2021年9月19日日曜日

ご自分の敷地に突然ヘリコプターが着陸してきたら、しかも機種がロシア機だったら....米陸軍の極秘飛行隊の存在が改めて明らかになったノースカロライナの事件。

アメリカらしいスケールの大きな話ですね。同時におおらかでもある。ノースカロライナという場所ゆえでしょうか。小学校に故障ヘリが緊急着陸して大騒ぎになり、挙句の果ては飛行停止を申し入れるような日本の地方公共団体とは大違いです。にしても米軍の闇の部隊が今回は絡んでいるようです。


A screen capture from a YouTube video showing an Mi-17-type helicopter at a farm in North Carolina in 2021.

YOUTUBE SCREEN CAPTURES

 

 

年はじめのこと、ノースカロライナで農園を経営するダン・ムーアは尋常でない訪問者を迎えた。しかも二回も。まずロシア製Mi-17ヒップヘリコプターが緊急着陸すると、暗灰色塗装のベル407が到着し、交換部品を届けた。このベル407は今年初めにロサンジェルス上空で目撃されている。両機種は米軍の秘密航空部隊の所属のようだ。

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ムーアは民間航空パトロール隊員でもあり、長年パイロットを務めているが、その際の出来事を航空専門誌Air Factsに寄稿した。

 

「隣家からお宅の前庭にヘリコプターがいるぞ、との連絡が入った」とムーアは回想している。「なに、ヘリコプターだって、うちの敷地に」と混乱したが、すぐに緊急着陸だなとわかったという。

 

「ノースカロライナに住んでいると上空で軍の活動が多い。隣人に機種がわかるか、と聞くと特殊部隊の駐屯地フォートブラッグに関係する本人も機種がわからない。見たことのない機種だ。大型機だと答えた」

 

問題のヘリコプターはMi-17でカモフラージュ塗装を施し、機体排気口後部が黒く塗装されていた。ムーアは写真とビデオを撮影したが、運用者の素性を現す表示ははっきり示されていない。

 

ただし、軍用仕様の特徴がみられた。センサーボールが機首機銃タレットの下につき、側面には装甲版がついていた。双発エンジンの空気取り入れ口の前に分離版がついており、砂漠や非整地の運用に有効だ。尾部にはアンテナがあり、皿状アンテナは高周波衛星通信(SATCOM)でよく使われる。

 

ムーアは隣人に電話でヘリコプター乗員に連絡させると、機付長から状況の説明があったという。Mi-17は修理が必要でそれまでムーアの敷地内に残るという。

 

「農園にトラックがあり、キーがついたままだ。それを運転して町で必要なものを調達していいよと答えた。また農園の作業所に工具類がそろっている。ここも使ってもらってよい。二時間でそちらへ移動するので工具でも何でも使ってくれ、と伝えた」

 

機付長は予想外の好意に驚いた風だったという。ただし、ムーアが農園に到着すると、乗員が機体の油圧油冷却器を取り出そうとしていた。トラブルの原因はこの部分だった。

 

「パイロットを見つけ、話を聞いた。着陸地点の下に以前送電線が走っていたと伝えるとパイロットは驚いていた。前年に滑走路を造るべく移動させていた。飛行経路のその他の場所は沼、樹木、住宅だった。話を聞いてパイロットは顔面真っ青になった。唯一の安全地帯に着陸していたことがわかったからだ」

 

ムーアは息子(陸軍でヘリコプター操縦を希望)と一緒にヘリコプター乗員としばらく話した。その場を離れようとするとスペアパーツがこちらにむかっているとわかった。

「どこから運転してくるんだい」

「いや、空を移動中なんだ」

 

ベル407がその後到着し、部品を運んできた。尾部に機体番号がついていたがビデオでははっきり見えなかったという。

 

暗灰色のヘリコプターは同じ機体3機がロサンジェルス近辺で1月に目撃されていた。「エッグビーター」あるいは「Oリング」形状の超高周波(UHF)SATCOMアンテナが尾部につき、機体前方の左右にブレイド状のアンテナがあり、これが高周波無線交信他の通信用だとみられる。また着陸用スキッドは法執行機関の機体と通じる形状だったという。

 

SCOTT LOWE

今年1月にロサンジェルス近郊で目撃されたベル407の三機のひとつ。

 

ベル機は部品を下ろすと早々に立ち去った。翌朝にMi-17も修理を完了し離陸していった。

 

各機の運用者の正体がわかる話は一切なかったとムーアは述べている。「全員かつて軍にいたようで、何らかの秘密任務を秘密機関でおこなっているようだった。すべて秘密だった」とし、「州外から飛んできた」と聞いたという。

 

