2023年2月6日月曜日

ホームズ教授は今回の気球事件をこう見ている。平時有事問わず敵対的な中共への警戒のためには敵を知る、己を知ることが肝要だ。

 

F-22 Raptor.


象観測気球?スパイ気球?いや、いずれもちがう。今週モンタナとミズーリ上空で目撃され、サウスカロライナ沖でF-22ラプターに撃墜された中国の気球は、試験だったのではないか。



 確かに、下界での軍事活動について情報を集めたかもしれないが、それはおまけだ。

 筆者の推測が正しければ、北京が北米上空に気球を飛ばした最大の理由は、米政府や軍、そして米国民の反応を見るためであった。

 そして、その後の報道機関やソーシャルメディアでの騒ぎを見る限り、その通りになった。習近平に有利になった。

 中国は今後、アメリカの心理を学んだことを活かして、「3つの戦場」戦略を研ぎ澄ますだろう。三戦とは、法的手段、メディア手段、心理的手段を駆使し、政治的・戦略的環境を自国に有利になるように形成する中国の徹底的な努力のことを指す。これは24時間365日の努力であり、崇高な戦略的伝統に則ったものだ。

 中国共産党の初代主席で軍部の北斗毛沢東は、弟子たちに「戦争は流血のある政治であり、政治は流血のない戦争である」と訓示していた。

 毛沢東の世界観では、平時は存在しない。共産主義の中国には、常に戦争がある。

 そして、敵を知ることが勝利への不可欠な土台となる。毛沢東や孫子をはじめ、戦略論や歴史学の大家は、現場指揮官やその政治的主人に、敵対しそうな相手をよく知るよう繰り返し呼びかけている。しかし、重要なことはすべて数えることができるわけではない。

 敵を正確に把握するためには、艦船や飛行機、戦車の数を数えたり、工業能力を推定したりするだけでは不十分だ。敵の文化や社会といった無形的なものを理解する必要がある。

 今回の気球観測は、中国の三戦攻勢にどう合致するのだろうか。例えば、あなたが北京で、主要な敵である米国を抑止または威圧するための戦略や戦術を設計したいとする。そのためには、相手が外部から来た刺激にどのように反応するかを知る必要がある。

 そこで、相手の反射神経をテストするのだ。地上から丸見えの米国領空に超軽量機材を送り込むなど、奇妙に思えるようなことをする。そして、彼らの反応を測定するのだ。

 直接の脅威とならない侵入に過剰反応するようなら、何かを学んだことになる。つまり、アメリカ人の顔色をうかがうことで、文化的な神経を逆なですることができることがわかる。人民解放軍がアメリカの兵士や水兵、飛行士を大量に殺害するため、特にアクセス防止センサーや兵器を建設しているような憂慮すべき事態に、一般人はほとんど無関心なようだ。見えないから、気にならないということだ。

 しかし、北米大陸上空に非武装の外国機が現れると...気球の目撃には、戦略的な意味がある。抑止や強制には、敵対国が大切にしている価値を脅し、指導者が逆らえば脅しを実行に移すぞ、と敵対国に納得させることが必要だ。

 北京は、西太平洋の米軍遠征軍を威嚇しワシントンの戦略的行動に影響を与えられるか探っているのか。

 しかし、西半球で悪さをすることで、抑止や威圧、あるいは注意をそらすことはできる。それが、2023年の中国によるバルーンブリッツの教訓だ。

 今週の出来事は、共産中国が戦時下でも平時でも常に攻撃的であることを教えてくれた、いや、思い出させてくれた。また、私たち自身のこと、そして自国への脅威に対するこちらの鋭い感性についても教えてくれた。ホワイトハウス、フォギーボトム、国防総省などの頭脳集団が、大国間競争の時代における大衆感情を管理する努力に、この知識を反映させることを望むばかりだ。中国の3つの戦法に対しアメリカ社会を硬化させることができるかが問われる。

 敵を知り、自分を知れば、有利な立場に立てる。■



Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the U.S. Naval War College in Newport, R.I., and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.


