射することが可能となり、人道任務にも対応が可能だ。
  4. ワシントンは緊張高まる同地域で米海軍力を誇示する存在だった。とくに北朝鮮の挑発に対応し、米国の同盟国韓国、日本と「定期演習」を実施している。
  5. 海軍は具体的な日程を示していないが、交代には少なくとも数年間かかるとみられる。
  6. USSエイブラハム・リンカン(CVN-72)はニューポートニューズに回航されており、工期三年の燃料交換および補修を3月に開始したばかりで2016年までは復帰しない。
  7. また海軍はローズベルト乗組員をサンディエゴへ、レーガン乗組員を日本に移動させる必要があり、5,000人に及ぶ乗組員とその家族の移動は複雑な作業だ。
  8. 第五航空部隊は厚木海軍航空基地で引き続き前方配備航空部隊となる。■


アメリカから見ると日本周辺は東太平洋なのでしょうか。変な気がしますね。


2014年1月10日金曜日

一筋縄ではいかない欧州の防衛装備協力体制


かつて欧州各国は列強と呼ばれていましたが、今や一国ですべての防衛体制を整備できなくなるところまで来ています。しかし総論賛成各論反対ではなかなか共同整備が実現しそうもないですね。こんなところにヨーロッパ世界の限界が見えてきます。それにしてもユーロのような人工通貨のいんちきさはいつ破綻するのでしょうか。


Europe Takes New Steps Toward Defense Cooperation

By Amy Svitak
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com December 30, 2013
Credit: Sgt Pete Mobbs RAF Crown Copyright

ヨーロッパの共同防衛整備の可能性が12月に一歩遠のいた。ブリュッセルでの防衛サミットが不調に終わり、ヨーロッパ版無人航空機(UAV)他での協力事業で具体的な動きが出なかったためだ。
  1. 欧州理事会で28か国の首脳が合意を見たのが中核分野での共通ロードマップ作成と要求性能水準の把握だ。次世代UAVに加え、空中給油、衛星通信、サイバー安全保障のプロジェクトが想定されている。 
  2. ただし加盟各国は共同開発では具体的な負担策の表明を避けており、総論で合意しただけ。それでもEU加盟28か国が共通防衛戦略の検討開始に合意したことが前進の印とみられている。 
  3. 防衛サミットは5年ぶりで、加盟各国は「戦略再検討」を2015年中に行い、防衛戦力整備の主要4分野の進捗を点検することで合意した。各分野は欧州防衛庁 European Defense Agency (EDA) が策定したもの。
  4. UAVについては加盟各国でヨーロッパ版中高度長距離飛行可能なMALEシステムの工程表作成が合意されている。
  5. 2013年にフランス、ドイツ、イタリアの各防衛産業企業からEU加盟各国にUAV開発の出遅れを取り戻すチャンスを訴えていた。この意見を表明したのはドイツのエアバス・ディフェンス&スペース、フランスのダッソーエイビエーションとイタリアのフィンメカニカで昨年5月にフランスが米国製MQ-9リーパーを最大で16機導入する決定をしたことへの対応である。フランスはマリ内乱への介入でISR(情報収集、監視、偵察)能力の不足を痛感させられ、てっとり早い解決策を求めたのだ。
  6. なお、リーパーは英国とイタリアがすでに運用中で、フランスとおオランダがここに加わろうとしている。
  7. 11月にはEDAの呼びかけでMALE UAVユーザーコミュニティがフランス、ドイツ、ギリシア、イタリア、オランダ、ポーランド、スペインが加盟して発足している。それとは別にEDAは加盟8か国(オーストリア、ベルギー、チェコ、ドイツ、フランス、イタリア、英国)に50百万ユーロ(68百万ドル)を拠出させUAVを欧州の空域に共存させる研究を行っている。.
  8. 理事会ではEU全域に適用するUAV型式証明規程を2016年までに整備する目標を承認しており、これは業界にとって歓迎すべき動きだ。
  9. 「欧州での防衛装備型式証明手続きは悪夢そのもの」とヨーロッパの専門家は評する。「開発費用のおよそ2割が手続きに食われています」
  10. 同専門家は理事会サミットの結果に期待しないものの、各国政府が共通型式証明の樹立を2016年目標にすえることが必要と認識したのは評価している。
  11. 衛星通信分野では5か国が共同でユーザーグループを結成しており、次世代通信衛星の開発ロードマップを作成中だ。
  12. 現在独自の軍用通信衛星を運用中なのはドイツ、スペイン、フランス、イタリア、英国だが、衛星の中には数年以内に耐用限界に達するものが出てくる。
  13. 空中給油では理事会はここまでの進展に満足しており、昨年は9か国にノルウェーが加わり給油機の共同調達の内示書に署名している。オランダが音頭をとり、2020年に新型給油機が運用可能となるとみられ、機種はエアバスA330を基にした多用途輸送給油機になるだろう。.
  14. 理事会で討議はしたものの議決しなかったのは軍事活動費用の共同支出であり、念頭にあるのはフランスによる中央アフリカ共和国での作戦だ。
  15. フランスがEUの財政支援を求めているのは欧州全体に代わり同国が実施しているとの主張からだ。