Air Facts 記事の誤植か、Mi-17乗員が意図的に誤った情報を与えたのかが不明だが、ムーアは「乗員からMi-24でソ連で一般的に使われた機体の輸出型」と説明を聞いたとある。ただし、明らかに今回の機体はMi-24ハインドではない。同機は外見も異なるガンシップだ。

 

ロサンジェルス近郊で今年初めに目撃された暗灰色塗装のベル407について運用者を推理していた。米陸軍の極秘部隊航空技術室(ATO)がヴァージニア州のフォートユースティスのフェルカー陸軍飛行場に駐留しており、これが運用者である可能性が高い。

 

ATOはかつて飛行コンセプト部門(FCD)と以前呼ばれており、中央情報局(CIA)とつながりが強く、Mi-17含む外国製機種を運用していることが知られている。

 

フェルカーの衛星写真を見るとベル407数機がMi-17とATO/FCD格納庫近くに駐機しているのがわかる。またBing Mapsの高解像度写真でMi-17とわかる機体が見られるが、ムーア農園に着陸した機体と同一かは不明だ。

 

PHOTO © 2021 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

フェルカー陸軍飛行場の衛星写真。2020年12月2日撮影。ベル407が三機ランプ右に見え、Mi-17と思しき機体も5機わかる。

 

BING MAPS

フェルカー陸軍飛行場に駐機するMi-17の高解像度写真

 

 

ここ数年オンライン上で別のヒップ、Mi-171E型で機体番号15-5207がつく機の写真がでまわっていた。同機は米軍の運用という説と米政府のほかの機関としてたとえばCIAが運用しているとの観測があった。CIAがMi-17を運用し、特にアフガニスタンでここ20年利用していることがで知られている。ヒップと同局のつながりはカブール近郊での飛行状況でもあきらかで、今年8月にはハミド・カルザイ国際空港へ米国人や米国のため従事したアフガン人を移動させていた。

 

SPRINGERVILLE MUNICIPAL AIRPORT

別の謎のMi-171E(機体番号15-5207)が2016年にアリゾナのスプリンガーヴィル市営空港で目撃された。ダン・ムーア農園に着陸したヒップ同様に手尾部に各種アンテナをつけており、大型桐生分離器をエンジン空気取り入れ口前につけていた。同機のその他写真が最近でまわっているが、ダン・むーた農園でみられたのと同様のセンサータレットや追加装甲版が視認されている。

 

 

ATO/FDCは米軍航空部隊中で機密度が最も高く、War Zoneでも以前お伝えしている。公式にわかっている内容から同部隊は極度に専門化されており、他部隊と全く違う形で特殊作戦部隊を支援し、秘密工作に従事していることがわかる。同時に高リスク技術開発任務もあり、陸軍航空部隊の次期技術にもかかわる。UH-60ブラックホークのステルス改装型が2011年のパキスタン・アボタバードでのオサマ・ビン・ラディン襲撃に投入されたが、同部隊が開発に関与していたようだ。

 

総合すると短時間ながらヘリポートの様相を呈したムーア農園の事例から基本的な事項が見えてくる。ムーア親子が遭遇した出来事が極めて異例で、秘密を旨とするヘリコプター各機と乗員にじかに接する貴重な体験だったといえる。■


Russian-Made Mi-17 Helicopter Flown By Secretive US Unit Lands In Farmer's Field

 

A Bell 407 helicopter from the same organization swooped in after the Mi-17 was forced to make an emergency landing.

BY JOSEPH TREVITHICK SEPTEMBER 17, 2021



 

ヘッドラインニュース

 

ヘッドラインニュース9月19日号

編集の都合上、最新ニュース以外も入ります。ご了承ください。



オーストラリアがトマホーク、極超音速ミサイル導入へ

オーストラリアは長距離攻撃能力の拡充をめざし、トマホーク巡航ミサイルをホバート級駆逐艦に導入する。さらにJASSM(ER)を空軍のF/A-18、F-35Aへの導入を行う。スーパーホーネットには長距離対艦ミサイル(LRASM)を装備する。米国とは極超音速ミサイルの共同開発を続ける。陸上部隊には射程400キロの精密攻撃ミサイルを導入する。一方で国内ミサイル開発製造基盤の拡充も図る。



ロッキードがLMXT空中給油機構想を発表

ロッキード・マーティンが空中給油機LMXTを発表し、空軍がめざすつなぎ給油機KC-Yへの採用をめぐり、ボーイングのKC-46への対抗心をあらわした。LMXTはエアバスA330多用途給油輸送機を原型とし、米空軍での供用向けに改装する。9月20日予定の空軍協会イベントで詳細を発表する。(Brandon Stoker/Lockheed Martin)

 

 

 

