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安倍暗殺事件に思う① 安全保障、外交での功績

 

 

記者会見に臨む安倍晋三首相(2020年4月7日、東京都千代田区の首相官邸で)。

 

7月8日、安倍晋三元首相が手製の銃で2発撃たれた。重症を負った安倍は倒れ、病院に搬送されたが、その後死亡が確認された。安倍の暗殺は、日本の国内政治と国際外交に衝撃を与えた。安倍は、冷戦後の日本政治、そして1945年以降の日本外交において、最重要人物であったのは間違いない。どう記憶されるだろうか、歴史はどう評価するだろうか。

 

 

軍事力の再構築

安倍は、日本国憲法第9条を解釈変更し、より多様で活発な軍事政策を可能にする運動を主導した。

 

長い間、攻撃的な軍事活動(そしておそらくあらゆる種類の軍事的制度化)を禁止していると解釈されてきた第9条は、日本の戦争遂行能力に賢明な制限を課しきた。日本経済の巨大さと高度さを考えると、これは日本の無限に近い潜在的軍事力を利用する可能性を持っている。

 

中国の軍事力の伸びを考えると、日米ともにこの再解釈はプラスに働くと見る向きが多いが、東アジアでは日本の復権を懸念する向きが多い。

 

ハード面では、安倍はV-22オスプレイ、F-35B、いずも型軽空母など、重要な新戦力の獲得に先陣を切った。また、イギリスと共同で日本独自のステルス戦闘機の開発も進めた。

 

安倍の主張は、日本で軍事思想の文化的変化をもたらし、海外派兵や海外目標への攻撃について、積極的な考えを示す日本人が増えている。

 

中国

安倍晋三は、日本の安全保障政策に積極的であったため、中国に友好的でなかった。

 

韓国と同様、中国も安倍が第二次世界大戦中の日本の残虐行為に対する責任を認めないことに不快を隠せない。靖国神社参拝は、日中経済関係が健全であったにもかかわらず、中国で激しいデモの火種となった。この点でも、安倍の記録は中国から不審に思われ、共同技術プロジェクトやサプライチェーンからの離脱に道を開いた。

 

安倍の死は、中国国内ではソーシャルメディア上で祝福されたが、政府や主要メディアは控えめであった。

 

韓国

安倍晋三の最大の失敗は、日韓関係にダメージを与えたことだろう。

 

東アジアの安全保障政策の動向(中国パワーの増大、北朝鮮の核の冒険主義)が韓国と日本を結びつけるべき時に、安倍は第二次世界大戦前後の韓国と韓国人に対する蛮行に対する日本の責任問題で大失態を犯した。

 

特に、太平洋戦争中に日本兵の性奴隷として韓国人を使った「慰安婦」問題を、安倍は必要以上に甘やかし、韓国人を激怒させた。日本軍はまた、太平洋上の島々で自殺行為に近い任務のために韓国人男性を頻繁に徴兵した。

 

安倍が韓国の懸念に対処した方法はひどいものだったが、政治的失敗でもあった。国内でほとんど役に立たず、中国や米国などで、日本が戦時中の遺産に取り組もうとしていることを懸念する批評家の声を聞くことになったからだ。

 

安倍の後任岸田文雄首相がソウルとの関係改善を優先させたようだが、このダメージをどの程度癒すことができるかはまだ不明だ。

 

安倍と歴史

安倍晋三は、複雑な世界的遺産を残した。日本、韓国、中国の批評家にとっては、70年にわたる日本の平和主義を覆し、1930年代から1940年代にかけ東アジアに火をつけた火種を再び呼び起こす恐れを生んだ人物である。日本、米国、その他の国々の崇拝者にとっては、彼は日本を完全にグローバルな外交に導き、東京に国際社会での積極的な役割を与え、ますます危険になる世界の中で日本の安全保障政策を再活性化させることに貢献した。

 

安倍首相抜きで、東京が積極的かつ批判的な姿勢でロシアに臨むとは考えにくい。安倍が暗殺されるべきでない人物であったことは間違いない。安倍首相の死去が、後世の評価にどう影響を与えるかはまだ分からない。■

 

A 1945 Contributing Editor: Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph. D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.

In this article:China, featured, Japan, Shinzo Abe, Shinzo Abe Assassinated

WRITTEN BYRobert Farley

 

Shinzo Abe: How Will History Remember Him? - 19FortyFive

 

ByRobert FarleyPublished1 hour ago


コメント

  1. Farleyは、中国や韓国について、記事のような偏った考え方を以前からしてたっけ?

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