2014年4月25日金曜日

☆ ステルスに限界が見えたとき、電子戦機はどこまで頼りになるのか



これまでも取り上げてきましたが、海軍のEA-18Gは当面唯一の電子戦機としてその役割に空軍も期待しているようでこのままいけば、追加調達もすんなりと議会を通りそうです。ただ空軍と海軍の見解の相違、さらにボーイングとロッキードの主張にも相当の差があるようで、こんなことで本当に近い将来のA2AD環境への攻撃作戦が実施できるのか不安になってきますね。それにしても日本はこの分野で大きく遅れをとっていると思いませんか。まさかF-35があれば大丈夫と思っているのでしょうか。

Stealth Vs. Electronic Attack

USNI News
By: Dave Majumdar
Published: April 21, 2014 6:19 AM
Updated: April 21, 2014 8:25 AM
An F-35C Lightning II aircraft on Aug. 14, 2013 at Eglin Air Force Base, Fla. US Navy Photo
F-35CライトニングII、エグリン米空軍基地(フロリダ州)にて、
2013年8月14日、写真 米空軍 

  1. 接近阻止領域(A2AD)へはステルスと電子攻撃能力を組み合わせて対抗すると海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将 Adm. Jonathan Greenertが米海軍協会の年次総会(4月16日、ワシントンDC)で述べている。

  1. 「ステルスの先を見通すと、ステルス性だけでなく敵の電子電磁発信を制圧する性能のある航空機が必要だ」

  1. グリナート大将が言わんとするのは電子攻撃だけでは米軍は将来の敵の防空網を突破できないということで、同じ意見が軍と業界筋から出ている。

  1. 同大将は「将来の米軍がすべてを制圧できるか疑わしいが、次世代ジャマーは将来の侵攻・撤収時に威力を発揮するだろう」と発言。

  1. グリナート大将の発言は大方でボーイングが先週行った海軍連盟での展示内容を反映している。その席上で同社副社長マイク・ギボンス Mike Gibbons (F/A-18E/FおよびEA-18G担当)がステルス機には電子攻撃機の支援が必要と発言している。


  1. 「侵入時には一つの周波数帯へ対抗するだけでは不十分です。他の周波数帯で探知される可能性があるからであり、ここがカギです」とギボンスは説明。「グラウラーは全周波数に対応できるセンサーとジャミング能力を備えた唯一の機種で、攻撃機支援が可能です」


  1. ボーイングのプレゼンテーションでは低探知性技術は「なま物」だとし、敵方が高性能低周波レーダーや信号処理で進展をとげれば有効性は減じると主張。
Boeing Presentation
Boeing Presentation

  1. 「ステルスとは『探知されるのを遅らせる』にすぎず、この遅れは短くなってきています。地対空ミサイル用レーダーが使用する周波数が低くなっており、米国のステルス機は効果が減ってきています」とボーイングでF/A-18E/F およびEA-18Gの性能改修を統括するマーク・ギャモン Mark Gammon, Boeing’s F/A-18E/F and EA-18G program manager for advanced capabilitiesは説明している。「VHFを使う早期警戒レーダーでステルス性が下がります。各レーダーはSAM管制用レーダーとネットワーク化されており、探知が容易になっています。ステルスだけでは対抗できないIRST(赤外線探知追跡)システムが登場しています。」


  1. このボーイングの見解を軍関係者にUSNI Newsから紹介したところ、完全に同意したのは一部で、反発も一部、ほとんどは微妙な反応だった。


  1. 「ボーイングはF-35を全面攻撃しているのだろう。グラウラーの利点は強調しつつ、その内容は誤っていないが、長所の裏にある代償には目をつむっている。グラウラーと低視認性機体はお互いに補完するのは事実だ」と米空軍関係者は語る。

  1. ロッキード・マーティン社はF-35は強固に防衛された空域にいかなる支援なしに侵入できると主張している。

  1. 「政府契約により同機は脅威度が高い接近拒否環境に侵入が可能になることになっており、自律的にミッションを実施し帰還することが可能」とロッキードでF-35の国内向け事業開発担当役員エリック・ヴァン・カンプ Eric Van Campは説明する。「飛行試験結果からも同機はこの契約の要求水準に合致してることがはっきりとわかる」

An EA-18G Growler from the "Shadowhawks" of Electronic Attack Squadron (VAQ) 141 prepares to make an arrested landing on the flight deck of the U.S. Navy's forward-deployed aircraft carrier USS George Washington (CVN-73) in 2013 US Navy Photo
電子戦飛行隊(VAQ)141「シャドウホークス」のEA-18Gグラウラーが米海軍の前方配備航空母艦USSジョージ・ワシントン(CVN-73)で拘束着陸を行おうとしている。写真米海軍