ロッキードがX-59超音速機の最終製造工程を公開

Xプレーンの最新型X-59は静かな超音速技術実証機 (QueSST)と呼ばれ、同社最終組立に入っている。伝説のスカンクワークスが作業にあたっており、NASAとの共同で開発している。X-59は静かなソニックブームが地上で受け入れられるかを試す目的で運用される。データはNASAで今後の商用超音速騒音基準作りに役立てられる。現在は地上上空での超音速民間飛行は禁止されている。

Credit: Lockheed Martin


フィリピン、現行予算でF-16は2機しか調達できない

デルフィン・ロレンザナ国防長官はF-16機体価格は高すぎ、現行予算で購入できるのは2機に限られると述べた。同じ額でグリペンなら6機買えると同長官は述べた。フィリピンはMRF(多任務戦闘機)の導入を目指している。長官の真意は米国の財政支援でF-16を採用したいという点か。

Graphic: Lockheed Martin

 

チリ潜水艦が演習でカール・ヴィンソンを撃沈していた

チリ海軍スコルペネ級潜水艦CSカレラ(SS-22)が米海軍との演習をこの度完了した。演習にはUSSカール・ヴィンソン(CVN-70)も加わり、二カ月にわたり展開された。チリ海軍の発表では「空母打撃群への模擬攻撃を二回にわたり実施した」とある。ディーゼル電気推進式潜水艦を運用する南アメリカ諸国との演習で米海軍に対応の知見を蓄積するのが演習の目的だ。

 

 


C-130水陸両用型の予想は本当だった。太平洋の分散部隊展開で補給作戦に投入されそう。

 C130 seaplane

AFSOC

 

 

る5月、米空軍特殊作戦司令部(AFSOC)が温めてきたC-130水上機型の夢が現実に近づいているとお伝えした。MC-130J水陸両用機(MAC)が新規調達リストで上位に乗っている。前回は想像図しかお伝え出来なかったが、今回はもっと明確にお伝えできる。そう、C-130をフロートに乗せた格好になっている。

 

構想は各種にわたり、従来型のフロートを付与したものから機体一体型の未来デザインまであった。MC-130は滑走路にもフロートをつけたまま着陸可能となる。今回の記事はAFSOCが公表した想像図を掲載する。

 

空軍特殊作戦司令部からは以下の発表があり、5月にお伝えした内容を改めて確認した形だ。以下の公式発表は2021年9月14日に発表された。

C-130Jは信じられないほど多様性を有する機体で、誕生以来、非整地への着陸、極地での運用、さらに航空母艦でも運用してきた。ただし、現状では着水はできない。地球で水面は71%の面積を占める。国家戦略の重点が沿海部に移行する中で、空軍特殊作戦司令部は同機の展開能力を高めるうえでも滑走路に依存しない性能を高めるアプローチをとる。

空軍研究本部の戦略開発計画実験部門(AFRL-SDPE) と協力し、AFSOCはMC-130JコマンドII水陸両用対応機(MAC)を開発し、同機による沿海部特殊作戦の支援をめざす。

MAC開発では多方面の作業を進めていると、AFSOC科学システム技術イノベーション (SST&I) 副部長ジョシュ・トランタム中佐と説明している。この性能が実現すれば空軍は部隊投入、撤収、人員回収、補給活動を将来の事態、有事での実施能力を拡充できるようになる。

 

AFSOC

 

取り外し可能着水フロートにより「滑走路に依存しない」運用が可能となり、トランタム中佐は世界規模の展開に道が開き、機体のみならず特殊部隊の生存性が高まる。水面を利用できれば運用の柔軟性が高まると中佐は述べている。

MAC機能が利用できれば水面への無制限の作戦応用が可能となり、陸上基地の利用が困難となっても部隊を分散展開できる。

 

AFSOC

 

疑問の余地はない。滑走路に依存している現状をペンタゴンでは互角の戦力を有する相手国、やや戦力が劣る国が遠隔地であっても弾道ミサイルで使用不能にする事態を危惧しているのは事実だ。このためC-130を滑走路を使わずに運用する構想には大きな利点がある。

 

AFSOC技術移転部門主任クリステン・セパク少佐はこう述べている。

「MACは将来の成功の実現に不可欠となる。共同作戦地域内で装備の分散が可能となる。分散させれば敵の攻撃を受けにくくなる」

 

AFSOC

 

MAC構想をわずか17カ月で実現すべく、試作機を五段階で製作する。この日程感自体が大胆だが、仮想モデリング他デジタルエンジニアリングを多用する。ロッキード・マーティンはこれまでもこの種の技術を数多く構想しており、C-130Jでは1990年代末にも検討していた。

 

ではすでに開発作業の多くが実施済みで一部テストまで行っているとすれば、AFSCOは実機の実現を迅速に進め、MAC実機を完成させ、技術をほかの用途として例えば消防機にも使えるのではないか。ジョシュ・トランタム中佐は以下説明している。

