2018年1月28日日曜日

★米国民が対北朝鮮戦の本質を正しく理解できない5つの理由

あまりにも近代戦の本質、影響を理解していないとの指摘が以下の記事の趣旨です。南北朝鮮の会談は本質的に問題解決にならないとの見方もわかりますね。はっきり言って会談が平和につながると考えているのは韓国の現政権だけではないでしょうか。冬季五輪が悲惨な政治ショーになりそうで怖いですね。米本土でさえ戦場になるので、日本はもちろん危険に直面しているのです。戦後最大の危機と言う日本首脳陣の認識はまちがっていません。

WHY AMERICANS AREN’T REALLY WORRIED ABOUT WAR WITH NORTH KOREA

米国国民が北朝鮮との開戦をさほど心配しないのはなぜか



JANUARY 16, 2018


朝鮮と開戦が迫りつつある観が強まる中、ミサイル攻撃警告の誤報がでた。南北朝鮮対話が今後も続く兆しがあるものの、北朝鮮との戦争の可能性は2018年に入りはるかに高くなっている。ジム・マティス国防長官は朝鮮半島に「嵐が近づいている」と述べ外交的解決にも期待するとしながら「楽観視はほとんど不可能」とまで言い切った。前統合参謀本部議長マイケル・マレン大将は米国が「北朝鮮との核戦争にこれまで以上に近づいている」と警告した。また最近の報道から米国は限定攻撃を検討し、北朝鮮の核施設のみ攻撃対象とし北が核攻撃含む対抗措置に踏み切らないことに賭けるとある。


 ただし米国民は北朝鮮との交戦に及び腰で9月の世論調査では平和的手段が失敗した場合の軍事行動に58パ―セントが賛成していた。さらに直後の調査では63パーセントが他国が参加する場合に限り軍事行動に賛成していた。10月調査では62パーセントが先制攻撃に反対し、64パーセントが軍事行動をせずに北朝鮮の軍事開発を封じ込めるべきと回答。さらに12月には北朝鮮を核開発中止に追い込む軍事行動に賛成は39パーセントで三か月前の49パーセントより減った。


 米国内では政策決定層のみならず一般国民も巻き込んで北朝鮮と戦争すべきかで議論があってしかるべきだが、国民は支援に熱が入らない状態のままだ。


 ではどうしてなのか。一部は間違いなく政治的だ。共和党が行政府と立法府を支配する中で議会が大統領の軍事行動を制約するべく公聴会を開くとは考えにくい。だが一般国民で議論になっていないことの意味は深い。一般国民に開戦に疑問の声はない。なぜなら米軍の実力や近代戦の本質を正しく理解していないからだ。こうした誤解から北朝鮮との開戦の可能性が高まっていると言える。戦争になった場合の代償、困難さ、予測不可能な問題を正しく国民が理解しているとは言えない。


誤解その1 米軍は世界最強なので北朝鮮戦は短期で決着するはず


 前半は正しい。だが後半は誤った結論にとびついている。米国民は米軍戦力は圧倒的に強力なので大規模戦闘でも短期間で勝利を収めることが可能と信じ込んでおり、他の追随を許さない技術優位性を使い死傷者を抑えながら迅速に能力の劣る敵勢力を壊滅させられると見る。ローザ・ブルックスRosa Brooksはこの大衆の願望は米軍の現実に目をつぶっていると述べる。例えば別の調査では米国民は米軍規模を実際より三倍大きいと思い込んでいるのがわかった。上級政策決定層でさえブルックスは「軍事力を誇張してみている」ため「軍にできないことはない」と考えているという。