2014年1月8日水曜日

そもそもF-35の開発思想に誤りがあったのかーーーー同機はウェポンシステムとして失敗作なのか


もしF-35が各軍共用ではなく、各軍で独自に機体を開発していたら費用節減につながっていたはずとの分析結果をランド研究所が出しました。そもそもF-35の出発点に誤りがあったのでしょうか。大きすぎてつぶせない、といわれる同機ですが、すでに失敗作としてどうやって引導を渡すかを議論している感があります。それにしても西側の防衛を今後10年以上も空洞化しかねない同機には各方面から恨みつらみがたまりそうです。その機体を主力機として日韓が競って導入しようとしているのは皮肉な現象と言わざるを得ませんね。面白いので原文の読者コメントも参考までに載せてあります。
Contractors Dispute F-35 Cost Report
By Bill Sweetman

aviationweek.com December 30, 2013

ランド研究所 Rand Corp. による報告書でF-35共用打撃戦闘機事業は三軍による単独実施よりも多額のコストになっていると指摘している。早速ロッキード・マーティンが報告書に反論し、報告書作成者が「古いデータ」を使い運用コストを二倍に過剰見積もっていると主張。
  1. ロッキード・マーティンの反論が使う数字は同報告書には出ていない。同社は出典を明らかにしていないが、「政府の数字」だとしている。共用打撃戦闘機事業推進室は今回の論争から距離を保っており、同報告書について真剣に取り上げる内容はなく、ロッキードの数字についても確認をしていないという。
  2. ランド研究所の報告書は空軍資材軍団 Air Force Materiel Commandのドナルド・ホフマン大将(当時)Gen. Donald Hoffmanの求めで作成されたもので、その時点でJSFの就役が数年間遅れることは必至だった。
  3. 報告書が引用している数字は2011年11月時点までのデータで、2010年度の個別調達報告selected acquisition report (SAR)も含む。ランド研究所はそもそも空軍が発足させたシンクタンクであり、空軍との関係は密接だが、2011年度のSARは引用していない。このSARで開発遅延が三年にのぼり、2010年版よりコストが高くなることを指摘している。
  4. JSFは進行中の事業であり、他に同様の共用戦闘機開発は存在しないので、研究員は各種機材のデータとしてF/A-18E/F 、F-22 のほかT-6A練習機やE-8C監視機も使い各軍が共用で開発した場合、単独で開発した場合のコスト上昇の比較をしている。
  5. 研究では絶対費用ではなく、全面開発(マイルストーンB)とマイルストーンB後5年および9年時点の推定コストの増加率を取り上げている。
  6. そのデータから引き出された結論は各軍共用仕様の機体開発の推定コストは単一軍仕様の機体より高い増加率になり、5年経過後、9年経過後いずれもこの傾向がみられる。また共用機開発でコスト増加が最も低いといっても単一軍仕様開発の事例よりはるかに高くなっているという。T-6とC-17の例では前者が急速にコスト増となっており、そのためT-6調達はキャンセルになるところだった。

AviaionWeekの原文はここまで。以後読者の反応です。(一部手を加えています。)

Don Bacon

12:53 PM on 12/28/2013
過去のデータをいじるのは面白いかもしれないが、調達費用が上昇している問題の本質には触れていないし、F-35の場合は主契約企業ロッキード・マーティンにとっては恩恵が増え続けることになるのであり、同社の利益、配当、役員報酬は深刻なコスト超過、日程遅延にもかかわらずずっと増え続けている。.
また大がかりなゆがんだ構造も認識されていないようだ。同社はジャーナリストや退役軍人を同社の都合の良い形で雇用している。
調達方法には改善が必要だ。まず調達コストを管理下に置く唯一の方法は競争状態を通じてである。主契約企業は契約を獲得できなくなると感じてはじめて真剣になる。事業を失うと感じるとどんな企業も意欲を高める。以下がIBMセンターの研究で明示されている。
競争は初期設計や試作機製作の段階ではおおむね受け入れられているが、開発・生産の初期段階でもこれまでにまして受け入れられてきている。ただし生産期間中での競争には抵抗が生じている。生産段階における競争によるコスト節約効果には大きなものがあり、どんな形でも競争状況が生まれることをすすめるべきだ。単一メーカーによる調達が必要となる特殊例では実績が良くなりコストが低くなっていれば同社に追加契約を与える形で報奨をすればよい。ただし、競争させる選択肢は求める結果が出ていない時に使えばよい。
現時点のF-35調達モデルはコスト面で破たんは必至だ。