「MACは各軍、同盟国、協力国でも応用可能な技術となる。さらに、水陸両用機をその他の画期的な装備と併用すれば将来の戦場でも威力を発揮し、戦略面で競合力が実現する」

AFSOC

 

C-130の70年に及ぶ歴史を振り返れば、これだけ多様な付加機能が同機で実現したことには驚くしかない。その最後に難易度が高い水面からの運用に挑戦することになる。この注目すべき事業の進捗についてはまたお知らせする機会が来るだろう。■

 

It Looks Like A C-130 Seaplane Is Finally Happening

 

Air Force Special Operations Command says it needs an MC-130J on floats and it looks like it has a plan to get it. 

BY TYLER ROGOWAY SEPTEMBER 15, 2021

 


2021年9月18日土曜日

オーストラリアが契約破棄した理由。フランスは予想通り逆上しているが、オーストラリアが決断したのは無理もないことがわかります。

 


 

ーストラリアを英米の協力のもとで原子力推進攻撃型潜水艦(SSNs) 取得に走らせたのはアタック級次期潜水艦建造が難航し、通常型潜水艦(SSK)ではSEA1000事業で目指す目標達成が困難と判断したためと解説する専門家がいる。

 

アタック級は12隻建造し現行コリンズ級と置き換える予定だったが、遅延と費用増加が発生し、事業規模が900億オーストラリアドル(約7兆円)に膨れ上がる試算が出ていた。

 

2016年にオーストアリア国防省はショートフィン・バラクーダ1Aをフランスのナバルグループから調達すると選定した。同艦はフランス海軍が供用中のスフラン級原子力潜水艦を原型としながら高いリスクをかかえていた。SSKへの転用となると既存設計が使えないためだ。

 

アタック級は「革命的というより進化形」でコリンズ級と同等の性能の想定と解説するのがオーストラリア戦略政策研究所のマーカス・ヘリヤーだ。

 

それによるとアタック級は「既存枠組み」を踏襲しており、大気非依存型推進、リチウムイオン電池、垂直発射管、大直径発射管(水中無人機の運用)のいずれも想定していなかった。

 

SEA1000構想は当初から問題を発生していた。戦略パートナーシップ(SPA)合意で各機関を対象期間中は連携させる目論見が2017年10月時点にあり、合意は2019年2月に成立した。

 

2018年9月に海軍建艦諮問委員会からSEA1000の代替策を検討すべしとの提言が出た。同委員会はコリンズ級の供用期間延長で時間を稼ぎ、「将来型潜水艦の取得戦略を必要に応じ模索する」べきとしていた。

 

コリンズ級SSKでは供用期間延長はその後承認され、オーストラリア海軍は2038年まで現有艦を運用する。

 

SPAは成立したが、2020年初頭にオーストラリア国家監査局(ANAO)が「将来型潜水艦の設計変更」と題したレポートを公開し、SEA 1000構想で「4億オーストラリアドル近くを支出しても目指す大きな目標二点を満足させる設計が実現できない」と指摘していた。

 

構想検討審査(CSR)の完了が9カ月遅れ、システムズ要求性能審査(SRR)も遅れた。ANAOではナバルグループと国防省で民生技術含む作業への取り組みが食い違うと指摘している。国防省とナバルグループの関係が悪化した。

 

これだけなら事業の進展そのものを止めることはなかったはずだ。報告書では進捗が3年遅れ潜水艦戦力が不足する事態になりかねないとの指摘がある。国防省は昨年このリスクに気づき、2050年代以降の海軍で必要とする性能が実現しないことも明らかになった。

 

ヘリヤーはアタック級は通常型潜水艦としては高性能と述べつつ、SSK技術は成長の限界点に達しつつあるとし、大型化(コリンズ級は3,400トンなのに対しアタック級は4,500トン)で燃料やバッテリーの搭載量を増やし、高速速力と長期待機能力の実現に向かうとみていた。

 

実は国防省はコリンズ級でも同様の状況を20年前に経験し、当時はスウェーデン海軍のゴットラント級設計をコクムス造船所の知見で建造し、SSKの航続力を伸ばしていた。

 

ヘリヤーからは国防省が時間と予算をたくさん使った挙句「漸進的改良」に終わり、「根本的な変化を潜水艦性能で実現するには原子力推進を採用するしかない」との結論に至ったとコメントしている。■

 

French Attack Boat Design, Costs Opened Door to Nuclear Australian Sub Says Expert - USNI News

By: Tim Fish

September 16, 2021 6:55 PM


AUKUSの連携強化をホームズ教授はこう見る。オーストラリアの原潜調達以上に三か国混成乗員による潜水艦運用を。オーストラリアに米原潜を配置し、同国の地政学的利点を活用すべきだ。

