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アフガニスタン情勢の急進展をイスラエルは冷静にこう見ている。アフガニスタンが再びテロ活動の温床になる。

 


カブール空港でアフガニスタン人に銃を向ける米兵。同空港には数千名が押しかけ国外脱出を図っていた。August 16, 2021(Wakil KOHSAR / AFP)


スラエル政府関係者はアフガニスタン情勢を神経質そうに眺め、週末の政府転覆によりアルカイダがテロ活動を世界規模で展開し米国、イスラエルが標的になりかねないと見ている。


タリバン、アルカイダはアフガニスタン国内の米軍を放逐したことで、「大きく扉が開き」テロ活動をアフガニスタンから展開できるようになったとの感触が国防関係筋には強い。ある筋からはアルカイダがテロ活動を米国の「権益」に仕掛ける事態が極めて近い将来に発生するので米国は備えるべきとの声がある。


「アルカイダがアフガニスタン情勢に付け込んで戦闘員を募集しテロ襲撃を計画するのはまちがいない」と上記筋は見ている。


現時点でアフガニスタンの首都は空港除きタリバンが占拠しており、空港は米軍2500名が防御している。ペンタゴンは16日に米市民国外脱出を助けるため部隊を追加派遣すると発表。中央軍はタリバン関係者と接触し、撤収作戦中の衝突回避を協議したと伝えられる。


米国のアフガニスタン撤収についてイスラエルから公式コメントは出ていないが、国防上層部筋はBreaking Defenseに対し、域内各国からは米国の約束に幻滅を覚える日になったと述べた。


「米国が逃げ去る姿、あとにテロ集団による乱暴狼藉が残る形になったのは悪いサインで一部国への影響が避けられない」とイスラエル国防筋は述べている。


イスラエルの国防トップ、政界トップは異口同音に米国の退場でアフガニスタンが崩壊している一方で、イランが侵略行為を続けており、レバノンが政治的に不安定になっていることで域内で大きな火の手が上がるとの見方をしている。なかでもヨルダンあるいはイラクが「過激聖戦主義者の念入りな計画行為にふりまわされかねない」との見方がある。


バイデン政権によるアフガニスタンの扱い、さらに域内全体の扱いに不満を隠せない関係者もいる。「アフガニスタンで起こっているのはガソリンを火にまいたのに等しい」という声もある。


「中東へ悪影響が出る」と語るのは、退役中将エイモス・ヤドリンで軍事情報部門長を務めた。「域内ではエジプト、サウジアラビア、バーレーンが米国の同盟国だが、軍事危機の際に米国は頼れないと感じている。ここから引き出せる結論はこうした国がロシアや中国との軍事関係の強化に向かうことだ」


とはいえアフガニスタン崩壊で域内で提携先を求める各国からイスラエルに防衛関係強化をめざす機会が訪れるとヤドリンはみている。


他方で、アフガニスタンが9.11以前の状況に戻り、テロ活動の温床になるとの見方があり、イスラエルは自国の防衛体制強化も必要だとヤドリンは指摘している。


常にたがわず安全保障面のイスラエルの懸念事項はイランだ。


タリバンはスンニ派の強硬派集団でイランはシーア派のため、そのまま親交を深めることはない。だが米国はイランがタリバン支援を続け米国の域内権益を混乱させようとしていると非難しており、イランがアフガニスタンと長大な国境線を有していることから、アフガニスタン国内状況には当然関心を有していると解釈している。


イスラエルでイスラム界に詳しいモルデチャイ・ケダールはBreaking Defenseにイランはアフガニスタンへの影響力を強め、「采配を振る」ようになるとみていると語った。


「状況は悪い、とても悪い」とし、イランとタリバンは同盟関係にはないものの、両国のイスラム集団が共通利害から非イスラム国家を標的にしかねないという。


イスラエルにはバイデン政権が域内問題に対して意味のある対処をしていないと懸念を深めている。


アフガニスタン事情があわただしさを見せる中、先週CIA長官ウィリアム・バーンズがイスラエルを訪問し、イラン新大統領エブラヒム・ライシについてブリーフィングを受けていた。


その席上でCIA長官にはイスラエル筋からのデータを示され、イランが進行中の核交渉を利用して、イラン強硬派が実権を握り、レバノンの支配を強める動きを逐一見せつけようとしているとの見解を示されたという。


内部筋によればCIA長官向けのプレゼンでイランに向けたイスラエルの「眼と耳」による情報に長官も驚いたほどだったという。■


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Israel Braces For Renewed Terrorism Coming From Taliban-Led Afghanistan

By   ARIE EGOZI

on August 16, 2021 at 12:57 PM


コメント

  1. ぼたんのちから2021年8月19日 1:59

    アフガン戦争中、アルカイダ幹部・メンバーの多くはイランによって匿われ、その一部はシリア内戦に、また、ビンラーディンの息子他はパキスタンに送られていた。
    宗派や考え方の異なるアルカイダをイランが受け入れるのは常識外れなことと思えるが、恐らくCCP中国から依頼があったと推定する。
    今、アフガンがタリバンにより再統治されると、イランが保護する残るアルカイダの多くがアフガンに戻り、組織を再編し、反米テロに加え、イランの意を受けてイスラエルも攻撃する可能性は否定できない。しかし、アルカイダは、アフガン戦争前と異なり、現有組織はかなり小さく、また、IS系などの組織と競合することになり、以前ほど組織・実行力は大きくならないかもしれない。
    また、記事にあるように、アフガンでの米国の信頼を失う行為は、同盟国や友好国との関係に大きな影響を与えるのは避けられない。力の弱い国は離れ、力のある国は米国を疑いの目で見るようになり、さらに米国の外交・軍事政策も臆病になるかもしれない。具体的には、東、及び東南アジアにも大きな影響を与え、韓国やフィリピン等、米国との関係が微妙な国は、離反を強めるだろう。この状態は何よりもCCP中国の利益となる。
    記事の最後にモサドの情報収集能力にCIA長官が驚いたと書いてあるが、これはCIAがお粗末すぎであり、また、CIA内部に、今まで問題にならないが、モサドが深く浸透しているだろうから、当然とも思える。

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