ウクライナ軍向け西側戦車の供給、要員訓練がはじまった。ロシア軍の攻勢を戦車部隊増強まで持ちこたえるのがウクライナの課題だ


British MOD


ウクライナ軍はイギリス軍とチャレンジャー2の訓練を順調に進めており、一方でレオパルド2の出荷が始まった。



国防省は、ウクライナ軍がチャレンジャー2「ドライバー訓練用戦車」(上部構造に教官用スペースがある無砲塔型)で訓練を行う写真を公開した。

 ウクライナ軍は、1月29日に最初の戦車クルーが到着してから、チャレンジャー2の訓練を始め1週間も経っていない。

 最新の戦車については、ウクライナに寄贈された4台のカナダ製レオパード2A4戦車の最初の1台が、ノバスコシア州ハリファックスでカナダ空軍C-17に積み込まれ、輸送中であることが判明した。レオパルド2A4は複数国から寄贈され、ウクライナの近代化戦車部隊の基幹となる。

 ウクライナが既に保有している戦車に関してはウクライナの最新鋭国産戦車であるT-84U Oplotがある。

 同型戦車は、前線北部のハリコフ州の部隊で使用されているという。映像の中でウクライナ軍要員は、ウクライナが使用中の旧式ロシア製戦車と対照的に、「スポーツカー」のような印象的な操縦性に触れている。また、オプロットのサーマルサイトは、ロシアに対して200〜300メートルのアドバンテージがあると主張している。最初の一撃が決め手となることが多い機甲戦では、この差は大きな違いとなる。

 レオパード、チャレンジャー、M1エイブラムスに比べれば数は少ないが、オプロットはウクライナ装備でも最高の装甲車両だ。かつて主要な敵であった西側諸国の装甲車両と一緒に戦う日が来るかもしれない。


最新情報

 英国国防省が2月4日に発表した情報によると、ロシアはウクライナの占領地域をロストフ・オン・ドン市に本部を置く南部軍管区に編入したとのことである。

 ハリコフから国境を越えたロシアのベルゴロド地方で火災が発生し、石油備蓄基地と製鉄所が燃えた。製鉄所はクリミア半島に架かる橋の補修工事に携わっているとされ、ウクライナの攻撃によるものかは不明。

 エネルホダール市では、自動車爆弾が協力者を狙ったため、反政府戦争は占領下のロシア軍と協力者にとって脅威であり続けている。

 マリウポリからの映像は、ロシア占領軍が市内の劇場の取り壊しを続けていることを示している。12月、衛星画像は、占領軍が視界から劇場を隠すため、劇場の周囲に高い壁を建設していることを示していた。

 ロシア軍は昨年春、同市の包囲時にシェルターとして使用されていた同劇場を爆撃し、少なくとも300人が死亡したことで悪名高い。

 NATOの自走砲は、フランスのCAESARとドイツのPzH2000 155mm砲の2種類がウクライナに配備されている。CAESARはVuhledar近郊での戦闘で射撃任務に就いており、PzH 2000の1基は砲塔に追加装甲板を装備している。

 最後に、ロシア軍需産業へのトルコの輸出について、Wall Street Journalから驚くべきレポートが出た。貿易データの調査によると、ロシアの戦争に関与したとして米国の制裁下にある少なくとも10のロシア企業に対しトルコ企業13社が、少なくとも1850万ドルの製品を販売したことが報告されている。■


 Ukraine Situation Report: Kyiv’s Modern Tank Corps Begins To Take Shape


BYSTETSON PAYNE|PUBLISHED FEB 4, 2023 8:16 PM

THE WAR ZONE

2023年2月5日日曜日

速報 中国のISR気球を米軍が洋上で撃墜。F-22がAIM-9Xを発射し、同機初のキルに。このニュースを日本メディアがどこまで正確に伝えるか注目です。

F-22 Shoots Down Chinese Spy Balloon Off Carolinas With Missile (Updated)

Tyler Schlitt Photography / LiveStormChasers.com


米軍は米本土を横断飛行した中国の偵察気球を撃墜し、海上で回収作業中だ

国はサウスカロライナ州沖で中国の監視気球を撃墜し、その残骸を回収するため部隊が現地に入っている。

2月1日にモンタナ州ビリングス上空に現れた気球は、土曜日の爆発とその後の高度低下でクライマックスに達した。F-22ラプターが気球に空対空ミサイルを発射し、気球を破壊する映像が公開された。これはF-22最初の「キル」となった。

撃墜後の声明で、ロイド・J・オースティン三世国防長官は、米北方軍所属の戦闘機が 「サウスカロライナ沖の海上に中華人民共和国(PRC)が打ち上げ、米国領空を侵犯した高高度監視気球を撃墜した」と述べている。

