2021年12月1日水曜日

米西海岸の物流トラブル対策で米海軍が港湾施設を民間に開放

一見すると大きなニュースではないのですが、日本企業の物流の悩みを解消する大きな流れの一部になるかもしれません。USNI Newsの記事です。


米海軍はオックスナード港湾地区に協力し、ポートヒューニーム施設を開放し、ロサンジェルス郡の港湾施設の混雑解消の支援で全国的なサプライチェーン危機の解決の一助をめざしている。Nov. 22, 2021. US Navy Photo

 

カリフォーニア港湾施設が処理能力オーバーとなっている中、パンデミックでサプライチェーンが影響を受け、貨物輸送に遅延が目立つが、米海軍は同州ポートヒューニームPort Huenemeの軍用ふ頭を民間商船に開放している。

 

ポートニューニームはサンフランシスコ、ロサンジェルス間で唯一の大型船取扱い可能港だ。

 

海軍の決定は2002年の「共同使用合意」を適用するもので、オックスナード港湾地区xnard Harbor Districtと取り交わし、第三ふ頭(全長1,000フィート)とあわせ21エーカーの工業用地の利用により貨物積み下ろし、一時保管を、軍事利用を妨げないことを条件に認めている。

 

貨物ターミナルと沖仲士を運用するポーツアメリカPorts America が40フィートコンテナーを貨物船から降ろし、休暇シーズンの需要増加に対応するべく作業を開始したとヴェンチュラカウンティー海軍基地Naval Base Ventura Countyが海軍報道資料で発表していた。

 

先週月曜日に自動車運搬船MVDelphinus Leaderが第三ふ頭に接岸しているのがMarinetraffic.comで確認された。先週金曜日にはコンテナ船MV Chiquita Ventureが港外で投錨していた。同船は11月11日にメキシコ、グアテマラ経由でポートヒューニームに寄港した。また金曜日にはMV Del Monte Harvest(コンテナー船)、MV Grand Race(自動車運搬船)が寄港していた。

 

共同使用合意により基地利用が可能だが、船員、基地従業員はともに荷物積み下ろしには従事できないことになっている。同海軍基地は「ふ頭及びコンテナ保管場所を提供するが労務提供はしない」とベンチュラカウンティー海軍基地広報がUSNI Newsに述べている。

 

ロサンジェルス、ロングビーチ両港湾施設で依然として積み下ろしの順番を待つ船舶が多い中で、同基地ふ頭の追加は朗報だ。

 

ロサンジェルス、ロングビーチはともに全国有数の大規模港湾施設ながら一時は沖合に100隻もの貨物船が順番を待つ状態だった。そこにCOVID-19が港湾労働者に広がり、コンテナ不足、トラック運転者不足、倉庫不足、鉄道便が利用できないことが加わったが、パンデミックで世界的に経済活動が低迷していた中で需要が最増加しており、取扱い施設は混雑の度を深めている。

 

連邦政府州政府は運輸規制の緩和を図り、利用料金徴収を猶予しているため混雑の解消につながりそうだ。各港湾も24時間作業に向かおうとしている。だが感謝祭により取扱いが止まり、貨物ターミナルでは日曜日には一切の作業をしていない。

 

ただし、各港湾は取扱能力をフル活用していない。11月23日にロサンジェルス港にはタンカー1隻、バルク貨物船1隻、コンテナー船18隻がふ頭に係留していたことが同港ウェブサイトでわかる。だが94隻がサンペドロペイに入港あるいは待機し、ロサンジェルス港では45隻が入港の順番待ち状態だった。

 

オックスナード港は海軍のポートヒューニームとオックスナード港湾区の二つを抱える。このうち、海軍は港の西部と北部の用地を管理し、四つある大型ふ頭が艦艇運用に供され、海軍工兵隊センターもある。オックスナード市が東、南側を管理し、大型ふ頭二つと民生用倉庫群がある。

 

ポートヒューニームのふ頭が一つ追加されただけで大きな効果にはつながらないものの、船舶運用側には選択肢が広がるわけで、特に多忙となる休暇シーズンの海運需要を考えると意味があり、さらに海軍自身の運用にさしたる影響は発生しない。

 

同港湾区のトップ、ジェイソン・ホッジは「NBの協力を感謝し、休暇シーズンの作業量増大に呼応する追加スペースの提供に感謝する」と述べているのを海軍広報は伝えている。「ともに必需物資の物流という課題に取り組むことができるのも長年の協力関係のたまものであり、全国的なサプライチェーン問題の解決に取り組んでいる」

 

「海軍は地域社会の一員としての重要性を認識しており、運用上の要求に応えるべく支援を提供している」と同基地司令ロバート・キムナック大佐が述べている。合意により「港湾施設の混雑解消を直接支援しつつ全国規模のサプライチェーン不足に対応し、海軍と地元社会の協力関係の好例」

 

米海軍は同港を1942年に接収し、その後第1第2ふ頭は民生用に開放したとポートヒューニームのウェブサイトが沿革を述べている。同港ではバナナ、自動車、食用油、生鮮食品を取り扱っており、今年9月までの実績で80億ドルの貨物が同港を利用した。ただし、ロサンジェルス、ロングビーチ両港合わせ年間4.600億ドル(2020年実績)なので微々たる規模である。■

 

Navy Opens Up Military Deep-water Pier to Merchant Ships to Ease California Cargo Crisis - USNI News

Navy Opens Up Military Deep-water Pier to Merchant Ships to Ease California Cargo Crisis

By: Gidget Fuentes

November 29, 2021 4:58 PM

 

2021年11月30日火曜日

オーストラリアSSN選定はここまで困難な作業となる。ヴァージニア級対アステュート級の比較。米設計案の採用が有望に見えるが、2060年代の安全保障を左右しかねない重大な決断。

 

英海軍のアステュート級。. Image: Creative Commons.

 

 

立オーストラリア海軍(RAN)向けの原子力潜水艦の選定は非常に複雑かつ困難な選択となる。現在、二型式が候補にあがっている。米海軍(USN)のヴァージニア級ブロックV、英海軍(RN)のアステュート級だ。

 

ともに優秀な艦で性能は互角といえる。原子炉は燃料交換が不要な点で共通しており、高性能ポンプジェット方式の採用も同じだ。またトマホーク巡航ミサイルを運用できる点も共通する。

 

オーストラリア政府が検討すべき点として何隻を整備するのか、供用期間、国内産業界への裨益などがある。

 

今回は両級の違いに着目し、リスク、サイズ、乗員規模、ペイロード、供用開始時期、また輸出規制について論じたい。

 

 

 

【設計上のリスク】ヴァージニア級ではオーストラリアが運用を望むAN/BYG-1 戦闘システムとMk-48魚雷の運用が最初から可能だが、アステュート級は想定してない。アステュート級を改装すれば、ち密に設定されている艦内配置、重量、浮力、バランス、動力、冷却機能の変更が必要となり、想定外の問題になりそうだ。既存設計の変更は数億ドル相当の作業となり数年かかる。代替策として最初から英装備を受け入れ、英国製戦闘システムとスピアフィッシュ魚雷を採用することがある。

 

【サイズ】両級とも通常型の既存艦コリンズ級を上回るサイズで、オーストラリアのインフラ整備が必要だ。これは低規模予算では実施できない。アステュート級は全長97メートル、排水量7,800トン、ブロックV仕様のヴァージニア級は140.5メートル、10,364トンだ。コリンズ級は77.8メートル、3,407トンにすぎない。

 

【乗員数】RANではコリンズ級の60名の乗員確保にも苦労しているので乗員数は少ないに越したことはない。アステュート級は90名、ヴァージニア級は130名程度が必要だ。

 

【ペイロード】ヴァージニア級がアステュート級より大きく、トマホークミサイルに加え将来の新型装備にも対応する。英艦は魚雷発射管を使うのみで、スピアフィッシュとトマホーク合計38発の発射が可能だ。ブロックVヴァージニア級は65発を搭載する。魚雷発射管から25発、ペイロード発射管からトマホーク12発のほか、セイル後方の大直径ペイロード発射管からトマホーク28発も運用するほか、AIM-9X対空ミサイルや極超音速滑空ミサイルも発射できる。