 実態は深刻だ。米軍は世界各地に展開し即応態勢は低下している。これは軍上層部が事あるごとに訴えている内容だ。北朝鮮戦の規模は核兵器投入に至らなくても近年のあらゆる事変を上回るのは確実だ。北朝鮮軍を通常兵器だけで敗退させるには米軍70万名が必要となろう。イラク派遣軍の四倍以上の規模で、アフガニスタンの7倍になる。この数字には非核化用要員、難民や死傷者対応要員、戦後復興要員は含まない。米軍が北朝鮮を敗退させることに疑いを持つ者は皆無に近いが戦闘は一般の米国民が考えるより長期化し、高い代償を必要とし複雑な様相を示すだろう。


誤解その2 北朝鮮との通常戦で米軍の戦死者は皆無に近い


 米国民の大部分には戦争の危険を直接感じることがほとんどなく、北朝鮮軍が米国領土に突然上陸するとはだれも思っていない。だが韓国国内に暮らす米国人は駐留軍の家族含め100千人から500千人もおり、ほとんどはソウル周辺に暮らす。ソウル首都圏は24百万人を抱え北朝鮮火砲の射程内にある。ペンタゴン推定では通常戦初日だけで最大20千人が死亡する。さらに開戦90日までに数十万人が命を奪われる。


 米軍の死傷者は相当の規模になりそうだ。イラク、アフガニスタンでは2001年以来、合計7千名が死亡し52千名が負傷している。マティス国防長官は次回の朝鮮戦争は「1953年以来誰も見たことのない様相を示しそう」と述べており、前回は死亡36千名負傷90千名だった。ここまでの死傷率を伴う戦闘経験がある隊員は現役では皆無だ。心身共に消耗させ戦闘は長引きさらに悲惨な状態になりそうだ。


誤解3 米本土は戦争の影響を受けない


 死と破壊の蔓延は米国民に南北戦争以来実感がない。欧州や日本では第二次大戦の記憶はまだ残っており、今日ではシリア、アフガニスタン、イラクで日常風景だ。米国民は本土が戦争被害を受けることが本質的に理解できない。米国には北朝鮮の核弾道ミサイル脅威がロサンジェルスやワシントンに向けられる前に開戦すべきとの声がある。だがミサイルだけが21世紀の破壊効果手段ではないので、これのみに注意を払うと平壌の有する他の脅威に目をつぶることになる。


 金正恩は自らの政権基盤が攻撃されれば米国に報復を試みるはずだ(同時に韓国、日本も対象になろう)。その際に使える手段すべてを投入するはずだ。例えば米国本土攻撃は巧みに偽装した核爆発装置を送っても実行できる。あるいは工作員を使って伝染性が高い生物兵器を散布し公衆衛生の危機状況を生むかもしれない。このような攻撃は技術的に難易度が高いが、一つでも成功すればその結果の死と混乱は決定的になってしまう。


 北朝鮮には高度のサイバー攻撃能力もあり、米国を混乱に陥れることが可能だ。北朝鮮はワナクライ型ランサムウェア攻撃、ソニー攻撃、ネットワーク盗聴ハッキングの実績がある。米国の情報インフラと経済は巨大であり高度なサイバー攻撃があった場合すべてを効果的に防御するのは不可能だ。米本土は攻撃対象となり多大な影響を受ける。個人の金融データ、アクセス権限の悪用から産業施設や発電所の停止、さらにスマートフォン乗っ取り、住宅冷暖房の制御まで考えられる。米本土も北朝鮮との新しい戦争で最前線になるのだ。


誤解その4 戦争は自分にも家族にも無関係


 1973年以来の完全志願制が機能して米国民は戦闘に加わる義務を身近に感じなくなっている。今年も16年間も継戦中なのに国民は志願制で戦闘は間にあうと見ている。アフガニスタン、イラクの戦闘でも徴兵制や新規税制の話は出なかった。


 国防のため銃を取る事はもはや市民の義務とは受け止めれていない。人口の1パーセントが戦う一方で99パーセントは拍手するだけだ。米国で徴兵制復活を真剣に考えるものは皆無に近いし、国民も反対している。さらに議会には義務兵役制度そのものへの反対意見もある。だがこうした見方は根本的に誤っており、これでは戦場で家族の安否を心配する所帯はごくごくわずかにとどめておけばよいことになる。