「水曜日にバイデン大統領は、気球の進路下にあるアメリカ人の生命に過度の危険を及ぼすことなく、任務が達成され次第、監視気球を排除する認可を与えた」とオースティンは述べてた。「慎重に分析した結果 米軍司令官は」 「監視気球の大きさと高度のため」 「陸地上空で墜落させることは」 「広範囲に渡る人々に過度の危険を及ぼすと判断した」 「そして ... 今日の慎重かつ合法的な行動は、バイデン大統領と国家安全保障チームが常に米国民の安全と安心を第一に考え、中国による容認できない主権侵害に効果的に対処する姿勢を示した」。

オースティン長官はまた、北米航空宇宙防衛司令部で気球を追跡したカナダ政府の支援に感謝した。バイデン大統領は記者会見で、付随被害を生むことなく撃墜できるのであれば、撃墜するよう水曜日に指示したことを明らかにした。

KC-135ストラトタンカー給油機、F-22ラプター、米海軍P-8Aポセイドン哨戒機などが周辺に展開しているのが確認されている。米国沿岸警備隊のHC-130捜索救助機もウィルミントン沖を飛行していた。

F-22は コールサイン"FRANK01 " "FRANK02 "で飛行した。第一次世界大戦のエースでアメリカ陸軍航空隊から名誉勲章を受けたフランク・ルークJr少尉へのオマージュだろう。少尉はドイツ気球14機のと航空機4機を破壊した「アリゾナ・バルーン・バスター」として知られる。

土曜日未明、連邦航空局はカロライナ州の空港3箇所に「国家安全保障の取り組み」のため運行停止を命じ、気球が海岸線に接近したため海岸沖空域に一時飛行制限(TFR)を設定した。

この指示でチャールストン国際空港、マートルビーチ国際空港、ウィルミントン国際空港の飛行業務が停止された。これらの動きと軍の航空活動増加は、ジョー・バイデン大統領が土曜日未明にニューヨーク州シラキュースで気球について質問され「対処する」と述べた後のことだ。FAAは、東部時間午後3時過ぎに飛行制限と地上運行停止を終了させた。

The War Zoneは、気球は東海岸沖の国有空域でF-22により墜落させられる可能性が高いと結論づけていた。これによって、気球は海中に落下し、下界の人々や財産に危険を及ぼすことなく、航空兵器を使用できる。また、気球の破片や積載物を回収するため待機している船舶の活動も可能になる。また、国内空域で気球を撃ち落とすことで、国際空域より問題が少なくなる。

2月4日4:30 p.m.(米国東部時間)で判明している新しい情報は以下のとおり。

確定的な情報ではないが、映像を見ると、AIM-9サイドワインダーが至近距離で使用されたようだ。F-22は現在、主にAIM-9Xを使用しているが、長年使用してきたAIM-9L/Mの運用も可能だ。ミサイルはF-22の発射後、F-22の強力なAN/APG-77レーダーの助けで、の助けを借りてデータリンクでロックオンされ、ターゲットに対処できる。

ミサイルに弾頭がついていたかは明らかではない。特に他のF-22が過去数日間に収集した情報を使って、事前にターゲットを「ウェポナー」する時間があった。信管が問題なら、あるいは降下速度を落としたいなら、実弾に不活性弾頭を搭載することも考えられる。弾頭を搭載すれば、レーダー信管を搭載するAIM-120より、ミサイルの中点をリング状にするレーザー信管を搭載するAIM-9の方がはるかに良い選択だろう。気球の外周はレーダーのエネルギーに対しほぼ透明だからだ。

いずれにせよ、これはF-22の最初のキルとなった。また、史上最高高度での空対空キルである可能性もあるが、現時点では未確認だ。

米軍と国防総省の高官は、土曜日の午後の記者会見で、この撃墜について以下の情報を共有した。

  • 空軍はAIM-9Xサイドワインダーミサイルを1発発射し、高度58,000フィートから気球を墜落させた。気球は高度65,000フィートまで上昇していた。

  • 撃墜は、地上にいる人たちを脅かす可能性がなくなり、最初に可能となった時点で実行された

  • 米国は、気球の情報収集を停止させる措置を講じており、機密場所上空の通過時に中国へのデータ送信を阻止していた

  • 中国の監視カメラが米国領空に侵入したことは、これまで3回あったが、ここまで長期間にわたり行われたのは初めて。2回はドナルド・トランプ大統領政権時代、3回目はバイデン政権時代の初期に発生した。今回の気球飛行に関する中国側の説明には信憑性がない