  1. 戦術機サイズのステルス航空機に高周波帯(C,XやKuバンドなど)に対抗する必要があるのはその通りだが、現実には別の手段で探知・追跡を困難にできる。

  1. 航空業界、空軍、海軍関係者は同様にレーダー周波数波形が一定の想定範囲を超え共鳴効果resonant effectを発生させれば低視認性機体の「段階的変更」が必要になると認めている。共鳴が発生するのは航空機の尾翼などが特定の周波数の波長の8倍を超える場合である。

  1. 小型ステルス機にはレーダー吸収剤を2フィート以上塗布できる余裕がないので表面の各部分はそれぞれ特定の周波数に特化した対応をすることでしのいでいるのが現状だ。

  1. 低周波数帯(SやLバンド)で運用するレーダーなら民間航空管制用でもステルス機をある程度探知追尾することが可能になる。

  1. ただし大型ステルス機の例としてノースロップ・グラマンB-2スピリットでは共鳴効果を生む特徴が少なく低周波レーダーにもF-35より有効に対処できる。


  1. だが低周波レーダーではペンタゴンが「軍用仕様」“weapons quality” と呼ぶミサイルを目標まで誘導する能力がないし、「航空管制レーダーで低視認性機が発見できたとしても、火器管制システムがなければ撃墜は不可能」と空軍関係者は言う。

  1. 一方でロシア、中国他が高性能UHF、VHF帯を利用した早期警戒レーダーを開発中で、これまでより長い波長を使い他のセンサーを追尾させ迎撃戦闘機にある程度の敵位置情報を与えることが可能となる。

  1. とはいうもののVHFやUHF帯レーダーにも問題があり、米海軍関係者がUSNI Newsに語ってくれたのは波長が長くなるとレーダー解像セルも大きくなることだ。つまり兵器を誘導させるだけの正確な追尾ができない。

  1. ただ空軍、海軍、海兵隊関係者が異口同音に言うのはF-35やF-22のような航空機は低視認性だけでは生存はできないことだ。

  1. ある空軍関係者の説明ではステルスと電子攻撃は常にシナジー関係にあり、信号体雑音比signal to noise ratioで探知されるからだという。低視認性で信号を減らせるが、電子攻撃で雑音が増える。「A2/AD対抗策ではこの両方で解決を迫られる」というのだ。

  1. 空軍と海兵隊関係者からはボーイングの指摘した、F-35にはXバンドによる電子攻撃しかなく、その有効範囲が前方にある、との指摘に異議を唱えている。「後方有効範囲は現状のどの機体でも装備されているかいないか明かせない。ただしパッケージで実現している。その場合はEA-18が必要だ」と空軍関係者は指摘する。

  1. しかしながら空軍・海兵隊関係者はグラウラーは今後出現する脅威対象に有効ではなくなると言い、F-35の電子戦能力向上案があるという。

  1. 「グラウラー自体は信頼できる機体だが、高度のA2/AD地帯では対応が限定される」と空軍関係者は言う。「現時点で最新鋭としても今後予想される環境ではジャミング機体として適当なのかわからない」

  1. にもかかわらず、複数の空軍関係者がグラウラー追加調達の拡大案を支持する。「グラウラーは有益な機体で機数をふやすべきだし、高性能のIADS(統合防空システム)に対する攻撃パッケージの中で重要な部分となる。ボーイングのいうような単独での有効性はない」

  1. だが、そういう関係者もグラウラーは共同編成部隊で相互運用性が完璧でないと指摘している。「グラウラーで未解決なのは攻撃用機材との間の問題だ。」という。

  1. 一方で「ボーイングにとっては共用作戦運用が限定される機体を広めることで利点が生まれる。SEAD/DEAD(敵防空体制制圧・敵防空体制破壊)ミッション用の他社製機体とうまく連携できない機体だが、戦闘実施にはあまり意味がない」

  1. 業界筋もグラウラーには共同作戦実施で問題があることを認める。とくに空軍機材との共同作戦でだが、グラウラーだけの問題ではない。たとえばロッキードF-22が編隊中データリンク (IFDL)を使えるのは他のF-22との間だけだし、F-35は共用打撃戦闘機同士でしか使えない多機能高性能データリンク(MADL)がある。「これはエアシーバトル室が解決を迫られている大きな問題の一部にすぎない」と業界筋は解説する。

  1. ボーイングのギャモンはEA-18Gの相互作戦運用能力を弁護している。「グラウラーにはリンク16を装備しており、F/A-18スーパーホーネット、F-35, E-2D、F-15、F-16他爆撃機各種と互換性を確保しています。グラウラーは脅威から距離を置くスタンドオフが可能なのが利点で、そのままでEM(電子電磁)マップを作成し、リンク16経由で兵器照準を支援します。さらにTTNT(戦術目標捕捉ネットワーク技術)がここに加わります。」

  1. 業界筋からはF-35へリンク16搭載案があるが、同機では脅威度が高い空域では全方向性を持つ同リンクは使用できない、なぜなら同機の位置をさらしてしまうからだと説明があった。「F-35のように自機のリンク16で発信を避けたい機材はグラウラーからのリンク16発信を受信して、その指示で兵装を使うことになる」という。

  1. 空軍関係者もEA-18Gの追加調達は必要だと認める。「そもそも初回調達機数が少なかった」と空軍関係者は語る。「同機には同じ重量の黄金の価値があり、ES(電子電磁スペクトラム)による状況把握、EA(電子攻撃)部隊両面で多大な貢献が可能。しかしLIMFAC(限定条件)は常に空母運用による飛行サイクル回数がついてまわることだ」
Boeing Presentation.
Boeing Presentation.