X-Planes

9:15 AM on 12/30/2013
三つの別個の開発事業でより特化した望ましい機体が各軍に生まれていただろう。「共用」では技術の共有で限界が生まれる。たしかにソフトウェア、材料、レーダー、エンジンでは共有効果があることは認めるが。ただ機体を共有するのはコンセプト形成時点で大きな間違いだった。

Ruckweiler

11:47 AM on 12/30/2013
F-4が海軍、海兵隊、空軍に採用されたことで国防総省は単一機体ですべての用途を満たす方法に夢中になっているのだろう。F-35ではコスト上昇で結局非常に高価な機材をごく小規模調達することになるのだろう。マクナマラの亡霊がもどってきた。

Hardcore

3:50 PM on 12/30/2013
三機種作っておけば、ひとつぐらいは当面は通用するけ傑作機になっていただろう。その反対に傑作機1機種を最初から作ることで、そのあとで三軍で使うとリスクが高い選択になる。

msnova

8:43 AM on 12/31/2013
三軍に同一機種を提供するのは高額なのに効率が悪い選択だと思う。これまでもうまくいったためしがない。F-4は受容できる機体だったが、海軍には機体重量が大きいことから旧型空母には適した機体ではなかった。マクナマラは一つの機体で全部のニーズにあわせようとしたが失敗している。
また海軍が単発エンジン機を受け入れたことも驚きだ。海兵隊には近接航空支援機材が必要だが、スーパークルーズに目を奪われる必要はない。空軍は今回の対立で指導的立場にあるようで、数字を操作して主張を正当化することで同機を押し付けたとみる。

Performance2

10:23 AM on 12/31/2013
記事は触れていないが現時点で米国内で戦闘機メーカーが一社になっていることが重要だ。ロッキードである。同社が悪いわけではないが、次世代戦闘機の設計や開発で競争が成立するのか。F-35でロッキードに協力しているノースロップグラマンも戦闘機開発で競争力があるとみる向きがある。tだノースロップは主契約社でなく、開発全般での役割は限定的だった。この違いは大きい。設計能力の消滅は意図しなかったとはいえ甚大な損失だ。三機種開発にしておけば競争が生まれ生産技術の向上につながると同時に将来の戦闘で敵方が一つの技術優越性あるいは戦術でわが方の戦闘機部隊が全滅するリスクを軽減していただろう。

halseyjr61

12:33 PM on 12/31/2013
皆さんのコメントに感服している。F-35は基本思想ではうまくできていおり、コストを共同開発により引き下げるはずだったものが結局うまく行っておらずウェポンシステムとしても想定通りの機能は期待できない。
F-35は大失敗になっており、せっかくの次世代技術の利点も度重なる配備の遅れで帳消しの形だ。遅延とコスト超過の結果で妥協策の機体が技術欠陥をもったまま配備されようとしている。さらに生産面での妥協策で性能面で各軍の期待を下回る結果になっており、単一機体にあまりにも広範囲な設計パラメーターを与えているのもその原因だ。
実際に各軍に配備されれば同機の弱点は明白になり、これに敵側が付け込んでくるだろうし、すでに対空戦闘装備でこの動きが出ているとの調査報告が出ている。
悲しいことにかつては地球上でもっとも繁栄していた国家が今や国防予算削減でさらにこの問題が加速しているのを見守るしかない。
この失敗作に数十億ドル単位の予算が使われる中、同機の数少ない長所を拾い上げることしか救いがないが、現実はF-35開発は米国のウェポンシステム開発史上で比類ない高額の教訓となっているのであり、F-35をこのまま続けるとして米国がまだ大国であるのであれば各軍の仕様で専用の機材を作ることにもどるのだろう。