 ただし北朝鮮と開戦になればこのやりかたになる。次期朝鮮戦争は予想以上に長引き、通常の戦闘より大規模な動員が必要となりかねない。だが完全志願制では戦闘は誰かがやってくれる仕事だ。そのため国の決定で軍事力を行使することになっても真剣に時間や労力を提供しようと考える米国人はごく少数になる。これは朝鮮が大規模戦闘になっても同様だ。


誤解その5 戦争は北朝鮮の敗北で幕を閉じる


 北朝鮮戦の戦域は朝鮮半島に限定されると見るのが大部分だ。また金正恩の排除、核兵器の排除に限定されると見ている。軍事計画部門もこの罠に落ちるリスクを抱えている。「血まみれ」先制攻撃戦を巡る最近の話では政策決定部門はいったん開戦すればすべてを制御しながら関係者全員が論理的かつ予測可能な行動すると見ていることがわかる。もちろん歴史を見れば事態はその逆だとわかる。


 この議論には他の超大国の動きが考慮に入っていない。中国が何らかの形で巻き込まれるのは確実で、北朝鮮との地理、密接な関係を考えれば当然だ。また米国が北朝鮮を核攻撃すれば中国も自らの同盟国への攻撃に対応するはずで、中国自身が放射能被害を受ける。米国の敵勢力もこの機会をとらえて別の場所で侵攻を試みるかもしれない。ロシアは東ヨーロッパで領土拡大を狙う。イランは核兵器開発を再開し周辺国を脅かすだろう。米国の圧力が緩くなればイスラム国が活力を取り戻し中東やヨーロッパで攻勢に出るかもしれない。米国は急に各地でそれぞれ別の敵との対決に直面するが朝鮮半島から数千マイル離れた場所だ。いずれも米国の権益に直接脅威となり、地域紛争が世界規模の戦闘にエスカレートする可能性が出る。


れら5つの見方はすべて誤っているが、北朝鮮相手の戦争に関する世論を形成しているのも事実だ。開戦が必要なのか真剣な国民的議論が欠如している。戦争は最後の手段である。こうした誤解の背景には一つの真実がある。つまり米国は開戦することの意味を忘れており、「本当の」戦争の意味を理解していない。戦争が外地のみならず本国にも起こりうることを理解していない。開戦した場合の恐るべき影響を把握しきれていない一般大衆と政府上層部により開戦の可能性はむしろ高まっている。米国にとって2018年が戦争の厳しい教訓を再度学ぶ年になるのでは悲劇だ。■
Lt. Gen. David W. Barno, USA (Ret.) is a Distinguished Practitioner in Residence, and Dr. Nora Bensahel is a Distinguished Scholar in Residence, at the School of International Service at American University. Both also serve as Nonresident Senior Fellows at the Atlantic Council. Their column appears in War on the Rocks monthly. Sign up for Barno and Bensahel’s Strategic Outpost newsletter to track their articles as well as their public events.

2018年1月27日土曜日

スーパーボウル前座にP-51他が会場上空を飛行!

The Super Bowl is getting the most awesome Air Force flyover ever

今年のスーパーボウルで米空軍は最高の上空飛行を見せてくれそう


 
By Harold HutchisonJan. 26, 02:29 PM


―パーボウルLII(第五十二回)はニューイングランド・ペイトリオッツ対フィラデルフィア・イーグルズの決勝戦になるが、試合前にも見ものが多い。空軍は歴史遺産フライトとして初登場のノースアメリカンP-51含む機材を上空飛行させる。