 

【調達見込み】米国が同意すれば既存のヴァージニア級ブロックV数隻をRANに比較的短期間で提供できる。RANの求める原子力安全運用基準と乗員訓練、運用方針の策定に供される。同時に8隻はオーストラリア南部で建造する。2018年のASPIレポートではSSN10隻を整備すればオーストラリアの要求水準を満たすのが可能で、乗員確保が必要とある。

 

原子炉運転では少なくとも当初数年間はUSNによる指導が必要とされ、米向け建造数隻をRANに回す想定だが、これはあくまでも米国が優先順位の変更を認めた場合のことだ。米海軍はヴァージニア級を66隻まで整備する計画だ。アステュート級では英海軍が想定する7隻での建造中止を改める必要が生まれるが、そのため新鋭ドレッドノート級原子力潜水艦の建造が遅れることになる。

 

ヴァージニア級の維持運用は米海軍実績を見ると容易なのではないか。新鋭技術の研究開発も運用隻数が少ないと長期化したり予算超過となることが多い。オーストラリアが最終的にSSNを10隻整備する場合、アステュート級なら17隻、ヴァージニア級なら76隻がそろうことになる。米海軍では静粛性を高めたヴァージニア級ブロックVの企画をすでにはじめている。

 

【補給体制】有事の補給体制も考慮すべき分野で、ヴァージニア級を採用の場合はオーストラリア海軍艦は米海軍艦とともにオーストラリア、日本、グアム、ハワイ、サンディエゴで補給を受けられる。だが英艦採用の場合は英国はAUKUS加盟国であり、スピアフィッシュ魚雷を一部のRAN/USN施設に確保しておく必要が生まれる。

 

【乗員の確保】アステュート級を選択する場合はオーストラリア国内の艦長副長人材の確保が短縮化できる。英海軍の艦長副長は原子力推進コースを修了しており、専門の原子炉技術士官も補助にまわる。これに対し米海軍の艦長副長クラスは全員が原子炉技術をマスターしており、原子炉運転をまじかに見てキャリアをつでいる。オーストラリアで原子力技術をマスターした士官が潜水艦艦長になるには15年かかるため、英米の扱いの違いが大きく作用する。

 

【技術移転の制約】輸出規制がヴァージニア級を選定した際に大きくのしかかる。米国務省の国際武器取引規制(ITAR)制度では米軍事技術の移転を厳しく制限している。ITARのためオーストラリア国民で二重国籍とみなされるものは米政府承認を取るのが困難となる。そもそも二重国籍市民は最初から対象から外されそうだ。

 

ITARの違反罰則が厳しい。米政府指定のリストに違反すると一回につき100万米ドルまたは10年の懲役が科される。ITARの想定する二重国籍者排除の原則はオーストラリアで問題になる。移民が多いためだ。これに対し、英政府の輸出規制には柔軟性がある。

 

【まとめ】見る角度により、最適な原子力潜水艦の選択はオーストラリアにとって極めて技術面で複雑かつ困難になりかねない。最も楽観的に見ても引き渡しまで数か年がかかり、オーストラリアの乗員が艦運用に自立するまで15年かかってもおかしくない。正しい選択によりオーストラリアにおける2060年代以降のSSNの運用維持が左右されかねない

 

長期にわたり影響を与えかねない政府の決断はそうたくさんあるものではなく、間違いを許容できる余地はほぼない。今回がまさしくその例である。■

 

Astute vs. Virginia: Which Nuclear Submarine Is Best for Australia?

BySam GoldsmithPublished2 days ago

 

Sam Goldsmith is the director of Red Team Research, has a Ph.D. on Australian defense industry innovation, and has published through the US Naval War College. This first appeared in ASPIs the Strategist. 