 


ーストラリア、英国、米国が新たな同盟関係AUKUSを構築したとのニュースが飛び込んできた。その一環で王立オーストラリア海軍(RAN)が原子力推進攻撃型潜水艦(SSNs) 少なくとも8隻を2030年代末までに建造する。発表で名指しこそなかったが、中国を意識しているのは間違いない。

原子力潜水艦はオーストラリアに最適な装備品となる。同国は南シナ海の外に戦略的な位置を占めている。南シナ海への展開では距離が障害となる。RANの現行コリンズ級ディーゼル電気推進潜水艦部隊(SSKs)は南シナ海へ出動できるが、長期間展開は不可能だ。

これに対しSSNでは現場展開の制約となるのは糧食等乗員向けニーズへの対応のみだ。戦略予算評価センターが数年前に行った研究ではオーストラリアを拠点とするSSNは南シナ海で77日間の哨戒が可能だが、SSKは11日しかないとの結論が出ている。RANのコリンズ級は6隻のみなのでRANは各艦のローテーション運用で常時一隻を配備するのに困難を感じるはずだ。

原子力潜水艦がこの構図を変える。77日とは米海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒期間に近く、相当の長さだ。原子力潜水艦の導入で同盟側は広大な海域で兵力を展開し、武力衝突を阻止する、あるいは開戦となっても勝算が出てくる。いいかえればAUKUSは太平洋での戦略競合で有利となる。

ただし原子力潜水艦取得の騒ぎの陰にもっと意味のある進展がある。オーストラリアンフィナンシャルレビュー記事では米海軍がHMASスターリング基地(パース)からヴァージニア級SSNsを運用するとある。RANのSSNsが海上運用を開始する前に同盟側の南シナ海外縁部での作戦能力を向上させる効果が生まれる。

実現は早いほど良い効果が生まれる。中国が台湾侵攻に数年で踏み切るとの予想もある。台湾以外に南シナ海や東シナ海にも注目地点がある。

オーストラリアに米軍部隊を常駐させる構想は前からあり、トシ・ヨシハラも筆者とともにここ十年にわたり提唱していた。利点を考えてみよう。まず、地理条件だ。米軍は第一列島線で沖縄以南に点在している。フィリピンとの関係がドゥテルテ大統領の下で弱体化している。米軍の寄港やフィリピン国内への米軍部隊展開は拒否していないものの、往時のような重要な軍事拠点になれるか微妙だ。

近隣に基地を持たないと南シナ海、台湾海峡の対応が困難となる。

フィリピンの代替をオーストラリアが部分的ながら果たせる。フィリピンを上回る機能も実現可能だ。同国は太平洋とインド洋のつなぎ目に位置する。同国に海軍部隊を配置すれば、双方を活動範囲に収められる。パースはオーストラリアのインド洋側に位置し、重要海峡への展開は容易だ。マラッカ、ロンボク、スンダで、各海峡は南シナ海にも通じる。

HMASスターリング基地の位置から、グアムさらに日本の作戦効率が上がる効果も生まれよう。

AUKUSによりインド太平洋に新しい構図が生まれることが要注意だ。現在の米軍基地はインド太平洋の外縁部に展開しており、東は日本、グアムから西はバーレインまでひろがる。言い換えれば水平方向の東西に相当の距離がある。オーストラリアがヴァージニア級潜水艦母港化を受け入れれば、今度は垂直方向でつながりが生まれ第一列島線に沿った防衛線が生まれる。

次は作戦面だ。西太平洋に基地を展開する米海軍には「分散海洋作戦」構想があり、米海兵隊には「沿海域作戦展開を激戦地で展開する」構想がある。海軍部隊の司令官レベルには大型艦のかわりに安価かつ小型の艦艇航空機材を大量調達し、地理条件を考慮した対抗措置を提案する向きがある。

海軍基地の数が増えれば、分散部隊の支援が可能となり、望ましい結果を生む。

潜水艦部隊を分散配備することで直ちに生まれる効果もある。RAN所属潜水艦部隊が姿を現し始める時点で、米海軍のSSNsがパース基地から運行を開始し、AUKUSの海軍部隊は多国籍部隊として効果を最大にできる。オーストラリア側も英米部隊から原子力推進の運用方法を習熟すべく支援を受けられる。

さらに一歩進めAUKUS混合乗員構成の実現も検討すべきだろう。これが実現すれば、同盟国側が真剣で共通の大義の下でまとまっていること、つまり航行の自由の維持とともに超大国の横暴は許さないという姿勢が中国にわかるはずだ。例として米海兵隊がF-35をHMSクイーンエリザベスで運用しており、同空母は西太平洋に展開している。中国が英部隊を攻撃対象にすれば米国も相手にすることになる。

真剣度を示す構想には水面下にも及ぶ。各国乗員をまとめた潜水艦が運用中となれば、三か国の同盟関係に一寸の分断の余地がないと示せる。

RANがSSN建造に乗り出したことは称賛すべきことだが、ただちに三か国のチーム運用を開始すべきだ。時間の余裕はない。■

Why Nuclear Submarines For Australia Make Perfect Sense

By James Holmes

September 17, 2021



Now a 1945 Contributing Editor, James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, U.S. Marine Corps University. The views voiced here are his alone.