ノースアメリカンP-51が硫黄島から離陸中。激戦の末に占領した同島から戦闘機隊はB-29の日本空襲を援護し、自らも日本を攻撃した。 (USAF photo)
 空軍発表ではP-51にフェチャイルド・リパブリックA-10近接航空支援機2機、ロッキード・マーティンF-16ファイティングファルコン一機が加わる。歴史遺産フライトで現行機の随行は通例。
 歴史遺産フライトがスーパーボウル上空を飛ぶのは初のことで、従軍した国民を讃えながら空軍力の変遷を見せつつ入隊勧誘を行うのが目的だ。P-51を操縦するのはスティーブ・ヒントンで、改装P-51で昨年スピード記録を樹立している。飛行の様子はNBCが現場中継し、カメラの一台はP-51に搭載される。
P-51が空軍で供用開始したのは1942年で、最高速度は437マイル、航続距離は851マイルだった。M2 .50口径機関銃6門と爆弾を搭載した。第二次大戦で空を支配した後は朝鮮戦争で対地攻撃に投入され、1969年のサッカー戦争にも登場した。1980年代にP-51原型の機体が金銭つ航空支援対ゲリラ戦機材エンフォーサーとして空軍に採用されそうになったこともある。
 この歴史的な機体が再び大空を飛ぶ様子を見るのが待ちきれない、■

スーパーボウルLIIは日本時間2月5日(月)ミネアポリスで開催されます。NHK-BSが中継しますが、ちゃんとフライオーバーの様子を開設できるでしょうかね。

北朝鮮防空体制は思ったより強力な可能性、米軍の航空優勢確保は簡単ではないかも

 


If Donald Trump Attacks North Korea: Beware of Kim's Air Defense Systemsトランプが朝鮮攻撃に踏み切れば、北の防空体制は要注意だ


April 14, 2017

ランプ政権が北朝鮮へ戦闘開始を選択すれば北朝鮮が予想以上に手ごわい相手だと思い知らされるだろう。
 金正恩率いる同国の防空体制は大方の予想以上に高度化している。さらに米軍の空爆への抵抗力を増やす方策をとっており、同国が朝鮮戦争の教訓を鮮明に覚えていることを示す。
「1950年から1953年にかけ米空軍、海軍が北朝鮮を徹底的に空爆したため、北は65年かけて再発防止を考え爆撃に耐える地下退避壕トンネル多数を掘った」とマイク・マクデヴィットRear Adm. Mike McDevitt退役海軍少将がThe National Interestに語っている。
 だが施設強度を上げる以外に平壌は一般の予想以上に防空体制を高度化している。防空装備の大部分は旧ソ連製だが、一部で驚くほど高性能の国産装備も展開している。
 「旧ソ連製SAMのS-75、S-125、S-200さらにクヴァドラットがありおおむね良好な状態を保っています。S-75は国産化していましたが、性能向上策を実施した可能性があります。さらに韓米呼称KN-06の国産新SAMは新鋭装備として恥じない内容です」とワシリ・カシンVasily Kashin総合欧州国際研究所(モスクワ高等経済学研究院)主任研究員はThe National Interestに語る。
 KN-06SAMの実際の製造数は不明だが、ロシア製S-300初期型に近い性能を有する驚くべき装備だ。「KN-06はフェイズドアレイレーダーがあり誘導システムで目標に向かい、初期型S-300Pと同等の有効射程があるでしょう」(カシン)
 カシンによれば韓国筋がKN-06のテストは成功したと伝えており、射程150キロと見られる。KN-06が無視されがちなのは西側が北朝鮮工業力を過小評価する傾向のためと言う。
 「世界は北朝鮮工業力を軽視していますが同国はコンピュータ処理工作機械、工業ロボット、光ファイバー、さらに半導体まで国産化に成功しており、一般車両、鉄道車両、家電製品も同様です。1970年代から80年代のソ連の実力に相当します」(カシン)
 北朝鮮の防空体制は旧式だが低高度では強力だ。「低高度ならライセンス生産及び国産MANPAD(携帯型防空装備)や23ミリから57ミリの対空砲各種が数千基使われるでしょう」(カシン)
 北朝鮮空軍は数こそ多いが装備は陳腐化している。米空軍力に辛うじて対抗できるのはミコヤンMiG-29フルクラムだけだ。「40機あることになっていますが実際に稼働可能機材が何機かわかりませんが存在するのは確かです」「パイロット訓練が年間20時間を超えることはありませんが」(カシン)
 北朝鮮の技術水準は初歩的だが、防空体制は統制が取れている。「旧ソ連のコンピューター対空指揮命令装置を使っています。レーダーは旧型が中心ですが一部でイラン製フェイズドアレイレーダー新型も導入しています」「防空部隊は地下豪を大幅に使い、破壊は容易ではないでしょう」(カシン)
うなると北朝鮮防空体制は思ったより手ごわそうだ。技術が古いとはいえ北朝鮮の価値観である主体思想でハードウェア国産化率は高い。「国産品が多数ありますが、技術は20年から40年遅れています」「とはいえ自分で作ってしまいます」(カシン)■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar

敵をまず良く知れ。第二次大戦前にも米国は日本の技術を侮っていましたね。その後犠牲を出して後悔しました。同じことを繰り返しているのではとの危惧があります。レトリックがうまい国なのでどうしても北朝鮮の言い分を無視しがちなのですが、軍事技術については冷静に見ていく必要があります。開戦48時間で北朝鮮など壊滅できるなどと簡単に言うなど言葉だけが踊る評論家が問題でしょうね。

トランプ政権の核戦力再整備方針は使える核兵器をめざすのか

The Pentagon Wants Its Nuclear Tomahawks Back

ペンタゴンが核トマホークの復帰を望む


前回2010年の核戦力整備検討で核弾頭付きトマホークの退役が決まった。同ミサイルは2012年から2013年にかけて配備中止となったが、トランプ大統領はこの戦力の再登載が必要としている。Credit: U.S. Navy



Jan 17, 2018James Drew | Aviation Week & Space Technology


トランプ政権は米核戦力の大幅復興に乗り出す。近年の核戦力は衰退していたが、新規弾頭用のプルトニウムコアの増産、海上発射型巡航ミサイルの再配備などの手をうつ。
2018年度核戦力検討作業の内容がリークされ、米軍トップによるこれまでの指摘を確認している。中国・ロシアの核戦力増強に米国が対応を求められ、北朝鮮の新たな脅威が加わる中で広範な核兵器の近代化は待ったなしで冷戦時の爆撃機、潜水艦、ミサイルや核運用可能戦術機などで対応が必要だ。
政策原案が承認されれば「遅延なく作業を加速化する」ことになり、前政権で着手済みの中核事業の実現をめざす。コロンビア級潜水艦、ノースロップ・グラマンB-21爆撃機、地上配備戦略抑止力弾道ミサイル、長距離スタンドオフ巡航ミサイル、核・非核両用ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機、B61-12誘導方式自由落下爆弾だ。
一方でオバマ政権が手掛けた海軍の核巡航ミサイル削減が逆転し、B83-1は温存する。これは最後のメガトン級核爆弾だ。B61-11地中貫徹弾他通常型バンカー破壊爆弾も保持し必要に応じ地下施設攻撃に投入する。
ロシア戦術核兵器の「大きな優位性」に対抗しつつ、中国や北朝鮮の軍事行動に対応すべく、国防総省は「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の一部」に低威力核攻撃能力を付与し、新型海上発射巡航ミサイルに資金投入する。これでオバマ政権がレイセオンのトマホーク対地攻撃ミサイル退役で生じた穴を埋める。
新方針ではコロンビア級潜水艦の追加建造に含みを残し、「最低でも12隻」と原案の十隻程度から増えた。トライデントD5潜水艦搭載弾道ミサイルは供用期間を延長しオハイオ級およびコロンビア級で使う予定だが2020年にペンタゴンは後継機種の検討を開始する。
米核戦力を今後も維持するべく、トランプ政権はエネルギー省の国家原子力安全保障局による新規プルトニウムピット(核弾頭の中核部分)の増産を求め、2030年に年間80基が「最低でも」必要としている。ちなみに現時点はゼロである。
米プルトニウムピットの大部分は1978年から1989年に製造されその後調整しつつ供用している。新規プルトニウムコアとしてはロスアラモス国立研究所が製造したW88弾頭(2007年-2012年)が最後だ。「現時点で米国には新規核弾頭の製造能力がない」と報告書はまとめている。
米核戦力の再整備の背後にある戦略は核・非核の大規模攻撃が発生した場合に米国に弱点がある、または抑止できないと「誤った理解」をさせないことだと検討結果にある。ここには米核戦力指揮命令系統ネットワークへの宇宙、サイバー両面での妨害も含む。