inspectorudy

4:02 PM on 12/31/2013
F-111の失敗で各軍は貴重な教訓を得たのではなかったのか。自分はF-4Bを操縦しており同機の優秀さを知っているが、ドッグファイターとしてはお粗末だった。同機より技術も低く価格も安い敵機が近接戦闘では十分互角に対応できた。
各軍のニーズは異なっており、ソフトウェアで克服できる性質のものではない。海軍にはもっと頑丈な機体が艦載機と指定必要だし、海兵隊にはそれに加え戦場での運用が独自に行える機体が必要だ。空軍はどんな機体でも購入可能なら必要と主張する傾向がある。海兵隊がこ
B型を前方進出基地で装備品がほとんどない状態で運用する場合が想定できるだろうか。だがこれが海兵隊の想定ののだ。敵側の第五世代戦闘機に互角に相手になれることがわかっているだろうか。同機のレーダー性能が優秀で攻撃モードについても知っているが米国は同機を購入したことを後悔する日が来ると思えて仕方がない。三機種開発する方法であればそのうちひとつや二つの機種はP-51マスタングあるいはヴォウト・コルセアのようになっていたかもしれない。たぶんその解決策はF-35がある程度機数がそろったところで一度中止し、機体の価値を確かめたうえで生産を続行すべきかを判断することになるのではないか。

BirdWatcher

10:04 PM on 12/31/2013
ランド報告書では「推定コストを導入時と大量生産時でパーセント比較する」といっているが、「推定」のところに注意が必要だ。これは気象予報士が過去の予報でどれだけ正確だったかを検討しているのと同じだ。「絶対」の気象結果を検討しないのと同じである。次に単一軍仕様で作った機材の成功例は多いと思う。B-1B、B-2に加え完成していればA-12やRAH-66もそこに加わっただろう。ヨーロッパにはラファール、タイフーン、グリペンがあり、各機は優秀だ。それでも反論をする向きがあるだろう。すべての投入資源を同じように見える機材に薄く広く分配したらどうなるのか。F-35については見切りをつけるのが早すぎると思う。

HitOrMiss

3:49 AM on 1/2/2014
皆さんは間違った方向から見ているようですね。まずF-35はF-117の後継機種であり、F-16と同様のエイビオニクスを搭載sたもの。あるいはF-16にF-117のステルス性を付けたものと理解すべき。
次にこの機体が成功できなかったのは議会の事情で政治上の計算から予算が継続していたためだ。同機開発をもたつかせたのは議会であり公聴会で議会関係者がこれだけ同機開発を遅らせて費用を高騰させたのはだれか「想像できない」とと発言しているのは笑止千万だ。
最後にこの機体は「共用」ではなく、名称が同じでも三機種にわかれており、共通構造はたかが25%しかないのであり、そもそもが三軍同時調達の意味がない。
未来の空軍力を知りたければノースロップグラマンのガンマファイヤストライクラボGamma Firestrike labsにいけばよい。最高100KW の出力を4レーザー5本を束ねて発生させることに成功している。常時この出力を出せれば亜音速戦術機は過去の遺物になるだろう。恐竜のように。


2014年1月7日火曜日

MQ-4Cトライトン テストは順調に進展中


Navy’s MQ-4C Triton Hits Testing Milestone

By: Dave Majumdar
USNI Neews, Monday, January 6, 2014
MQ-9C Trition. Northrop Grumman Photo

ノースロップグラマンは米海軍とMQ-4Cトライトン無人機の飛行テストを加速中。
  1. 同社から1月6日に同機が昨年5月の初飛行以来9回の飛行を完了し、安全限界の確認過程の半分が完了したと発表があった。
  2. 「安全飛行限界の拡大によりテストチームはトライトン用監視センサー類の搭載にとりかかることができます」(マイク・マッケイMike Mackey、ノースロップグラマンのトライトン事業責任者)
  3. トライトンに搭載予定なのは360度監視AN/ZPY-3多機能アクティブセンサー(MFAS)、MTS-B電子光学赤外線カメラ、AN/ZL-1電子支援装置一式および自動識別装置(AIS)の受信機である。また衛星通信およびリンク16戦術データリンク能力により艦隊へ通信中継をする。
  4. 今回の安全性能領域拡大過程でフライトテストチームは飛行速度・高度を徐々に上げ機体重量も変えていった。その狙いは同機が設計通りに飛行可能なのか、そして飛行中に遭遇する問題を修正できるかを確認することにあった。
  5. ノースロップによるとMQ-4Cは最高高度5万フィートで9.4時間の滞空性能を示したという。またダブルスと呼ぶ飛行操作をし、気流の乱れによる飛行経路の障害から回復する能力を試した。
  6. 米海軍はMQ-4Cを合計68機導入する予定で、そのうち20機は常時周回警戒飛行任務に投入する。トライトンの運用はボーイングP-8Aポセイドン哨戒機と連携が前提。■