  1. 海軍関係者からは空母運用によりサイクルが限定されるのはグラウラーにAGM-88E高性能対放射線誘導ミサイル(AARGM)あるいは高速対放射線ミサイル(HARM)のようなミサイル発射任務を想定する場合だけだという。同関係者によれば空中給油の実施で海軍の戦闘機が6時間以上耐空するのは普通だという。「もしグラウラーがHARMを全弾発射して再装填するため着艦するとサイクル回数を考慮しなくてはいけないが、現実的にはスタンドオフでジャミングにあたるはずで、HARMを発射するのは防御の想定だけです。」 つまり、着陸し、燃料補給し、乗員を交代させ、点検修理を一定の間隔で実施するのはどの機体にも必要なことではないか、というのである。

  1. ボーイングも自社グラウラーを対空あるいは攻撃任務に投入する可能性が説明している。ギャモンもEA-18Gをそのような任務に使用するのは同社のこれまでの説明とは異なるが、展示では上掲の図を使い、「対空任務ではグラウラーはESM(電子支援装備)を使い、味方戦闘機の敵捕捉を支援し、敵の識別を行うのがもっと重要だ。グラウラーはこれをスタンドオフ位置から実施しても、十分なSA(状況把握)とID(識別)が可能だ」

  1. ギャモンからはEA-18Gを対地攻撃に投入した場合の説明もあった。「グラウラーは敵の戦闘隊形をEMで把握し、敵の発信源を識別し、司令塔の役割をEMで行い、どれをジャム、攻撃あるいは回避する対象とするか決定する。グラウラーはAARGMなどの兵器を発信源に発射するほか、味方攻撃機に交戦情報を提供する」

  1. 海軍関係者はグラウラーを戦闘指揮統制機材として使用する想定だが、同機を直接攻撃任務につかせるとか制空任務にに投入する考えはないという。

  1. 業界筋もグラウラーを制空戦闘機あるいは攻撃戦闘機として投入する可能性はないが、投入されれば重要な役目は果たせるとみる。「グラウラーでJDAM(共用直接攻撃爆弾)を投下することはないが、攻撃任務の他の戦闘機に目標まで誘導させることで支援は可能だろう」

  1. グラウラー追加調達には幅広い支援があるが、それでもさらに進歩したA2/ADの脅威に単独で解決を提供することにはならない。
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  1. 「ステルスには欠点もあるが、第四世代機でも新型ジャミングポッドを搭載すれば将来のIADSにも実用的な解決策になる。米空軍はポッドを大量導入するのはまちがいない」と米空軍関係者は言う。■


★★★カンザス州でも目撃された謎の機体の正体を探る



Analysis: Mystery Plane Seen Over Kansas Likely U.S. Military Aircraft

USNI News By: Dave Majumdar
Published: April 23, 2014 10:48 AM
Updated: April 23, 2014 11:02 AM
Photo taken by amature photographer Jeff Templin in Kansas on April, 16 2014
ジェフ・テンプリンがカンザス州上空で2014年4月16日に撮影した写真

  1. 謎の三角翼機が数回にわたり米大陸部の上空で目撃されており、直近はカンザス州ウィチタ上空で見つかっているが、その正体は米軍の航空機である可能性が高いと軍事情報から判明した。

  1. 極秘米軍機であるとされるが、実際にどんな機種なのかを判別するには情報が少なすぎる。

  1. アマチュア写真家ジェフ・テンプリン Jeff Templin は頭上を飛行する航空機の画像を400mmレンズでとらえている。テンプリンによると同機は数回Sターンをし飛行機雲を残したという。

  1. 3月10日にはテキサス州アマリロで2名のカメラマンが同型の航空機が3機飛行しているところを撮影に成功している。

  1. テキサスの写真では詳細が見えなかったが、テンプリンの写真では謎の機体の三角形形状がはっきり見える。その形は米海軍のジェネラルダイナミクス/マクダネルダグラスのA-12アヴェンジャーII艦載攻撃機によく似ているが同機は1991年1月に開発取り消しになっている。