  • 気球は1月27日にアラスカ共同作戦区域に、30日にカナダ領空に、31日にアイダホ州北部上空から米国本土に進入した

  • 西半球で活動する監視気球はこれ以外にもあり、人民解放軍の機材は5大陸にまたがり、南米や中米で活動する気球もある

  • 気球撃墜の航空作戦では、現在、破片の保管経路について連邦捜査局と連携して回収作戦を展開中

  • 気球の破片の着水地点は水深47フィートで、予想より浅い。現地には海軍と沿岸警備隊の複数艦船が展開しているが、7マイルに及ぶ瓦礫場からの回収のスケジュールは未発表

筆者注:本記事冒頭の素晴らしい画像は、LiveStormChasers.comの写真家Tyler Schlittにより撮影されたものです。


F-22 Shoots Down Chinese Spy Balloon Off Carolinas With Missile (Updated)

BYHOWARD ALTMAN, TYLER ROGOWAY AND STETSON PAYNE|PUBLISHED FEB 4, 2023 3:46 PM

THE WAR ZONE

https://www.thedrive.com/the-war-zone/f-22-shoots-down-chinese-spy-balloon-off-carolinas-with-missile

 

2023年2月4日土曜日

米国を横断飛行中の中国気球は安全保障上の脅威と明確に米国は認識しているものの、発表をめぐり謎が多い。

 


Chinese Spy Balloon Reaches Missouri

Yevhen Borysov/Getty Images/KFBB-TV capture

気球の存在とあわせ、国防総省が公開した時期で疑問と懸念が広がっている

国当局によると、中国政府の監視気球がミズーリ州北西端上空を飛行中という。これは、水曜日にモンタナ州上空で初めて公に目撃されて以来、気球が辿ってきたおおむね南東方向の軌道と一致している。

本日未明、ミズーリ州カンザスシティ近くのプレザントヒルにある米国国立気象局(NWS)が、遠くに見える気球らしきものの写真をツイートしている。その後、同州の他の場所でも画像が公開された。セスナ・サイテーションビジネスジェット機を操縦する民間パイロットが、カンザスシティ付近の約5万フィート上空で「漂流中の廃気球」を見たと報告したようで、これが中国の気球かもしれない。

これはすべて、独自に行った気球の航路予測と一致しており、気球は米国を横断し大西洋に向かって概ね南東方向に進むとされている。もちろん、この予測は時間の経過とともに大きく変化する可能性がある。

今日の記者会見で、ペンタゴン報道官のパトリック・ライダー米空軍准将は、気球は昨日からモンタナ州から東に移動し、現在はアメリカ大陸中央部上空にいるとだけ述べた。さらに、高度約60,000フィートにいると付け加えた。以前の報道では、気球はアラスカのアリューシャン列島とカナダ北西部の一部を通過した後、南下して米国本土に入ったとされていた。

「北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が、引き続き注意深く監視している」とライダーは付け加えた。「我々は現時点で、気球が地上の人々に軍事的または物理的な脅威を与えていないと評価しています」。

国防総省報道官は会見の後半で、「気球は進路を変更したため、再び監視を続けている」とも述べた。これが、気球が米国やカナダの領空に入る前に起きた変化なのか、それとも後に起きた変化なのかについては、詳しく説明しなかった。

ライダー氏はまた、国防総省が気球に「操縦能力がある」と評価したと明らかにしたが、全く驚くべきことではない。現代の高高度気球には、非常に長い距離を航行し、指定区域で卓越風にもかかわらず滞空する能力を持つものがすでに多数存在することが知られている。この中には、米軍の情報収集監視、通信中継、あるいは長距離攻撃など、各種任務の遂行のために積極的に試験しているタイプも含まれる。

国防総省報道官は、この気球はコースを外れただけいの民間の気象研究資産という中国政府の主張を、本日未明、真っ向から否定した。

「我々はこの気球が監視用であることを知っている」とライダーは述べたが、どのようにその評価をしたのか、また具体的な情報収集能力について詳しく説明を避けた。「この気球が米国の領空と国際法を侵犯していることは確かであり、容認できない。そのため、私たちはこのことを中国に直接、複数のレベルで伝えた」。

中国政府は気球が中国から飛来したことを公式に確認している。中国外務省の毛寧報道官は公式声明で、この気球を「主に気象学的な研究目的で使用される民間飛行船」で、「自己操縦能力に限界があり」、「予定コースから大きく外れた」と説明した。「中国側は米国側と連絡を取り合い、不可抗力による不測の事態に適切に対処していく」と続けた。