2014年1月4日土曜日

このままでは米国製軍用機に未来はない

2014年最初の投稿は暗い内容です。これまでの軍用機開発生産の慣行は維持できない所まで来ているのでしょうね。コストを重視して管理した挙句がF-35のような西側国防体制を内部から崩壊させかねない機体しか出現していないのは嘆かわしいことですが、一方で記事が提言する産業基盤の維持という観点が出てきたのは歓迎すべきでしょう。日本はこの考え方でこれまでずっと高い価格を負担してきたのですがね。また単一国での本格開発は困難になってきたので、国際協力、共同開発がこれからの方向でしょうか。F-35の唯一の功績はこの体制づくりの基礎を作ったことと後世では記憶されるでしょうね。日本の産業基盤が役に立つ時代がやってきそうです。ご関心の向きはF-3、F-X、F/A-XXで検索して過去の記事を御覧ください。


Opinion: U.S. Military Aircraft Fly Toward A Waterfall

By Richard Aboulafia
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com December 30, 2013

1990年代の防衛産業合併ブームは冷戦終結による生産能力過剰の解決が目的だった。ただ完全に生産が終了したのはグラマンF-14とノースロップB-2だけで、大部分の機種は性能改修や輸出でラインを維持した。
  1. これからの苦境を予感させる動きが出てきた。9月にはボーイングがC-17ラインを2015年で閉鎖と発表。その一ヶ月後に韓国がボーイングF-15をF-X 3選定で落選としサイレントイーグルの将来がなくなり、同機ラインは2018年で閉鎖に追い込まれる。12月にはボーイングF/A-18E/FがブラジルのFX-2選定に漏れ、同社の国際営業で大きな敗退となった。一度は確実だった海軍によるスーパーホーネット36機追加発注がすぐに取消になっている。これで同機の最終号機納入は2016年となり、ボーイングは今年3月にも同機生産ラインを自社費用で維持すべきか決断する。
  2. ボーイングだけではない。ロッキード・マーティンも昨年でF-22全機を納入しており、F-16生産も2017年で終了する。ビーチクラフトのT-6最終機の引き渡しは2016年予定で、ベル・ボーイングV-22は追加受注がないと2020年で終わりそうだ。回転翼機の生産ラインは健在だが、2011年から18年の発注機数は半減している。
  3. これで米国に残るまともな固定翼軍用機生産ラインはわずか2つになる。両方ともロッキード・マーティンでF-35とC-130Jがそれ。ボーイングが生産を続けるのはKC-46とP-8だが後者は2020年ごろで終了する予定。
  4. 開発中の新型機はわずか。空軍のT-X次期練習機には既存機種を流用して開発をはやめるとはいえ2010年台には姿をあらわさない。長距離打撃爆撃機の開発は始まっ
  5. たが生産は早くても2025年開始だろう。
  6. C-130Jは空軍、特殊作戦司令部、海兵隊、輸出需要があり例外的に安定しているとはいえ、削減をかろうじて逃れたに過ぎない。わずか8年前に国防総省は同機の生産ラインを閉鎖しようとした。仮にこの通り実施していたら旧型C-130の機齢が40年を越える中で交替機材がなくなるところだった。.
  7. 米国はアジア重視の部隊再配備を実施中で、これまでにまして長距離戦略空輸能力が必要なのに唯一の戦略輸送機C-17の生産を止めようとしている。海軍内部にスーパーホーネット生産を継続したい向きがあるのもF-35Cの空母運用能力が実証されていないためだ。
  8. 国防予算の状況が厳しいことから、今後も1ないし2機種の継続が精一杯だろう。ただし、航空機開発の進め方を米国が変更する可能性が出てきた。現状では開発含む全体計画はいかにしたら早く実現できるかを目的にしている。各軍は予算さえ管理できれば報酬を与える仕組みを作っており、生産量を増やすことで単価を下げることに注力している。各企業にとっても売上を伸ばし利益を確保することが励みとなり、各議員には地元選挙区に雇用を持ってくることが目標となっている。
  9. たしかに理解できる理由付けではあるものの、各関係者は産業基盤の保存という観点を無視している。むしろ単価はわずかでも上げて各機の事業をより長く維持できるようにすべきである。年48機生産を10年間続ける代わりに36機生産を13年間続ければいいではないか。輸出需要を生産量増加の口実にするのではなく、国内需要の補完に使えばいい。
  10. 産業基盤を重視する考え方に今からでも切り替えれば、今後に良い結果を生むだろうが、とりあえず現時点では工場閉鎖や数千人単位の解雇が目に入るだけで、国防資産の消失につながる。冷戦後の軍用機生産の真の意味の精算が不気味に迫っている。■