検討ではトランプ政権が「非先制使用」政策は採択しないことを確認している。この点は前政権で広く議論の対象となっていた。つまりワシントンは必要なら核先制攻撃を行う権利を保持するということだ。
政策転換はワシントンの国防タカ派に歓迎される一方で軍備管理を主張する一派からは批判されている。
「トランプ案では核兵器を非核装備に対して使用するシナリオの幅が拡大しています。サイバー脅威も対象になるのです」と軍縮協会専務理事ダリル・キンボールDaryl Kimballが述べている。「危険で不安定化をもたらします。たとえ少数でも核を投入すれば結果は破滅的です」
前政権は米核兵器を他国による核攻撃の抑止手段としてのみ見ていたが、キンボールはトランプ大統領は「もっと使い勝手の良い」核兵器を求めているとし、低威力弾頭をトライデントD5や海軍用巡航ミサイル用に提案するのはその例だし、両装備は「軍事上不要」の存在で危機や紛争の際に誤解を増やすだけとする。
「使い勝手の良い兵器があれば核兵器で抑止効果を強めるとの確証はありません。ロシアのように各種の手段が使える相手の場合は特にそうです」とキンボールはAviation Weekに述べている。「核兵器投入の最低ラインを引き下げて世界の核兵器開発レースを刺激するよりも米国には指導力が必要」という。





 民間国防コンサルタントで核問題専門家のピーター・フーシイPeter Huessyは戦略変更を歓迎し、ロシアの欧州内通常戦力、核戦術能力への対抗策になると期待。
 「ロシアは米・NATOと通常戦力では互角なので戦域核戦力で脅迫せんとしている」という。「米国の戦域核戦力は限定的で海上運用巡航ミサイル戦力を実現すれば現在の抑止力構成に望ましい追加要素になる」という。
 フーシイはレーガン以降の各政権を通じ米戦略核兵器は85%削減され、「史上他に例がない事態」だという。
 「ただし世界の安全保障環境は2010年以降悪化しています」とし、「ロシアが核兵器での対米攻撃を2009年から2016年に20回以上伝えています。ロシア、中国共に2010年以降に戦略戦術核兵器を大幅に増強し、特に中国は軍備管理の制約を何ら受けません。両国合わせると戦域核兵器は数先発となり米国の数百発と雲泥の差です」
 さらにオバマ政権下での見直しから8年が経過したが、インドとパキスタンが核兵器を「劇的に増加」させ、中国も数百発から数先発の核弾頭を増やしたという。ロシアは戦略戦術核部隊の近代化を実施し、北朝鮮は最大100発を製造し、イランが核兵器運用の能力を急速に実現していると指摘する。「これに対して米国は陸上ミサイル、潜水艦、爆撃機いずれもまったく増強しておらず今後も二十年間にわたり増加の兆しはない」という。
 トランプ政権の核近代化加速案では同時に低出力核弾頭を増やし海上発射巡航ミサイルを近代化するので数十億ドル追加支出になりそうだ。議会予算局は核の三本柱の維持近代化で今後30年間で1.2兆ドルになると試算しており、内訳は8000億ドルが運用作戦用で4000億ドルが近代化用だとする。
 トランプ構想では核兵力整備支出が最大になるのは2029年で国防予算の6.4%相当になる。これに対して1962年の米国国防予算では24.9%、レーガン時代の1984年は13.4%になっていた。ただし国防予算総額自体がかつては小さかった。
 ペンタゴンは決定案ではないため原案内容に関し一切の言及を拒んでいる。最終版は検討作業中であり大統領、国防長官の承認をもって二月初めに公表される。■

核戦力の運用はとてつもない巨額が必要ですね。米露中以外の各国はしょせん小規模しか運用しないのでもともとシステムも小ぶりなのでしょうが、それでも各国の財政上に相当の負担となります。北朝鮮が核兵器運用で通常軍を縮小し生産活動に振り向けようとするのであれば、それはそれで合理的な判断かもしれませんね。ノーベル平和賞を取ったICAN代表が来日していましたが、日本政府をいじめたい勢力と結託していました。ぜひ、ロシア、中国、北朝鮮にも足を延ばして議論ができるか試してもらいたいものです。

2018年1月26日金曜日

米国外生産で初のF-35B初号機がイタリア海軍へ納入!

The First F-35B Assembled Outside The U.S. Delivered To The Italian Ministry Of Defense Today 米国外で初のF-35B完成機がイタリア国防省へ引き渡し



イタリア製F-35B一号機(BL-1)がイタリア国防省に納入され、イタリア海軍に配属された。1月25日、カメリFACO。I(Ministry of Defense Photo)
 By David Cenciotti Jan 25 2018


タリア製のF-35BライトニングII短距離離陸垂直着陸型 (STOVL) 一号機がカメリ最終組立点検施設(FACO)でイタリア国防省に納入されイタリア海軍に1月25日配属された。

同機は軍高官が出席する式典で正式にイタリア海軍に引き渡された。ロッキード・マーティンからはダグ・ウィルヘルムDoug WilhelmF-35事業統括副社長が出席した。
従来通り、イタリアが報道関係は一切シャットアウトしたため式典の様子はお伝え出来ないが、イスラエル向けあるいはオランダ向け初号機の際は鳴り物入りで広報したの対照的だ。イタリア国防省はF-35に関する限り一貫して「低姿勢」を守っている。
イタリアのF-35は発注が131機から90機に削減されさらに縮小の可能性もある中でイタリア国防予算の相当な部分を占めている。このためイタリア国防政策ではF-35の動向が注目されがちだ。物議をかもす存在にもなっており、一般国民のみならず国会議員にも同機への反対姿勢が相変わらず存在するのはティアII参加国で産業界へ大した恩恵がないまま苦しい財政の中存続させられないからだ。にもかかわらず政府はF-35事業を温存しイタリア空軍に第五世代戦闘機を配属し、老朽化してきたAMXとトーネード戦闘爆撃機に交替させ、海軍にはF-35BでAV-8B+ハリアーの後継機とさせたいとする。
これでカマリFACOはF-35Aは9機、F-35Bが1機納入ずみとなり、米国外で唯一のF-35B生産ラインとなっている。イタリア製F-35は4機がルーク空軍基地(アリゾナ)に配備され国際パイロット訓練に供され、5機はアメンドーラ空軍基地(イタリア)にある。
カメリFACOではオランダ空軍向けF-35A(29機)も製造する予定でその他ヨーロッパ向け機体の製造能力もある。FACOを運営主体はレオナルドでロッキード・マーティンが支援する形で現在は800名の熟練作業員がF-35AおよびF-35BSTOVLの生産に従事し、F-35A主翼の生産も行っている。■

F-35Bには日本、韓国等が急に関心を示し始め、今後調達することになれば機体生産をどこでするかが課題になるでしょう。小牧のFACOで対応可能なのかわかりませんが当然カマリの事例も参考になるでしょうね。問題は機体が手に入ってもそれをどう稼働させるかが重要で、訓練、支援体制、そもそも海上自衛隊が「航空隊」を編成するのかも含め総合的な検討が必要でしょう。