In this article:Astute-Class, AUKUS, Australia, China, Virginia-class

 


 

歴史に残らなかった機体 番外編 米空愚がこの戦闘機が正式採用されていたら歴史は変わっていた----消えた5機種を見る。

 



F-35共用打撃戦闘機やF-22ラプターの背後に選定に漏れた競合各機があった。米政府は優秀な機体を選択したことはずだが、常に選定は正しかっのだろうか。


過去の選定に漏れた機体は国防総省が対象企業の言う通りの性能の実現を信じられなかった、機体性能がその時点で必要とされた水準に達していなかったため採択されなかった。


理由はいろいろだが、選定に漏れた各戦闘機は生産されなかった。だが、選定されていれば、卓越した、あるいは他に比類なき性能を発揮していたはずの機体がある。では、その5例を見てみよう。



第5位 F-16XL もっと優秀な F-16


F-16ファイティングファルコンは40年超にわたり、米空軍戦闘機部隊の中心だが、F-16供用開始の一年前、F-16をしのぐF-16XLが生まれていた。


同機は技術実証機の域を超えた高性能を発揮し、空軍の求める高性能戦術戦闘機としてF-15Eの有力な対抗策になっていた。


F-16XL (U.S. Air Force photo)


だが製造コストと既存システムの利用という点でF-15Eに軍配が下り、同機は敗退したが、今でもF-16XLの優秀性を論じるものが多い。


主張には議論の余地があるが、F-16XLが実現していたら第四世代戦闘機として最高性能を発揮していたのだろうか。


第4位 A-12 Avenger II:米国初のステルス戦闘機になるはずだった(U.S. Navy)


1988年1月13日、マクダネルダグラス=ジェネラルダイナミクス合同チームにA-12アヴェンジャーIIの開発契約が交付された。同機はロッキードがSR-71派生型で武装型となるはずだったA-12とは別の機体だ。実現すればA-12は全翼機形状となり、ノースロップ・グラマンB-2スピリット、同社のB-21レイダー同様の形状ながらはるかに小型の機体となっていただろう。ただA-12アヴェンジャーIIは全翼機形状を採用したが、機体全容は当時開発中のB-2スピリットとは異なる姿だった。


Artist’s rendering of A-12 Avenger II



A-12は鋭角三角形形状で、「空飛ぶドリトス」の愛称がついた。A-12開発は問題なく進展している観があったが、突然国防長官(のちの副大統領)ディック・チェイニーにより1991年1月に開発中止とされた。



第3位 YF-12: 史上最高速で最サイズの戦闘機


冷戦時にSR-71ブラックバードは最も印象の強い機体だったが、高速飛行と高高度飛行だけを主眼としていなかった。事実、SR-71の前身となったのがA-12で迎撃戦闘機として計画され、その後YF-12となり、理論上は制式採用後にF-12Bとなる予定だった。


YF-12の変更点は機体前方にあり、コックピットが追加され戦闘制御士官が空対空装備の運用にあたるはずだった。


機首は設計変更でヒューズ製AN/ASG-18火器管制レーダーを搭載するとした。これは開発中止となったXF-108ように開発されたものだった。だがA-12とYF-12の最大の違いは高性能カメラ装置その他偵察装備の収容を想定した機内搭載ベイ4つだった。そのひとつに火器管制装備を、残る三つにヒューズAIM-47ファルコン空対空ミサイル3発を収納する予定だった。YF-12開発の背景は以下を参照されたい。


第2位 21世紀の運用をめざしたASF-14スーパートムキャット


F-14Dには「スーパートムキャット」の愛称がついたが、F-14近代化改修は「ST21」の名称で別に開始されており、「21世紀のスーパートムキャット」の実現を目指していた。エイビオニクス改良、推力増加、航続距離延長と全般的に性能向上を目指していたのでこの名称はあながち誤りといえなかった。


ST21、AST21ともに既存トムキャットを再生産する構想だったが、グラマンは海軍にその後まったく新規生産となるトムキャットをASF-14として売り込もうとした。


ASF-14は外観ことF-14同様だが類似点は外観だけだった。


ASF-14は推力60千ポンドでF-14Dをしのぐ重力推力比を発揮するほか、推力偏向制御、機内燃料搭載量の増加、ペイロード拡大、レーダーのほかセンサーポッド各種により状況認知能力の増加をめざし、当時の第四世代戦闘機各種より傑出した性能を目指した。