気象関連の調査は、もちろん、今世紀に入ってからの大部分は、長距離高高度空域の秘密情報収集活動の定番のカバーストーリーであった。冷戦時代、アメリカ政府は気球を使ったソ連監視を隠蔽しようとしたし、偵察機U-2ドラゴンレディを気象偵察機としてきた。

それ以外にも、中国政府はシステム、施設、能力に関する疑惑に対して、純粋に平和的な科学的または商業的な用途を意図していると主張してきた長い歴史がある。例えば、2021年には、中国外務省の別の報道官が、新しい分数軌道砲撃システムのような戦略兵器のテストを、民間スペースプレーンの実験と主張した。

この気球が表向きは民間の研究プラットフォームであっても、搭載センサーによって、情報価値の高いデータを収集できる可能性がある。中国が民間の科学研究資産を軍事・諜報目的で二重利用する可能性は、過去も何度か指摘されている。

NASAのミネソタ宇宙グラント・コンソーシアムの副ディレクターで、ミネソタ大学航空宇宙工学・機械学部の准教授ジェームズ・フラテン博士は、NPRのジェフ・ブランフィールに、気球の大きさと高度に言及し、「本当に気象パターンの研究に関心があるなら、こんな気球を飛ばす理由はないだろう」と述べた。

この事件の影響は、米中関係や国内政治の両面からまだ見えてこない。アントニー・ブリンケン米国務長官が来週予定していた北京訪問は、一部中止された。

The Hillによると、国務省高官は「我々は(中華人民共和国の)遺憾の意を表明したことに留意したが、この気球が米国領空に存在することは、国際法のみならず米国の主権に対する明確な侵害で、これが発生したことは容認できない」と述べている。「省庁間パートナーや議会と協議した結果、ブリンケン長官の中国渡航は現時点では条件が整わないとの結論に達した」。

訪中は米国のトップ外交官で5年ぶりとなるはずだった。国務長官が習近平国家主席と会談することは、専門家やオブザーバーの間では、昨年のナンシー・ペロシ下院議長(当時)の台湾訪問でさらに激化した両国間の和解の兆しとなるとみられていた。

モンタナ州などの議会議員や州・地元関係者は、気球に怒りをあらわにし、ジョー・バイデン大統領の対応に批判的な見解を示している。

国防総省によると、バイデン大統領は水曜日にモンタナ州上空で気球を撃墜するオプションを要求したが、安全上の懸念から最終的に撃墜しないことを決定した。気球の高度などを考えると、そのような作戦は試みることさえ難しいかもしれないし、気球の破片が地上にいる人に危険を及ぼすかもしれない。

The War Zoneが以前指摘したように、気球を撃ち落としたくない理由には、情報関連の理由もある。気球をそのまま進ませることで、気球の能力を観察し、気球が発する電子放射のデータを収集する機会が得られるからだ。国防総省は、気球が収集しうるデータを制限するため不特定の緩和措置を講じ、米国政府が決定した場合には気球を撃墜する権利を留保すると発表している。

この気球と、それに対するアメリカ政府の対応については、多くの重要な疑問が残ったままだ。特に不思議なのは、国防総省が気球の具体的な位置や動きをどのように監視しているかといった情報を提供していないことだ。

ライダー准将は、一般市民が気球の位置を知る権利があるかとの質問に対し、「一般市民は空を見上げて気球の位置を確認することができる」と答えている。

昨日の記者会見で米国防総省高官が行ったように、ライダー准将は気球が情報収集可能かもしれない重要性を軽視した。そもそもなぜ中国政府はこんな面倒なことをするのかという質問には答えず、それは北京の当局に聞くべきことだと言った。

昨日、The War Zoneが取り上げたように、気球が搭載している可能性のある正確なセンサー・パッケージは不明だが、目的ターゲットに接近し長期間にわたり持続的に活動できる空中プラットフォームは、軌道衛星で得られる情報とまったく異なる能力を提供する。また、センサーをより早く、より安価に配備でき、ミッションもより柔軟に立ち上げられる。

おそらく最大の未解決の問題は、なぜこのことがもっと早く公表されず、中国によるものとされたのか、過去のこうした活動は今まで公表されなかったのか、ということだ。国防総省によると、中国の監視用気球が米国本土を含む米国領土上空を通過したのは今回が初めてではなく、先行事例は2021年1月にバイデンの就任前からあったという。別の報道によると、中国の気球は以前、フロリダ、ハワイ、グアムの不特定多数の地域の上空を通過した。