  1. 「写真の解像度から見て軍用機なのか不明ですし、ましてや米空軍所属機だとはわかりません」と米空軍スポークすウーマンジェニファー・キャシディーがUSNI News取材に答えている。FAAは単刀直入に「知らない」と答えている。海軍関係者も正体を推察する情報を出していない。一方、中央情報局は一切反応していない。

  1. その中で空軍関係者のひとりが同機が空軍所属の可能性があると認めたが、それ以上は語っていない。

  1. 飛行機雲を残していることから、飛行高度は 26,000 ft 以上のはずである。NASAによれば26,000 ft以上で飛行機雲が形成される。また同機が複数のエンジンを搭載していることも分かる。

  1. この身元不明のジェット機が有人機であることは確実なのはFAAが厳しい制限を無人機に課しており、衝突回避機能がない無人機はFAAが国内の飛行を認めていない。

  1. テキサス上空を編隊飛行した機体と今回のカンザス州で目撃された機体が同じなら、有人戦闘航空機の可能性が急浮上する。軍用機以外の航空機が編隊飛行することはめったになく、また軍用機でも戦闘用途以外の機体でも少ない。

  1. もう一つの可能性は、テキサス州上空を編隊飛行した三機が無人機を指揮統制する有人機版だったとするもの。無人機を有人型に改造したものが編隊の先頭を飛ぶことはありうる。.

  1. 業界筋もテキサス、カンザス上空で目撃された機体があえて関心を集めるために飛行した可能性を指摘するが、国防総省や情報機関が極秘機を昼間に飛行させ写真撮影を許すとは極めて考えにくい。

  1. もし謎の三角翼機が極秘裏に開発された機体なら、数年間にわたり開発テストが実施されている可能性は高いし、今年になって初めて撮影されるよりずっと前から開始されていただろう。そうなれば同機が米軍の装備体系にすでに組み込まれている可能性は高く、これで同機が数回にわたり目撃されている理由の説明がつく。


  1. そうであれば、ロッキード・マーティンF-117ナイトホークの事例が参考になる。1980年代末に空軍は同機を初めて昼間飛行することを許し同機を正式に装備体系に組み入れた。空軍は同機の秘密がばれるのは時間の問題だとわかっていたのだ。そこで空軍は声明文を準備していた。もっと鮮明な写真が撮影されれば、情報開示が進む可能性はある。

  1. もう一つ最近では空軍がロッキード・マーティンRQ-170 センティネル無人偵察機の存在を公表した例がある。これは同機がアフガニスタンで繰り返し撮影されてしまったためだ。■


コメント 飛行機雲を見る限りでは通常型のエンジンを搭載しているようですね。
有人機が無人機の編隊長となる新型の運用コンセプトの実証でしょうか。もちろんあえて事実をカバーするためのリークもあるのですべてうのみにはできないのですが、ブラックの世界では確実に新型機の開発がすすんでいるようですね。

2014年4月23日水曜日

韓国に墜落した無人機は中国製だったのか 気になる写真が見つかりました


韓国で相次ぎ発見された無人機に非常に似た製品が中国にあることが判明しました。以前に発見された機体にはハングルが書いてあったそうなので、仮に中国製の機体だったとしてもなんらかの手を加えていたことになります。また中国製の機体だったら我が国のものではないと主張する北朝鮮のロジックが一部にせよ正しいことになりますかね。


More Photos of Chinese UAS Found in South Korea

UAS Vision, 23 April 2014
Sky-09H Launch

韓国で墜落しているのが見つかった無人機と外観が似た中国製Sky-09P無人機の写真数点が入手できた。今回の新しい写真では同機の底部の詳細およびパチンコ式発射システムがわかる。


写真は北京中交通信科技有限公司China Trancomm Technologiesのウェブサイトで公開されているもので、同社はSky-09P他のUASを販売しているようだ。

Sky-09Pの底部にはゴムパッドらしきものが数か所に見られ、機体は主翼の起点近くの数点で発射機に乗せられている。韓国国内でみつかったUASの底部にもよく似たパッドが見られ、機体側面には追加パッドが左右に見られるが、発射機に搭載する場所に近い点についている。
Korea 2

中国からの写真では左右の翼の端近くに暗くなっている個所がいくつか見られ、制御ケーブルのように見える。韓国で撮影された写真では制御ケーブルに似たものが確認できる。その部分は黒で塗装されていないが、主翼の一部に長方形部分が確認できる。

その他の類似点は以下の通り:
Korea 1

北京中交通信科技有限公司のウェブサイトではカメラ搭載システムが複数利用できることを示している。その中には小型ビデオカメラ用、デジタル一眼レフ用、他4台のデジタル一眼で3D撮影が可能とうたっている。韓国で発見された機体にはデジタル一眼レフ一台が搭載されていたが、韓国国防省の発表した画像ではどこまで中国製の機体と類似しているか不明確だ。

