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憲法記念日に日本の安全を考える----中国ミサイル先制攻撃は日本を標的にしている。ではどう対応すべきか

コメントは下にあります。

A Missile 'Pearl Harbor': How China Could Win a War Against America? ミサイル版の「真珠湾攻撃」で中国は米国に勝とうというのか。


国防戦略部門は中国の「空母キラー」弾道ミサイルや新型空母に目を取られがちだが最大の脅威は別にあると注意喚起する報告書が出た。
「米国の国益への最大の軍事脅威がなぜか認識されていない。それは中国のミサイル戦力で域内の米軍基地が脅かされている」と新アメリカ安全保障センター(CNAS)が先月発表したトーマス・シューガートとハビエル・ゴンザレスの共同執筆による報告書が指摘している。
ゴンザレス、シューガート両名はともに海軍中佐で後者はCNASに研究員として派遣中で、台湾あるいは尖閣諸島をめぐる対立への米軍介入を押し止めるため中国が域内米軍基地にミサイル奇襲先制攻撃を実施すると主張。「長距離精密攻撃兵器で先手をうち有利な立場を確保する考えが中国ミサイル部隊の運用構想や軍事戦略から浮かび上がる」とある。
中国指導部がミサイル戦力増強に動いたのは米軍がサダム・フセインに圧倒的勝利を収めた第一次湾岸戦争が契機だった。北京政府は第二砲兵隊と呼ばれていた部隊をロケット軍として主力核部隊に引き上げ、核および精密誘導通常兵器ミサイル(弾道及び巡航ミサイル)の運用部隊にした。この戦略は中国の地理条件やミサイル製造の低コストで大きな利点の獲得をめざす中国の発想が根底にある。
米軍基地への先制奇襲攻撃のため中国は大規模ミサイル戦力を整備してきた。陸上配備ミサイル戦力では中国が世界最大となった。ペンタゴンは中国の戦力を短距離通常弾道ミサイル1,200発、中距離弾道ミサイルを200ないし300発、巡航ミサイルも200ないし300発と試算している。多くが精密攻撃可能で核弾頭でなくても標的破壊は可能とする。Randコーポレーション報告書では中国ミサイルの「命中誤差半径は1990年代の数百メートルが現在は5ないし10メートルに縮小した」とある。よく話題に出るDF-21D「空母キラー」は再突入体が操作可能で更に精度が高まっておりミサイル防衛体制も回避できるといわれる。
シューガート、ゴンザレス両名は人民解放軍(PLA)の演習が米軍への先制攻撃を模擬していると指摘。その一つとしてPLAロケット軍が「係留中のアーレイ・バーク級駆逐艦と同程度の艦艇を標的にしたのは横須賀基地の想定」とし、その根拠として米艦艇3隻の同時攻撃は先制奇襲攻撃しかありえないからとする。
中国の軍事力と指導教義を検討した両名は実際の攻撃をシミュレートし効果測定した。興味深いことに在日米軍基地や一部自衛隊基地への攻撃を想定したものの韓国への攻撃は回避すると判明した。「朝鮮半島に第二戦線が生まれ軍事目標が分散するのを防ぐため」としている。このシミュレーションではグアムの米軍基地も最初は狙われないとし、その理由としてグアムが米領であり、中国としては米軍による中国本土空爆を招きたくないからとしている。
シューガート、ゴンザレスは先制攻撃のシミュレーション数例を試しながら米軍同盟国軍のミサイル防衛体制も盛り込んだ。いずれの場合でも「弾道ミサイル多数が発射されればすり抜けた数本でも米軍基地に大損害を与える」と判明した。以下想定での攻撃内容だ。
•  「固定式指揮命令所や補給処は開戦数分以内に攻撃を受ける」
• 「日本の母港内の米艦船ほぼ全隻が弾道ミサイル攻撃を受ける」
• 「日本の主要航空基地で滑走路や誘導路に弾道ミサイルが大穴を開ける」
• 「航空施設に損害が生まれ、司令部が破壊され、防空体制が劣化することで開戦数時間で200機が破壊される」
一つ希望の光は日本のミサイル防衛装備の強化として最終段階高高度防空(THAAD)やイージス弾道ミサイル防衛能力付与駆逐艦を在日米軍基地防衛にあたらせていることで奇襲攻撃の効果が減じられることだ。それでも相当数のミサイルが沖縄に命中するが損害は減らせる。もっと重要なのは日本国内の他の米軍基地は中国から更に遠い位置にありミサイル迎撃の間に機材を離陸させ、艦船を港外に移動させられる。両著者は米軍部隊で迅速基地避難訓練を普段から実施するよう提言している。
ここからもう一つ重要な点が浮かび上がる。両著者も中国専門家が中国が米軍に完全奇襲攻撃を仕掛ける意図があるのか懐疑的だが、両著者は米国は奇襲攻撃を受けた経験があり、真珠湾もその一つで、中国の積極的防衛構想を見ればその実行はありうるとしている。
ともに正しいと言える。真珠湾は米国と日本の緊張の高まりの中で実行されたが、中国の積極的防衛構想も同様に緊張時に実施されている。台湾あるいは尖閣諸島侵攻時で中国が先制攻撃に踏み切るとすれば事前に兵力移動が行われるなど緊張は相当高まるはずだ。であればシューガート=ゴンザレスの描く悪夢のシナリオの回避はずっと容易だ。つまり高度緊張時には米軍部隊を分散配備すればよい。米国が太平洋地区で第二次大戦時の基地で運用再開を進めているといわれるがこれを実行すればよく、艦船も確実に洋上展開させればよい。
いずれにせよ、シューガート=ゴンザレスがまとめた報告書は空母キラーミサイルのような奇異を狙う装備が必ずしも最大脅威装備にならないと国防関係者に示す点で大きな意義がある。つまるところ米軍がアジア各地の陸上基地に配備する軍事力は空母1隻の比ではないが、陸上基地はずっと簡単に破壊できる目標なのだ。■
Zachary Keck is the former managing editor of the National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.

