スキップしてメイン コンテンツに移動

中国のH-20ステルス爆撃機は2030年代まで「デビュー」しない可能性が高い(米国の情報機関)(The War Zone) ―2024年末の新型装備公開ラッシュにも同爆撃機は登場しませんでした。25年も期待薄でしょう。


PLAAF/YouTube Screencap


H-20と並行して、中国は小型ステルス爆撃機の開発も継続している


国で待望のH-20爆撃機が「デビュー」を果たすのは、運用部隊への導入を意味するのか、あるいは単に公に姿を現すだけなのかは不明だが、今後10年以内のいつかだろうと米軍は述べている。今年初め、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の副司令官は、少なくとも同機の公開は「間もなく」行と発言したと報じられた。長年にわたり、米国のB-2スピリットを彷彿させるステルス性の高い飛行機として設計された爆撃機が、まもなくそのベールを脱ぐだとの報道が出ていた。


H-20爆撃機プログラムの現状に関する一般的な評価は、米軍が議会に提出した最新の中国軍事動向に関する年次報告書に記載されている。米国防総省は本日、この報告書の非機密版を公開した。ここには、中国人民解放軍(PLA)が、過去にはJH-XXと呼ばれていたステルス性能を持つ中距離爆撃機の開発を現在も続けていることも記載されている。


「中国空軍は新型ステルス戦略爆撃機H-20の開発により、戦力投射能力の拡大を目指している。中国国営メディアは、この新型ステルス爆撃機は通常任務に加えて核ミッションも担うと発表している。中国空軍は地域および世界的な目標を攻撃するための新型の中距離および長距離ステルス爆撃機を開発している。

「中国は、おそらくH-20と名付けられるであろう新世代の長距離爆撃機を開発している。今後10年以内にデビューする可能性のあるH-20は、航続距離が1万キロメートル(6,214マイル)以上であり、中国空軍が『第2列島線』をカバーし、太平洋西部地域まで到達することを可能にするだろう」と、報告書の別の部分に記されている。「H-20爆撃機の航続距離は空中給油により地球全体をカバーできるほどに延長される可能性がある。通常兵器および核兵器を使用し、ステルス設計が採用されると予想される」。


ここで言及されている「第2列島線」とは、日本と東インドネシアの境界線から西に広がる太平洋の地域を指し、米国領のグアム島も含まれる。また、H-20に関するこの発言は、昨年国防総省が中国報告書に盛り込んだ内容とほぼ一致している。

「第一列島線」および「第二列島線」と呼ばれる地域を示す地図。国防総省 西太平洋における第一列島線および第二列島線の境界線を示す地図。国防総省


「残念ながら、私は [新しい中国レポート] に記載されている以上のことはお話しできません」と、今週初めのメディア向け事前説明会で、米国防総省高官もまた、本誌のハワード・アルトマンによる中国爆撃機に関する質問に対して述べた。「ご想像の通り、我々は可能な限り多くの情報を提供しようとしていますが、現時点ではレポートに記載されている以上のことはお話しできません」。

2021年のPLAAF(中国空軍)の募集ビデオに登場するH-20を反映したと思われるステルス飛行機タイプの公式レンダリング。YouTubeキャプチャ

H-20に関する最新のコメントは、今年初めに複数の報道機関に対して米国情報当局者が語った爆撃機に関する内容とも一致している。


「H-20の問題は、実際にシステム設計を見ると、おそらく米国のLO(低可視性、ステルス)プラットフォーム、特に今後登場するより高度なプラットフォームには遠く及ばないでしょう」と、情報当局者は4月のブリーフィングでDefense Oneに語った。「彼らは、そのシステム能力をB-2やB-21と同様の方法で機能させるにはどうすればよいかという点において、多くの設計上の課題に直面しています」。


H-20は、少なくとも大まかな形状は、ここに写っているB-2と似たものになるだろうと以前から予想されてきた。 米国空軍


H-20が米軍にとって懸念事項であるかどうかを尋ねられて「そうでもない」と、その人物は答えたと、Breaking Defenseは伝えている。


その1ヶ月前には、中国国営の香港商業日報が、中国空軍の副司令官王偉中将のインタビュー記事を掲載しており、その中で同中将は「(H-20は)もうすぐ登場する。待っていなさい!」と語っている。「(H-20の開発における)ボトルネックは存在せず、解決できる」と、香港商業日報によると、王中将も述べた。「我々の科学技術研究者は現在非常に優秀であり、全員がこの能力を備えている」。


H-20の開発は少なくとも2000年代初頭まで遡ると考えられている。中国航空工業集団(AVIC)の子会社である西安飛機工業公司(XAC)が、このプロジェクトを主導している。XACは、ソビエトのツポレフTu-16バジャーのライセンス生産コピーであるH-6爆撃機の原型をはじめ、Y-20輸送機など、数多くの設計を担当している。H-6の各バージョンは、現在、人民解放軍の長距離航空攻撃能力を構成している。


H-6シリーズのミサイル搭載機。日本の防衛省


H-20の公式画像はこれまで公開されていないが、人民解放軍とAVICは長年、この設計をほのめかしてきた。これには、ノースロップ・グラマンの有名な2015年のスーパーボウル広告(下記参照)を模倣した、AVICによる2018年のプロモーションビデオも含まれる。このビデオでは、後にB-21レイダーとして知られるようになった機体をほのめかしている。H-20プログラムまたは関連設計に関連する可能性のある風洞モデルの画像や、多数の推測に基づくファンのレンダリング画像も、過去にオンラインで公開されている。

