スキップしてメイン コンテンツに移動

主張 ドンバスでの戦況にかかわらず、ロシアの敗北はすでに決まっている

 


Ukraine Tanks

ロシア戦車が爆発効果で敵攻撃から防御している Credit: YouTube Screenshot.

 

 

ロシアはドンバスで勝っても、敗戦している 

 

ウクライナ戦は続いている。9週目に入った今、戦闘は東ウクライナのドンバスに移っている。キーウ周辺の戦闘に比べ、ドンバスからの情報は少なくなっている。これは、初期の待ち伏せスタイルや銃撃戦に比べ、戦闘が運動的かつオープンな形態になっているためだろう。

 大規模な衝突がより多く発生する可能性が高いようだ。ウクライナの死傷者は以前より多くなるだろう。ソーシャルメディア上の戦争映像の多くがウクライナ側のものなので、戦争が不利になったため、目にする機会が減ってきたのだろう。ドンバスの地形はロシア側にとって有利だ。

 しかし、ロシアは東部で戦果を得ても、今回の紛争ですでに多くを失っており、ロシアの国力にとっては破滅的な状況だ。実際、ウクライナが全面勝利する可能性があるという見方もある。しかし、東部と南部の一部を保持しても、それは戦費のほうが遥かに大きい。

 

ウクライナはヨーロッパで最優秀な軍隊になる

 

侵攻の最も豊かな皮肉だ。ウラジーミル・プーチン大統領は、電撃作戦を想定していた。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を親ロシア派とすばやく交代させ、撤退させるつもりだった。西側が動員する前にすべてが終わる。プーチンは、ウクライナはフェイク国だと信じていたようだ。

 代わりに、愛国心に満ちたウクライナの兵士と市民の壁にぶつかった。その結果、欧米とパイプラインができ、戦況を支えられた。ロシアが直面しているのは、十分な装備と訓練を備え、戦闘に慣れ、統率が取れ、国民からの信認が高く、外国の裕福なパトロンに支えられている軍である。ロシアは二度とウクライナを制圧できないだろう。もしロシア軍が今後数カ月で勝利を収めなければ、戦争全体に負けるだろう。

 

NATO拡大は止まらない

 

表向きは、プーチンの侵攻の大きな原動力はNATO拡大だった。これは真実でなく、ロシアのプロパガンダだ。

 確かに、ウクライナは和平交渉の一環でNATO加盟を断念する可能性が高い。しかし、スウェーデンとフィンランドが加盟申請する可能性が高く、ほぼ間違いなく受け入れられる。特にフィンランドの加盟は損失だ。フィンランドはロシアと長い国境を接し、冷戦期に中立を保っていた。フィンランドが中立を放棄するのは、プーチンがソ連以上に危険な存在になったのを示している。

 

ロシアは孤立する

 

和平協定が結ばれれば、ロシアは世界との関係を回復できる。制裁は撤回される。ロシア人エリート層への渡航禁止措置は解除される。戦間期やドイツのファシズム転回を見ればわかるように、敗者を厳しく罰することは、その国の最悪の失地回復論を刺激する危険がある。

 しかし、ロシアとの正常な外交・経済交流が復活するのは、プーチン亡き後になるのはほぼ間違いない。欧米企業はロシア復帰をためらうだろう復帰は強制できない。同様に、渡航禁止措置を終了しても、世界の指導者がロシアのエリート層に会う義務はない。特にロシアの戦争犯罪の証拠が積み重なれば、ロシアは非公式に孤立していくだろう。

 

NATOの新たな目的意識

 

冷戦後の数十年間、NATOは使命を模索していた。9.11以降、NATOはアフガニスタンを筆頭に「域外」作戦を試行した。しかし、作戦は人気がなく、昨年のアフガニスタン撤退時には、誰もが疲れ果て、喜んでいた。フランスのマクロン大統領はNATOは「脳死状態」と呼び、アメリカのドナルド・トランプ前大統領は同盟脱退を考えていた。

 ロシアの侵略が、すべてを変えた。東ヨーロッパのさらに外側に米軍が駐留する可能性が出てきた。ドイツは大幅な防衛力強化を約束した。ブレグジット後のイギリスは、再び大陸と協力するようになった。タッカー・カールソンやグレン・グリーンウォルドのような親プーチン派のアメリカ人評論家は、米世論がウクライナと戦争についたため、失脚してしまった。

 これらの損失や後退は、プーチンがドンバスを征服して得るものよりはるかに大きい。ウクライナは生き残り、ロシアのいじめに抵抗する軍事能力を持つだろう。NATOは成長し、深化する。ロシアは孤立状態に陥り、中国に依存するようになるだろう。これが、迅速で小規模の電撃戦からの非常に大きな成果だ。■

 

 

Russia Has Already Lost the Ukraine War - 19FortyFive

ByRobert Kelly

 

Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. Dr. Kelly is now a 1945 Contributing Editor as well. 


コメント

  1. ぼたんのちから2022年5月3日 22:30

    確かにウクライナ戦争の結果如何に関わらず、ロシアの弱体化は進み、NATOはロシアを十分に封じ込めることが可能になり、現在よりもその影響力を増し、アジアまで関与しようとするだろう。弱体化したロシアは、分解する可能性もある。それに伴い世界も大きく変わる可能性が高い。
    ロシアの肩を持つCCP中国は、西側の制裁を加えられない程度の支援しかできず、ロシアとの関係は微妙なものになると推測する。中国は、没落したロシアの天然資源を狙っている。
    ロシアの凋落は、中東、中央アジア、及びインドに大きな影響を及ぼす。中東では、ロシアに依存するシリアが先ず存亡の危機に直面する。中央アジアのスタン国家やコーカサスの諸国家は、ロシア離れを始め、他の大国に依存しようとするだろう。中東、及び中央アジアは、しばらく不安定な状態になる。
    問題はQUADの一員であるインドであり、その軍事力の多くをロシアに依存しているが、ウクライナ戦争で明らかになったロシア装備の陳腐化の衝撃により、ロシア離れを急速に起こすことになる。これは対中包囲網としてのQUADに良い結果をもたらすだろう。
    ロシア軍事技術の陳腐化に衝撃を受けた国家がもう一つあり、それはCCP中国であり、PLAは、全体の編成に米軍を手本としているが、個々の装備の多くがロシア軍事技術、及びその模倣で作られているため、対外戦争に恐怖を覚えているだろう。
    もし、ウクライナ戦争初期のプーチンの妄動が成功していたなら、習は、台湾侵略を具体化していたかもしれないが、プーチンは見事に失敗し、さらに強力と思われていたロシア軍が簡単に打ちのめされたため、侵略計画と装備の見直しが少なくても必要になるだろう。
    また、ウクライナ戦争は、台湾防衛にも多くの重要なヒントを与えてくれることになった。さらに習が侵攻を開始したとしても、多くの国が台湾支援を行う可能性が高くなったことも大きな変化だろう。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM