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★★★F-35の戦闘能力に深刻な制約あり、とペンタゴン試験部門報告書が指摘



今までもF-35の諸問題が取り上げられていますが、今度はペンタゴン内部から厳しい判定が出ました。テストが長引くのも種々の問題が出ているためなのですね。機体だけ完成してもソフトウェアなければカタログ上の能力を発揮できません。F-35開発が鳴り物入りではじまった2000年代から無人機や防空体制の進歩がどんどん進み、ついには第六世代機まで話題になってきています。本当にこんな機体に西側の防衛を託していいのでしょうか。事業に従事する方々は真剣に対応されていると思いますが、問題の山が着実に解決されて実戦化した段階で世界は当初の想定と相当変わっているでしょう。大きすぎてつぶせない、とリーマンショックの際の某大企業のような感じです。皆さんはどう思われますか。

Test Report Points to F-35’s Combat Limits

Jan 31, 2016 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

ブロック2B搭載のF-35で米海兵隊が昨年7月に初期作戦能力(IOC) 獲得を宣言しているが、支援なしで敵に戦闘を挑めないとペンタゴンのマイケル・ギルモア(作戦試験評価部長[DOT&E])が明らかにした。このたびAviation Weekは間もなく公表される全48ページの事業報告書の写しを入手した。DOT&Eは報告書内で「F-35Bブロック2B機材は敵との交戦を避ける必要がある....敵の抵抗が予想される状況では....また友軍の追加投入も必要」としている。
  1. 米空軍で初期作戦能力を得たF-35Aブロック3iでも制約がある。「一部欠陥を補正しているが、ブロック3i搭載機材の戦闘能力は大した違いを生んでいない」
  2. 報告書は「事実として正しい」とF-35共同開発事業室は公式に認めるものの、「判明した問題や日程上のリスクを解決しようと努力中の状況は完全に記述していない」という。ロッキード・マーティンは同室の見解を支持すると伝えてきた。
  3. 12月のメモでソフトウェア欠陥の詳細を述べたギルモアによれば武器放出正確度(WDA)テストがブロック2B開発中に実施されたが12回中11回でチームがシステムの欠陥を補正し、テストが成功するように手を入れたとしている。ギルモアによれば戦闘状況でのF-35の性能は「その場での解決策の有用性に頼るところが多い」とテスト中の解決方法を指して述べている。
  4. WDAテストが難航した原因にギルモアはWDA実施前の部品テストが「契約上の要求水準に合致しているか、に重点をおき、戦闘実施に適しているかを重視しなかったため」としている。部品テストでは構成部品の作動だけを求めていた。実際のWDAテストで全体の作動状況から「欠陥が浮かび上った」という。F-35事業の統括責任者は一部を意図的に「命中」と判定しており、標的の動きを制限したり対策を講じて無理やり結果を作っている。
  5. また海兵隊もIOCを宣言したとはいえ不良現象をそのまま受け入れている。この結果「ミッションシステムの作動状況と正確度」で問題が生じ、具体的には機体のデータ融合システムとレーダー性能が問題として表示されたままだった。
  6. 技術的な問題が残っているため飛行速度や機体制御に制限がかかっていると報告書は指摘。地上温度が華氏90度(約32C)以上の場合に兵装庫扉を10分以上閉めたままにしておくと兵装庫内温度が限界を超える。(兵装庫扉を開放するとステルス性がなくなる) F-35Aでは現在速度制限は高度により500から600ノットになっている。
  7. 発熱問題は数年前から判明していたが、燃料ポンプ他の変更で解決したとされてきた。F-35は燃料をヒートシンクに使って機体内部及び各システムを冷却するが、冷却能力が不足する状況がある。2014年12月にはルーク空軍基地から燃料車両を白色塗装にして熱問題を軽減したと発表があった。開発関係者は「これはF-35の問題ではない。燃料温度関連でF-35には何ら制約はないはず」と述べていた。
  8. また燃料を内部に満載した状態のF-35ではg制限がある。原因は空気がサイフォン燃料ラインに入るとタンク内圧力が限界を超えるためだ。補修作業が進行中。
  9. 全体として報告書は「欠陥の解決のペースが新たな不良現象の発見に追いついていない」とし、問題多数がテスト中に見つかるが、解決は遅れる一方だとする。「よく知られた問題の中でも重大なもの」として自動補給支援情報システムの欠陥、エイビオニクスの不安定、なかなか解決しない機体・エンジンの信頼性、点検整備の件がある。
  10. 機体数がそろわないこともあり実績記録からDOT&Eはこう結論付けた。フライトテストはブロック3Fの供用開始までに間に合わない。ブロック3Fは海軍用及び輸出用機材のIOCの必要条件であり、システム開発実証(SDD)段階終了の条件にもなるが予定日程に間に合わないのだ。ブロック3F開発用のフライトテストは2015年3月に始まっている。予定ではブロック3FのWDAは48項目あり、ブロック2Bのテストより複雑かつ難易度が高いが、このままでは2017年5月まで完了できない見込みが大で、「大幅に工程の達成度のペースを上げない限り無理」だとする。
  11. さらにDOT&Eが予見するのは初期作戦テスト評価(IOT&E)には生産段階の機体で計器類を完全装備した機体が2017年8月までは確保できない可能性だ。IOT&EはSDDの後で軍が主体となるテストで作戦能力獲得宣言の前に位置する。IOT&E部隊はまず各機体を乗りこなし訓練しておく必要があり、その後IOT&Eが始まる。ギルモアはこれは2018年8月以前の開始は無理とみている。
  12. IOT&Eでは敵脅威を正確に再現し、シナリオも相当複雑で実弾発射では実現できない内容の試験を行う。ギルモアはこの数年間にわたり同機事業の検定シミュレーション(VSim)のサブシステムに不良があり日程も遅れていると警鐘を鳴らしてきた。2015年8月、突然VSimは中止され(2010年以来合計250百万ドルが支出されている) 代わりに政府が主体となった共用シミュレーション環境Joint Simulation Environmentを使うこととした。だがこれはIOT&E開始までに間に合わないので、テスト部隊はシナリオを使うのをやめるか高価かつ時間がかかる実弾発射テストの実施に踏み切るか決断を迫られる。■


コメント

  1. この記事が本当だとして一番の問題はテスト結果の改ざんじゃないか。

    それをやられると何もかもの信頼性が失われる。中国を笑えないよ。

    ハード面の不具合を放っておいて量産したらガラクタを大金で買ったようなもの。

    返信削除

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