過去の報道では、H-20の要件として、陸上攻撃および対艦巡航ミサイルを含む最大10トンの兵器を搭載でき、無給油での航続距離は約5,000マイル(約8,000キロ)であることが求められていると報じられていた。


地域重視の JH-XX に関する情報はさらに少なく、航続距離は H-20 より短く、ペイロード容量も小さいとされる。 AVIC の子会社である瀋陽飛機工業(J-35 などのステルス戦闘機でよく知られる)が主導している可能性がある。


以前に公開された、JH-XXの作業に関連する可能性がある設計の模型の写真。中国のインターネット


本誌が過去に強調したように、H-20は、PLAが現在保有しているH-6ファミリーの最新バージョンをはるかに超える長距離核攻撃能力を保有することになる。それにより、インド太平洋地域全体にわたって、戦略的に重要なグアム、ハワイ、さらには米国本土の一部を含む、まったく新しい広範囲の標的を危険にさらす能力が提供されることになる。


中国軍はすでに近年、H-6の派生型による長距離空爆能力の拡大に取り組んでいる。これには、射程を大幅に拡大するために、空中発射弾道ミサイルや極超音速ミサイルのような非常に大きなペイロードを発射できるバージョンも含まれる。


H-6Nミサイル運搬機が、非常に大きな空中発射弾道ミサイル(赤い矢印で強調表示)を運んでいるのが見える。中国のインターネット


今年7月には、ロシア軍との合同長距離空中パトロールの一環として、H-6Kミサイル搭載機2機がアラスカ近郊の国際空域を初めて飛行した。しかし、H-6Kの公表されている最大航続距離を考慮すると、また空中給油も不可能であることを踏まえると、これらの航空機はロシアの基地から出撃した可能性が高いと思われる。これは、H-6シリーズが依然として限界を抱えたままなのを浮き彫りにしている。しかし、空中給油が可能なバージョンは徐々に配備されつつあり、間もなく登場するH-20の重要性も高まっている。また、潜在的な防空の脅威は拡大する一方であるが、H-6は低被発見性(ステルス性)の航空機ではない。


また、本誌は過去にも、中国にとってステルス性能を持つ中距離爆撃機JH-XXの価値を強調してきた。この爆撃機は、中国本土の第二列島線内やインド上空において、より生存能力の高い新たな空爆手段を提供することになる。以前にも述べたように、「この航続距離があれば、JH-XXは依然として、日本国内の米軍施設や、場合によってはグアムの米軍施設、さらにはインド、南シナ海、その他の地域の基地といった戦略的目標に挑戦する能力を有することになる。この設計では、速度を優先させることも、ステルス性を優先させることも可能である。これにより、出撃率や敵の統合防空網を突破する能力において、小型の戦闘爆撃機にさらなる優位性がもたらされる可能性がある。何よりも、脆弱な空中給油機への依存度を低く抑え、あるいは全面的な紛争時には最も攻撃を受けやすい沿岸部の飛行場を使用することなく、長距離の空対空ミッションの支援を含む多目的運用が可能になる」。


H-20に関しては、たとえ公式デビューを果たしたとしても、中国空軍が爆撃機を真に運用可能な状態にするには時間がかかるだろう。米国空軍とは異なり、中国空軍は依然とし長距離の航空作戦の経験は限られている。中国は現在、特にロシアとの協力により、より定期的なH-6もうpり長距離飛行を通じてこの問題の解決を図ろうとしているようだ。空中給油能力は、H-20がその潜在能力を最大限に発揮する上で鍵となるが、この分野でも中国の軍隊は米国に遅れをとっている。ただし、この状況を変えるための取り組みは進行中だ。


「中国側の最大の課題は、実際のシステムの能力というよりも、むしろ、それらのシステムを迅速かつ大規模に効果的に運用する人員の能力です。我々米軍には戦争を戦う多くの経験があります」と、前述のH-20について語った米情報当局者は、4月にDefense Oneに次のように語っている。「そして、もちろん、どのオペレーターに話を聞いても、彼らは我々の抱える問題をすべて教えてくれるでしょう。しかし、率直に言って、我々はキルチェーンを実行する方法を見つけ出すことができます。中国には、実際に戦争を経験した人物は、人民解放軍に現在まったくいません」。

 同時に、「中国人が優秀でないことに頼りたくはない」と当時彼らは警告した。「彼らが優秀でないと分かるのは、彼らが我々に発砲してくるまでだ。そして、本当に優秀だったと気づくような立場にはなりたくない」。


本誌が定期的に指摘しているように、中国軍は宇宙を含むあらゆる領域において、ますます近代的な能力の開発と実用化において著しい進歩を遂げ続けている。これには、特にステルス飛行機型の無人戦闘機(UCAV)やその他の先進的な無人機に関する航空分野での重要な取り組みが含まれる。UCAVは、少なくとも我々の知る限り、米軍が依然として不在の分野である。このような設計に関する取り組みが世界的に復活しつつあるにもかかわらず、である。


米軍は、中国がH-20とJH-XXの両方を依然として積極的に追求していると述べているが、実現にはまだ何年もかかりそうだ。■


China’s H-20 Stealth Bomber Unlikely To ‘Debut’ Until 2030s, According To U.S. Intel

China also continues to pursue a smaller regional stealth bomber aircraft in parallel to the H-20 program.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/air/chinas-h-20-stealth-bomber-unlikely-to-debut-until-2030s-according-to-u-s-intel


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...