7月に開催されたファーンボロ国際航空ショーで公開されたGCAP戦闘機プログラムの最新コンセプトデザイン。レオナルド
2022年12月9日、日本、英国、イタリアの政府は、英国とイタリアのユーロファイター・タイフーン、および航空自衛隊の三菱 F-2 を後継する第6世代戦闘機の共同開発プロジェクト「グローバル・コンバット・エア・プログラム」を発表した。
この発表は、それまで別個に進められていた3か国の第6世代戦闘機計画、すなわち 日本の三菱 F-X、英国主導のBAEシステムズ・テンペスト(イタリアと共同開発中)の3つである。1年後、東京で3か国の防衛大臣が条約に署名し、構想が固まった。
この統合は、日本の防衛体制の劇的な変化の兆しとなり、このプログラムが自国の安全保障だけでなく、防衛基盤やより広範な経済にも利益をもたらすことを期待している。
2022年の日本は、3つの戦略文書を書き換え、第二次世界大戦以来の方針であった戦闘機やその他の防衛装備品の輸出禁止を解除した。今年9月、政府は2025年度の防衛予算として、史上最大の予算を要求した。
日本の防衛態勢強化の一環として、産業基盤の強化が挙げられる。これは、10月に東京で開催された6年ぶりの国際航空宇宙展でも繰り返し取り上げられたテーマだ。
同展示会でのプレゼンテーションで、防衛装備庁装備政策部国際協力課住友早苗子課長は、3月に安全保障指針が改正され、3つのパートナー国以外の国への完成品の直接移転が認められるようになったと述べた。
これは、採算性の低さや投資収益の不確実性、防衛事業に伴う風評リスクや評判リスクなどを理由に、防衛事業から撤退する企業が増え、新規参入企業が減少したことで弱体化した日本の防衛産業を強化する広範な取り組みの一環である。日本の「防衛生産・技術基盤の強化に関する基本方針」の概要には、このように記されている。
この政策は、2023年に制定され、「防衛装備品の安定生産の確保」と「防衛装備品の調達体制の改善策」により国内インフラを修復することを目的としている、と要約されている。
石川武・防衛装備庁長官は、展示会で、日本の国防戦略の一環として防衛能力の抜本的な強化を実現するには、防衛生産技術の役割が「極めて重要」であると述べた。
日本は、グローバル・コンバット・エア・プログラム(GCAP)が日本の防衛生産近代化の目玉となることを期待している。
BAEシステムズのファクトシートによると、2035年に就役予定の同機は、インテリジェント・ウェポン・システム、ソフトウェア駆動の双方向コックピット、統合センサー、現行システムの1万倍のデータを提供できる次世代レーダーを搭載する。
三菱重工業、英国のBAEシステムズ、イタリアのレオナルドがこのプログラムの主契約企業であり、7月に開催されたファーンボロー国際航空ショーで新しいコンセプトモデルが公開された。
三菱重工、BAEシステムズ、レオナルドは設計と開発における産業リーダーで、英国のロールス・ロイス、日本のIHI、イタリアのアヴィオ・アエロがエンジンデモンストレーターの共同開発を含め、動力および推進システムの設計と開発に取り組んでいる。レオナルド、三菱電機、イタリアのELTグループは、完全統合型のセンサーおよび非運動効果能力と統合通信の開発に取り組んでいる。
三菱重工の航空機・ミサイルシステム事業部統合防衛・宇宙システム部門の杉本明部長はパネルディスカッションで、三菱重工が開発中の戦闘機の「さまざまな側面」には、先進的なレーダーやセンサー、通信分野における「多くの研究と試作」が含まれていると述べた。
「データをどのように接続し、統合するかが非常に重要なポイントです。この10年間で多くの研究が行われてきました」。
IHIは、F-Xに関連して開発された三菱X-2デモンストレーターの試験飛行用XF5エンジンの概念設計と製造を行っている。
三菱電機鎌倉製作所でF-Xプログラムの総責任者を務める平尾達也は、ステルス技術と高度なネットワーク技術の開発を担当している。「将来を見据えると、複数のプラットフォームをリンクさせ、統合された能力を実証することが極めて重要になると思います。センサーシステムの一部である通信とネットワークに重点的に取り組むことが極めて重要であると考えています」。