2021年9月17日金曜日

AUKUS原子力潜水艦調達で続報。オーストラリア国防省から公式発表。想定する原潜は8隻建造。国内産業の裨益を重視。

 

これって、フランス側は音なしの構えなのですが、裏で話がついているのでしょうね。あれだけ熱が入っていた潜水艦事業選定はなんだったのでしょうか。日本としては振り回されずに済んでよかったのでしょうが。クアッドの三か国が原子力潜水艦を運用することになります。日本はホームズ教授の力説する西太平洋特化戦力としてAIPなど通常型の性能を極めていくアプローチで進むでしょう。いよいよ韓国が原子力潜水艦取得に進む構図が愚かに見えてきます。

Australia Intends to Acquire at least Eight Locally-Built SSNs as part of AUKUS Initiative

 

2021年9月16日、オーストラリア首相、英国首相、米国大統領からオーストラリア、英国、米国(AUKUS)の三か国安全保障提携を強化する発表が出た。

以下オーストラリア国防省発表より編集。

オーストラリアの歴史上AUKUSは画期的な進展となり、三カ国間の安全保障、軍事面の協力関係は今後一層深くなる。

第一弾がオーストラリアが原子力潜水艦の取得で、少なくとも8隻を導入する。オーストラリア政府は南部アデレイドでの建造をめざす。

今回の発表でオーストラリア政府はアタック級潜水艦建造事業を先に進めないことが分かった。

三か国は今後18カ月かけて総合的作業を進め、原子力潜水艦建造の実現をめざす。

この期間を利用し原子力潜水艦実現に必要となる各要素を検討する。安全、設計、建造、運用、保守管理、廃棄、訓練、環境保護、さらにインフラ、基地、人員の各要素だ。

オーストラリア政府は原子力推進潜水艦タスクフォースを発足させ、AUKUSの中でのオーストラリアの関与をスムーズに進める。

原子力潜水艦にはステルス、スピード、機動性、生存性sらに無限ともいえる耐久性で通常型艦より優れている。無人水中機を運用したり、高性能兵装を展開できるため低探知性のまま敵勢力の優勢な水中での運用が可能だ。

原子力潜水艦導入により王立オーストラリア海軍の戦力は一気に拡大することになる。

またオーストラリア政府は国内産業の関与を最大限確保する姿勢で、設計作業、事業管理から建造、維持活動まで広範な範囲を想定している。■

Australia Intends To Acquire At Least Eight Locally-Built SSNs As Part Of AUKUS Initiative

Naval News Staff  16 Sep 2021

https://www.navalnews.com/naval-news/2021/09/australia-intends-to-acquire-at-least-eight-locally-built-ssns-as-part-of-aukus-initiative/

ヘッドラインニュース9月17日

 

中国海軍遠征部隊が本国帰還

海上自衛隊はPLAN部隊艦艇4隻は055型駆逐艦南昌、052D型駆逐艦貴陽、903A型補給艦、情報収集艦で大隅海峡を通過するところを9月11日に捕捉していた。部隊は日本からアラスカまで遠洋航海を行い、東シナ海に帰還した。PLANが遠隔地でも作戦運用する能力を示した。


中国がドイツ艦の上海寄港を拒否

フリゲート艦バイエルン(4,000トン)の上海寄港を中国が拒否した。ドイツ外務省が発表した。ドイツは寄港により両国間の軍事緊張を解こうとしていたため出鼻をくじかれた格好だ。ドイツでは二週間後に選挙を控え、新政権が中国にどのような姿勢を取るのか不明だ。


C-130Jがワイオミングでハイウェイに着陸

9月13日、in the Rockies 2021演習の皮切りにC-130Jがワイオミング州ローリングス近郊のハイウェイに着陸した。同演習は米空軍予備役隊員向けに一週間に渡り展開する。


MQ-25がF-35Cへの空中給油テストに成功

9月13日ボーイングMQ-25スティングレイがF-35Cへの空中給油にイリノイ上空で成功した。これでF/A-18スーパーホーネット、E-2Dにつぎ三機種への空中旧を実施した。次は空母艦上での運用の実証が控える。