そこで今回の画像により韓国で発見されたUASはSky-09Pあるいは北朝鮮が同機をもとに作成した類似機であるとの仮説が出てくる。

Sky-09P本体と操縦装置を梱包した場合の写真は以下のとおりだ。無人機が撮影したサンプル写真もあるが、画像の解像度は搭載するカメラに依存するものであり、機体は無関係。
Sky-09P Pack


追記 北京中交通信科技有限公司は「当社は無関係」とし、事件の微妙な点もあり、発見された機体の製造元とされることを拒んでいる。「当社はこれまで該当する無人機を公に販売した実績はありません」

2014年4月21日月曜日

非常に理解しにくいF-35の機体単価 削減の矛先はP&Wに向けられています


F-35 Chief Puts Heat On Pratt's F-35 Engine Cost

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com April 17, 2014


F-35調達コストで米国分担分が昨年だけで45億ドル上昇したのは「コスト曲線」あるいは機体製造費用が大幅に下がるはずと過剰なまでに楽観的な見方があったためだとF-35開発を統括する米空軍クリストファー・ボグデン中将 Lt. Gen. Christopher Bogdan は見ている。.
  1. 実績が予測を下回ったのには二つの理由がある。主契約企業やその他協力企業の費用と、JSF購入を先送りする傾向が各国にあるためだ。費用低下では従来はロッキード・マーティンに圧力がかかってきたが、ボグデン中将の照準は今やエンジンメーカーのプラット&ホイットニーに向けられている。
  2. 「エンジンでも価格カーブを想定していた。プラットは約束を満たしていない。全然だめだ」と同中将は取材陣に話している。.
  3. 米議会の求めで作成された2013年度報告書では米国の負担額は開発、調達、55年間供用含み総額3,986億ドル(約40.7兆円)で、前年度は3,912億ドルだった。上昇分のうち45億ドルが調達関連だ。
  4. ボグデン中将は全体額の中で上昇分は無視できる規模だとしながら、契約企業の価格設定には不満の様子だ。
  5. これに対しプラット&ホイットニーは最初のロットとの比較で価格を4割下げていると主張するが、F-35では単一エンジン供給元の立場から実際の数字を一切公表していない。
  6. ボグデン中将の不満はエンジン単独供給元に対して交渉力の切り札がないことだ。「エンジンの選択肢がないままではコストをさげさせる有効な手段がみつからない」
  7. F-35の平均機体単価は開発、調達、維持の各費用と未公表のプラットのF135エンジン含め130百万ドル(約133億円)で米国は2,443機を調達する予定だ。飛行可能な状態での機体単価(総費用を2,443で割る)は104.8百万ドル(約106.9億円)となる。二つの数字は米国の想定導入機数を前提としている。
  8. 価格をさらに下げる要因として韓国、シンガポール、イスラエルの購入が実現することがある。ただし、カナダ、トルコ、オランダが子導入を先送りしているので、短期的に価格が上がる要因になっている。ボグデン中将は結局価格を下げる要因は差し引きゼロになるとみている。
  9. もっと多くの調達引き合いがあることを期待しながら、ボグデン中将はロッキードとプラットに部品等をまとめ買いしてスケールメリットを生かすよう求めている。「強制予算削減も二年目に入り、F-35も無傷のままではいられない。」(ボグデン中将) この点でプラットがロッキードよりも先行しているのはF135の部品等で商用エンジン含む他製品と共通性が高いためだ。
  10. 78億ドルの上昇分で別の要員は為替レート変動とインフレーションによる補正だ。約3割の機体部品は米国外から調達しており、多くは英国のBAEシステムズとイタリアのアレニアだが、ドルやウ傾向がポンドとユーロ相手に続いていることがその理由だ。
  11. もともと量産開始は2018年とみていたが、関係者もこれが2019年にずれ込むと認めている。ボグデン中将は量産が開始されれば飛行可能な状態の機体単価は85百万ドル(約87億円)以下になると今でも期待している。■

2014年4月20日日曜日

UCLASS提案依頼書がまとまる



Navy Issues Restricted UCLASS Draft Request for Proposal

USNI News By: Dave Majumdar
Published: April 17, 2014 5:35 PM
Updated: April 17, 2014 6:50 PMNorthrop Grumman's X-47B flies over USS George H.W. Bush (CVN-77) on May 14, 2013. US Naval Institute Photo
Northrop Grumman’s X-47B flies over USS George H.W. Bush (CVN-77) on May 14, 2013. US Naval Institute Photo