国防総省は、米国本土上空で中国の気球が監視された先行事例のいずれについても、詳細は機密事項としている。米当局は今のところ、ほぼ1年前にハワイ北岸に浮かんだ非常によく似た気球が、米軍の同様の反応を引き起こしたかについて、肯定も否定もしていない。

国防総省のライダー報道官は今日の記者会見で、「今回と異なるのは、気球が米国領土上空にあった期間と長さだが、それ以上詳細には立ち入ることができない」と述べた。

The War Zoneは、国防総省、ホワイトハウス、NORAD、カナダ国防省に、この事件がなぜ公表され、帰属するのか、なぜ気球が米国やカナダの領空に最初に入ったと思われる数日後に声明が出たのかについての詳細情報を求めているところだ。

カナダ国防省への問い合わせでは、同国軍が第2の気球の可能性を監視しているとの昨日の声明について最新情報も求めた。国防総省のライダー報道官は、この件に関して追加情報を提供していない。

今回の気球事件は、The War Zoneが数年前から強調してきた、心配な傾向を浮き彫りにしている。最大のものは、未確認飛行物体(UFO)と俗称される未確認飛行現象(UAP)の目撃例の多くが、実際には外国の空中情報収集装置を発見した人々である可能性だ。

現在までの事例のほとんどは、ドローンや気球のような物体によるもので、複数の無搭乗システムが米海軍の駆逐艦に嫌がらせをしたり、民間の原子力発電所など機密性の高い場所の上空を飛んだ事例がある。気球他の軽量プラットフォームは、多くの国にとって情報収集のエコシステムの一部として過小評価されている。中国が監視やその他の任務用に多様な種類の飛行船に多額の投資をしているが、米軍も同じことをしている。

国防総省に新設された全領域異常解決局(AARO)と国家情報長官室(ODNI)の航空担当国家情報マネージャー(NIM-A)が1月に共同発表した非機密レポートによると、2022年に新たにカタログ化した366件のUAP事件のうち、163件は「気球または気球に似た存在」だったと断定している。

現在米国上空を飛行しているものと同一ではないにせよ、類似した気球が、過去数年間にインド、日本、そしてコスタリカの上空でも目撃されている。また、フィリピンのルソン島や南シナ海の近くでも、昨年、中国由来の飛行船が目撃されている。

「人工衛星やドローンを使い自分たちがやっている」。そして『未確認飛行現象』の目撃例の多くは、中国の航空機であると考えられている」と、「この問題に直接詳しい人物」がNBCニュースに語ったと、NBCニュースのチーフ外国特派員リチャード・エンゲルが今日ツイートした。「中国は毎日米国をスパイしている 」という。

いずれにせよ、中国の気球による監視活動やその他の類似の事件に関する米国政府の発表が、今後どのように変化するか、あるいは変化しないかを追うのは非常に興味深いことだ。■


Chinese Spy Balloon Reaches Missouri | The Drive

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED FEB 3, 2023 5:13 PM

THE WAR ZONE


2023年2月3日金曜日

DARPAがめざす巨大貨物飛行艇構想リバティリフターに2チーム案が採択されました。

 

ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズのリバティリフターコンセプト  DARPA image


DARPAのリバティリフター水上機ウィングイングラウンド効果実大実験機の設計を、ジェネラルアトミックスGeneral AtomicsとマリタイムアプライドフィジクスMaritime Applied Physics Corporationのチーム、オーロラフライトサイエンシズAurora Flight Sciencesとギブス&コックスレコンクラフトGibbs & Cox、ReconCraftの2チームが開発する



DARPAプレスリリースより

リバティリフタープログラムLiberty Lifterは、戦略的および戦術的な海上大型貨物の輸送能力の飛躍的向上をめざし、長距離低コストのX-Planeを設計、製造、浮遊、飛行させ、実証するのが狙い。

 リバティリフター実証機は、C-17グローブマスターIII輸送機と同様のサイズと能力の大型飛行艇となる。目標としては、シーステイト4での離着陸、シーステイト5までの水上での持続的運用、地上効果による水面近くでの長時間飛行、高度海抜1万フィートでの運用能力などがある。