第1位 YF-23: ラプターと互角の機体


ロッキード・マーティンF-22ラプターの供用が始まり15年ほどになるが、同機には同等の性能を有する対抗機種がないままだ。だが、常にそのままではなかった。1990年代には短期間ながらその後F-22となったYF-22には同等の性能を有する対抗機種があった。それがノースロップのYF-23だ。


YF-23試作型は2機製造された。一号機はブラックウィドーIIと呼ばれ黒色塗装でプラット&ホイットニー双発でマッハ1.43のスーパークルーズを1990年のテストフライト開始時点で実現した。

Both YF-23 prototypes in flight (U.S. Air Force)


二号機は灰色塗装のため「グレイゴースト」と呼ばれ、ジェネラルエレクトリックYF120エンジン双発となった。こちらのスーパークルーズはテスト時に、マッハ1.6となりわずかながらYF-22のマッハ1.58を上回った。


YF-23はF-22のアクロバティック性能と互角だったが、ロッキードが契約を勝ち取った。ロッキード作がダイナミックな飛行ぶりを誇示したためで、同社テストパイロットは高い迎角でミサイルを発射したライ、9Gの飛行ぶりをみえつけた。YF-23でも同じような飛行ぶりを示せたのにノースロップは実行しなかった。YF-22の採択は性能より営業手法によるものと主張する向きが多く、国防関係者の目を奪ったという。■


The 5 best fighters America decided not to buy


Alex Hollings | November 28, 2021


2021年11月28日日曜日

輸送機がミサイル発射機になる。米空軍が進めるパレット弾薬類構想。

 米空軍がめざす戦力分散化の一貫としてこれまで支援機とされてきた機材も戦力を展開する手段となってきました。Breaking Defenseが以下伝えています。


2021年11月3日の空軍によるラピッドドラゴン構想の実証で実弾非装てんの巡航ミサイルが空中で発進した。MC-130Jがパレットのまま同ミサイルを投下した。(US Air Force)


空軍は輸送機を爆弾投下機に変貌させる画期的な演習を来月実施する。▼MC-130Jの標準貨物パレットで巡航ミサイル実弾をパラシュートで空中に投下する。▼この実証で空軍のラピッドドラゴンRapid Dragon 事業の第一段階が終了する。▼これは「パレット弾薬」Palletized Munition 構想の効果を確かめるのが目的だ。



高度戦力を展開する中国のような相手との戦闘の初期段階で空軍は空爆を受けることを覚悟しており、輸送用機材による人員装備の戦闘地への搬送が困難になると見ている。▼さらに、現有の戦闘機攻撃機だけでは打撃戦力に不足が生まれると想定している。▼コスト効果に優れた形で長距離スタンドオフ兵器を大量に多くの機材で運用できれば、戦闘実施の柔軟性が伸び、新たな抑止効果が生まれると空軍は期待する。▼米空軍の未来派クリント・ハイノート中将 Lt. Gen Clint Hinoteが昨年次のように発言している。「爆撃機部隊がいかに充実しようとも合同部隊が求める攻撃能力は増える一方だ」


そこでパレット搭載弾薬類を貨物機から投下する構想が生まれた。▼この考え方では「スマートパレット」をまず作り、外観上は標準パレットと同じだが、標的情報を入れ、内部に搭載する誘導兵器に標的情報発射指令を与える。▼パレットは輸送機から投下されると、落下中に各種装備を発射し、別々の標的を狙う、あるいは時差を設定しばらばらに運用することが可能となる。


ラピッドドラゴン装備をMC-130Jに搭載し空中投下の準備をした。 (US Air Force)


11月3日にホワイトサンズミサイル演習場(ニューメキシコ州)でMC-130Jから投下したパレットには長距離巡航ミサイル分離試験機が入っており、飛行実証に成功した。▼空軍研究本部(AFRL)によれば同実験でMC-130J乗員は見通し線外の中継機から標的データを受信し、情報を機内の戦闘制御装備から試験用巡航ミサイルに転送した。▼実弾を装てんしていないとはいえ巡航ミサイルへ初のデータ転送となったとAFRLは総括している。▼MC-130Jはラピッドドラゴン仕様のパレットを貨物扉から放出し、パレットはパラシュート落下を始めた。▼その後、巡航ミサイルテスト機が発射された。発射後数秒で巡航ミサイルは主翼、尾翼を展開し、上昇してから標的に向け滑空した。