米海軍がUCLASS無人艦載監視偵察攻撃機の提案依頼書原案を17日午後発表した。
  1. 提案依頼書原案は同機開発の予備設計審査に参画中の四社に送付されている、と海軍航空システムズ本部 (NAVAIR) が発表し、原案の目標は各社にUCLASSに必要な各要素を統合することを求めることと説明。送付先はジェネラルアトミックス航空システムズ、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの各社。
  2. なお、提案依頼書原案は当初2013年中に発出予定だったが要求性能の方向性の違いが表面化し遅れていたもの。
  3. 最終版が今年中に出るものとみられる。
  4. しかしながら上位要求内容は昨年4月から変更ないとマット・ウィンター少将(NAVAIR無人機計画主査)Rear Adm. Mat Winter, NAVAIR’s program executive officer for unmanned aviation and strike weapons は明らかにしている。
  5. ウィンター少将によればUCLASSのめざす目標の中心は制空権の確保された空域内で「戦術上の意味がある範囲内で」24時間、毎日ISR(情報収集・監視・偵察)飛行を実施することだ。同時に軽攻撃能力ももたせる。
  6. ウィンター少将からはUCLASSはオープンアーキテクチャ設計として改修が簡単にできるようにするとの発言もあった。
  7. ただし、UCLASSが2020年の初期作戦能力獲得目標を達成できるためには開発・試験で相当強引な日程消化が前提となる。■




2014年4月18日金曜日

F-35の英国遠征案が明らかになる


Lockheed Preparing For F-35 U.K. Deployment

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com April 16, 2014
Credit: Lockheed Martin


ロッキードマーティンは米国防総省、英国防省と共同でF-35の英国でのデビュー案を最終調整中。

  1. 原案はチャック・ヘイゲル国防長官が4月16日に承認ずみで、王立国際航空タトゥー(RIAT)が今年7月11日から13日にフェアフォード英空軍基地で開催されるのにあわせ、F-35を飛行展示とと地上展示する。
  2. またファーンボロ航空ショーにも出展するが飛行展示のみとし、会期中はフェアフォードに機体を駐機し移動させる。
  3. 派遣するのF-35Bは三機で二機は海兵隊仕様で一機は英国向け機体とし英パイロットが操縦する。
  4. 派遣が決まると、運用基地から三週間にわたり遠隔地に送られるため苛酷な条件となるほか、空中給油により長時間飛行して移動することになる。給油機が海兵隊のKC-130Jか、空軍のKC-135ないしKC-10になるかは現時点では不明。
  5. もうひとつはっきりしないのは今回派遣対象の機体のうち一機が7月4日予定の英国の新型空母HMSクイーン・エリザベスの命名進水式(スコットランド・ロサイス)で役割を与えられるかどうかだ。
  6. 英国は現在三機のF-35を保有しており、四機目を発注中。期待されている追加14機の調達案はまだ発表されていない。■

2014年4月16日水曜日

新型軽量攻撃機スコーピオンの国際デビューは7月か


重厚長大な支援攻撃機の代替策としてテクストロンが提案しているスコーピオンが国際デビューする可能性が出てきましたが、肝心の米空軍は同機をシカトしているようです。

関連記事 http://aviation-space-business.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html?view=timeslide

Scorpion Eyed For RIAT, Farnborough Debut

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviatonweek.com April 14, 2014
Credit: Textron

テクストロンはスコーピオン軽攻撃偵察機の試作型を7月の英国国際航空タトゥー(RIAT)およびファーンボロ航空ショーに送り、国際お披露目を図る予定だ。
  1. 「ファーンボロは国際展示会としてスコーピオンにうってつけと考えています」とテクストロン広報は説明するが、出展は決定事項ではないという。
  2. スコーピオンは完全失設計の軽量攻撃偵察任務機で武装ターボプロップ練習機とジェット高性能戦闘機の隙間を埋める機体としてテクストロンが企画したもの。同社の目標は運航コストを一時間当たり3,000ドルとすることで中小国の空軍に訴求力を持たせること。
  3. テクストロンとエアランド(スコーピオン専業で設立した小企業)が実証機組立を介したのは2012年1月で、初飛行を2013年12月に実施している。その後、テスト飛行は60時間を超えている。同機の存在は昨年9月にAviation Weekが初めて報道している。.
  4. 同社は米空軍にも同機導入を期待しているが、いまのところ海外販売がせいぜいである。同機のフェリー飛行距離は2,400 nmなので北回り空路をとり、英国に到達するまでに数回給油のため着陸を余儀なくされるだろう。■



2014年4月15日火曜日

デンマークの次期戦闘機選定始まる

Denmark Kicks Off Fighter Contest

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com April 14, 2014


デンマークの次期主力戦闘機選考で4社に情報開示が要請されている。
  1. ボーイングにF/A-18F スーパーホーネット、ユーロファイターにタイフーン、ロッキード・マーティンにはF-35A、サーブにグリペンEの詳細情報を請求中で、現行のF-16ファイティングファルコンの後継機種選定に入る。ダッソーのラファールは情報請求の対象から外れた。
  2. 各社の回答は7月の予定で選定は2015年中ごろに性能および耐用期間中の改修可能性、運用・維持費用、およびデンマーク国内産業へ生産面で業務発注の可能性があるかを考慮して絞り込む。
  3. 次期機種は2020年から2024年にかけ就役し、その時点でデンマーク空軍のF-16 は機齢45年になっている。
  4. デンマークはレベル3の共用打撃戦闘機開発の署名国であるが署名国だからとって同機の購入は義務ではなく、デンマーク産業はF-35関連で国内に回ってきた業務量に失望していると何度も伝えられている。
  5. 一方でボーイングはスーパーホーネットをデンマーク王立空軍のエアショー(6月22日カルップKarup)に派遣する予定だ。