報告書原文をご覧になりたい方は次のリンクをヒットしてください。https://s3.amazonaws.com/files.cnas.org/documents/CNASReport-FirstStrike-Final.pdf?mtime=20170626140814
ミサイル防衛が必要な理由がはっきりしますね。それだけに日本のミサイル防衛体制強化に必死に反対するのが中国やロシアであることがわかりますし、それに同調する国内の声は現実世界を直視していないことがわかります。
同じ弾道ミサイル戦力でも北朝鮮が子どもなら中国のミサイル戦力は大人並です。真剣に対応を考える必要があります。この記事によれば日本は被害を受けるのは必至となり、横須賀、大和、福生、岩国等の自治体は大被害を受けることになります。

ミサイル防衛に反対する庫会議員がありまして、その理由は迎撃に成功すれば破片が国土にふりかかるからだそうですが、とても真剣に議論するつもりにもなれない論理です。むしろ中国の攻撃を歓迎するとしか受け取れませんね

コメント

  1. ぼたんのちから2019年5月3日 21:20

    中国の人民解放軍(PLA)が弾道ミサイルを用いて日本の米軍基地の奇襲攻撃を計画していることは間違いないだろう。しかし、PLAの奇襲はそれだけでないはずだ。
    在日米軍基地、及び日本への攻撃は、日米中戦争への引き金になる。PLAは、日本や米国との全面戦争を賭けて、日本やグアムへの限定的なミサイル攻撃を行うだろうか、極めて疑問である。もし、中国が戦争を決断したなら、攻撃対象は、西太平洋地域に限らないだろうし、その手段もミサイルや通常兵器だけでないだろう。
    そのように考えると、この記事のここでの想定は甘すぎる。

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  2. 逆にこの30年日米が漫然と航空機や艦船を配備し続けたのが分からないものです。中共のミサイルがこんなに強化されないと思っていたんでしょうか?

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