空中投下後のパレット弾薬展開システムには実弾非装てんの巡航ミサイル試験機が搭載されていた。Nov. 3, 2021. (US Air Force)


12月に予定する実証では実弾の巡航ミサイルを用い、事業の開発第一段階を完了する。▼開発用試作型から実用試作型へと技術を成熟させるべく、来月の実証が成功すれば即時に作業開始する。▼ラピッドドラゴンの次の段階では装備の追加を行い、パレット展開システムの能力で兵装品複数を安全に転嫁できるかを試す。


11月3日の実証は空軍特殊作戦司令部の実戦部隊が行たっとAFRL資料にある。▼その他加わったのは海軍水上戦センター、スタンドオフ兵装応用センター、ロッキード・マーティンのミサイル火器管制部門、システィマテクノロジーズサフランエレクトロニクス&ディフェンス等だ。▼このうち、ロッキード・マーティンは25百万ドル契約を昨年交付されており、ラピッドドラゴン事業の継続を任されている。▼同社のロールオン/オフ式のスマートパレットでC-17ならAGM-158B(JASSM-ER共用空対地スタンドオフミサイル射程拡大型)ミサイル32発まで搭載可能とロッキードは説明している。■



US Air Force one step closer to turning cargo planes into makeshift bombers

Next month, the Air Force will see if it can launch a live cruise missile from a pallet that was air dropped by a cargo plane.

By   VALERIE INSINNA

on November 19, 2021 at 12:19 PM


2021年11月27日土曜日

英空軍が合成燃料の作戦運用構想を示し、前線や艦艇内での燃料供給の可能性に触れた。一方、小型機には電動化技術の進歩が著しい。軍もゼロエミッションを目指している。

Zero Petroleum

 

ロンドン---英空軍トップが考える未来の姿では前方作戦基地や艦艇内で航空機用合成燃料を製造し、ネットゼロエミッションを2040年までに実現する。

 

英空軍の環境目標でエコフレンドリーなジェット燃料の実用化がカギとなる。だが、サー・マイク・ウィグストン空軍中将Air Marshal Sir Mike Wigstonはフリーマン航空宇宙研究所での11月24日スピーチで新技術の実用化で生まれる作戦運営上の利点にも触れた。

「再生可能発電は太陽光や小型水素電源とし、莫大な量の燃料や補給活動を不要にし、補給の脆弱性や苦労もなくなる。この動きをさらに進め合成燃料の製造施設を前方配備すれば、基地あるいは艦上でジェット燃料を製造できる。HMSクイーン・エリザベス空母打撃群で燃料を自給できる」

この構想はさほど突飛なものではない。

RAFの迅速戦力室Rapid Capabilities Office (RCO) が合成燃料製造技術に予算を投入しており、試行中の方法のうち少なくとも一方式が移動可能になると期待している。

今月初め、RAFは小型機イカルスC42を世界で初めて100%合成燃料で飛行させた、燃料は英国の小企業ゼロペトロリアムZero Petroleumが製造したと発表した。

ゼロペトロリアム以外の企業が手がける合成航空燃料二つ目の事業の詳細も間もなく発表される。

「RAFは民間技術系企業数社と組んでおり、12月初旬にもこれ以外の燃料プロジェクトの追加情報を開示したい」(英空軍報道官)

ゼロペトロリアムの合成燃料の原料は空気と水だ。まず水から水素を、空気中の二酸化炭素から炭素を抽出する。風力や太陽光の再生可能エナジーで水素と炭素を結合させる。加熱した金属触媒で圧力をかけて合成燃料が生まれる。

同社はスコットランドの小島に製造プラントを数週間で設置し、今回のフライト用燃料を供給した。

RAFではエタノールやリサイクル廃油など飼料を原料のサステナブル航空燃料sustainable aviation fuel (SAF)をと使用しているが、高コストと小規模製造のため、実用性に疑問が出ていた。