PLAN艦艇が米アリューシャン列島付近へ出没

米沿岸警備隊は中国艦船4隻が8月にアリューシャン列島の排他的経済水域に現れ、追尾したと発表した。今回の発表は中国共産党の影響が強い環球時報主筆が今後は米国領海に中国艦船を定期的に派遣すると強弁したのを受けてのこと。写真は8月29日、30日にかけて撮影されていた。055型大型駆逐艦1、052D型駆逐艦2、093型補給艦1に093型情報収集艦1が加わった。


2021年9月16日木曜日

主張 ミリー統合参謀本部議長を即刻解任せよ。米国の文官優位の原則をなし崩しにした。放置すれば米国でクーデターが発生する。

 日本の報道ではトランプの不安定度を憂慮して自ら動いた将軍を賛辞しかねない空気がありましたが、さすがに文民統制の原則を堅固に守る価値観が前面に出ています。記事に踊らされることなく、本質を考える必要が感じられますね。

 



統合参謀本部議長マーク・A・ミリー大将 (DoD photo by Lisa Ferdinando)

 

シントンポストの暴露記事で統合参謀本部議長マーク・ミリー大将がわが国最大の敵対国である中国に接触し、米軍が中国に向け行動を起こす際は事前通知すると伝えていたことが明らかになった。記事内容を見るとミリーが宣誓内容に違反したとはいいがたいものの、大統領が本人を直ちに解任するのには十分なものだ。

 

ポスト記事はこれから発刊となる「Peril」(ボブ・ウッドワード、ロバート・コスタ共著)の抜粋で、トランプ大統領の最終段階からバイデン政権誕生後の六カ月を記録したものだ。一番衝撃的なのはミリー大将が中国軍司令官にホワイトハウスを通さずに連絡したことだ。

 

ウッドワード=コスタによればミリーは中国がトランプが中国攻撃を命令する事態を恐れていた。大統領に懸念を伝えず中国の懸念を払しょくさせる提言をミリーがとり、自身で対処した。

 

本人は大統領や国務長官が知らないまま人民解放軍司令官へ電話した。ウッドワード=コストによればミリーは「李将軍、貴官とは5年間の知己であり、貴国攻撃の際はまっさきに貴官に伝える。奇襲攻撃はしない」と語ったとされる。

 

トランプに反感を持つ向きにはミリーが英雄に写り、米国を救ったと評価するかもしれない。ただし、これは近視眼的見方で、将官が権力行使する真の危険を無視している。まず、トランプが対中開戦を狙った証拠はない。ミリーが懸念していただけだ。そうなると統合参謀本部議長は実際にはなかった事態をめぐり主敵と話したことになる。

 

二番目に、将官あるいは政府高官が大統領への背信行為を行う前例ができてしまえば、あともどりできなくなる。台湾問題のシナリオを考え欲しい。

 

米軍や外交部門には強硬に統一を図る中国に関し二つの見方がある。一つはワシントンは台北に安全保障上の保証を与え、いかなる代償を伴っても台湾を中国の攻撃から守るべきとする。もう一つは台湾をめぐり中国と戦うこと自体が愚かで、中国本土近くで米軍に勝利の見込みはない、また最悪のシナリオでは核戦争に発展し米国人数百万人が死亡する事態になりかねないとする。中国が実際に攻撃してきた場合、バイデン政権は恐るべきジレンマに直面する。

 

台湾防衛の約束を守り、核戦争のリスクを冒すのか、それとも台湾を占拠する中国を放置し米国の弱体ぶりを示すのか。バイデンがどちらの選択に走っても、ペンタゴン内部に強い反対意見が生まれるのは避けられない。

 

ウッドワード=コスタはミリーが行動に走ったのは「善意に基づく事前警告」で「中国との偶発戦争を避け、核兵器の投入はない」と伝えるためだったとする。バイデンが対中戦を決意した場合、軍高官がミリー同様に強い信念から対中戦を予防しようと大統領決定をなし崩しにしていいのだろうか。恐ろしいのはもっと悪い事態が生まれることだ。

 

米国では一貫して軍事クーデターは起こらないとされ、真剣にその可能性を考えてきた向きは皆無に近い。だが今回のミリー大将の動きは今後のペンタゴン関係者に参考となりかねない危険一歩手前の行動だった。疑う余地なく国益に一番良いと考えての行動だったのだろうが、大統領を権力の座から追いだす結果になりかねないところだった。

 

米国では起こるはずがないと考えれば間違いだ。選挙で選ばれた最高指導者の命令へ軍トップが公然と従わない事態となれば、政府機能が危機時にマヒしたり、本当のクーデターに発展しかねない。この恐れがあるからこそ、今の段階でこの動きを封じるべきなのである。

 

ミリーを解任すべきである。即刻。■

 

General Mark Milley Must Be Relieved of Duty

ByDaniel Davis

 

Daniel L. Davis, now a 1945 Contributing Editor, is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Follow him @DanielLDavis1.