コメント ズバリ大胆予想をすれば、デンマークが選定するのはユーロファイターだと思います。スウェーデンのサーブは選びたくないのでは。F-35については経済が理由で選定外、F/A-18は将来性を考えると食指が動かないのでは。そうなるとユーロファイターですが、日本に売り込む際には産業協力をもちかけていましたね。どうなりますやら。


黒海の米海軍艦艇にロシア空軍がいやがらせ

クリミア情勢に加えウクライナ東部がきな臭いですが、黒海で任務遂行上の米海軍艦艇にロシア空軍がちょっかいをだしています。これは単に現場パイロットの勝手な行動なのか、計算されたロシアのメッセージなのか、まだ読み取れませんね。

Russian Fighter Buzzes U.S. Destroyer in Black Sea

USNI NEWS By: Sam LaGrone
Published: April 14, 2014 4:12 PM
Updated: April 14, 2014 4:12 PMArleigh Burke-class guided-missile destroyer USS Donald Cook (DDG-75) transits the Dardanelles en route to the Black Sea. US Navy Photo
Arleigh Burke-class guided-missile destroyer USS Donald Cook (DDG-75) transits the Dardanelles en route to the Black Sea. US Navy Photo

黒海に入っている米海軍アーレイ・バーク級駆逐艦にロシア戦闘機が90分にわたり低空で上空通過飛行を繰り返していたことがUSNI Newsに国防関係者から伝えられた。

発生したのは4月12日土曜日でスホイSU-24フェンサー1機がUSSドナルド・クック(DDG-75)から1,000ヤード地点を高度500フィートで飛行したという。

同機は駆逐艦上空を12回通過したが、同艦は同機の接近前に数回無線交信を試みたが反応がなかった。空域にいた2機目のフェンサーは無謀な飛行はしていない。

「挑発的かつプロの資質を疑いたくなるロシア側の行為は国際慣行の上からもこれまでの軍事上の合意事項にも反するもの」とペンタゴンが発表している。「ウクライナにおけるロシア軍の行為は国際通念に違反しており、数か月継続しており、このような挑発行為は当方が求めているウクライナ情勢の鎮静化になんら資するものではない」

A Russian Sukhoi SU-24 Fencer.

A Russian Sukhoi SU-24 Fencer.

クックが黒海に入ったのは先週木曜日でクリミアへのロシア侵攻に対し、合衆国の同盟国向けにプレゼンスを示すのが任務だ。

今回のフェンサーの上空通過飛行はロシア外相セルゲイ・ラヴロフRussian Foreign Minister Sergei Lavrovが合衆国が1936年の通称海峡通過に関するモントルー協定に違反したとの発言に続くもの。モントルー協定では黒海に領土を持たない国家の軍艦は21日以内に退出することを求めている。

クックには弾道ミサイル防衛用のイージス防空システムを搭載している。同艦は弾道ミサイルとともに航空機も撃退することが可能。

2014年4月14日月曜日

ジェネラルアトミックスのUCLASS提案


米海軍のUCLASS構想に名乗りを上げる企業にはプレデターシリーズで有名になったジェネラルアトミックスもありますが、肝心のUCLASSの想定運用環境次第ではステルス性等の仕様が大きく変わりますね。やはり空中給油能力の付与も想定されているようですが、どうなりますやら。UCLASSでは四社が競合する形になりそうですね。

General Atomics Shows Off Company’s UCLASS Option

USNI NEWS  By: Dave Majumdar
Published: April 10, 2014 12:12 PM
Updated: April 10, 2014 2:46 PMAn artist's concept of General Atomic's Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo
An artist’s concept of General Atomic’s Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo

ジェネラルアトミックスは同社のシーアヴェンジャー Sea Avenger 無人機を原型にした案を米海軍の無人艦載監視攻撃機 Unmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike (UCLASS)として提案するとみられる。

4年前に海軍からUCLASS構想が発表となった際には同社のプレデターCを改修したシーアヴェンジャー案を売り込もうとしていた。その後、高性能攻撃機の機能を重視するか、情報収集監視偵察(ISR)機能を重視するかで意見がまとまっていない。

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ある程度のISR任務を制空権が確保された空中で実施する能力を重視する向きが主流となってきた観があるが、海軍関係者以外にはUCLASSの仕様が何を求めているのか見えなくなってきている。海軍は情報管理をしているためだ。