石川長官は、GCAPの共同開発という性質は、日本にとってすでに必要とされている航空機に関する技術リスクと開発コストの削減にもつながるだろうと付け加えた。
現在、日本の戦闘機部隊はF-2、F-15、F-35の3機種で構成されている。三菱重工のF-Xモデルは、当初はF-2の後継機として構想されたが、現在はGCAPの共同開発に組み込まれている。
F-Xプログラムは、1997年に米国がF-22ラプターの輸出を禁止し、米国技術を保護したことを受け、日本初の国産戦闘機開発となった。その結果、防衛省は2009年より戦闘機技術の研究を開始した。
しかし、同国は独自に第6世代戦闘機を開発するために必要なリソースを確保することで苦戦した。
「次世代戦闘機を実現するには、次世代戦闘機に求められるステルス性や機動性を実現した航空機を統合する技術を検証する必要があります」と、防衛省技術研究本部プロジェクト管理部の川田友裕は述べた。「現在の装備品は開発に莫大な費用がかかり、高度な技術力も必要とされるため、各国が資金と技術を相互補完するメリットは非常に重要です」。
IHIの防衛システム部門航空エンジン開発部の中村則行副部長は、国際共同開発の目的自体が、「設計技術、製造技術、さらには設備など、これまで我々の強みであったリソースを結集すること」にあると述べた。
同氏は、「スケジュールや今後の展開など、さまざまな側面を考慮した結果、最終的には…共同開発が最善の選択だった」と語った。
同氏は、このプログラムの規模は航空機産業が「いかに大規模」になったかを反映していると述べた。「その結果、サプライチェーンに大きな波及効果をもたらす幅広い産業構造が形成された」。
経済産業省製造産業局の伊吹英明局長は、国際共同開発プロジェクトである一方で、日本全国に「強固なサプライチェーン」を構築できる可能性があると述べた。また、「GCAPで得られた経験は、今後民間でも活用されるだろう」と語り、産業ノウハウの蓄積に役立てられると述べた。
また、GCAPの協力関係を通じて得られた技術的ノウハウは、日本の航空機産業全体にとって間違いなく役立つ。日本がGCAPと並行して防衛体制の変革を進める中、それを支えるために必要な人材についても、パネルのメンバーは検討課題として挙げた。
航空機を統合する責任を担う国際レベルの人材を育成することは、防衛だけでなく航空機産業全体にとっても極めて重要との指摘もあり、GCAPを通じて、開発、認証、製造、メンテナンスなど、最先端の業務の流れを継続的に経験できる素晴らしい機会となるという。
防衛事業や民間航空機事業において、世界トップクラスの経験を持つエンジニアを残し、継続的に機会を作り出すことが非常に重要になり、防衛産業技術基盤の強化にもつながる。
F-X開発で日本のサプライチェーン・マネジメント、整備点検、運用の効率性を向上でデジタル変革が始まっている。
また、GCAPは、次世代にわたる協力という国家間の約束にもなる。装備や技術協力の強化に加え、長期的なパートナーとの安全保障環境を強化することも可能となる。
こうした関係は、軍事力の根本的強化という点で「非常に大きな意義」がある。インド太平洋地域における世界的な安定と繁栄の基盤となるプロジェクトとの声もある。
官民両セクターにまたがる出張、設計作業の協議、作業部会を含む月例、時には週例の会議は、国際協力の複雑性を示すものだが、このプロジェクトは日本が各国の人員・組織と協力する機会にもなる。
当然ながら、これは日本経済の成長とともに進んできた生産技術基盤の強化にも貢献する。GCAPが航空機業界全体に大きな影響を与える。
前途には多くの課題が待ち構えているが、この機会を成功させれば、日本の航空機産業にとって大きな財産となり、ひいては日本全体のイノベーションにつながると関係者は見ている。■
Joint Fighter Program Lifting Japan’s Defense Industry
12/13/2024
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