「安価かつ供給に心配がなくなれば利用したいが、中短期的には製造規模が低くサプライチェーンも不足気味だ。この関連でいうと、世界規模のジェット燃料消費量は年間およそ320百万トンだがSAFの生産規模は世界全体で10万トン程度で拡大の気配はなく、スポット価格は通常のジェット燃料の10倍程度というのが現状だ」(ウィグストン中将)

RAFでは皇太子をヨルダンまでA330VIPジェットで運んだが、同機にはSAF混合燃料を使用した。

ウィグストン中将は一部機種で「100%SAFでフライトをまもなく実施する」とも述べた。ただし、合成燃料のほうが「期待が持てる代替手段」となり、SAFより効果は大きいとした。

「合成燃料製造方法で新しいアプローチが登場しており環境にやさしく持続可能となる。外国に依存せず確保できる。また化学的に純粋度が高い燃料で排気がきれいとなり、整備も容易となり、長寿命を実現し、騒音排熱など目視上の特徴が低くなる」

サステナブルあるいは合成燃料は石油製品やジェットエンジンをグリーンにする手段として唯一の選択肢ではない。電動や水素推進方式も別の選択肢となり、小型軽量の訓練機への応用が考えられると同中将は述べた。

「初のゼロエミッション運用を2020年代末までに実現するのがねらいだ。機体は訓練生、大学生候補生の飛行訓練初期段階に使うのに最適だ。これに成功すれば、世界初のゼロカーボン機が軍用に登場することになる」

RAF広報官からは「各種技術を比較検証しており、新技術の理解を深めている」とし、「これにより未来のコンセプトと要求内容を賢いユーザーとして深める」との発言もあった。

英空軍は90機残るグロブ製チューダーT1練習機の後継機の選定を急いでいる。

一方ロールスロイスは電動フライトで一定の進展が生まれたと11月19日に発表し、世界航空スポーツ連盟に全電動機Spirit of Innovation で世界記録三つの更新データを報告したという。

データでは同機は最高速度555.9 km/h (345.4 mph)を記録し、従来の記録 213.04 km/h (132 mph)を大きく破った。

英国防省のボスコムダウン試験飛行施設で同機は532 km/h (330 mph) を達成し、高度3千メートルへの上昇も202秒と従来より60秒短くできたと同社は発表。■

British Air Force chief envisions synthetic fuel produced on deployments

By Andrew Chuter

 Nov 25, 04:02 AM

 

2021年11月26日金曜日

建国間もないイスラエルが核兵器開発の発足に成功した背景には国境を越えたたくみな資金調達ネットワークがあった。

 

The Japan Times

 

 

スラエルの核兵器取得の動きは1948年の建国にまでさかのぼる。建国の祖デイヴィッド・ベングリオンはホロコーストの恐怖とあわせアラブ周辺諸国の脅威を痛感していた。核兵器こそユダヤ国家存続のカギを握る最後の手段ととらえ、イスラエルに勝る通常兵力を周囲国が投入した場合をベングリオンは想定した。ただし、創設まもないイスラエルには必要な技術も資材もなく国産核開発がままならないことだった。そこでイスラエルは海外調達をめざした。幸いにもその願いを実現する条件が生まれた。

 

 

1950年代中ごろにフランスはアルジェリアを自国領土ととらえていたが、アルジェリア国内の抵抗勢力がエジプトから支援を受け強力となり、フランスの支配力は危機に陥った。そこでフランスはイスラエルの協力でアルジェリア情勢の情報収集を進め、代償としてフランス製通常兵器類を供与した。1956年には核技術も対象になったのは英仏両国が軍事介入の動きを示したいわゆるスエズ運河危機の発生だ。

 