速報)オーストラリアの原子力潜水艦取得を後押しする米英両国。ANKUSと呼ばれる三か国の安全保障協力関係はさらに緊密となり、中国への対抗を目指す。

 

おや、ナヴァルグループによる通常型潜水艦建造は断念して一気に原子力潜水艦調達にオーストラリアは向かうのでしょうか。米英豪の強いつながりを感じさせます。韓国がこれで原子力潜水艦調達が現実に近づいたと考えれば大きな勘違いでしょうね。


ンド太平洋の各国が中国への備えを強める中、米国は域内のトップ同盟国へ原子力推進技術を供与する。

AUKUSすなわち米英豪三か国は安全保障取り決めをこの度形成し英米両国がオーストラリアのめざす原子力推進潜水艦実現を支援することになった。

南シナ海での中国との対決では原子力潜水艦の生存性が一番高いといわれる。原子力潜水艦は長距離移動でき、通常型潜水艦より長期間潜航が可能なため、広大なインド太平洋で理想的な装備となる。

「AUKUSとしてオーストラリアが望む原子力潜水艦調達を支援し、三か国共同作業を18カ月続ける。その中で技術分野、戦略、海軍関係の専門チームを組織し、実現に最適な方法を模索する」とバイデン政権高官が報道陣に語り、米国が同技術を供与した例は英国だけで1958年のことだったと解説した。

「オーストラリアは協力関係を深化させ、原子力推進潜水艦取得の方法を模索する。これによりオーストラリアに長期間配備能力が生まれることを強調したい」と同上高官は説明した。「静粛度が高く高性能だ。インド太平洋の抑止力整備に役立つ。そのため原子力技術のベストプラクティスで共同作業を進める。三か国の海軍部隊が共同作戦を展開し、原子力インフラを共有すれば各国間協力はさらに密接になる」

オーストラリアへの技術供与で同国の原子力潜水艦調達は現実に一歩近づく。オーストラリア国内の建造施設は原子力推進艦艇にも対応可能だが、国産建造となるのか、英米いずれかからの調達になるかは不明だ。

米海軍で潜水艦を専門としたある退役提督は原子力推進技術をオーストラリアと共有すれば米国の対オーストラリア関係が大きく変わるとUSNI Newsに述べた。

「オーストラリア海軍が原子力推進を採用すれば西太平洋での対応能力は確実に整備される」「中国へのメッセージだ。中国は経済面でオーストラリアに懲罰を与えており、今回の動きが回答だ」

また、今回の合意でオーストラリアが原子力潜水艦を調達し、米海軍攻撃型潜水艦がオーストラリアで整備を受けることも可能となれば米国のプレゼンスが同地域で拡大すると同提督は指摘する。

「合意内容にプレゼンス拡大につながる要素がある。これまで艦の整備が配備期間を制約してきた」

AUKUS新合意では広範囲の技術共有も盛り込まれており、防衛外交対話も続けると上記高官が述べている。

取り決めでは「新規分野での協力強化としてサイバー、AI特に応用AI、量子技術、および水中運用技術を対象とする。情報共有も深化させ、安全保障・防衛関連の科学技術や産業基盤、サプライチェーンで統合効果がこれから出てくる」「これを維持して各国の機能をくっつけ三か国関係をさらに拡大していく」と同高官は語った。

今回の発表はバイデン政権がインド太平洋特に中国に焦点を当てる中でで出てきた。バイデン大統領はアフガニスタン撤収を正当化するためこの説明を使っている。

「今回の動きはより大規模な対応の一部だ。従来からの安全保障提携国日本、南朝鮮、タイランド、フィリピンに加え、新規相手のインド、ヴィエトナムとも二か国関係を強化しつつ、新しい仕組みを作っていく。クアッドはその例だ」と同高官は今回の安全保障合意の背景を説明している。

2016年にフランス企業が王立オーストラリア海軍のコリンズ級潜水艦の後継艦をフランスの原子力潜水艦バラクーダ級を通常動力に変更し建造する契約交付を受けた。だが、事業は打ち切りとなり、オーストラリアは原子力潜水艦取得に問題なく進められる、とオーストラリア放送協会は本日報道した。■

Australia to Pursue Nuclear Attack Subs in New Agreement with U.S., U.K.

By: Mallory Shelbourne and Sam LaGrone

September 15, 2021 5:04 PM

https://news.usni.org/2021/09/15/australia-to-pursue-nuclear-attack-subs-in-new-agreement-with-u-s-u-k