ジェネラルアトミックスチームは、水上での安定性と耐航性を最適化するため、双胴中翼構造を選択した。ターボシャフトエンジン12基で分散推進をめざす。


ネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズのリバティリフターコンセプト


オーロラ・フライト・サイエンシズの出発点設計は、単一艇体、高翼、ターボプロップ8基を備え、従来型飛行艇に近いものとなっている。


オーロラフライトサイエンシズのリバティリフターコンセプト

コンセプト


フェーズ1では、DARPAは各チームと国防総省と協力し、特に運用ニーズと運用コンセプトを焦点にリバティリフターの設計を改良する。フェーズ1契約は、概念設計作業6ヶ月と設計熟成9ヶ月の、予備設計レビューで最高潮に達する18ヶ月の履行期間。さらに、製造計画と試験・実証計画のレビューに3ヶ月間を費やす。

 予定通りなら、フェーズ1は2024年半ばにフェーズ2に移行し、実物大リバティリフターXプレーンの詳細設計、製造、実証を継続する。DARPAは、これらの活動やリバティリフターコンセプトの運用機体の開発続行で、DOD各軍のうち少なくともひとつや海外パートナーとの提携を期待する。■



DARPA Selects Two Teams for Liberty Lifter X-Plane Program - Naval News


2023年2月2日木曜日

ウクライナが迎撃したロシア巡航ミサイルKh-101から興味深い事実が判明。ウクライナ戦は各種装備品技術入手の格好の舞台になっている。

 Intriguing Features Seen On Largely Intact Russia Cruise Missile Wreck

Ukrainian Air Force

  • ロシアの最新鋭巡航ミサイルが、ウクライナ中部で比較的無傷で落下し捕獲された

  • 今回見つかったKh-101から、ロシア最新鋭の空中発射型巡航ミサイルの新たな側面がわかる

墜落した比較的無傷なロシアのKh-101空中発射巡航ミサイルの写真に、特徴が明確に見られる。Otblesk-U電気光学誘導システム用カメラと思われるものや、対策システムと思われるものなどだ。

ウクライナ空軍のFacebook投稿によると、Kh-101は1月26日に同国中央部のヴィニツィア地方でウクライナ軍により撃墜されたとある。ウクライナ空軍は、この日、巡航ミサイル47発を破壊したと発表した。空中発射のKh-101、Kh-555、Kh-59と、海から発射されたカリブルであったとされる。ただしThe War Zoneは詳細を確認できなかった。

Ukrainian Air Force.

ソビエト連邦時代の1980年代に開発開始のKh-101は、現在でもロシアで最も近代的な空中発射型巡航ミサイルの1つ。通常兵装のKh-101(核兵器搭載のKh-102も同様)は、外観のデザインが大幅に変更され、ある程度のステルス性がある。

Kh-101は、Tu-160ブラックジャックやTu-95MSベア爆撃機から発射でき、2015年にシリアで初めて戦闘に投入された。小型ターボファンエンジンを搭載し、最大射程距離が2000マイル(情報源によって数百マイル前後)と報告されている同ミサイルは、約1年前に始まったウクライナ紛争で広範囲に使用されてきた。

手前にKh-101/102シリーズ空中発射巡航ミサイル12基、その後ろにKh-55シリーズが12基並び、Tu-160ブラックジャック爆撃機を背景に展示されている。ロシア国防省Russian Ministry of Defense


Kh-101のステルス形状は、ビニツィア地方で墜落したとされる残骸ではっきり確認できる。ミサイルの飛び出す翼は本体に取り付けられたままだが、発射後に後端から下方へ飛び出すエンジンは失われているようだ。

A look at what's left of the rear of the missile. Ukrainian Air Force

Ukrainian Air Force

ミサイルは反転し横たわっており、主翼の間に円形の窓のようなものがあり、その後ろにカメラが設置されている。これが何かは断言できないが、Otblesk-U誘導システムの一部のようだ。

飛び出した翼の間にあるミサイルの胴体下面にある円形の窓のクローズアップとその背後にあるカメラと思われるもの。ウクライナ空軍 Ukrainian Air Force

Kh-101は、衛星や慣性航法の両方を誘導に併用し精度を高める。また、レーダーを使った地形輪郭適合(TERCOM)機能で、低高度で目標まで飛行できるため、敵軍に発見されにくく、迎撃されにくい。このミサイルのTERCOMシステム関連のレーダーアンテナと思われるものが、カメラウィンドウのすぐ前にあるようだ。

その上に乗るのが「Otblesk-U」で、デジタルシーンマッチングエリアコリレーション(DSMAC)システムで、地形画像の内部データベースと照合し、兵器の誘導に役立つ。DSMAC機能は、米国のトマホークの一部も搭載している。

アメリカのトマホークを例に、TERCOMとDSMAC誘導システムがミサイルの位置を決定するためにスキャンする内容を、ごく一般的に視覚化したもの。via the Federation of American Scientists