ベングリオンはそもそもイスラエルをまきこませるつもりはなかった。だがフランスは小型試験原子炉の供与をもちかけた。スエズ侵攻の企ては米国ソ連双方がイスラエル、フランス、英国へゆさぶりをかけたため不発に至った。フランスはイスラエルを超大国から守れないことを露呈した。撤退合意に先立ち、イスラエルはフランスに核協力の強化を求めた。フランスは大型のプルトニウム増殖炉とともに再処理工場の提供に応じた。これでイスラエルは原爆製造に必要なプルトニウム獲得のめどがついた。あとは重水だけだ。

 

核兵器製造に必要な技術を他国にここまで提供した例はそれまでなかった。ただしベングリオンは核合意実施に必要な資金を用意立てする必要があった。ディモナ核施設の建設費用は不詳だが、イスラエルはフランスに1960年時点のドル価格で80から100百万ドルを支払ったとみられる。当時のイスラエルには大金だった。さらにベングリオンの心配は核開発予算を国防費から流用すればアラブ諸国に対し有効な通常兵力の整備がままならなくなることだった。

 

そこでベングリオンは民間資金でフランスとの合意を実現する方法を考えた。この経緯はマイケル・カーピンがThe Bomb in the Basemenで説明している。ベングリオンは「エイブに電話しろ」と側近に伝えた。エイブとはニューヨークのビジネスマン、エイブ・ファインバーグのことだ。成功した財界の人物で慈善活動家としても著名なファインバーグは米国ユダヤ社会の中心人物であり、民主党とつながっていた。米国の第二次大戦参戦に先立ち、ファインバーグは在欧ユダヤ住民のパレスチナ移住の資金集めを展開していた。終戦後にヨーロッパでホロコースト強制収容所を目の前にしたファインバーグはホロコーストの生存者をパレスチナへ移動させたが、当時は英国が不法ユダヤ移住対策で封鎖網を敷いており、これを出し抜く必要があった。この際の活動を通じ、のちにイスラエル国家運営で重要人物となった各人と人脈ができた。帰国するや、ユダヤ国家の独立直後に国家承認を与えるようハリー・トルーマン大統領へのロビー活動を展開した。見返りにトルーマン再選に向け資金集めをした。

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こうして1958年10月にベングリオンがファインバーグにディモナ合意実施に必要な資金調達の支援を求めたのは自然な流れだった。ベングリオンは以前から米国内のユダヤ指導層にイスラエルのため資金集めを依頼していた。独立をめぐる武力衝突を予期してベングリオンは1945年にニューヨークに行き、パレスチナ地区のユダヤ勢力向け武器の調達資金集めをした。この目論見は成功し、カーピンによれば「生まれようとする国家に秘密のうちに在米富裕層17名に『ソネボーンインスティテュート』のコードネームが与えられ、各構成員は数百万ドル相当の寄金を提供し、武器弾薬のほか、機械類、病院器具薬品類さらに輸送用船舶まで調達した」。

 

ファインバーグは17名のひとりだった。1958年にソネボーンインスティテュートに加え北米欧州のユダヤ人指導層にディモナ各プロジェクト用の資金調達を要請した。おおむね成功し、カーピンによれば「極秘のうちに資金集めが2年続き、富裕層25名が40百万ドルを拠出した」。

 

ではファインバーグの貢献はどこまでイスラエルの核開発を助けたのだろうか。再び、カービンから引用する。

 

ベングリオンがファインバーグでここまでの資金規模を各国のユダヤ人社会から調達できると確信を持てなかったら、フランス合意の実現はおぼつかなかっただろう。1950年代60年代のイスラエルには高度技術入手の代金を支払う余裕がなく、ディモナ原子炉や核抑止力を自国資金で賄うのは不可能だった。

 

ただし、ファインバーグの米イ関係での関与はここで終わった。民主党が1960年にホワイトハウスを奪回すると、ファインバーグは非公式大統領顧問となり、ケネディ、ジョンソン両大統領に仕え、1961年にはファインバーグがベングリオンに米国によるディモナ査察を受け入れるよう説得していた。■

 

This Is How Israel Got its Nuclear Program Started


by Zachary Keck

 

November 25, 2021  Topic: Israel Nuclear Weapons  Region: IsraelUnited States  Blog Brand: The Reboot  Tags: IsraelMilitaryTechnologyWorldNuclear Weapons

 

Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of The National Interest.

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