もし海軍の要求水準が自由に飛行できる環境でのISRを重視し、高度のステルス性を軽視するのであれば、ジェネラルアトミックスのシーアヴァンジャー案に十分勝算が出てくる。An artist's concept of General Atomic's Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo
An artist’s concept of General Atomic’s Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo

かつてジェネラルアトミックスはシーアヴェンジャーはステルス機ではないものの、他の機体よりも被探知特性を減らしているのでステルス性はあると説明していた。

ジェネラルアトミックスがシーアヴェンジャーのステルス性を強化するのであれば、C、X、Kuの各バンドの高周波数で探知されにくくする必要がある。

VHFやUHFと言った低周波数へのテルス性確保には全翼機形状が選択肢となる。同社はシーアヴェンジャーは非通常型やハイブリッド型の戦闘シナリオに適化可能と説明していた。

また同社の機体構想では外部ハードポイントが4か所および小型兵装庫が追加されている。シーアヴェンジャーは空中給油機にも転用可能だが、機体寸法が拡大されていることからエンジンを強化する考えであることがわかる。

ロッキード・マーティンノースロップが本格的ステルス機を全翼機設計で提示しているのに対し、ジェネラルアトミックスとボーイングは中程度の脅威環境で十分作戦が可能な主翼・胴体・尾翼構成の機体を売り込もうとしているのは興味深い点だ。■



2014年4月12日土曜日

オーストラリアがF-35追加調達へ


Australia Likely To Order More F-35s

By Bradley Perrett
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com April 07, 2014
Credit: Lockheed Martin

オーストラリアがロッキード・マーティンF-35調達を58機追加する見込みがでてきた。実現すれば同国は合計72機のF-35を整備し、EA-18Gグラウラー12機と合わせ空軍力の近代化を図る。
  1. このF-35発注は80億ドル規模で空軍の要求を政府は受け入れる構え。これによりロッキードはF-35の大口海外注文を維持する格好となる。オーストラリアは当初100機の導入を検討していた。
  2. オーストラリア空軍(RAAF)は100機のF-35でF-111とF/A-18A/Bホーネットを退役させる予定だったが、F-35開発の遅延で変更を余儀なくさせられていた上、F-111が2010年に想定より早く舵一線を退いたことで、グラウラー購入に動いたもの。またスーパーホーネット24機がF-111の後任となり、課題は2020年に機体寿命が切れる旧式ホーネット71機の後継機種選択に移っていた。
  3. もともとはF-35導入一本だったが、スーパーホーネット導入で代替策が見えてきた。オーストラリアにはスーパーホーネットを追加購入する選択肢とF-35 納入を待つか、取り消すことでスーパーホーネットのみによる部隊編成の可能性があった。
  4. そこでオーストラリア政府はまず2機のF-35を発注し、追加12機の導入意向を示していたが、この12機は契約に正式に含まれていなかった。政府は今月半ばにも追加購入を承認する見込みだが、意思決定が遅れる可能性もある。
  5. 決定に当たり、政府は同機の性能、国内産業の関与、米国との同盟関係を考慮し、追加購入に動くこととした。また、F-35開発が安定化してきたことも考慮し、今後の機材供給が順調に実現すると見込み、初期作戦能力獲得を2020年とみていたが、当面戦闘機部隊の規模縮小は避けられない。
  6. ただしグラウラー12機が2018年に実戦配備されると、実質的な戦力増加が実現する。
  7. F-35追加調達が58機になるとRAAFの第一線作戦機はライトニング72機、スーパーホーネット24機、グラウラー12機体制となり、合計108機というのは1980年代よりも1割多い規模だが、オーストラリアが冷戦終結後も安全保障で楽観を許されず、事実兵力を削減していないことを想起する必要がある。空中早期警戒機や水平線超えレーダーを導入しているし、この背景には人口成長率は23年間にわたる経済拡大基調があるが、国防予算のGDP比率は歴史的な低率に収まっている。
  8. オーストラリア企業でF-35に関係しているものとして垂直安定板を製造するマランドMarandがある。同社は3月末に初の出荷をしたばかりだ。BAEシステムズオーストラリア BAE Systems Australia も機体後部の製造に関与している。複合材メーカーのクイックステップ Quickstepは炭素繊維複合部材の増産体制に入っている。
  9. ただし、オーストラリア空軍はF-35を100機程度調達の目標を断念していない。2030年になればスーパーホーネット各機も20年目に入り、退役を検討する時期に入る。スーパーホーネットのうち12機はEA-18G仕様に変更され、さらに供用されるが、RAAFはグラウラー部隊が小規模編成であることから米海軍の電子戦支援に頼る意向で、F-35を主力機として運用する一方でEA-18Gの運航費用を最小限に抑えたいとしている。■