Otblesk-Uは下方の地形をスキャンし、Kh-101の誘導システムで「最も正確かつ妨害に強い」と、ロシア軍の航空専門家でWar Zone寄稿者ピョートル・ブトウスキーは2017年に出版した著書Aircraft Ordnance Today(ロシア製航空機兵器の現在)」で述べている。

ただし、「標的の一定の認識と標的写真の事前存在が必要条件となることが重大な限界だ」とある。「ミサイル運用のためのデータ収集と処理には、インフラと有資格要員が必要だ」。

「したがって、Otbleskは非核Kh-101ミサイルのみでターゲットに近い端末誘導段階だけで使用される」。「巡航中は、精度は低いが、要求が少ないTERCOMレーダーシステムが使用される」。

墜落したKh-101の別の写真では、6個ずつ2列に対称的に並んだ12個の円形の穴または開口部が見える。目的はすぐには分からず、泥が12個すべてのポートについている。

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Ukrainian Air Force

墜落したKh-101に見られる泥で埋まった円形の穴または開口部のクローズアップ。ウクライナ空軍 Ukrainian Air Force

これは、レーダー妨害用のチャフを装填したカートリッジなど対抗措置の可能性がある。初歩的なレーダー警告受信機を使い、事前プログラム済みの無線周波数の放射を検出すると自動的に作動させる。また、ミサイルの飛行ルート上にある脆弱な特定箇所で発射するプリセットもできる。

Kh-101の残骸に見られるものは、ソ連時代の固定翼機やヘリコプターに使われていた対抗策ディスペンサーの外観と酷似している。

ポーランド軍所属のソ連設計のMi-24ハインド攻撃ヘリコプターに見られる対策用ディスペンサー。Boevaya mashina via Wikimedia

この穴や開口部は、アメリカのBQM-167スキーターをはじめとする空中標的型ドローンに搭載される対抗措置ディスペンサーと、似ている。このような能力で、敵防空網を通過する友軍機やミサイルの経路を遮断する対抗策に使用する、ターゲット・ドローンに固有の二次的な役割を与えているのです。2003年の米国主導のイラク侵攻作戦の初期段階において、チャフを搭載したFirebeeターゲットドローンが、まさにこの用途で使用されていた。

A BQM-167 Skeeter target drone. USAF

BQM-167の機首上部にあるカウンターメジャー・ディスペンサーをクローズアップした。USAF



このことは、Kh-101が、対抗措置のプラットフォームやデコイとして機能するよう構成されているのかとの問題を提起する。少なくとも昨年11月以降、ロシア軍はウクライナ攻撃の一環として、弾頭を持たない「非核化」Kh-55空中発射巡航ミサイルを投入していた可能性がある。おそらくデコイとして、またあらゆる種類の精密スタンドオフ弾の在庫が減少しているためであろう。これらのミサイルは、1月26日に撃墜されたと言われているが、弾頭の代わりに重量のあるダミーの「プラグ」を備えていた。

ロシア軍が、近代的で高性能、そしてますます貴重になっているKh-101を純粋にデコイとして使用する可能性は低いように思える。穴や開口部は、自己防衛以外の目的にも使えるかもしれない。これは、ある種のユーティリティ・インターフェースやベント・システムかもしれない。現時点では、何とも言えない。

Tu-95MS「ベア」爆撃機の翼の下にあるKh-101空中発射巡航ミサイル。

ウクライナ紛争で、ロシアのミサイルにこれまで見られなかった対策が施されていることが明らかになったのは、これが初めてではない。ロシアは紛争初期にイスカンダルM短距離弾道ミサイルを多用し、その兵器に特殊消耗品である対抗措置が搭載されていることを明らかにしていた。

ウクライナの戦場は、ロシアの高度兵器システムなどあらゆる軍事装備の一部が無傷で見つかる宝庫であることがすでに広く証明されている。ウクライナ当局の情報収集で、Kh-101を含むロシア兵器の多くが西側電子部品に大きく依存していることが判明している。ウクライナ当局者は、得られた詳細や捕獲したシステム全体を、米国を含む国際的なパートナーに転送し、さらなる分析を進めるのはほぼ間違いない。■


Intriguing Features Seen On Largely Intact Russia Cruise Missile Wreck

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 30, 2023 9:18 PM

THE WAR ZONE

https://www.thedrive.com/the-war-zone/intriguing-features-seen-on-largely-intact-russia-cruise-missile-wreck