米海軍ズムワルト級二号艦の完成近づく

Navy to Deliver 2nd Stealthy Zumwalt-Class Destroyer in March

ズムワルト級二号艦進水が3月に迫る



号艦USSズムワルトの影に隠れているが、米海軍は二号艦を静かに完成に近づけており、まもなくUSSマイケル・マンソーと命名されるはずで早ければ三月に引き渡しとなる。
 同艦はDDG-1001と呼称され現在98パーセント完成しており、建造主公試が今年12月に予定されている。
 初号艦と同様に二号艦もステルス多任務対地対艦攻撃艦として長距離精密攻撃手段を搭載し各種ミサイルも運用し、高速演算能力と電気推進式統合推進システムを艦内78メガワット発電で賄う。
 技術基盤を共有し、艦の仕様と兵装システムが同じマンソーではコンピューターソフトウェアをアップデートする。
 艦載コンピュータは全艦演算環境Total Ship Computing Environmentの名称で艦内諸システムを統合するものでレーダー、兵装、推進系にまたがる。ソフトウェアアップデートで各装備が恩恵を享受する。
 マンソーが航海に出る時点でズムワルトも同じアップデートを受ける。コンピュータプログラムは700万行におよぶ膨大なものだという。
 USSズムワルト建造で得た知見も活用できたという。ズムワルトでは一部機器の取り扱いや技術統合で工期が遅れた。とくに艦橋とアンテナが複合材の一体化に難しさがあった。
 こうした経験から二号艦建造はスムーズに進んだという。
 三号艦はUSSリンドン・B・ジョンソンとなるはずで現在71パーセントの進捗度で先行艦と違い艦橋は鋼鉄製となる。
 USSマイケル・マンソーは2020年3月に海軍引き渡し予定で同年にUSSズムワルトが作戦能力を獲得する。
 三隻しかないズムワルト級部隊はこれからの世界で新規脅威が生まれるとあちこちからひっぱりだこになりそうだ。それは同級にしかない技術が理由でステルス特性を生かし強襲作戦で先頭に立つ、あるいは攻撃の口火を切る役割が期待される。また現行のDDG-51級駆逐艦と同様にズムワルトは空母打撃群の防御にも有効だ。
 レーダーや空中ISR装備または艦載MH-60Rやファイヤースカウト無人機が長距離地点で敵あるいは飛来する敵攻撃を探知した場合、対抗措置の前衛機能がズムワルトに期待される。主砲の長距離精密射撃能力を活かし敵の地上目標を自らを探知されずに攻撃できるはずだ。これがズムワルト級の長距離対地攻撃弾LRLAP構想で現行の無誘導5インチ砲の射程をはるかに超える威力を実現する。
 低レーダー探知特性を生かしてズムワルト級には揚陸作戦での活躍も期待されている。高性能搭載センサー類と無人機やその他ISR機材をつなぎ、揚陸即応部隊に最適の攻撃地点へ誘導する。こうしたズムワルトの沿海部浅海部ミッション能力と長距離精密火力で揚陸部隊の展開前に陸上目標を弱体化できる。LCSと異なりズムワルトではアクセス可能な港湾や沿岸部が広く、沿海部作戦で投入できる火力が増す。
 ズムワルト級は三隻しかないため、全世界どこでもいつでも展開させるのは難しい。このためズムワルト級は今後建造される新型艦船や技術革新の見本となり、将来につながるだろう。
レーザー兵器の搭載
 レイルガンやレーザー兵器の搭載が関心の的になりがちだ。このためズムワルトの統合発電システムへの関心が高くなっており、今後も進化しレーザー搭載の際の技術基盤となるだろう。
 出力容量が大きくなればレーザー強度も増す。艦載レーザー兵器はすでに運用装備の域に達している。今後の課題は出力を上げ有効射程を伸ばしながらレーダー、センサー類、火器管制技術と統合していくことだ。
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